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「国際資源ビジネスサミット(J-SUMIT)」講演会報告(その3)-アフリカ鉱業セッション講演概要-

JOGMECは、日本企業によるアフリカ等への資源開発投資の促進及び我が国の最先端技術と資源開発分野とのビジネスマッチングを目的として、経済産業省との共催により、日本で初となる国際的な資源フォーラム「国際資源ビジネスサミット(通称:J-SUMIT;Japan Sustainable Mining, Investment & Technology business forum 2013)」を5月16日と17日に都内ホテルにて開催した。 本稿では、6月6日に発行したカレント・トピックス13-30号(国際資源ビジネスサミット(J-SUMIT)講演会報告(その1))及び6月13日に発行した13-31号(同講演会報告(その2))での報告に引き続き、アフリカ資源開発をテーマに行われたセッションのうち、2日目に行われた基調講演及びアフリカ鉱業セッションについて報告する。 |
1. 基調講演
1-1. 「African exploration -A silver lining」
Magnus Ericsson, Intierra RMG シニアパートナー

アフリカでの探鉱活動が世界に占める割合は、1984年と2011年で比較すると20%から10%に後退している。しかし、ここ数年では金、銅、PGM、ダイヤモンド、石炭を対象とした探鉱活動の増進が顕著であり、未だ明らかになっていない地質ポテンシャルへの期待が集まっており、安定的な成長の兆しが見られる。この新たな成長の兆しにおいては、ボーリング調査の数、DFSの件数及び資源量が増加しているだけでなく、近年では南ア以外のアフリカ諸国、特に西アフリカにおいて探鉱活動が活発化しており、南ア優位(dominant)の状態からのシフトが窺えることが特徴的な事項である。
探鉱活動だけでなく、政治的なイニシアチブにも動きが見られる。中国の長期的な資源の安定供給を目的とした海外投資やEUの原材料政策レビューという動きの中で、アフリカ諸国は、AUがイニシアチブを有し資源開発による利益の極大化を目的としたアフリカ鉱業ビジョン(Africa Mining Vision; AMV)を掲げている。2013年にはそのアクションプラン及び戦略支援として、African Mineral Development Center(AMDC)が設立される。本センターの設立は、アフリカの鉱業における役割を再定義する機会と成り得るものであり、これらの活動を通してアフリカ以外の国とアフリカ諸国との関係構築の機会が開かれている。
1-2. 「Ivanplats: Developing Africa’s resource potential」
Robert Friedland, Ivanplats会長

当社が扱う主要鉱物(PGM及び銅)は新興諸国における巨大都市(メガシティ)化と近代化によって、さらなる需要増が期待されている。
1970年のメガシティは東京とニューヨークの2都市(39百万人)のみで、世界の都市人口に占める割合は3%だったものが、2011年には23都市(360百万人)で世界の都市人口の10%にまで拡大し、さらに2025年までに37都市(630百万人)と、世界の都市人口の13.6%に増加すると予想されている。
こうした都市部への人口流入に伴う近代化は、それを支える鉱物資源の需要増加も意味している。例えば、当社が関係するPGMと銅は、自動車の増加(銅)とその環境対策(PGM)及び送電網の整備(銅)に密接に関連しており、今後とも安定した需要拡大が見込まれる。特にPGMは世界的な供給不足が懸念されており、JOGMECと共同で探査を進めているPlatreefプロジェクト(南ア)の早期開発が待ち望まれている。
アフリカでの資源開発において重要なことは、環境に配慮した開発と地域社会との共存共栄であることは言うまでもない。過去、アフリカ諸国の経済発展が資源開発によってなされたという称賛がある一方で、そうした国々、地域の人々が本来受け取るべき利益を正当に享受できていないという批判があるのも事実である。今年のMining-Indabaにおいて、アナン元国連事務総長もこの点に言及している。当社の活動拠点はまさにアフリカであり、持続可能な資源開発を重視した経営を行っている。
2.アフリカ鉱業①セッション
2-1. 「MINING IN LESOTHO」
Tlali Khasu レソト王国鉱業大臣

鉱業省のビジョンは、2020年までに鉱業開発を促進して国民の生活を向上させることにある。鉱業分野では4社がダイヤモンドの採掘を行っているほか、砂岩採掘や粘土鉱業がある。今後は鉱山企業による雇用の拡大や、道路、学校、貯水池などのインフラ整備を期待している。ベースメタルについてはUNDPが過去に実施した調査結果を基に、新しい情報を追加し評価しているところである。また、地質図については公開してはいるものの内容的に不十分であるため、JOGMECや他国の支援による正確な地質図の作成を希望している。
2-2. 「ANGLO AMERICAN IN AFRICA」
Richard Morgan, International Government Relations Advisor,
Anglo American

Anglo Americanは多様なポートフォリオを保有し、対象鉱種も多岐にわたる。グローバルプレイヤーで多様な鉱種を扱う当社にとり、日本は重要なマーケットである。
当社操業現場の80%は発展途上国であり、中でもアフリカは全体の50%を占める。主に南ア、ボツワナ、ナミビア、ジンバブエ、モザンビークで活動しているが、鉄鉱石資源のポテンシャルを有するリベリアなどの西アフリカにも関心を持っているほか、ザンビア、DRコンゴ、アンゴラとも関係を有している。
当社は、こうしたアフリカ諸国と十分に利益を共有し、fair returnを実現させている。例えば、南アでは鉱業や高付加価値化を通してGDPの4%にあたる貢献をしているほか、ボツワナのダイヤモンド事業では政府と当社で権益配分比50:50のJV(利益配分比は80:20)やダイヤモンドの研磨工場設置により、高付加価値化や雇用創出をもたらしている。アフリカ全体に対しては、20億US$の税及びロイヤルティの納付、154百万US$の社会投資プロジェクト、15億US$の地元コミュニティー向けインフラ等整備といった物的貢献だけでなく、10万人以上の現地雇用や世界最大規模のHIV/AIDS患者向けの職場提供等の質的な活動を行っている。
さらに、NGOとのパートナーシップ、ICMM加盟、ICF(Investment Climate Facility)への資金援助のほか、南アDMR(鉱物資源省)、NUM(全国労働組合)及び当社の三者によるHealth and Safety Initiative参画を通して、鉱業に留まらない多角的な協働体制を実現している。
2-3. 「MINING AFFAIRS IN SOUTH AFRICA: CURRENT LABOUR DISPUTES & PROSPECTS」
Bheki Sibiya, Chief Executive, 南ア鉱業協会

南アの鉱業において、労働争議が問題となっているのは事実である。この背景には様々な理由があり、その責任の全てを企業に問うことはフェアではない。しかし、根源の複雑さを理由に労働争議の放置を正当化することは、南アの鉱業を衰退させかねず、問題の特定と解決の糸口を探す必要がある。その意味において、「不公平な利益配分とその是正」が挙げられるだろう。つまり、自分たちの土地から産出される資源が生み出した価値の大半を、企業の株主や一部の高級幹部が独占しており、地域への配分が不公平・不十分であるという不満を鉱山労働者や間接的に関係する周辺地域住民が抱えている点に労働争議の根源があると考えられることから、その解決にあたることは南アの鉱業界に有益な結果をもたらすであろう。これを実現するには、資源開発に関係する全てのステークホルダーと利益を共有するという「強い意志」を企業側が持つことからスタートする必要があると考える。幸いにして、南アには共有するに足るだけの十分な資源があることから、地域社会との利益の共有は可能である。もちろん、企業が競争力を失うことになっては本末転倒であることから、南アがこれからも資源開発大国であり続けるためには、大規模輸送システムの整備や政府・産業界・労働者間のより効果的な連帯による高い生産性の達成、鉱山労働者一人ひとりの高度技能化と生産性向上等による競争力の維持が欠かせない。
2-4. 「How IFC Supports Sustainable Mining In Africa」
Tom Butler, Global Head Mining, 国際金融公社(IFC)

アフリカ地域では平均税収の20%が鉱業由来であるなど、鉱業は経済成長の原動力となっている。鉱業投資が2000年の2億US$から2010年の14億US$まで拡大しているものの、埋蔵量に比べると生産量が少ない状況である。今後、2017年までに870億US$の鉱業投資が見込まれているが、多くの国はインフラ、法律、ガバナンス、人材や能力などに問題を抱えており、鉱業がこれらの問題解決の一翼を担うべきと考える。IFCには多くの専門家がおり、鉱業開発プロジェクトを資金面や地域開発計画に対するアドバイスを行うなどによって支えている。鉱業の持続可能性を高めるためには、ソーシャル・ライセンス、ローカルコミュニティーとの関係、戦略的パートナーシップ、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)、官民パートナーシップ(PPP)、インフラ整備などが重要な要素となるが、この中でIFCはソーシャル・ライセンス、リスク・マネージメント、エネルギーや水を巡る問題などについてアドバイスを行っている。
IFCは、アフリカの産業発展にとって不可欠な鉱業分野においても重要な役割を担っていきたい。
2-5. 「The Africa Mining Vision and Structural Transformation in Africa」
Antonio M.A. Pedro, Director, Sub-regional Office for East Africa, UNECA

今、世界の鉱業情勢は変わりつつある。1980年代の買い手市場から売り手市場への転換、中国及びインドの市場における台頭、環境管理のメインストリーム化のほか、アフリカにおいてはワシントン・コンセンサスやアフリカ鉱業戦略(Strategy for Africa Mining)からアフリカ鉱業ビジョン(Africa Mining Vision; AMV)といったフレームワークの変化が顕在化している。資源の殆どを原材料のまま輸出しているアフリカが、長期的に持続可能で透明性のある利益を享受するためには、鉱業を単なる採取産業ではなく、現地での資源の高付加価値化や工業化を進め、社会経済的な開発(産業)へとシフトさせる必要がある。この実現のために、「包括的で持続可能な成長と社会経済的発展の下支えとなる透明公正かつ最適な鉱物資源の採取(体制)」の創造を目的としたAMVが、2009年のAUサミットにおいて採択された。AMVでは、従来の鉱業分野での活動の枠組みを越えたWin-Winの対話、地質データの質的向上、競争性を高めたより適正な価値を実現させるライセンススキームの革新、ローカルコンテンツの参画等を戦略に盛り込んでいる。この実施にあたっては、発展プロセスにおける政策余地や当事者意識、透明性プロセスの適応や全般的なガバナンス強化、人材開発とR&D等が成功の要因となるであろう。また、AU委員会(AU Commission)、アフリカ開発銀行(AfDB)、国連経済委員会(UNECA)は共同イニシアチブによりAfrican Mineral Development Center (AMDC)を2013年に設立し、これをAMVの推進役としてgood policyやfiscal schemeモデルを構築していく。
2-6. 「Codelco Update Market Development & Social Responsibilities」
Victor Perez, Executive Vice-president,
Commercial Planning and Market Development, CODELCO

CODELCOは世界最大の銅生産企業であり、モリブデンについても主要な生産者である。業界の傾向としては、中国の需要拡大を原動力として、世界の消費量は伸びている。また、電線分野の需要の他、銅の抗菌性や環境にやさしい特性が注目されている。
CODELCOが抱える問題点として、鉱石品位の低下、プロジェクトの小規模化、オペレーションコストの上昇及び地域社会問題などがある。最近5年間では、チリ国内8か所の生産部門で年間150~170万tの銅を生産しているが、鉱石の品位は低下傾向にある。2017年に200万tまで銅生産量の拡大を目指しているが、それには50億US$の設備投資が必要である。労働安全、地域社会問題なども解決していく必要がある。
一方で、新たな銅の価値を見出すことも重要であり、抗菌作用を利用した公衆衛生分野での利用、海藻が付着せず、再利用が可能な特性を生かした養殖漁業における生簀のネットとしての利用、耐震建築物や太陽光パネルへの利用など、世界に向けて銅の重要性を訴えていきたい。
2-7. 「ナミビアの鉱業政策」
Erasmus Shivolo, ナミビア鉱山エネルギー省 Mining Commissioner

我が国における鉱業開発は100年の歴史があり、GDPの9.5%、輸出額の37%が鉱業分野からの収入である。ダイヤモンドが鉱業の中心となっており、採掘だけでなくカットと研磨までの一貫生産体制による高付加価値化を実現し、世界のダイヤモンド取引額の6%を占めている(De Beers社とのJV)。ダイヤモンド以外にも様々な鉱物資源を有しており、世界4位の生産量を誇るウランの更なる成長にも期待している。ウランについては、その平和的利用を保証するトレースシステムを導入しており、NPT加盟国として責任ある開発を行っていく。
環境への配慮や地域社会との利益共有を念頭におき、責任ある資源開発を行うことで、鉱業が主導する国家経済の発展を今後とも推進していく。
2-8. 「ZIMBABWE’S MINING INDUSTRY POLICY」
Gift Chimanikire, ジンバブエ鉱山鉱物開発副大臣

ジンバブエの経済は回復基調にあり、2013年の経済成長率は5%を見込んでいる。GDPに占める鉱業の割合は、2009年の4%から2012年には16%にまで拡大している。
ジンバブエは鉱業事業者にやさしい鉱業環境の提供を目指しており、投資に関する多くの法的枠組みが整備されている。
一方で、鉱業投資や探鉱が不十分であり、4,000以上の鉱床の再評価が必要となっていることから、日本には最新の探鉱技術の提供や鉱業分野への投資をお願いしたい。鉱業開発に際しては、付加価値を生み出すこと、例えば製錬やダイヤモンドのカッティング、プラチナの加工などを自国内で行うことが重要と考えており、クロム鉱石の輸出を禁止するなどの規制を行っている。そのほか、鉱業への地域参加や国民の裨益を目的として、現地化法を制定している。ジンバブエの鉱業は資金不足により50%の稼働率であるため、積極的な投資を期待している。
3.アフリカ鉱業②セッション
3-1. 「ボツワナの鉱業政策」
Onkokame Kitso Mokaila, ボツワナ共和国鉱物・エネルギー・水資源大臣

ボツワナは企業による投資がチャリティー活動ではないことを適切に理解しており、投資を促進するために様々な支援策を用意している。例えば、整備された鉱業法、省庁間の統一された政策や許認可手続、地質図の無料化、国際的な金融制度等の提供は、投資企業に適正な利益をもたらすことに大きく貢献している。その結果として、活発な探査活動や鉱種の多様化や川下展開によって我が国の鉱業分野の裾野が広がり、雇用と経済の好循環をもたらしていると言える。世界第一位のダイヤモンド産業はこの好例だ。
もちろん、環境に対して最大限の配慮をした開発を行うことは、次世代の国民に対する責任として、国と開発企業が一体となってその保護に取り組んでいく。
ダイヤモンドに続く鉱業の育成、つまり、鉱種の多様化と川下産業の育成の観点では、電力の整備は必要不可欠なインフラである。例えば石炭資源について、我が国には推定2,000億tの原料炭が埋蔵されていると予想されるが、現在は300万t/年の生産でしかなく、ほとんど手つかずの状態にあり、これらを有効活用することで国内への電力供給を増やし、銅やニッケルの製錬業を成長させたいと考えている。そして、南部アフリカ電力プール(Sothern African Power Pool)を活用した周辺国への電力輸出も可能となろう。600 MWの石炭火力発電所が2013年中に稼働見込みで、完成後は国内の電力需要を自給できる。追加の発電所建設計画もあり、送電網の整備とあわせ、電力インフラへの投資も大歓迎である。また、石炭の輸出を可能とする鉄道インフラへの投資機会もある。
日本企業には、製錬所での環境技術、輸送インフラ、電力インフラ(発電・送電)、再生エネルギーにおける蓄電システム等の分野で高い技術力を活かした投資を期待したい。
3-2. 「Development of the Egyptian Mining Industry」
Hamdy Zahir, エジプト産業貿易省鉱業輸出委員会 Chairman

現在エジプトの鉱物資源産業を強化していくにあたっての新鉱業法を国会審議中であり、1~2か月後に可決予定としている。それによりEgyptian Minerals Resources Authority(EMRA)が鉱業権の発行を一元管理することになり、良質な資源開発が可能となる。また、資源開発分野への投資を促進することを目的として、Industrial development Authority(IDA)が今年の7月までに地質図を無料公開する予定である。エジプトはIndustrial-Mineralの豊富な国であり、これらを加工した工業製品として輸出されることを望んでいる。一例で言えば、シリカサンドを利用した板ガラスの生産やリン鉱石を原料とした化成肥料の生産及びそれら製品の輸出を挙げることができる。
日本には、例えばレアアース分野などにおける高度な技術力をエジプトに移転し、Win-Winの関係となる投資や、資源開発の成功に不可欠な効率的な輸送インフラへの投資を望んでいる。
3-3. 「GABON’S MINING INDUSTRY POLICY」
Regis Immongault Tatagani, ガボン共和国産業・鉱山大臣

ガボンは、2025年までに新興国となることを目指している。現在は石油の輸出によって経済が支えられているが、経済を多様化させ、資源の高付加価値化を促進していきたい。
特に鉱工業を中心とした産業の育成のほか、環境保護及びサービス産業の育成に注力し、2025年には資源の持続的な開発によって世界的な金属資源の供給国になることを目指している。簡潔で透明性がある法規制を設け、過去のように国が開発のすべてに介入するわけでなく、民間企業との連携に基づく開発を推進していきたい。
過去においては、べリンガ鉄鉱石鉱山の開発を中国企業と行ったが失敗したため、現在はSRK社と開発している。また、Moandaマンガン鉱山では、鉱石だけではなく、シリコマンガン、フェロマンガンなどの付加価値のある製品の製造を行っている。
また、鉱山資源に関する知識の取得のため、2014年にMoanda鉱山学校を設立する予定であり、人材育成を図っていくつもりである。
今後、製造業や加工業を発展させるため、外国からの直接投資を呼び込みたい。そして地域社会、コミュニティーを巻き込みながら、中小企業の発展や技術の移転も図っていきたい。
3-4. 「PGM Industry in South Africa」
Welcome Ndlovu, Commercial Manager, Lonmin Plc

当社は世界3番手のプラチナ(Pt)生産者で、ロンドンとヨハネスブルグ証券取引所に上場している。白金族金属(PGM)の需要の約半分は自動車用触媒向けであり、日本は世界のPt需要の15%を占めており、日本と当社の関係も深いと言える。
南アは世界のPt供給量の75%を占める重要な国である。南アのPt埋蔵量は10億oz以上あり、資源の枯渇問題での心配は不要だが、近年、鉱床が深部化しており、生産コストの増加や生産量の減少が起きている。また、電力費や生産コストの60%を占める人件費がインフレ率を大幅に超える割合で増加しており、鉱山会社の経営を圧迫している。ここで問題となるのは、生産コストが増加する一方で生産性が低下している点であり、結果として生産量と市場在庫の減少につながり、Pt価格が上昇する基礎要因ができつつある。
需要サイドは欧州や中国での排ガス規制の強化により、ディーゼル車及びガソリン車ともにPt需要の拡大が予想されるが、供給サイドは品位低下、生産コスト増加による採算性の低い鉱山の閉山と新規鉱区開発の遅延、相次ぐストライキによる減産等、構造的な生産不足が予想されることから、Pt価格は長期的に上昇すると確信している。
3-5. 「Role of Epangelo Mining and Mining Investment Opportunities」
Eliphas Hawala, Managing Director,
Epangelo Mining Company(ナミビア国営鉱山公社)

当公社はナミビアの鉱物資源開発を促進する目的で2008年に設立された政府出資100%の国営企業で、外国企業がナミビアで資源開発を行う際のJV相手先となる機能も有している。
現在のところ、ナミビアではGDPにおいて鉱業が占める割合は8~10%程度でしかなく、農業や観光と比較して小規模な産業だが、今後はその規模を拡大させたいと考えている。政府は「Vision 2030」なる長期国家開発方針を策定し、産業分野毎に計画を定めている。鉱業分野においては、戦略的な鉱種選定と探査に基づく鉱種の多様化及びそれら鉱種の付加価値化を推進することで、鉱業分野への投資リターンを他の産業分野へ波及させること、つまり、「鉱業による工業化」を成長方針としている。
その方針に従い、当公社はダイヤモンドとリン鉱石で合計6件、またベースメタル、レアメタル及び鉄鉱石で合計33件の探査権を保有しており、カラハリ・カッパーベルトの銅と銀を戦略的探査活動の中心としている。探鉱活動の結果が具体性を伴う段階になり次第、FARM-IN契約のパートナーを募集したい。
3-6. 「JOGMECの金属資源探査:戦略と最近の探鉱成果」
宮武修一 JOGMEC資源探査部 探査第2課 課長

南ア・Waterberg白金プロジェクトでは、2008年に広域物理探査結果を踏まえてブッシュフェルト北リム延長部の処女地において探査余地を見出し、積極的に探鉱した結果、現在までに315 tの白金族資源量を得るなど成果を上げている。また、アルゼンティン(チリ)における一連の探鉱成果は、1997年に実施した衛星画像解析が発見の端緒となった。広域的視点から、サンファン州北部の熱水変質帯群はポテンシャルに比べて既存探鉱は限定的であるとし、探鉱重点地区として注目した。以来JOGMECはこの地域で戦略的に探鉱を展開した結果、フロンテラ地区における銅金鉱床の発見と日系有力企業への譲渡、また2013年初めにはホセマリア地区における10億t超の銅金鉱床の発見を実現するなど、長期的な取り組みを通じて成果を上げている。
そのほか、マラウイでは現地JICAボランティアとして活躍した本邦技術者と密に連携して日本人の探鉱チームを形成し、レアメタル鉱床の発見や鉱量評価に至っている。また、探鉱事業を通じて現地の技術者育成も行うなど、現地と共生するユニークな側面をもつプロジェクトを通じて、成果を上げている。

