報告書&レポート
アフリカ-ロンドン サミット報告(その3)-「投資家の視点」セッション-
4・ 「投資家の視点」セッション
4-1. 投資家は何を求めているのか?
Paul Burton, Piran Mining Research社 創業者
2000年から2008年まで、株価と金価格は同じ動きをしてきた。しかし経済危機で逆の動きになってしまった。
この2年で、探鉱企業の資金調達は減少傾向にある。これは投資家が用心しているからだ。その理由は、まず資源価格の下落である。ただし、将来も価格が下落するとは限らないので論理的ではない。それ以外にも、操業コストの上昇、資源ナショナリズムの心象の増大、より過酷になる税・ロイヤルティ、プロジェクトの遅延、自己資本利益率(ROE)や配当の欠如のため、投資家は用心深くなってしまった。
4-2. 鉱業における投資決定の主要因 ~欧州復興開発銀行(EBRD)の経験~
Gabriel de Lastours, EBRDシニア・バンカー
【EBRDの活動】
EBRDは2012年時点で、東欧、ロシア、中央アジア、北アフリカで活動を行っている。1991年以降、3,654プロジェクトに790億€超を投じてきた。2012年は、297プロジェクトに70億€超を投じる予定で、84%が融資で16%は出資の形である。新たな国としては、エジプト、ヨルダン、モロッコ、チュニジアで業務を開始し、年間25億€を投じることを目標としている。鉱業分野も対象になる。EBRDの投資に当たっては、政府当局と政策対話が主要事項である。
【EBRD天然資源チームの活動 ~鉱業活動方針を策定~】
EBRDは2012年10月、初めて「鉱業活動方針(Mining Operations Policy)」を策定した。EBRD天然資源チームは、ロンドン、モスクワ、キエフ等に25人のバンカーを有している。これまで天然資源分野に47億€を融資し、プロジェクトの価値総額は233億€である。地域別では、モンゴルが4割、東南ヨーロッパと中央アジアがそれぞれ2割程度である。鉱種としては、石炭が35%、貴金属が28%、ベースメタルが26%である。
【EBRDからみた鉱業分野の課題】
鉱業分野には直接・間接の国家介入が残っている。また目に見える輸出税だけでなく目に見えない歪みが鉱業分野の競争力を抑制している。さらに資源依存国の組織・ガバナンスは概して脆弱である。
【EBRDとしての優先事項】
EBRDは、民間のオペレータを支援することに集中する。法制・規制枠組みの信頼性・透明性・安定性を高める政策対話を活発化する。特に透明性については、EITIや欧州、米国の規制に沿った情報公開の実行を支援する。
4-3. アフリカでの投資の可能性 ~革新的な資金提供メカニズム~
Peter Ruxton, Spartacus Capital社 マネージング・ダイレクター
【未探鉱・未開発のアフリカ】
アフリカは未探鉱・未開発の地域だ。アフリカは未だに最良の未開発資産を持っている。全てのステージで世界レベルの鉱床に投資する機会がありM&Aのターゲットでもある。市場が正常化すればより良いリターンを提供するだろう。
【金属価格と鉱業株価】
金属価格は2011年にピークを迎え現在は下落しているとは言え、1997年を100とすればまだ3倍以上のレベルで高止まりしている。しかし鉱業の株価は1997年と同レベルまで落ち込んでいる。
【資源メジャーは平凡資産を棚上げ】
資源高における開発ラッシュは、技術的な判断基準を低下させ、いくつもの平凡なプロジェクトを作ってしまった。資源メジャーは今、拡張し過ぎた将来性のないプロジェクトを棚上げしている。供給サイドで抑制すれば資源価格を押し上げる効果もある。
【優良企業は資金難】
しかし(資源メジャーではない)多くの優良企業にとっては資金難である。既存の資金調達方法は全て閉ざされたからだ。株式市場という手段では、多くの参加者を締め出してしまった。融資は、可能だが高価だし契約書で縛られる。プロジェクト・ファイナンスは、初めて資源開発をする企業にとっては本当に困難だ。その結果、プライベート・エクイティにとって理想的な時代になってしまった。
【革新的な資金調達メカニズムを待望】
企業は革新的な資金調達メカニズムを探す必要がある。インフラストラクチャー・ファンディング、オフテイク・ファンディング、エンパワーメント・ファンディング、ロイヤルティ・ファンディング、メタル・ストリーミングなどである。投資家から見れば、今は資源価格に比較して株価が安いので、参入のチャンスである。
4-4. アフリカにおける鉄道インフラ ~いよいよ新路線を敷設する時か?~
John Meyer, SP Angel社 鉱業アナリスト
【アフリカの鉄道は鉱業に起因】
人間は鉄道が好きだ。全世界で137万マイル(約220万km)の鉄道がヒト・モノの移動と繁栄を可能にしている。総延長が最も長いのは、米国約23万km、次にロシア約8万5千km、中国約6万6千km、インド約6万4千kmと続く。日本は約2万kmである。アフリカは全土の総延長で中国、インドとほぼ同じ約6万6千kmである。
アフリカにおける6万6千kmの鉄道は海岸沿いにあり、鉱業から起因し輸出を目的としている。対照的に、インドの6万4千kmの鉄道はネットワーク状であり、労働力の移動と地域間の貿易のためだ。
【アフリカにおける鉄道プロジェクト】
アフリカでも縦横に鉄道ネットワークを張り巡らせるという考えがある。ただし鉄道が妨害なしに国境を超えることができるか、資金調達ができるか、という課題がある。
東アフリカ鉄道プロジェクトでは、タンザニア、ルワンダ、ブルンジ、ウガンダ、南スーダン、ザンビア、アンゴラ、モザンビーク、マラウィ等で敷設・補修が行われている。
西アフリカ鉄道プロジェクトでは、ブルキナファソ、ニジェール、ベニン、コートジボワール、ギニア、コンゴ共和国、カメルーン、ガボンで敷設・補修が行われている。
4-5. 益々困難となる地質フロンティア
Steven Gold, Energold社 最高財務責任者
【益々困難となる地質フロンティア】
資源高により探鉱活動は未だ活発である。1990年代の世界の探鉱支出は50億US$以下で推移していたが、2011年、2012年はそれぞれ183億US$、210億US$であった。探鉱活動が活発にもかかわらず、新たに大型の鉱床を発見するのは益々困難となっている。そのため鉱山会社は、より困難な地質フロンティアを追及せざるを得ない。すなわち特別な設備が求められている。
【カナダ・オイルサンドで実績】
当社は、150年の歴史をもち、現在は社会的・環境的に繊細な状況下での掘削サービスを提供している。1963年にカナダ・オイルサンドの掘削で確かなプレーヤーとしての地位を確立した。オイルサンドは鉱物資源に比べれば長期の事業である。鉱物資源にも設備、労働力を再配分して、シナジー効果を高めたい。
【独自技術によるリグで1,000 mを掘削】
地下の多様な条件下、限られたインフラで、繊細な環境的・社会的な制約の中で、遠隔で操作できる独自の掘削リグを保有している。困難な土地にも容易に持ち込むことができる。“薄い壁(Thin Wall)”ロッドシステムを活用してコアの直径を1/4インチ大きくしており、1,000 mの地下を掘削する能力がある。自社内でリグを設計・製造しており、現地職員の情報で継続的に改善している。競合他社の同様のリグは、200-300mの深さまでしか掘削できない。
現在、メキシコ、中米、南米、アフリカ、アジア等24か国で234のリグを稼働している。BHP Billiton、Rio Tinto、Vale、Codelco、Anglo Gold等資源メジャー及びジュニア企業が顧客である。連結収入は過去6年間、平均25%で増加している。