報告書&レポート
ロシアのレアメタル・レアアース戦略について
中国では「鉱山から磁石まで」のサプライチェーン構築戦略の一環として、戦略備蓄のほか、大手国営メーカーを中心にレアアース生産を再編統合しつつある。一方、米国ではMolycorpが2011年にエストニアの企業Silmet(レアアース分離・高純度化)を、2012年には技術力を有するNeo Materialを買収して垂直統合型グローバル企業を設立している。韓国は国営企業KORESが南アフリカのレアアース鉱床開発に参加している。EU諸国はレアアース生産国と協力協定を締結(フランスは2011年に、ドイツは2012年に、それぞれカザフスタンとの協定に調印など)している。またレアアースの最大需要国の日本は、中国に加えて、カザフスタン、インド、ベトナムなど調達先の多様化(いずれも現地企業との合弁会社設立)を図っており、ロシア・CIS関係では、2013年に入り、レアアース精鉱製造プラントSARECO(カザフスタン国営原子力公社Kazatompromと住友商事の合弁)がカザフスタンで操業・生産を開始している。 一方、ロシアは、レアアース埋蔵量で世界第二位といわれているが、現状、一貫生産体制を有するレアアース産業は存在していない。ソ連時代には鉱石原料から製品までの一貫生産体制の下、国内のレアアース需要を満たし、輸出余力も有していたものの、ソ連崩壊により、幾つかの独立した共和国にその供給源や精錬施設が分散した結果である。しかしながら、2010年の中国政府によるレアアース輸出割当枠の大幅削減問題がクローズアップされた機会等を通じて、自国のポテンシャルを再認識し、経済・安全保障問題への理解を深め、戦略的アプローチの検討と具体的な対応策の策定の必要性が叫ばれ始めるようになっていた。 こうした状況にあって、2013年1月末にロシア政府は、ロシア連邦の国家プログラム「2020年までの産業発展及び競争力向上」を取りまとめ、その下に合計17本からなるサブプログラムを策定した。その1つに、ロシアの軍需と民間産業部門の需要を満たし、海外市場進出するため、一貫生産体制の競争力あるレアメタル・レアアース産業を国内に構築すること目的とした「レアメタル・レアアースメタル産業の発展」が策定された。 本サブプログラムでは、ロシアのレアメタル・レアアースを巡る鉱床や産業の現状及び課題等を踏まえて、上述の目的に向けて、具体的な施策、スケジュール及びその予算計画などが盛り込まれている。 以下、その概要、及び補足説明として記載事項の一部につき、その詳細を報告する。 |
<概要>
1. プログラムの目的等
(1) 目的
ロシアの軍需と民間産業部門の需要を満たし、海外市場進出するため、一貫生産体制の競争力あるレアメタル・レアアース産業を国内に構築すること
(2) 実施責任機関
ロシア連邦産業貿易省
(プログラム参加機関)
ロシア連邦天然資源環境省、連邦国家準備局(Rosreserv)、国営企業Rosatom
(3) 課題
◆ 高純度単一酸化物の分離と生産、高純度金属及び合金生産、レアメタル・レアアースを含有する最終製品生産を含む、レアメタル・レアアース一貫生産のための重要技術の開発、習得、適合化。
◆ 一貫生産(原料採取からレアメタル・レアアースを含有する最終製品の生産まで)の確立、全種類のレアアース製品に関する新たな製造業における需要を完全に満たすこと。
◆ 一貫生産を保証するためのレアメタル・レアアース鉱床の操業開始、二次(人工)鉱床を含むレアメタル・レアアース鉱床の総合的開発に向けた条件整備。
◆ 今後の工業生産で必要となるレアメタル・レアアース原料の長期的供給を目的としたレアメタル・レアアース鉱石(一次)の旧埋蔵量の再評価及び新規埋蔵量開拓。
◆ レアアース産業における人材確保。
(4) プログラム評価指標
◆ レアアースをベースとする製品の生産高成長率
◆ ロシア生産者による重要レアアース(ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、ガドリニウム、テルビウム、サマリウム、イットリウム)消費量における輸入シェア
◆ レアアース・重要レアメタル(ニオブ、タンタル、チタン)生産企業への投資
成長率
◆ レアメタル・レアアースに関して取得された特許に加えて、ノウハウ、技術ソリューションの新規性を証明するその他の知的所有権文書の件数
◆ レアメタル・レアアースに関して開発された世界的レベルの技術で、試験開発を経て商業化可能な、又は実用化された技術の件数
◆ レアアース・重要レアメタル生産施設の設立件数、レアアースをベースとする製品の生産施設設立件数
◆ レアアース・重要レアメタル生産企業におけるハイテク関連雇用創出数、レアアースをベースとする製品の生産企業における、ハイテク関連の雇用創出数
◆ 探査評価又は地質調査が既に実施され、技術的・地質的経済性評価がなされた、ライセンス未分配ファンドの地下資源鉱区及び二次(人工)鉱床(総レアアース量に占める中重希土の割合が≥ 20%)の数など
2.プログラム実施段階、期間及び予算
二段階で実施され、これにより1.(3)課題の各項目等を達成する計画になっている。
① 第一段階 2013~2016年
鉱床の追加地質調査が実施され、新技術開発と技術規格システムの整備により、重要技術の遅れが克服される。またレアアース製品の生産構築と促進に向けた作業が行われ、レアアースの国家備蓄が形成される。
◆ 資金総額は724億9,421万1,000ルーブル。
・ うち連邦予算資金 80億6,721万1,000ルーブル
内訳 : 2013年 10億ルーブル
2014年 18億7,276万2,000ルーブル
2015年 22億5,366万6,000ルーブル
2016年 29億4,078万3,000ルーブル
・ うち予算外資金 644億2,700万ルーブル
② 第二段階 2017~2020年
レアアース製品の生産体制の構築が予定されている。
◆ 資金総額(予測)は745億1,681万5,000ルーブル。
・ うち連邦予算資金 154億3,881万5,000ルーブル
・ うち予算外資金 590億7,800万ルーブル
(参考)
ロシア連邦国家プログラム
「2020年までの産業発展及び産業競争力向上」
サブプログラム一覧
1 自動車産業
2 農業機械製作、食品・加工産業
3 専門生産向け機械製作(道路建設・公共設備技術、消防・空港・森林技術)
4 軽工業及び工芸品製作
5 防衛産業の迅速な発展(公開部分)
6 輸送機械製作
7 工具製造
8 重機製造
9 電力電機産業及びエネルギー機械製作
10 冶金工業
11 林業
12 技術規制システム、標準化の発展、及び計測の均一性確保
13 化学産業
14 複合材料及びその加工品の生産発展
15 レアメタル・レアアースメタル産業の発展
16 炭鉱の地下作業員の個人保護及び生活支援の現代的手段
17 国家プログラムの実現保証
<詳細(補足説明)>
以下、本サブプログラムの記載内容の一部について、その詳細を紹介する。
1. ロシア経済への意義
ロシア経済へのレアメタル・レアアース供給は、国家安全保障にとって極めて重要であり、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、IT、認知技術、原子力発電、核燃料サイクル、放射性廃棄物及び使用済核燃料の安全処理技術、情報通信・管制・航行システム技術、新世代航空宇宙輸送機器の開発技術、基本電子部品、並びに省エネ照明装置の開発技術などの産業近代化の重要条件である。
レアメタルのうち、特にリチウム、ベリリウム、タンタル、ニオブは、ロシア連邦政府指令(1996年1月16日付第50-r号)により戦略的金属に分類され、下記製品の生産に使用されている。
リチウム - 核兵器、ミサイル・宇宙機器誘導システム、航空用軽合金、化学繊維、電子管ガラス、セラミックス、合成ゴム・熱可塑性物質、化学電池
ベリリウム - 核兵器、ミサイル・宇宙機器誘導システム、航空用・ロケット製造用軽合金、電子産業用セラミックス材料、ベリリウム青銅
タンタル - 軍需製品、高性能コンデンサ
ニオブ - 高品質希薄合金、超電導材料
また、「軽希土」(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム)は広く分布しているためそれほど高価ではない。一方、イットリウムを含むその他のレアアース(「中希土」サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、「重希土」エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム)は中・重希土グループに属し、市場では高価。
レアアース生産に極めて重要なのは、高純度・超高純度(99.999%以上)レアアース酸化物製造、特に金属・合金製造技術である。
レアアースの有効利用分野は軍需・民需両産業に多数ある。急速に発展しているレアアース利用分野には、ハイブリッド車、風力タービン、軍用機器、テレコミュニケーション機器、コンピューター及びテレビ用機器、自動車用触媒及び石油接触分解用触媒、レーザー、超電導体及び燃料電池、特殊鋼の製造が含まれる。
2.ロシアのレアメタル・レアアース原料基盤の特徴
レアメタル・レアアース鉱床の多くは複合的であり、それがレアメタル・レアアース開発の諸問題を一つのプログラムに統合する根拠となっている。
(1) レアメタル
通常、同一鉱床にいくつかのレアメタル鉱物が同時に存在する。多数のレアメタル鉱物が知られているが、生産が可能な規模で濃集しているものはごくわずかである。レアメタル含有アルカリ花崗岩は、埋蔵量に関しては最大のタンタルとイットリウムの鉱床であり、最大のジルコニウム鉱床でもある。また他の鉱物を処理する際の随伴物がある。銅、モリブデン、鉛、亜鉛、錫、アルミニウムといった非鉄金属の鉱石からBi、Ge、Ga、In、Re、Se、Te、Tl、Cdが抽出される。同様に褐炭からゲルマニウム、鉄鉱石・チタン鉱からバナジウムが抽出される。そのほか、固有の鉱石を持たない微量元素は、アルミナ用ボーキサイト(ガリウム)、鉛・亜鉛精鉱(インジウム、タリウム)、銅精鉱(セレン、テルル)、イルメナイト・チタン精鉱(スカンジウム)等を加工する企業の活動と密接に関係している。
ロシアのニオブ、タンタル、及びレアアースの鉱物原料基盤は、ロシア国家鉱量委員会が認定した埋蔵量の大きさでは世界トップクラスである。しかしロシアの鉱床は海外の類似鉱床に比べ、鉱物の質、特に有用成分の品位、採鉱技術条件、地理的経済性の点で著しく劣る。またソ連邦崩壊以降、ロシアではレアメタル生産企業は一つも建設されていない。
ロシアのリチウム埋蔵量は世界トップクラスである。にもかかわらずロシア天然資源環境省認定のリチウム予測資源量は現時点で存在しない。ロシアのリチウム可採埋蔵量の主役はペグマタイト鉱床(75%)だが、世界では埋蔵量の76%が塩湖かん水である。ロシアのペグマタイト鉱床は国内技術による選鉱に最適である。鉱床は海外に比べ埋蔵量と品位で若干劣るが、基本的には開発可能である。開発の最大の障害は、未開でアクセス困難な地域に鉱床が位置することである。
リチウムの最重要供給源となり得るのは、エティキンスコエ鉱床とクニャジェフスコエ鉱床である。その埋蔵量は数十万tとされる。さらに、カンギンスコエ(バレイ地区)とオロンジンスコエ(カラルスキー地区)のレアメタル・ペグマタイト鉱床エリアにより増加する可能性がある。
またかん水に係る埋蔵量は数百万tに達する。現時点でリチウムかん水を含有するイルクーツク州ズナメンスコエ鉱床の試験生産ライセンスが交付されており、その一環としてリチウム塩化物・臭化物の試験生産施設が創設された。かん水からリチウムを回収する生産設備が稼働すれば、国内消費者向けリチウムの不足を完全にカバーすることができる。
ロシア市場のリチウム製品の主要メーカーはNovosibirsk Chemical Concentrates Plant(ノボシビルスク市)で、ロシア唯一の高純度リチウム製品メーカーとして国内外の消費者にリチウムを供給している。
ベリリウムは、ベリリウムとアルミニウムとのケイ酸塩である緑柱石からのみ得られる。ロシアではベリリウム鉱床は開発されていない。ウルバ・プラント(ウスチ・カメノゴルスク市)のカザフスタン帰属後は、大型ベリリウム生産施設はロシアに残っていない。ロシアのベリリウム原料供給源は、ザバイカリエ採鉱選鉱コンビナートが開発していたザヴィチンスコエ鉱床とエルマコフスコエ鉱床である。現在ザヴィチンスコエ鉱床は操業しておらず、エルマコフスコエ鉱床(ブリヤート共和国)は一時休止状態にある。両鉱床の操業が復活すればベリリウム精鉱の生産再開が可能となる。
ロシアのニオブ、タンタルの原料基盤は、ロヴォゼロ・ロパライト複合鉱床(ムルマンスク州)である。これはレアアース複合炭酸塩生産の唯一の現役鉱床でもある。低品位鉱石(1.12%)と坑内掘りが必要であるが、鉱床は可採埋蔵量が大きく(レアアース酸化物換算で数百万t)、選鉱性が高い。現在、ロシアはレアメタルの埋蔵量では世界第二位だが、ソリカムスク・マグネシウム・プラントが、ロヴォゼロ採鉱選鉱コンビナートのロパライト精鉱のみから、60%の溶融塩化物をタンタル及びニオブ製品生産施設で生産している。これらの製品はほぼ全て海外市場に輸出されている。
製鋼業向けニオブ(合金軟鋼用フェロニオブ、高品質鋼仕上げ用ミッシュメタル)の国内鉱物基盤において特に将来性が高いのは、未割当フォンドに属するトムトル鉱床(ヤクーチア)である。ニオブ品位(資源量は数千万t)はブラジルやカナダの最も豊かな鉱床の2.5~3倍以上である。また並外れたレアアース品位の高さ(鉱石中8%~風化殻中12.8%)、莫大なレアアース確認埋蔵量(数百万t)、比類のない潜在的予測資源量(レアアース数億t、ニオブ数千万t)を特徴とする。この鉱床開発の主な阻害要因はサハ共和国(ヤクーチア)北西部という遠隔地に位置していることである。また
ニオブに関してはベロジミンスコエ鉱床(イルクーツク州)とタタルスコエ鉱床(クラスノヤルスク地方)も有望である。
世界のニオブ消費量を左右するのは鉄鋼業の発展である。特に大陸棚で使用される高耐食性鋼管にはフェロニオブが添加されており、今後10~15年の間、年間1万~1万2,000 tのNb2O5の生産・利用が必要となる。
経済発展のイノベーションにおける課題解決に向け、ロシアは2011~2020年にニオブを毎年2万t以上生産する必要があるが、ロシアにおける現在のニオブ生産力は限られている(約2,000 t)。
埋蔵資源は36の鉱床に存在する。ライセンス分配済ファンドには18のモリブデン鉱床がある。ライセンス未分配鉱床における鉱石の品質は、開発中の鉱床のものと変わらない。2009年からブグダインスコエ(チタ州)、ユジノ・シャメイスコエの2鉱床で商業開発の準備が進められており、2017年にはNorilsk Nickelがブグダインスキー採鉱選鉱コンビナートの操業を開始する予定である。
ロシアのモリブデン鉱業は、ハカス共和国ソルスク鉱床で操業するソルスク採鉱選鉱コンビナートと、チタ州ジレケン鉱床を開発するジレケン採鉱選鉱コンビナートにほぼ集中している。
ロシア最大級のアンチモン鉱床はブルィクタ・ソロンツォヴァヤ・エリアである。確認鉱石埋蔵量により、この地域を鉱石複合処理によるリチウム、ベリリウム、タンタル、ニオブ、アンチモン生産の重要基盤とみなすことができる。この地域にはザバイカリエ採鉱選鉱コンビナートがある(1937年創立。ペルヴォマイスキー・ニュータウン(企業城下町)を形成している)。
ジルコニウム及びハフニウム生産の唯一の原料供給源はコヴドル鉄鉱石鉱床のバデレアイト精鉱であるが、生産量は少なく年間4,000 tである。
ジルコニウム製品生産の原料基盤となる可能性があるのは、ロヴォゼロ鉱床に隣接するアルアイフ・ユージアライト鉱床である。またトゥガンスコエ鉱床(トムスク州)が有望である。
ロシアの有望なストロンチウム原料供給源は、ヒビヌィ鉱床のアパタイト精鉱であり、複合的選鉱処理により成分が随伴抽出される。
ゲルマニウム製品生産の原料基盤としては、サハリン島のノヴィコフスコエ鉱床(ユージヌィ鉱区)、沿海地方のパヴロフスコエ鉱床、チタ州のタルバガタイ鉱床を始めとする一連のゲルマニウム含有炭田がある。
(2) レアアース
ロシアのレアアース埋蔵量は2,800万t、予測資源量は酸化物量換算で520万tとされている。各種レアアース鉱物原料は、品位が異なる一次(天然)と二次(人工)の供給源に分かれている。ロシアではこれらの金属の埋蔵量を形成するのは16の鉱床で、ロヴォゼロ鉱床、トムトル鉱床、ヒビヌィ・アパタイト鉱床グループ(ユクスポル鉱床、クキスヴムチョル鉱床等)、アブラモフスコエ・イオン鉱化帯のパヴロフスカヤ・エリア、その他の鉱床(カトゥギン、ヤレガ、ベロジミンスコエ等)を含む。
ヒビヌィ・アパタイト鉱床グループ(ムルマンスク州)は1930年代から開発されているが、レアアース(主として軽グループ)品位が0.4%と低い。そのためアパタイトの一部として採掘されるレアアースは、コストを理由に抽出されず、生産可能なリン肥料や産業廃棄物(リン酸石膏)にされていた。レアアース酸化物換算で数千万tというヒビヌィ・アパタイト鉱床グループの膨大な資源量を考慮し、レアアース抽出は戦略的課題である。
アブラモフスコエ・イオン鉱化帯のパヴロフスカヤ・エリア(沿海地方ウスリースク市地区)では、2006~2008年に中重レアアースに富む(鉱石中のレアアース品位は0.1~1.5%、中重レアアースの割合は30%以上)一連の鉱床が発見された。この鉱床の優れた特徴は、レアアースの採掘・選鉱・抽出のコストが比較的低く見込まれることである。パヴロフスカヤ・エリアのもう一つの重要な利点は、十分な人的資源を持ちインフラが整備された地域に位置している。一方で、パヴロフスカヤ・エリアの開発阻害要因は、地質調査レベルの低さである。
上記の鉱床によりロシアにおける産業の基本的需要を充足することができる。同時に、レアアースの長期的供給確保には、他の一次、二次(人工)原料供給源を利用することも可能であり、これにはクラスノウフィムスク市近郊のモナザイト精鉱の在庫(8万3,000 t、レアアース品位54%)、ウラン鉱石からの随伴レアアース抽出、アルミ産業の廃棄物(赤泥)が含まれる。
3.ロシアのレアメタル・レアアース産業の現状・見通し等
(1) レアアース生産の現状
ソ連時代は、レアアース産業が発達しており一貫生産が可能であった。自国原料を基盤に多様な高品質レアアース製品(高純度レアアース酸化物から蛍光体、磁石、高温伝導体まで)を生産し、国内需要を満たすだけでなく輸出も行っていた。レアアース製品生産量は1991年には8,500 t、世界市場の約15%に達し、ソ連は世界3位を占めていた。ただし、ロシア・ソビエト連邦社会主義共和国におけるレアアース最終製品の生産は10%に過ぎず、最も高価な原料の供給源と、高度処理施設は他の共和国にあった。
このようなレアアース産業は現在のロシアには存在しない。ロシアはレアアース埋蔵量では世界第二位を占めているものの、レアアースの年間生産量は2,000 tに満たない(世界市場の1.3%)。レアアースは初期工程の製品であるレアアース複合炭酸塩として生産されているが、技術チェーンの中間工程(分離・製錬)がロシアにないため、当該製品はほぼ全量輸出されている。ロシアにおけるレアアースの商業的採掘は、唯一の原料供給源であるロヴォゼロ鉱床で行われており、鉱石(ロパライト)の精鉱を生産している。この精鉱は次にソリカムスク・マグネシウム・プラントで処理され、レアアースの複合炭酸塩が生産される。このレアアース複合炭酸塩は輸出され、Silmet(エストニア)で単一レアアース酸化物のレベルまで加工されている。またIrtysh Rare Earths Company(カザフスタン)でも少量加工されている。
(2) レアメタル・レアアース需要の見通し等
軍事産業の需要等を踏まえた専門家の評価によると、ロシアのレアメタル消費量は2020年には主要金属(ニオブ、モリブデン、バナジウム、ベリリウム、リチウム)については平均して倍増する。
現在、ロシア国内のレアアース需要は中国からの輸入によって完全にまかなわれており、これが国家安全保障と国内産業発展のリスク要因となっている。
現在、ロシアの各種ハイテク製品(磁石、触媒、光学等)メーカーによるレアアース(単一酸化物及び金属)の国内消費量は約2,000 t/年(世界の消費量の2~3%、そのうち軽レアアース90%、中重レアアース10%)となっている。最大手消費者の評価では、ロシアのレアアース予想需要は、2020年には数倍に拡大する。
レアアースの主要消費者は国家コーポレーションRostekhnologiiで、その消費量は2020年には約4,000 t/年になる。次いで軍需関連企業になる。レアアースの国内採掘部門が発展すれば、潜在的消費グループが発展するチャンスとなる。
レアアースの最重要消費部門は磁石生産であり、代替エネルギー向けに約5,000 tの磁石を生産するのに年間約3,000 tの単一酸化物(ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム)を必要とする。次に重要な消費部門は、石油化学向け触媒生産(レアアース単一酸化物900 t/年、ランタン、セリウム)で、現状、完全にまかなうことができる。三番目に重要なレアアース消費グループは、自動車用触媒、排ガス清浄機・排気システムの生産、新世代プラスチック・ディスプレイ、ナノ構造セラミックス製品、非晶質炭素製ナノコーティング光ファイバー、ナノコーティング・モノリス構造超硬合金金属切削工具等が含まれる。ここ10年、自動車、建設その他の産業部門で高張力鋼・鋳鉄の消費拡大傾向が見られることから、ロシア産レアアースに対する鉄鋼産業の需要は年間数千tに拡大する可能性がある。
4.ロシアのレアメタル・レアアース産業を巡る可能性と課題点
(1) 優位性
ロシアのレアメタル・レアアース採掘・加工分野のポテンシャルは、その膨大なレアアース埋蔵資源を背景に相当大きい。また以下の優位性が指摘可能。
◆ 中国以外では唯一、価格ダンピング時も操業を継続した稼働中のレアアース生産施設があること
◆ レアメタル・非鉄産業企業がレアアース製品生産に応用可能な技術(特に鉱物原料からの金属抽出技術、酸化物からの精錬金属生産技術)を有していること
◆ レアアース生産に付き物の放射性廃棄物を、所定の環境基準に完全に従って処理(埋設を含む)する技術があること
(2) 課題点
ロシアにおけるレアアース、レアアースをベースとする製品生産の焦眉の問題として以下があげられる。これらの要因が相まって技術的発展を阻み、国内レアメタル・レアアース産業の短期間での復興を困難にしている。
◆ レアアース原料を高付加価値製品(単一レアアース酸化物、金属・合金)に高度加工できる操業中の生産施設がないこと
◆ 中国、米国その他生産者と比べ技術的に遅れていること。
1990年代から資金が投じられてこなかったために、レアアースの採掘・処理・利用分野の開発能力が大幅に低下していること。現有するソ連時代の分離・金属生産設備は近代化が必要である。
◆ 国内鉱物原料が最適な組成とは言えないこと。
レアアースの可採埋蔵量の主要部分を占めるのは軽グループを含むアパタイト鉱石であり、その金属酸化物の平均品位は0.4%以下で、他国で開発中の鉱床に比べ低品位とされている。
◆ レアアース、レアメタル(ニオブ、ベリリウム、リチウム等)の採掘水準が低いこと。国内鉱物原料基盤の開発が難しい(ソ連時代に探査された鉱床の大半は厳しい気候条件下にあり、インフラが未整備で、開発には大きな投資を必要とする)ことに加えて、人工鉱床開発が実験研究・試験生産段階にあること。
◆ 環境問題、放射性廃棄物の処理問題(埋設を含む)を解決する必要があること。
一方、この分野には人的資源、専門家の養成・能力向上システムがほぼ皆無なこと。
◆ ロシアは、技術力のある企業との合弁会社設立によるによる国内生産や、M&Aに
よる協力関係作りなどの手段を活用していないこと。
5. サブプログラムの実施
(1) 国家政策、解決すべき課題等
サブプログラム実施における優先的国家政策は、レアメタル・レアアース製品の国内需要を充足し、この分野の輸入依存を解消することである。また、国産原料の一次加工製品であるバルク精鉱の供給から高付加価値ハイテク製品輸出への移行により、国際分業における新たな地位を獲得することである。詰まる所、一貫生産体制の競争力あるレアアース産業を国内に構築することにある。
しかしながら、ロシアの民間ビジネスは、研究開発投資の事業リスクが高く、レアアース製品の販売チャネル及びインフラ整備資金を持たないため、一貫生産部門を自力で構築することは難しい。解決すべき課題として以下があげられる。
◆ 高純度単一酸化物の分離と生産、高純度金属及び合金生産、レアメタル・レアアースを含有する最終製品生産を含む、レアメタル・レアアース一貫生産の重要技術の開発、習得、適合化。
◆ 一貫生産の確立、全種類のレアアース製品に関する新たな製造業の需要をまかなう。
◆ 一貫生産を保証するためのレアメタル・レアアース鉱床の操業開始、人工鉱床を含むレアメタル・レアアース鉱床の総合的開発に向けた条件の整備。
◆ 新たな工業生産に対するレアメタル・レアアース原料の長期供給を目的とするレアメタル・レアアース鉱石の旧埋蔵量再評価及び新規埋蔵量開拓。
◆ 新たなレアアース産業の人材確保。
また、最も必要とされる重要技術は以下の通りである。
◆ レアメタル・レアアースの抽出・分離・生産技術
◆ 高純度単一レアメタル・レアアース及び同化合物の生産技術
◆ レアメタル・レアアースをベースとし、または利用する新世代の材料・ハイテク製品生産技術
(2) 各シナリオにおけるサブプログラム実施の最終結果とその社会・経済効果
サブプログラム策定に際し、以下の需要シナリオが採用された。
目標シナリオとして、完全な国内需要充足を見込む「基本シナリオ」が選択された。
◆ 停滞シナリオ(発展なし) 2,000~3,000 t/年
◆ 基本シナリオ(最大手国内メーカーの需要充足) 5,000~7,000 t/年
◆ 楽観シナリオ(イノベーション発展の加速、世界市場への進出) 1万2,000~1万5,000 t/年
表1. レアアース産業発展シナリオと指標
指 標 | 停滞シナリオ | 基本シナリオ | 楽観シナリオ |
2020年の レアアース消費量 |
2~3千t | 5~7千t | 12~15千t |
需要を完全に充足する ために必要な レアアース生産量 |
6千t | 19.8千t | 27千t |
ロシア生産者の 重要レアアース需要における輸入シェア |
65% | 5%以下 | 5%以下 |
レアアースの 海外輸出量 |
4千t(La、Ce) | 13千t(La、Ce、中重グループレアアース) | 15千t(La、Ce、中重グループレアアース) |
2020年の世界市場におけるシェア | 3% | 11% | 15% |
重要技術を利用する生産施設操業開始 (年) | |||
分離 | 2017 | 2015 | 2014(海外資産) |
製錬 | 2017 | 2015(第一期) | 2014(海外資産) |
レアアース製品 | 2018 | 2015(第一期) | 2014(海外資産) |
社会効果 | |||
ロシアにおけるハイテク関連雇用創出数 | 6千人 | 16.5千人 | 18千人 |
ロシアにおける専門家養成 | 3千人 | 9千人 | 9.5千人 |
(3) サブプログラムにおける主要施策
サブプログラムは五つの主要施策から成り、これらは下記を期間とする二段階に分かれている。
① 第一段階(2013~2016年)
鉱床の追加地質調査が実施され、新技術開発と技術規格システムの整備により、重要技術の遅れが克服される。またレアアース及びレアアースをベースとする製品の生産構築と促進に向けた作業が行われ、レアアースの国家備蓄が形成される。
(施策1)レアアースの国家備蓄の形成
最も不足している国防調達遂行に必要なレアアースの備蓄が形成される。
(施策2)レアメタル・レアアースの鉱物原料基盤の発展
地質調査実施、潜在的に産業利用価値を持つ各種鉱石・中間原料・精鉱の処理技術の研究開発、レアメタル・レアアース埋蔵量の国家バランスシートへの登録。
◆ 鉱物国家登録データをシステム化し、レアメタル・レアアース含有の地下資源鉱区、有望エリア及び人工鉱床の調査状況と開発状況の分析。
◆ 連邦予算で実施される連邦的意義を有するレアメタル・レアアース含有地下資源鉱区の地質調査プログラムの策定。
◆ レアメタル・レアアース含有の地下資源鉱区、有望エリア及び人工鉱床のライセンス交付プログラムの策定(ロシア域内における高度原料加工を保障するためのライセンス協定条件も含む。)。
◆ 地質調査
以下について追加地質調査・経済評価等を実施し、鉱物埋蔵量の国家バランスシートへの登録等を行う。
・ ムルマンスク州ロヴォゼロ山塊(ジルコニウムのオフバランス鉱床、アル
アイフ鉱区等の鉱床)
・ アルィスカンスコエ・レアメタル・レアアース鉱床
・ サハ共和国(ヤクーチア)トムトル鉱化帯、トムトル鉱床ブランヌィ鉱区
・ クラスノヤルスク地方チュクトゥコンスコエ鉱床
・ イルクーツク州エラシ鉱化帯のヴィシニャコフスコエ、オトボイノエ鉱床開発
・ 非在来型レアメタル・レアアース鉱物
褐簾石(ユジノ・ボガティルスコエ鉱床)、ブリトライト(サハリョク鉱床)、
チタン磁鉄鉱・灰チタン石(ジドイスコエ鉱床)
・ その他、ジミンスコエ・レアメタル地帯のベロジミンスコエ鉱床(Nb、P、Ta、
レアアース)、ボルシェタグニンスコエ鉱床(Nb、P、U)、スレドネジミン
スコエ鉱床(Ta、Nb、U、P、レアアース)、ヤルミンスコエ鉱床(レアアース)
など
また、産業利用価値を持つ各種鉱石・中間原料・精鉱、人工生成物に対する処理技術の研究開発に関する分析の他、法的促進策の実施。
◆ レアメタル・レアアース複雑鉱の品質基準策定と、効率の良い品質評価方法の
開発。
◆ 鉱床開発時のレアメタル・レアアース随伴抽出を促進する総合的施策の策定。
◆ 鉱物を含有する人工生成物の供与・利用手続き適正化に関する地下資源法及び
廃棄物法等の整備。 など
(施策3) レアメタル・レアアース部門の科学技術力の発展
◆ レアメタル・レアアースの抽出・分離・生産技術の開発。
・ 赤泥処理時のレアアース酸化物随伴抽出技術の開発。
・ トムトル鉱床;レアアースバルク精鉱、ニオブ、随伴有価成分生産。
・ パヴロフスコエ鉱床;レアアースバルク精鉱生産技術の開発。
・ かん水からのリチウム生産技術の開発。
・ リン酸石膏廃棄物の利用技術の開発、
・ 廃棄物処理施設の技術的・環境保護的機能の開発。
・ 新しい物理学的発見方法(電気物理学的方法、マイクロ波法等)の開発。など
◆ 高純度単一レアメタル・レアアース及び同化合物の生産技術開発。
・ アパタイト、リン酸石膏処理等により生産される重レアアースグループの精鉱を、単一化合物に分離する技術の開発
・ ハイテク産業分野向けの高純度99.99%の単一レアアース(ランタン、セリウム、
プラセオジム、ネオジム)化合物生産技術の開発
・ ロヴォゼロ鉱床のロパライト鉱石から生産される最終精鉱からの、単一レア
アース生産技術の開発
・ トムトル鉱床の鉱石から生産されるレアアースバルク精鉱分離技術の開発
・ パヴロフスコエ鉱床の鉱石から生産されるレアアースバルク精鉱分離技術の
開発 など
◆ レアメタル・レアアースを利用する新世代材料・ハイテク製品生産技術の開発。
・ レアアース添加による高耐熱・耐食性の合金・鉄鋼の成分研究と生産技術の開発(廃棄物処理、高完成度の多結晶・単結晶構造を持つ半製品の鋳造・熱処理を取り入れた総合的精錬技術も含む。)
・ レアアース酸化物をベースに、粒界強化されたナノ構造高耐火性セラミックス
(制御棒と鋳型を含む)の成分・生産技術開発。
・ 最適な蛍光体組成の開発、レアアース光輝性蛍光体及びこれをベースとする
光輝性複合塗膜の大量生産技術の開発。
・ レアアースをベースとする金属・金属酸化物ナノ触媒技術の開発。自動車産業、
石油化学・石油精製産業、食品産業向け。
・ レアアースをベースとする保護用酸化物コーティング技術の開発(窒化ガリウム超高周波デバイス用)。
・ レアアース合金をベースとする新世代薄膜磁石の組成と生産技術の開発(特にマイクロ磁気エレクトロニクス製品・MEMS製品での使用に適したNd-Fe-Br系、Sm-Co系磁石。)。 など
(施策4) レアメタル・レアアース生産の促進
投資プロジェクト融資に対する利子補給、放射性廃棄物埋設費の補助、レアアース生産体制構築向け融資の政府保証供与、優遇税制(鉱物採取税、付加価値税等)、地下資源利用関連ライセンス法の整備
① 第二段階(2017~2020年)
第二段階では、レアアース製品生産体制構築が予定されている。
(施策5) レアメタル・レアアース生産の支援
投資プロジェクト融資に対する利子補給、放射性廃棄物埋設費の補助、レアアース生産体制構築向け融資の政府保証供与、優遇税制(鉱物採取税、付加価値税等)、地下資源利用関連ライセンス法の整備
表2. ロシア連邦国家プログラム「鉱工業発展と競争力向上」サブプログラム
サブプログラム「レアメタル・レアアースメタル産業の発展」の実施段階

(4) 政府規制措置
レアメタル・レアアース産業に対する政府規制・管理・支援が目指すのは、国家にとって極めて重要なレアメタル・レアアースの確実な供給による国家安全保障の確保、産業発展への民間企業参入にとって、魅力的な条件整備である。
ロシアのWTO加盟はこれまでの政府支援策の変更を前提としており、重点は需要の下支え、制度的条件整備、長期的・安定的で予見可能な生産体制の構築、プロジェクトファイナンスへと移っている。
中期的には予算外財源のために、予算からの支出は徐々に削減される。この関連で以下の直接・間接的政府支援の多くのメカニズムが定められ、企業はリスクを最小化し、レアアースプロジェクト発展に向けた投資資金を確保できるようになる。
– 最重要投資プロジェクト実施に不可欠な研究開発資金の調達。
– 投資プロジェクトへの融資に対する、利子補給、政府保証供与。
– 開発中及び操業が開始される鉱床の総合的開発における、地下資源利用者の利益保障に関する連邦地下資源法の整備。
– 当該分野における人的資源開発のための条件整備。
– 放射性廃棄物埋設の政府規制と補助金。
– 統一経済同盟諸国では生産されていない最新ハイテク設備の輸入関税免除及び税関手続きの簡素化。
– 人工的鉱物原料としてのレアメタル二次資源の評価実施。
– 既存鉱床における最も資源豊富な鉱区発見のための地質調査の発展、新規鉱床の探査実施。
– 選鉱、化学技術、冶金分野における最新の研究成果をもとに、主に技術的有用性の高い製品を生産するための鉱床開発総合技術の開発。
(5) 必要な予算根拠
サブプログラムの資金は、その目的と課題の達成に不可欠な施策に対する予算資金と予算外資金からなる。
予算外資金は、サブプログラム施策の潜在的実施者による直接投資と借入金、これら施策の成果を活用する潜在的ユーザーであるところの外部投資家からの資金によりまかなう。
プロジェクト融資に対する利子補給の計算は、投資プロジェクト実施者が得る融資で賄われる投資予想額に基づいて行われた。補給の対象となるのは融資支払利子の一部で、ロシア連邦中央銀行リファイナンス金利(サブプログラム承認時点では8.25%)の3分の2となる。
放射性廃棄物埋設費の補助金計算は、放射性廃棄物の状況、増加量とその埋設料金を考慮し、放射性廃棄物の予想発生量(平均でレアアース酸化物1 t当たり中レベル長寿命廃棄物約0.054㎥)に基づいて行われた。
表3. ロシア連邦国家プログラム「鉱工業発展と競争力向上」サブプログラム
「レアメタル・レアアースメタル産業の発展」第一段階(2013~2016年)の資金配分
(単位100万ルーブル)
2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | 合計 | |
研究開発 | |||||
レアメタル・レアアースの抽出・分離・生産技術 うち連邦予算 予算外財源 |
551.4
275.7 |
566.6
283.3 |
534.4
267.2 |
665.6
332.8 |
2,318.0
1,159.0 |
高純度の単一レアメタル・レアアース、同化合物の生産技術 うち連邦予算 予算外財源 |
264.6
132.3 |
300.4
150.2 |
485.6
242.8 |
559.4
279.7 |
1,610.0
805.0 |
レアメタル・レアアースをベースとし、または利用する新世代材料・ハイテク製品の生産技術 うち連邦予算 予算外財源 |
1,184.0
592.0 |
1,313.0
656.5 |
1,380.0
690.0 |
1,365.0
682.5 |
5,242.0
2,621.0 |
研究開発資金合計 うち連邦予算 予算外財源 |
2,000.0 1,000.0 1,000.0 |
2,180.0 1,090.0 1,090.0 |
2,400.0 1,200.0 1,200.0 |
2,590.0 1,295.0 1,295.0 |
9,170.0 4,585.0 4,585.0 |
その他 | |||||
レアアース国家備蓄の形成 うち連邦予算 予算外財源 |
– – – |
50.6 50.6 – |
27.4 27.4 – |
16.0 16.0 – |
94.0 94.0 – |
地質調査実施、潜在的に産業利用価値を持つ各種鉱石・中間原料・精鉱の処理技術の研究開発実施、レアメタル・レアアース埋蔵量の国家バランスシートへの登録 うち連邦予算 予算外財源 |
–
– |
500.0
500.0 |
700.0
700.0 |
800.0
800.0 |
2,000.0
2,000.0 |
地質調査実施、潜在的に産業利用価値を持つ各種鉱石・中間原料・精鉱、人工生成物の処理技術の研究開発に対する分析・方法論的サポート。法的促進策の実施 うち連邦予算 予算外財源 |
–
– |
221.0
221.0 |
150.0
150.0 |
129.0
129.0 |
500.0
500.0 |
融資に対する利子補給 うち連邦予算 予算外財源 |
– – – |
11.2 11.2 – |
133.3 133.3 – |
590.8 590.8 – |
735.2 735.2 – |
放射性廃棄物埋設費の補助 うち連邦予算 予算外財源 |
– – – |
– – – |
43.0 43.0 – |
110.0 110.0 – |
153.0 153.0 – |
商業生産体制の構築(設計調査等) うち連邦予算 予算外財源 |
13,540.0
– |
6,420.0
– |
14,405.0
– |
25,477.0
– |
59,842.0
– |
合 計 | |||||
サブプログラム第一段階資金総額 うち連邦予算 予算外財源 |
15,540.0
1,000.0 |
9,382.8
1,872.8 |
17,858.7
2,253.7 |
29,712.8
2,940.8 |
72,494.2
8,067.2 |
サブプログラム実施第二段階(2017~2020年)の予想必要資金は745億1,700万ルーブルとなり、うち連邦予算は154億3,900万ルーブルである。第二段階の実施にあたり、調達資金の増額が必要な場合は、民間企業や官民連携を通じて予算外資金調達を積極的に行うこととし、サブプログラム施策費の計算は具体的な事業計画の確定時点で行う。
終わりに
筆者がJOGMECモスクワ事務所に着任した際、レアアース上流権益確保は政策的に非常に重要であり、ソ連時代の生産実績(生産技術・インフラ)と大きな埋蔵資源量は、中国代替供給元として非常に興味深いものであった。
いろいろと調査・分析を進めるに従い、自ずと課題と魅力が明確になり、うまく付け入るビジネスモデルとして、ソ連崩壊後の必ずしも統制されていない未管理状況を踏まえて、ボトルネック、すなわち混合希土の生産拠点を抑える必要性をまず理解した。そして次に、地下資源を巡る政府関与の方向性にその不透明性が払拭できず、また厳しい自然環境や輸出インフラ未整備もあることから探鉱からの開発ではなく、またソ連時代における計画経済下での生産体制のリバイバルでは、エンドプロダクトの価格競争力には必ずしも自信が持てるものにはないことから、安価な電力供給、放射性物質処理を活用できるロシア・CISのビジネス環境を生かしつつ、現存するソ連時代の生産施設や、生産技術・ノウハウを検証しながら、伸び行く産業の活力とそれに伴う各種インフラ整備に便乗するイメージで、肥料産業との連携(リン・カリウム残渣)、既存レアメタル産業との連携(随伴、副産物)による再構築が考えられた。JOGMECとしても、予算措置を通じていくつか実証することができた。
モスクワベースの関係邦人企業には既に共有させていただいているが、2011年秋のJOGMEC海外事務所会議の際に開催された対外プレゼンの機会の際に、著者が用いたプレゼン資料をご参考までに別添する。本サブプログラムの記載内容に重複する事項が多く、位置関係の情報もあるので、理解の参考になれば幸いである。









