報告書&レポート
アフリカ-ロンドン サミット報告(その1)-オープニングセッション、各国基調講演セッション(前半)-
2013年は英国がG8サミットのホスト国であった。6月17日(月)、18日(火)に北アイルランドで開催されたG8サミットでは、主要テーマの一つとして採取産業の透明性向上について話し合われ、首脳コミュニケにも反映された。 これを受けた鉱業関連のイベントとして、6月25日(火)、26日(水)、ロンドンにて、主催:マイニング・オン・トップ(MoT)、共催:英国貿易投資総省(UKTI)、連邦ビジネス評議会(CBC)による「アフリカ-ロンドンサミット」が開催された。鉱業の透明性向上、その他重要な議題について、活発な議論が交わされた。 参加者は200名を超えた。英国から国会議員、UKTI、CBC、Rio Tinto、Anglo American、鉱業コンサル、法務コンサル、キャピタル、ファンド等、アフリカからは、ケニア・ザンビア等6か国から閣僚級、企業、技術提供会社等、豪州・カナダの企業、日本からJOGMECロンドン事務所が参加した。 本稿では4回に分けて、これら主要な国・企業の講演の概要を報告する。 なお、プログラム等については、以下CBCのWebサイトを参照されたい。 http://www.cbcglobal.org/events/details/mining-on-top-africa-london-summit |
1. オープニング セッション
1-1 「歓迎の辞」 Peter Callaghan連邦ビジネス評議会(CBC)事務局長
「アフリカ-ロンドンサミット」は、CBCにとって初めての試みである。アフリカ各国との強い関係を構築している英国貿易投資総省(UKTI)と協力して実現することができた。
今回のサミットがロンドンで開催されるということは、アフリカでの鉱業と投資にとって重要な意味がある。目的は二つある。一つはアフリカ鉱業への投資促進、もう一つは資源国にとって鉱業をより持続可能にすること、である。
そのためには、政府、国際企業、地域社会の協力が不可欠である。この10年間、アフリカ鉱業は様々な課題に直面してきた。昨年のマリカナ鉱山での事件は痛ましい結果となった。CBCは、アフリカ各国の地域社会と国際企業の両方と調整しながら、開発、雇用、人材育成、知識の共有を進めることにより貢献できる。
今回のサミットにおいて、相互理解と信頼、経験の共有、透明性向上、雇用確保、資金調達、インフラ建設など、様々なテーマについて活発な議論が行われることを期待したい。
1-2 「開会の辞」 Lord Jonathan Marland 貿易担当首相特使
【英連邦の意義】
私は、首相から貿易投資により経済を回復するというミッションを受け、貿易担当首相特使を拝命している。本日、英連邦諸国と連携してこのサミットが開催されることをうれしく思う。英連邦は素晴らしい枠組みだ。私は昨年、直近に英連邦に加盟したモザンビークに出張した。ガボン、北アフリカのアルジェリア等にも話をしている。世界政治の中心に参加することを期待したい。
【英国「世界の鉱業に解決策を提供」を発表】
今朝、英国貿易投資総省(UKTI)の大臣から、「英国-世界の鉱業に解決策を提供」という冊子を託された。英国政府として公式に発表したものだ。
世界の天然資源の多くがアフリカにある。国家レベルの繁栄を超国家レベルの繁栄につなげることが大事だ。そして今こそ転換のチャンスである。
英国はそのために強い役割を演じることができる。なぜなら英国には、人材育成やインフラ整備、持続可能な開発の経験がある。特に透明性のある投資環境の構築については模範であろう。鉱業には長い期間が必要であり、そのためには持続可能な契約が求められる。そのためには税制、財政、資金調達の透明性が必要だ。そして、これら透明性を維持するためには、法律に基づく枠組みが必要である。ケニアのように英国法に倣えば維持することができるからだ。
世界トップ5の鉱山企業のうち4つが英国にある。また世界トップ10の教育システムのうち4つが英国にある。金融システムもある。最も使いやすい取引所もあり、世界最大の430社が上場している。また世界最大の量の資金調達を行っている。法人税も20%であり近隣国の30%台より低く魅力的である。金融商品の開発など市場を作る能力もある。
【英国とアフリカの協力】
英国とアフリカの付き合いは長い。しかし、付き合いが長いからと言って結婚するとは限らず、時には逆効果になってしまったりするのだが、英国とアフリカについては持続可能な結婚にしたい。今回のフォーラムが結婚の機会となるよう協力していきたい。
2. 各国基調講演 セッション
2-1 カメルーン基調講演 ~カメルーン:鉱業の新たな行方~
Hon De Fuh Calistus Gentry カメルーン産業鉱山技術担当国務大臣
【カメルーンの資源ポテンシャル】
カメルーンには、エネルギー、鉱業、インフラを一緒にした「2035ビジョン」がある。カメルーンは、石油、天然ガス、金属のポテンシャルが高く、またアフリカ第2位の水力のポテンシャルがある。金属には石油の5~6倍のポテンシャルがある。カメルーンはアフリカの中央に位置していて、隣国を回廊でつなぐため、180 km、20億US$の鉄道プロジェクトを進めている。
【カメルーンの鉱業プロジェクト】
特に金属については、多様な良質の鉱業プロジェクトがある。ニッケル、コバルト、インド等とのコンソーシアムで実施しているボーキサイト、韓国と開発しているダイヤモンド、英afferro miningと開発している鉄鉱石などがある。また今後は、韓国と錫を、トロント上場の企業とウランを開発しようとしている。統計によれば、米国、豪州、そして中国など多くの企業が参加している。これらのプロジェクトの課題はインフラ建設だ。そのための鉄道プロジェクトはとても野心的だ。
【透明性への取組み】
今回のフォーラムのテーマは透明性である。カメルーンはダイヤモンドビジネスについてキンバリープロセスを進めている。加えてカメルーンは採取産業透明性イニシアティブ(EITI)の候補国になった。2001年に世銀主導で鉱業法を策定した。今、探鉱権の許認可プロセスは忙しくて余裕がない。投資家への特別なインセンティブもある。世銀が許認可プロセスの教育をやっていて透明性を維持している。
2-2 ガーナ基調講演 ~資源収入を安定化~
Hon Alhaji Injsah Fuseini ガーナ国土天然資源大臣
【透明性の重要性】
今回のフォーラムは鉱業界の透明性にとって重要である。私は本日、透明性こそが持続可能な開発を可能にする、と主張したいと思う。
なぜ「透明性」なのか。それは単に透明に見えるからではない。成長に貢献し、利益の最適配分に貢献し、法に基づいた持続可能な発展ができるからだ。鉱業分野への投資が進めば、資源ポテンシャルの向上、企業統治の改善、そしてインフラの向上にも貢献する。
さらに鉱業分野が上手く管理できれば他分野にも波及する。他分野に波及すれば、技術移転の機会になり、新産業の創出につながり、広く国レベルの発展に貢献する。
【アフリカの経済成長と課題】
アフリカは今世紀、高い経済成長を達成してきた。他方で挑戦も多い。小規模企業、財政、地域社会、持続可能な開発などである。大規模鉱業の従事者は8千人だが、小規模鉱業には10億人が従事している。多くの鉱山労働者が亡くなった昨年のマリカナ鉱山での事件は大変痛ましかった。
【ガーナの資源ポテンシャル】
ガーナでは過去数十年間、金、ボーキサイト、マンガン、石灰岩などの鉱業が成長してきた。特にボーキサイトのポテンシャルは大きい。今後の課題はいかに付加価値を付けるかである。製錬、生産、輸出に至る付加価値を付けたい。
【ガーナ政府の鉱物政策】
鉱業は資本の集中が求められる業界である。そのため様々な投資家を呼び込む必要がある。国の枠を超えて複数の利害関係者と連携しなければならない。ガーナ政府は、投資家を呼び込むため、投資インセンティブと資源収入、民間企業と公的部門のちょうど良いバランスを追及してきた。その結果、投資家と政府がwin-winの関係を作っている。政府は法律の策定、透明性の確保、財政の安定、国際協力で投資家を呼び込む努力をしている。
またガーナは、アフリカ・マイニング・ビジョンや同行動計画など、世界的な取組みに積極的に参加している。特に透明性については、キンバリープロセス、採取産業透明性イニシアティブ(EITI)にも積極的に参加している。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の持続可能な鉱物資源の開発方針にも貢献している。
【資源収入の安定化】
資源価格の変動性については、アフリカのほとんどの国が価格受容者(price taker)である。価格の低迷は、プロジェクト自体のパフォーマンスとは関係がない。持続可能な開発の妨げとならないよう、価格変動の影響を緩和する政策を導入している。例えば、資源収入を基に地域の鉱業インフラを開発するためのファンドを作った。さらに国家収入が数少ない鉱物資源に依存すると不安定なので国家収入の多様化を図っている。