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報告書&レポート

2013年8月1日 ロンドン事務所 森田健太郎
2013年48号

アフリカ-ロンドン サミット報告(その4)-事業活動紹介-

5・ 事業活動紹介

5-1. バクバング白金鉱山における利益の共有

Hamlet Morule, Wesizwe Platinum社 執行役員

【バクバング白金鉱山の概要】

 南アの西ブッシュフェルト地帯には世界の白金の67%が存在し、当社は、この地帯に位置するバクバング白金鉱山の開発を進めている。平坦で厚く機械化しやすい、非常に良質の資源である。メレンスキー鉱脈での白金対パラジウムの比率は2.42であり、世界最高レベルである。2018年から生産を開始し、2023年にフル生産となり、最大35万oz/年を35年間にわたり生産する予定である。

【資金調達は中国企業が保証】

 中国のJinchuan社がパートナー兼投資家として資金調達を保証している。中国開発銀行が6億5千万US$の資金拠出を承認している。中国開発銀行はそれ以外に1億US$の短期融資を2件承認しており、15年融資、利率は6か月LIBOR+3.5%、返済開始は7年後となっている。株主構成は、中国Jinchuan社が45%、ルステンバーグ白金鉱山社が13%、BEE政策の現地株主が6社合計16.3%、南ア・英国等の機関投資家が合計5.15%の株式を保有する。

【高付加価値化】

 バクバング白金鉱山の周辺地域とシナジー効果を構築していきたい。具体的には、水・電力の供給サービス、選鉱工場の共同使用、雇用者の居住プログラム、教育訓練センターの提案、近隣3鉱山の鉱山所有者フォーラムの設置などを進めたい。

5-2. 官民パートナーシップの成功例 ~CSRで地域に貢献~

William Ato Essien, Gye Nyame社 最高経営責任者

【会社の概要】

 当社は、ジンバブエでダイヤモンドの生産を行っている。2011年に、SRK global社が初期調査を終えて数10億US$と評価した資産を受けて設立された、ジンバブエ鉱業開発公社とガーナのBill Minerals社の合弁事業である。Bill Minerals社が唯一の出資者であり、自分はBill Minerals社の社長でもある。

【官民パートナーシップの成功例】

 当社の官民パートナーシップによる合弁事業は、アフリカが天然資源を経済発展のために応用できることを示す成功例である。現在5%の稼働率で鉱山を操業しているが、これを100%まで上昇させるため、出資者であるBill Minerals社は次の四半期で1億US$を投資する計画である。

【CSRで地域に貢献】

 当社はCSRとして、道路や灌漑など公共施設、家族の移転、収穫率を上げる農業技術の訓練、授業料の支援や学校の補修、感染・非感染といった医療情報の提供、公衆衛生の改善等を実施している。

5-3. 地域社会への投資 ~DRコンゴ東部での開発~

John Clerk, Banro社 社長兼最高経営責任者

【会社の概要】

 当社はカナダベースの会社でありトロントとニューヨークで上場している。ブカブとキンシャサに事務所がある。1996年にDRコンゴの資産を買収した。トゥワンギザ金鉱山については、2009年に開発を始め2013年の生産量見通しは8万5千~10万ozである。ナモヤ金鉱山については、2012年に開発を始め2013年第1四半期に生産を開始した。

【Banro基金を設立し地域社会に貢献】

 Banro基金は、10箇所の学校新設と2箇所の学校補修、4,000人の生徒・教員、机・本等に160万US$を投じている。診療所、医師、医療施設等に44万7千US$を投じている。何百kmもの道路新設、道路補修、橋の補修や簡易水供給に127万US$を投じている。

 当社の技術的・専門的業務、管理職業務に1千人のコンゴ人を雇用し、さらに建設子会社で3千人を雇用している。またこれらの雇用が地域住民に2万人分の仕事を創出している。これらの活動により、10年に満たない当社がDRコンゴ東部で最大の雇用者となった。

 当社は、大学のビジネス関連学部を強化し、また優秀な学生には奨学金を提供する。これらにより、ビジネスや産業の技能の基礎を構築することを約束する。

5-4. アフリカ鉱業でのインフラの確保

Sarah Thomas, Pinsent Masons社パートナー

【資本支出の6割はインフラ関連】

 資源開発の資本支出の6割はインフラ関連である。より新しいプロジェクトほど、この割合は高くなる。世銀によれば、より収入の低い国では、インフラ不足がビジネスの制約であり、生産性を約4割下げている。このインフラ不足による損失は、汚職、犯罪そしてお役所仕事による損失と同じくらい大きい。

【アフリカにおけるインフラ不足】

 アフリカにおけるインフラ不足は、鉱業を開発するにあたっての支障であり挑戦でもある。鉱床の発見が増大するに伴い、輸送・電力・水といったインフラの不足も顕在化している。しかし、インフラは多目的であり、鉱業主導のインフラ開発が国・地域の長期的発展に良い影響を与えることができる。

 アフリカ大陸における直接投資は、10年前までは、中国、インド、ロシアにおける直接投資より小さかったが、今やロシアを超えインドに迫る勢いである。これは鉱業収入によりインフラ建設を進めることが十分可能になりつつあることを意味する。アフリカにとって最大の貿易相手は中国である。毎年2割ずつ投資額が増えている。

【アフリカ大陸の鉄道建設に5百億US$が必要】

 アフリカ大陸がより広い経済利益を得るためには、鉄道で言えば、5百億US$の投資が求められる。南アにおいては過去7年間で鉄道に4百億US$を投資し更なる投資を呼び込んだ。モザンビークは巨大な石炭の鉱床があり2015年には1億t生産する可能性があるが、インフラが不足しており2百億US$の投資が必要である。

おわりに

 本稿では、6月25日(火)、26日(水)に開催された「アフリカ-ロンドンサミット」における主要な国及び企業の講演の概要を報告した。

 なお講演以外にも、パネルディスカッション、ラウンドテーブルにおいて、発言者個人の見解も含めて活発な議論が交わされた。例えば、透明性への取組みについては、許認可を得る企業だけでなく親会社からの支払いも透明にする必要がある等、多数の問題提起があった。また、アフリカでの地域貢献については、資源メジャーの存在自体がインフラ整備、人材育成、雇用創出を通じて地域に大きく貢献している等の発言もあった。

 英国とアフリカ諸国の歴史関係は古く広範である。一過性ではなく、過去から現在を見ながら、そして現在から未来を見据えながら、様々な発言が成り立っている。引き続き、英国及びアフリカ諸国の鉱業動向を注視していきたい。

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