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報告書&レポート

2012年12月20日 ボツワナ・地質リモートセンシングセンター 久保田博志  ロンドン事務所 小嶋吉広 報告
2012年73号

DRCコンゴ:鉱業大国への復活に向けた展望-Katanga Mining Briefing参加報告-

 アフリカ最大の銅鉱山地帯カッパーベルトのDRCコンゴ側の中心地域であるカタンガ州の州都ルブンバシにおいて、2012年10月23~24日、Katanga Mining Briefingが開催された。本カンファレンスは、その1週間前にキンシャサで開催された「iPAD Mining & Infrastructure」(10月17日~19日)のマイニングに特化した関連カンファレンスであり、本年で3回目の開催となる。本年の参加者は約200名、展示ブース約30件の規模で開催された。本カンファレンスには、カタンガ州政府高官、国有鉱山会社Gecamines、同国最大の民間銅鉱山会社Tenke Fungurume Mining社(米・Freeport-McMoRan資本)等のカッパーベルト地域の鉱山会社や鉱山関連会社が参加した。
 本稿では、「Katanga Mining Briefing」の講演をもとに、DRCコンゴの鉱業の概要、鉱業政策、主要企業の活動状況、同国への鉱業投資における課題についてまとめた。

写真1 展示ブース

写真1 展示ブース
写真2  講演会場

写真2 講演会場

1.一般概況

 DRCコンゴは1960年にベルギーより独立した後、モブツ大統領による独裁体制が30年以上続いた。1997年、ローラン・デジレ・カビラ議長率いるADFL(コンゴ・ザイール解放民主勢力同盟)が首都キンシャサを制圧し(第1次コンゴ戦争)、同議長が大統領となり、国名をザイールからコンゴ民主共和国に変更した。
 その後、ウガンダやルワンダ等の周辺国が武力介入し、2001年にローラン・デジレ・カビラ大統領は暗殺され(第2次コンゴ戦争)、息子のジョゼフ・カビラが大統領に就任した。2003年に国内の全勢力が参加して「プレトリア包括和平合意」が成立し、暫定政権が樹立された。
 モブツ大統領の独裁と二度に亘る内戦によって、DRCコンゴのGDP成長率は1990年代~2000年代初頭までの間、マイナス成長を強いられ、「停滞するアフリカ」の象徴とも言われた(図1参照)。2003年のプレトリア包括和平合意による内政安定化を受け、経済成長率は急速に改善し、2011年は6.9%となった。2012年は5.1%、2013年は6.0%の成長が予測されている1

図1 GDP成長率と一人当たりGNIの推移

(出典:世銀データ)

図1 GDP成長率と一人当たりGNIの推移

 2000年代後半以降、GDP成長率の改善は見られるが、外資受け入れ促進によって自律的な経済成長実現を目指すDRCコンゴ政府にとり、ガバナンスの改善が急務となっている。最新のイブラヒム指数(英シンクタンク(Mo Ibrahim財団)がアフリカ各国のガバナンス状況を指標化)によれば、DRCコンゴのガバナンスはアフリカ52か国中51位となっている(最下位はソマリア)2。また、一人当たりGNI(Gross National Income)は近年上昇傾向が見られるものの180 US$(2010年世銀データ)と極めて低い水準にあり、世銀が統計を取っている世界215か国のうち214位と依然として最貧国から抜け出せずにいる(最下位はブルンジ)。


1 African Economic Outlookによる予測

2 以下サイト参照。http://www.moibrahimfoundation.org/

2.鉱業の状況

 DRCコンゴとザンビアにまたがるカッパーベルト地域には、世界のコバルト埋蔵量の約40%、銅埋蔵量の約6%が賦存していると言われている3。DRCコンゴの銅・コバルト生産量は1980年代に銅年間生産量476,000 t、同コバルト生産量14,600 tとピークに達した後、政治的不安定などから生産量は減少の一途を辿り、2000年代前半には同銅生産量20,000 t程度にまで落ち込んだ(図2参照)。2002年DRCコンゴは、世銀のアドバイスの下で鉱業法を改正し、国営会社Gecamines社との合弁事業(JV)を通じた民間企業主導による鉱山開発の方針を掲げた。また政治的には、2006年に民政移管に向けた大統領選挙が実施され、内政安定化の兆しが見え始めた。これにより、銅生産量は増加に転じ、2010年には497,537 t、2011年には508,103 t、2012年の見込みは591,939 tと「世界的」銅生産国への復活を遂げつつある(図3参照)。

図2 銅生産量の推移と今後の見込み

(出典:DRCコンゴ鉱山省資料)

図2 銅生産量の推移と今後の見込み

図3 近年の銅生産量推移(2012年以降は見込み)

(出典:DRCコンゴ鉱山省資料)

図3 近年の銅生産量推移(2012年以降は見込み)

 DRCコンゴでの主な鉱山と銅生産量(一部推定含む)を表1に掲げる。2009年よりFreeport-McMoRanが操業するTenke Fungurume鉱山が最も生産量が多く、国内の銅生産の約1/4を生産している。Frontier鉱山はFirst Quantum社が保有していたが、2012年7月、Kolwezi Tailingsプロジェクトとともに12.5億US$でENRCへ売却された。

表1 DRCコンゴの主な銅鉱山

鉱山名 権益保有者 プロセス 生産量
(千t)
備考
Dikulushi Mawson West(90%)、Locai
Interest(10%)
精鉱 5 2011年生産量
Frontier ENRC(70%)、Sodimco(30%) 精鉱 48 2010年生産量
Kamoto Katanga Mining(75%)、
Gecamines(25%)
SX-EW 91 2011年生産量
Kinsenda Metorex(金川集団)(77%)、
Sodimco(23%)
精鉱 現在F/S中、2015年生
産開始予定
Kinsevere 五鉱資源(100%) SX-EW 37 2011年生産量
Kipoi Tiger Resources(60%)、
Gecamines(40%)
精鉱 58 2011年生産量
Kolwezi Mill Camrose Resources(ENRC)(70%)、
Gecamines(30%)
精鉱 25 2011年生産量(推定)
KTK Katanga Mining(75%)、
Gecamines(25%)
精鉱 5 2011年生産量(推定)
Lubumbashi OM Group(55%)、George Forrest
International(25%)、Gecamines(20%)
精鉱 5 2010年生産量
Luisiwishi GeorgeForrest International(60%)、
Gecamines(40%)
精鉱 12 2011年生産量(推定)
Luita Central African Mining and
Exploration(70%)、Gecamines(30%)
SX-EW 6 2011年生産量
Lupoto Tiger Resources(100%) 精鉱 10 2011年生産量(推定)
Ruashi Metorex(金川集団)(75%)、
Gecamines(25%)
SX-EW 35 2011年生産量
Tenke
Fungurume
Freeport-McMoRan(56%)、Lundin
Mining(24%)、Gecamines(20%)
SX-EW 128 2011年生産量
465  

(出典:ICSG Insight 2010-No.9の情報を基にJOGMEC作成)

 DRCコンゴ鉱山省の資料による主要プロジェクトの確定埋蔵量を表2に示す。Tenke Fungurumeが確定埋蔵銅量10,500千tと最も多く、次いで、中国との合弁企業であるSicominesが同約7,000千tとなっている。Sicominesは2007年に中国輸銀からの90億US$のファイナンス支援(後にIMFの調停により60億US$に減額)により設立されたGecaminesとのJV企業であり、中国中鉄(China Railway Group Ltd.)や中国水利水電建設公司(Sinohydro)等の中国企業コンソーシアムが権益の68%を有している。中国側は60億US$のファイナンス支援を供与する代わりに、銅1,062千t、コバルト620千tの開発権を取得したと言われている4

表2 主要プロジェクトの確定埋蔵量

プロジェクト又は会社名 主な所有者 鉱床名 確定埋蔵銅量(t)
Tenke Fungurume Mining, TFM Sarl Freeport-McMoRan,
Lundin/TMC
Kwatebala,
Tenke, Fwaulu
10,500,000
Sicomines Sarl Gecamines &
Chinese Consortium
(複数の鉱床) 6,977,824
Katanga Mining Ltd. Katanga Mining,
Glencore
Kamoto, KOV,
Tilwizembe
2,200,000
Sodifor Sodimico Lufua, Kishiba 1,430,000
Ruashi Mining Metorex Ruashi 1,141,889
22,249,713

(出典:2012年4月ICSGでのDRCコンゴ鉱山省の講演資料を基にJOGMEC作成)


3 USGS Mineral Commodity Summaries 2012

4 詳細は金属資源レポート11月号の掲載の「中国のアフリカ進出について(3)」を参照ありたい。

3.DRCコンゴの鉱業政策

 H.E. Moise katumbi Chapweカタンガ州知事は基調講演において、DRCコンゴ、特にカタンガ州の鉱業は、生産能力の拡大、産業の多角化、銅産業を中心とした電力供給確保、適正な鉱業法制・鉱業税制、インフラ整備等の多様な課題を抱えていると述べた。カタンガ州はこれらの課題を克服し、DRCコンゴの経済発展の牽引役として主導的役割を担わなければならないとの考えを示した。
 続いて、H.E. Barthelemy Mumba Gambaカタンガ州鉱業農水畜産地方開発担当大臣は、鉱業法改正が鉱業に及ぼす影響について、政治的社会的に混乱していた1998年から2002年までの期間に操業鉱山数は7鉱山にまで落ち込んだが、2002年の鉱業法(Mining Code)改正により増加に転じ、2012年現在では324鉱山、鉱業権数は1,507件に及んでいると、具体的な数値を上げて示したほか(図4参照)、政治的社会的安定・外資導入促進・鉱業法制の改正により、国際金融市場へアクセスできるようになり、官民連携も進みつつあると鉱業政策の成果を述べた。
 また、現在政府部内で検討されている鉱業法改正について両氏は、改正案は鉱業権の付与等における中央政府の権限を強めるものであり、また政府の持ち分比率拡大(現状5%から最大35%へ引き上げ)は、外資による鉱業投資を阻害するおそれもあるため、地方政府の権限を残す方向で再検討する必要があると主張した。

図4 操業鉱山数の推移

図4 操業鉱山数の推移

4.主要鉱山企業の活動状況

写真3 Gecamines社Ahmed Katej Nkand社長

写真3 Gecamines社

Ahmed Katej Nkand社長

(1) 鉱山公社「Gecamines社」の役割
 Ahmed Katej Nkand社長(CEO Gecamines)の講演では、同社は1986年に銅年間生産量476,000 t、同コバルト生産量14,600 tをピークとして、その後の政治的混乱や生産材(部品等)の供給障害などにより、1987~1994年には大幅な生産縮小に陥ったが、1995年には、外資とのJVによる新規鉱山開発を目指す新たな企業戦略を策定し、2002年の改正鉱業法がその活動を後押しした結果、現在は26社とJV契約を締結し、生産・探鉱活動を積極的に推進している(表3参照)。GecaminesがJV契約を結んでいる鉱山の2011年の生産量(全体)は銅が283,251 t、コバルトが34,276 t。2012年は銅が405,564 t、コバルトは38,846 tとなる見込みである。生産量のうちGecaminesの権益相当分の生産量については、2010年時点では銅20,015 t、コバルトは877 tであり、ここ数年生産量は拡大傾向にある。今後2015年を目標に、銅100,000 t/年、コバルト8,600 t/年にまで権益相当分の生産量を拡大させる予定である(図5参照)。鉱業以外では、持続可能な開発のために探鉱活動にも注力すること、カタンガ州の石炭火力発電所(発電能力500 MW、投資額650百万US$)の建設など自社関連鉱山のほか他社鉱山や地域への電力等のエネルギー供給を計画していることなど自社の事業目的と戦略を示した。

表3 Gecamines社の参画プロジェクト

段階 プロジェクト名 鉱種 所有企業1 所有企業2 所有企業3
生産中* Lubumbashi Co, Cu OM Group Inc(55) George Forrest International SA(25) Gecamines(20)
Kabolela Cu, Co, Au, Pd Central African Mining and Exploration Co pl(50) Gecamines(50)  
Kambove Co, Cu Central African Mining and Exploration Co pl(75) Gecamines(25)  
KTK Cu, Co Katanga Mining Ltd(75) Gecamines(25)  
Kipoi Cu, Co, Ag Tiger Resources Ltd(60) Gecamines(40)  
Kolwezi Cu, Co Camrose Resources Ltd(70) Gecamines(30)  
KOV Co, Cu Katanga Mining Ltd(75) Gecamines(25)  
Luena 石炭 Gecamines(100)    
Luiswishi Co, Cu George Forrest International SA(60) Gecamines(40)  
Luita Co, Cu, U Central African Mining and Exploration Co pl(70) Gecamines(30)  
Mukondo Mountain Co, Cu Central African Mining and Exploration Co pl(35) Prairie International Ltd(35) Gecamines(30)
Ruashi Cu, Co Metorex Ltd (金川集団)(75) Gecamines(25)  
Tenke Fungurume Cu, Co Freeport-McMoRan(56) Lundin Mining(24) Gecamines(20)
Tilwizembe Cu, Co Katanga Mining Ltd(75) Gecamines(25)  
開発段階 Kisanfu Cu, Co Copper Co Resources Ltd(N/A) Gecamines(N/A)  
F/S Deziwa Cu, Co Gecamines(100) Copperbelt Minerals plc()  
Dilala East Cu, Co Metorex Ltd (Jinchuan Group)(75) Gecamines(25)  
Kalukundi Cu, Co Africo Resources Ltd(75) Gecamines(25)  
Kalumines Cu, Co Teal Exploration and Mining Inc(60) Gecamines(40)  
Kolwezi Tailings Cu, Co ENRC (N/A) Gecamines(N/A)  
Shituru Cu, Co Shanghai Pengxin Mineral Industry Investment(75) Gecamines(25)  
試錐探鉱段階 Ecaille C Cu, Co Gecamines(100)    
Kananga Cu, Co Katanga Mining Ltd(75) Gecamines(25)  
Kipushi Zn, Cu, Co, Pb Ivanplats Ltd(68) Gecamines(32)  
Mutoshi Cu, Co Minmetals Resources Ltd(70) Gecamines(30)  
Somituri Au Kilo Goldmines Ltd(71.25) Local Interest(23.75) Gecamines(5)

* 生産中の鉱山には、一次生産休止中のものも含む。

(出典:各種情報を基にJOGMEC作成)

図5 Gecamines社の銅生産計画(Gecaminesの権益相当分)(2012~2016年)

図5 Gecamines社の銅生産計画(Gecaminesの権益相当分)(2012~2016年)
写真4 Tenke Fungurume Mining社 Andre Kapanga 渉外担当役員

写真4 Tenke Fungurume
Mining社 Andre Kapanga
渉外担当役員

(2) Tenke Fungurume Mining社
 同社の権益構成はFreeport-McMoRan(米)56%、Lundin Mining社(加)24%、 Gecamines 20%となっている。従業員数約3,000人、2011年生産量は銅128千t、コバルト11千tであり、DRCコンゴ最大の民間鉱山会社である(図6参照)。同社は、第1フェーズに20億US$を投資、埋蔵量250万t(銅量)を計上、その後の探鉱により380万tに増加している。
 第2フェーズ以降の生産能力増強には電力確保が必要であり、そのために既存発電所改修への投資を計画している。
 また、Andre Kapanga渉外担当役員は、2002年の鉱業法の改正により国内鉱山開発が活発化したこと、今後も魅力ある投資環境を整備することが必要であること、そのためにカタンガ州の銅鉱山が取り組むべき課題として、輸送インフラ整備(道路、鉄道)、電力供給、通関システムの改善があると指摘した。


図6 Tenke Fungurume Mining社の生産量

図6 Tenke Fungurume Mining社の生産量

5.インフラ整備の現状と将来

 カタンガ州では、銅生産に必要な資機材の輸出入にかかわる輸送インフラ整備(鉄道、道路)、国境における通関手続き(Border Post)に加え、銅生産能力の拡大に不可欠である電力供給の確保がインフラ整備の課題の中心となっている。
 カタンガ州では、2,000 ㎞以上離れたInga発電所からの送電(電力公社SNEL)に加え、同じカッパーベルトにあるザンビア(ザンビア電力公社ZESCO)からの電力輸出も検討されている。
 カタンガ州の銅産業関係者は、Inga3発電所からの電力供給を期待する一方、90億US$とも言われる発電所建設への多額投資にコスト競争力があるのか、現在、世界銀行・アフリカ開発銀行等が進める既存発電所の修復の方が現実的ではないかとの声もある(表4参照)。

表4 Ingaプロジェクト

プロジェクト 発電能力 操業開始
Inga 1 351 MW 1970年
Inga 2 1,424 MW 1982年
Inga 3 4,400 MW
Grand Inga 400,000 MW 未定

6.鉱山見学(Kinsevere鉱山)

写真5  Kinsevere鉱山のpit

写真5 Kinsevere鉱山のpit

 Kinsevere鉱山はAnvil Mining社が2007年より操業を行っている銅の露天掘り鉱山である。Anvil Mining社は2012年3月にMinmetals(五鉱資源)により買収されたため、現在、同鉱山の権益はMinmetalsが100%所有している。推定及び確定銅埋蔵量は930千t、銅平均品位3.75%、マインライフは今後10年を見込んでいる。同鉱山でMinmetalsは従業員650名を雇用し、他に協力会社社員650名が勤務している。
 同鉱山ではSX-EW法により電気銅を生産し、生産能力は60千t/年であるが、電力不足により2011年の生産実績は37千t、2012年は30千t~35千t程度と見込んでいる。電力の需給ギャップは年々拡大しており、2018年以降はさらに深刻化すると予想されている(図7参照)。同鉱山は生産を60千t/年にまで拡大させたいと考えており、その場合24 MWの電力が必要となるが(うち14 MWはSX-EW工程で消費)、現在グリッドからの電力量は3~5 MW程度しかない。残りの7~9 MWは発電設備のレンタルを行う専門会社(Aggreko社)に委託し、ディーゼル発電で対応しているが、コスト増になるためディーゼルによる発電も限度がある。SNELとは電力供給量増大に向け交渉を行っているが供給量増大は容易ではなく、ザンビアからの電力手当を検討するか、あるいは中国の支援により発電量全体が増えることを期待している。
 製品の電気銅は主に南アへトラックで運搬される。ヨハネスブルグまで2,400 kmあり、約3週間を要する。中国へ輸出する分についてはダルエスサラーム港から出荷している。

図7 カタンガ州の電力需給見込み(単位:MW)

図7 カタンガ州の電力需給見込み(単位:MW)

おわりに

 DRCコンゴは、コバルトの世界生産量の52%を産出し、また、銅鉱石についてはアフリカではザンビアに次いで第2位の産銅国である。日本の約6倍の広大な国土を有しているが、ポスト・コンフリクト国であるため、ウガンダやルワンダに国境を接する東部地域(南・北キブ州)は政府機能が十分に行き届いておらず、未だに政治的に不安定な状態が続いている。
 カッパーベルトを擁するカタンガ州は、政情は比較的安定していると言われており、今回のカンファレンスにも各国から多数の参加者が集った。カタンガ州政府としては、外資誘致によって鉱山開発やインフラ整備を進めたい意向であり、特に地理的に近いザンビアや南アとの連携強化の動きが最近見られる。ZESCOによる電力供給の動きや、南アのジュニア企業による探鉱投資等は、アフリカ資本による投資流入の先駆けとも言える動きであり、アフリカ諸国による自律的な経済成長の観点から非常に興味深い。
 2002年に改正された現行鉱業法は、世銀のアドバイスにより監修され、鉱業に係る大統領権限の制限や鉱業行政の透明性確保をその特徴としているが、現在政府部内で検討がなされている改正案では、政府の持ち分比率が35%に引き上げられるとも言われている。35%の持ち分比率は、アフリカの資源国に吹き荒れる資源ナショナリズムの影響を強く受けたものと推察され、ジンバブエの51%(現地企業への権益譲渡比率)より低いとはいえ投資家の投資意欲を大きく阻害するおそれがある5。Kabwelulu鉱山大臣は鉱業法の改正に向け、まずは企業との協議を行い、その後、世銀/IMFと協議を行いたいとしている。
 DRCコンゴ政府は、鉱業からの歳入増大を図ることで、復興に必要な国内のインフラ整備を進めたい考えであるが、鉱業への過度・安易な歳入依存は外生的ショック(資源価格の下落等)に対する耐性を弱めるおそれがあるため、最貧国であるDRCコンゴの持続可能な経済成長実現と財政の健全性確保の観点から今後の動向には注視が必要である。

参考資料等

・ H.E. Barthelemy Mumba Gamba, “Expansion of Mining Activities in Katanga and necessity for the mining code”

・ Ahmed Katej Nkand, CEO Gecamines “The role of Gecaminas in boosting the Copper and Cobalt sector in Katanga”

・ Andre Kapanga Director for External Relations, Tenke Fungurume Mining, “Infrastructure needs – now and in the future”

・ Stephane Redon, Corporate Finance、Mineral and Mining, BNP Paribas, UK “Outlooks for copper and cobalt and DRC in the global context”

・ Nivaash Singgh, Head Mining Finance -International, Nedbank Capital, South Africa “Trends in mining finance and investment – what’s working in the African context”


5 同じく仏語圏アフリカ諸国の一つであるギニアでも、政府の持ち分比率を35%(最大)とする案で鉱業法改正に向けた準備が進められている。

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