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報告書&レポート

2013年4月18日 ワシントン事務所 佐藤陽介
2013年21号

「California Resource Investment Conference 2013」-資源投資カンファレンス2013-

 Cambridge House International Inc.主催による資源投資カンファレンスが2013年2月23~24日に米国カリフォルニア州パームスプリングスで開催された。同カンファレンスには、北米で活動するジュニア探鉱企業をはじめ、コンサルティング会社、個人投資家等が集い、各社のプレゼンテーションや展示会などの機会が提供された。

 興味深かった講演内容のうち2件について下記で紹介したい。

 (同カンファレンスのアジェンダ等は次のURLで参照が可能

 http://cambridgehouse.com/event/10652)

1.Brent Cook氏(「Exploration Insight」誌の責任編集者)

◯ ゴールド(金)・メジャーの抱える悩み

・ 2002年以降、金価格は毎年20%の値上がりを続けているが、一方、金の採掘コストは2000年代初めの300 US$/ozから、現在では1,500 US$/ozに増加しており、金価格は上昇しているものの、採掘企業のEBITDAは8%程度で低迷している。

・ これは採掘コストや運営コスト自体が高くなっている事とカットオフ品位が著しく低下している事に起因する(鉱石1 tあたりの金生産量は1 g以下に低下)。

・ 現在の世界全体の金生産量である80百万oz/年(約2,480 t/年)を維持するだけでも、メジャー6社で今後6年間に4,000億US$(US$ 400 billion:原文まま)の巨額追加投資が必要となる。この金額はメジャー6社の時価総額の60%にも達し、利益を圧迫する大きな問題となろう(過去は40%程度)。

・ 従い、経営の良化にはカットオフ品位が高く、鉱量が大きな良質な鉱区を発見し、現在の鉱区との入れ替えを行う事が必要となる。現在、世界中で約10,000の鉱床が探鉱されているが、そのうちの10件だけが経済性を伴う鉱床で、更にそのうちの1件だけが4百万oz(124 t)以上の鉱量を持つ大型鉱区として認知された。2011年に金鉱床の探査に投下された費用は80億US$(US$ 8 billion)にも上るが、埋蔵量の増加にインパクトのある鉱床の発見につながったケースは3件だけであり、良質な鉱床を発見する事が如何に困難になっているかを示している。

○ ジュニア探鉱業界には追い風か

・ Metals Economic Groupによれば、2011年83百万oz/年(約2,670 t/年)の生産量に対し、新規鉱床の発見は10百万oz/年(約310 t/年)に留まっている。メジャー企業は開発に巨額の費用を要する新規鉱床への投資には積極的ではなく、既存鉱床の効率化を目指す方向に舵を切り始めており、また、現在の鉱床からの採算性も年々悪化しているので、継続して増える需要を満たす事が今後困難になっていく可能性がある。

・ 一方、需要側は米ドルの信頼性が低下する事で安全資産である金への逃避需要が増えており(各国の外貨準備高における金の割合増も含む)、さらに、新興国の経済発展による資産形成意欲が金に向かう事でその需要トレンドに拍車をかけている。

・ この需給バランスを埋めるために、探鉱に成功したジュニア探鉱企業をメジャー企業が買収する機会、また、新興国の企業がそうしたジュニア探鉱企業を買収する機会が増える事が予想される。

◯ 投資家へのアドバイス

・ Kaiser Research社のJohn Kaiserの分析によれば、トロント市場に上場する約1,800社のジュニア探鉱企業の70%はその株価が0.20 C$以下で取引されており、こうした企業の平均的な運転資金は60万C$に低下している。そのうち、半分の600社は20万C$の運転資金しか持たず、もはや経営破綻している状態になっている。つまり、会社を維持運営するコスト(人件費、事務所家賃、出張旅費、会計監査、等)に年間50~100万US$を要し、初期探査のボーリング調査に100~300万US$のコストが掛る状態で、そのような少額の運転資金しか持っていない企業は株式市場からの撤退を余儀なくされるという事。

・ このように、ジュニア探鉱企業にとって、2013年は厳しい年になろう。しかし、見方を変えれば、健全なジュニア探査企業だけが生き残る選考の年であり、長い目で見れば投資家にとってはプラスといえる。

◯ 注目企業

  今後の注目企業としては、「Eurasia Minerals Inc.」、「Midas Gold Corp.」、「Lydian International Ltd.」等の企業が挙げられる。

2.House Mountain Partners, LLC -ウランへの投資機会

◯ ウランへの投資期待が高まる背景

 20億人とも30億人とも言われる中間層による生活の質向上への飽くなき欲求の拡大が、あらゆるコモディティ商品の需要拡大を支えている。特に、信頼でき、且つ、余力のある電力供給無くして、今日の中間層の拡大はあり得なかった。従い、安価で安定した電力供給を可能とするウランへの需要は安定して伸びると考えられる。

◯ 世界経済の概況

 米国:リーマンショック後の景気回復は2010年1月頃を境にその勢いが徐々にスローダウンしている。個人消費は依然として強い伸びを示しているが、ここ数年間の平均賃金は横ばいであり、消費意欲を下支えする材料に乏しい。また、政府負債額も急速に増えており、総じて経済の勢いはそれほど活発ではない。

 ユーロ圏:債務危機問題を反映して、景気は依然停滞、消費活動も横ばいで、前月比でマイナス成長の月もあるなど、景気回復の兆しは見えない。

 中国:ここ最近はスローダウンしているが、欧米と比較すれば、依然として力強い経済成長を見せている。

 大まかにいえば、現在の世界経済は西側諸国の低成長を中国に代表される新興国の急成長がけん引する形で平衡状態を保っていると言える。特に、中国は世界経済を語る上で無視できない規模となっているのは明らかであり、中国が抱える固有の問題はあるにせよ(高齢化、環境汚染、経済データの信頼性、等)、その成長自体は疑いの余地は無い。

 例えば、Goldman Sachs社によれば、2011年における中国の経済成長は金額に直すと1.3兆US$(U$ 1.3 trillion)に及び、これは豪州の年間GDPに相当する巨大なものとなっている。また、中国を含むBRICsに目を向ければ、これらの国々が2012年に得たGDPの合計は2.2兆US$(US$ 2.2 trillion)であり、これはイタリアの年間GDP(世界8位)に匹敵する経済的なインパクトとなっている。インドと中国の2カ国だけを見ても、2020年までに10兆US$(US$ 10 trillion)の購買力を持つという予測もある。さらに、BRICsに加え、トルコ、インドネシア、コロンビア、ベトナム等を含む新興国全体を見れば、2025年までには30兆US$(US$ 30 trillion)の購買力を持つようになると予測されている。

 これらの新興国の特徴としては、強い購買力を持つ若年層を多く抱える人口構成となっており、今後とも健全な経済成長が期待できると言えよう。

◯ ウランに注目する理由

 上記のようなダイナミックな経済成長は、安価で供給に信頼のおける電力を前提としている事に異論の余地は無く、そのエネルギー源はウランに求められる。以下の4つの理由により、今後1~2年においてウランのスポット価格が上昇し、それに伴いウラン採掘を計画するジュニア探鉱企業の株価も上昇すると予測される。

1) 米露間の「メガトン・メガワット計画」が2013年で満期を迎える事
これにより、鉱山が供給する新規のウラン需要が生まれる可能性がある。

2) 日本の原発の再稼働(数字は原文まま)
50基の原発が存在するが、福島第一原発での事故の影響により、一斉点検が行われており、現在稼働しているのは2基のみである。 今後、2~4年以内に30基程度が再稼働するという予測がある。

3) ウランの生産拡張に対するメジャー各社の低い開発意欲
加CAMECOをはじめとする大手供給者はスポット価格で70-80 US$/kgが拡張計画のトリガーになると主張しており、現在の価格(42 US$/kg前後)では拡張には積極的ではない。このギャップはジュニア探鉱企業が参入するトリガーとなる。

4) 新興国における新規の原子力発電所建設ラッシュ(数字は原文まま)
ウラン鉱石への需要が増える最大の理由は新規の原発である。現在、世界では436基の原発が稼働中であり、62基が建設中、さらに150基の建設が計画されている。建設中の62基のうち、30基は1,000 MW級とみられ、同タイプの原発は500,000 lbのU3O8を使用するので、単純に15,000,000 lb(約5,760 tU)のウラン需要が新たに生まれる。これは、18か月ごとに1/3の補充需要が継続的に生まれる事も意味する。

◯ おわりに

 世界経済は欧米の景気回復に明るい兆しが見えず、依然として視界不良だが、新興国による力強い経済成長に牽引される形で、良化のターニングポイントが近付いており、投資機会が増えるだろう。その1つがウランのジュニア探鉱企業と言える。

 商品相場の高騰は終わりを迎えたという見方もあるが、これは新興国の経済成長に関連するインフラ投資が一巡し、今後はそうした国々で激増した中間層や富裕層による「高品質な生活様式」への飽くなき欲求が牽引する新たな成長の始まりと捉えるべきだろう。ライフスタイルの高品質化を背景とする経済成長は、その速度は穏やかながら、面の広がりを持つ事で、持続的且つ、より大規模なものとなろう。

 1851年、英国の人口の50%が都市化により田舎から都会に流入した。この人数は1,000万人であった。1920年、米国で同様のトレンドが起こった際の人数は2,000万人であった。現在、中国の人口の50%超が都市部に住んでおり、この人数は6億9千万人である。こうした人々が望む高品質なライフスタイルは電力需要の爆発的な増加を意味し、その電力を安定的、且つ安価に供給するには、ウランが欠かせないのである。

3. おわりに

 今回のカンファレンスでは総じて金を対象とする探鉱企業が多く集まっていた。
 参考までに、カンファレンス参加各社の活動内容例を以下に示す。

企 業 概 要
Eurasian Minerals Inc.

世界に150の資産と35のJVを実施。JVパートナーはNewmont(金、銅、inハイチ)、Vale(銅、in米国ワシントン州)、Antofagasta(銅、inスウェーデン)、Freeport-McMoranなど。米国ではネバタ州金・銅ベルト地帯で操業。ロシアでは極東Malmyzhにて銅・金案件を実施中。

Castillian Resources Corp.

カナダにおける金に採掘にフォーカスしているカナダ系探鉱企業。現在Hope Brook Project(ニューファンドランド島南西)に活動中。今後カナダ北西Canadian Creek Propertyにて活動を展開予定。プレゼンテーションではHope Brook Projectの進捗状況の説明がなされた。

Benton Resources Inc.

Elizabeth Anne(カリフォルニア州南東)における金/銀案件に現在は集中。プレゼンテーションも同案件の進捗状況の説明がなされた。

 また、上記以外にGold Reach Resources Ltd. Diamcor Mining Inc. Orex Minerals Inc. Sulliden Gold Corporation Ltd. Graphite One Resource Inc. Sutter Gold Mining Inc. Apogee Silver Ltd. biOsis Technologies Inc. Euro Pacific Capital Inc. 等が各社の活動内容を紹介するプレゼンテーションを行っていた。

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