報告書&レポート
豪州、特にWA州の鉄鉱石生産・開発の現状-鉄鉱石関連学術会議「Iron Ore 2013」参加報告-
2013年8月12日から8月14日にかけて、WA州PerthにおいてIron Ore 2013が開催された。本稿では、会議及び8月15日~16日に実施されたPilbaraツアーについて報告し、豪州の鉄鉱石の9割以上を生産するWA州を中心に豪州の鉄鉱石生産・開発状況について紹介する。 |
はじめに
Iron Ore 2013は、CSIRO(Commonwealth Scientific and Industrial Research Organisation:連邦科学産業研究機構)及びAusIMM(Australasian Institute of Mining and Metallurgy:大洋州採鉱冶金学会)が主催する鉄鉱石をテーマにした学術会議で、2002年に第1回が開催されて以降、2005年からは2年毎に主にWA州Perthで開催されており、今回が第6回目となる。
今回の会議は、参加者数こそ約600人と前回開催の2011年から若干減少した(主催者発表)もののブース数は72、スポンサー数は18と過去最高を記録した。また、南アフリカ、ドイツ、英国、中国、ブラジル、米国、カナダ等海外18か国からの参加があり、それらの国からの参加者は全体の約1割を占めた。
1.豪州の鉄鉱石生産及び輸出

図1. 豪州及び世界の鉄鉱石生産量推移2
2011/12年度(2011年7月~2012年6月)、豪州の鉱山・エネルギーセクターの輸出額は1,870億A$と全輸出額の60.2%を占め豪州経済に大きく貢献しており、なかでも鉄鉱石輸出額は627億A$とエネルギー・鉱産物輸出額1位(同34%)を占めている1。図1及び図2に1991年から2011年までの豪州及び世界の鉄鉱石生産量、及び輸出量の推移を示す2。

図2. 豪州及び世界の鉄鉱石輸出量推移2
1991年の豪州の鉄鉱石生産量は1億1,713万tで、世界生産9億5,210万tの12%だった。1991年から2001年までの10年間の前年比の平均は豪州+4.6%、世界-0.1%となっている。2003年以降は前年比増10%を超える年も認められ、ここ10年の年平均増加割合は、豪州10.5%、世界8.5%となっている。2011年の鉄鉱石生産量は、豪州4億8,810万t、世界20億5,160万tで豪州は世界生産量の24%と1991年と比較してその占める割合は2倍になっている。一方、鉄鉱石輸出量に関して、豪州は1991年当時から世界の大きな位置を占めており、豪州輸出量は1億1,156万tと世界輸出量3億9,890万tの28%を占めていた。輸出量に関しても2000年代に入り伸び率が大きくなり2001年から2011年までの10年間の年平均増加割合は豪州、世界ともに8%を超え、2011年の輸出量は豪州4億3,823万tで世界10億7,290万tの41%と豪州の占める割合はさらに大きくなっている。豪州で生産される鉄鉱石の約9割は輸出されている。
2011/12年度の豪州の鉄鉱石生産量は5億369万tと初めて5億tを超えた。そのうち、WA州生産量は4億8,868万tと全体の97%を占めている3。表1に最近の四半期毎の鉄鉱石生産量を示す。2011/12年度の四半期毎の生産量は前年同期比約10%増加し、年度生産量は過去最高となった。2012/13年度に入っても伸び率こそ若干減少しているものの生産量は増加している。
表1. 豪州の四半期毎の鉄鉱石生産量4
年度 | 2011/12 | 2012/13 | |||||
四半期 | 7~9月期 | 10~12月期 | 1~3月期 | 4~6月期 | 7~9月期 | 10~12月期 | 1~3月期 (予測) |
生産量 (百万t) |
125 | 130 | 119 | 130 | 133 | 138 | 133 |
対前年同期 増減比(%) |
― | 12.1 | 14.4 | 9.2 | 6.4 | 6.2 | 11.8 |
2011/12年度の豪州の鉄鉱石輸出量は4億7,004万tで生産量全体の93%にあたる。輸出先は、中国が3億3,389万tと71%を占め、次いで日本の7,657万t(16%)、韓国の4,630万t(10%)と続く3。また同年度の輸出額は627億A$と過去最高を記録している。表2に最近の四半期毎の鉄鉱石主要輸出国・輸出量及び輸出額を示す。2011/12年度の四半期毎の輸出量は前年同期比で10%以上増加し、年度輸出量は過去最高となった。2012/13年度に入っても伸び率こそ若干減少しているものの輸出量は順調に増加している。それに対し、鉄鉱石価格下落の影響で輸出額の対前年同期比は2011/12年度1~3月期から2012/13年度10~12月期にかけてマイナスとなり、特に2012/13年度7~9月期は対前年同期比約30%減少している。
表2. 豪州の四半期毎の鉄鉱石輸出量及び輸出額4
年度 | 2011/12 | 2012/13 | |||||
四半期 | 7~9月期 | 10~12月期 | 1~3月期 | 4~6月期 | 7~9月期 | 10~12月期 | 1~3月期 (予測) |
生産量 (百万t) |
117 | 121 | 108 | 123 | 125 | 137 | 129 |
対前年同期 増減比(%) |
― | 11.1 | 14.9 | 17.1 | 6.8 | 13.2 | 19.4 |
輸出額 (百万A$) |
17,992 | 16,126 | 13,045 | 15,532 | 12,903 | 13,201 | 15,225 |
対前年同期 増減比(%) |
― | 15.0 | -4.8 | -4.6 | -29.3 | -18.1 | 16.7 |
1 BREE(Bureau of Resources and Energy Economics)「Resources and energy Quarterly・June Quarter 2013」
2 BREE「Resources and energy Statistics 2012」から作成
3 BREE(Bureau of Resources and Energy Economics) 「Resources and energy Quarterly・June Quarter 2013」
4 BREE「Resources and energy Quarterly・June Quarter 2012」、「Resources and energy Quarterly・September Quarter 2012」、「Resources and energy Quarterly・December Quarter 2012」「Resources and energy Quarterly・March Quarter 2013」及び「Resources and energy Quarterly・June Quarter 2013」
2.講演内容
Iron Ore 2013では‘Shifting the Paradigm’をテーマに、現在の不安定な経済状況のもと、如何に鉱石の低品位化、異なる鉱床タイプ等に対応して既存鉱山を拡張し、また新規鉱山を開発していくか探鉱、採鉱、鉱石処理等様々な面から報告された。会議はWA州Bill Marmion鉱山石油大臣の開会挨拶により開始され、9件の基調講演、70件の一般講演が行われた。(講演プログラムについては以下を参考:http://www.ausimm.com.au/ironore2013/docs/ironore2013_registration_brochure.pdf)

写真1. 講演会場の様子
基調講演は、Rio Tinto及びFortescue Metals Group(FMG)社による自社鉱山の拡張計画(Rio Tinto 3億6,000万t/年、FMG社 1億5,500万t/年)の報告、CSIROによる鉄鉱石開発に関する研究の紹介の他、2013年4月正式に開山したKarara鉱山(Gindalbie Metals社 50%、鞍山鋼鉄集団公司 50%)からは2013年7月に最初の高品質磁鉄鉱精鉱(鉄品位:68%)を出荷するまでについて報告された。需要家サイドからは、新日鉄住金から最近の製鉄法の技術開発、中国鉄鉱石鉄鋼研究所から中国鉄鋼業の概要について講演された。また、Valeの開発・操業状況、アフリカでの鉄鉱石探査・開発等に関しても講演された。基調講演の後、各日2会場に分かれて、環境、探鉱、採鉱、鉱石処理、鉱石特性評価等に関して講演が行われた。講演数は、探査・鉱石埋蔵量評価14件、採鉱・プロジェクト開発9件、鉱石特性評価(環境も含む)17件、鉱石処理30件の計70件であった。本稿では、Bill Marmion WA州鉱山石油大臣の開式挨拶、基調講演からRio Tinto Pilbara鉱山社長Michael Gollschewski氏の講演、及び一般講演からFugro社の空中重力探査による探査ターゲット抽出の講演内容を紹介する。
(1) Bill Marmion, Minister for Mines and Petroleum, Western Australian Government
鉱山石油大臣としてまずは安定した規制環境を確立・維持し、鉱業セクターの発展を推し進めることに注力している。2011/12年度、WA州の鉄鉱石関連の販売は510億A$に達し、資源関連販売の70%を占めた。鉄鉱石輸出の71%は中国へ、16%は日本へ向かっている。2011/12年度の鉄鉱石メジャー会社の報告によると各社とも生産量は増加し、その傾向は今後も続きそうである。FMGは2014年までに年間生産量を1億5,500万tまで増産することを目指しており、BHP Billitonは2014年の年間生産量を2億7,000万tと予測し、Rio Tintoは年間生産目標を2015年までに3億6,000万tまで増加すると設定している。WA州の鉱山プロジェクトにおける資本支出の大部分は鉄鉱石プロジェクトで、現在Roy Hill、Sino Iron、Hope Dawn及びJimblebarの4つの主要プロジェクトが進行しており、その価値は合わせて200億A$以上になる。しかし、WA州の鉱業セクターにとってその生産量だけが世界と競争できるのではなく、革新的な技術、インフラ及び政府の支援策においてもWA州は世界に対する確かな競争力を保有している。現在、鉱業セクターが直面する困難な状況にも係わらず、WA州では既存のインフラのおかげで、その生産量及び投資は今後も継続していくものと思われるが、州政府としては将来的には公的なインフラの導入も検討している。政治的には、州政府は認可手続きの合理化、探鉱インセンティブの提供、投資促進、重複手続きの撤廃等、鉱山会社をより支援する政策を紹介していきたい。連邦政府は鉱業に対し過剰に規制を施し、その影響を考慮していないと思われる。州政府として、過剰な規制を撤廃し鉱業界の知識を政策立案過程に取り込むことによってこれらの政策を見直していきたい。
(2) Michael Gollschewski, Managing Director Pilbara Mines for the Iron Ore business, Rio Tinto
現在、中国の鉄鋼生産及び鉄鉱石使用量は2030年に約10億tでピークを迎えると予想されている。中国はこの10年間大きく成長してきたもののこのピークを迎えるまでに更に発展すると思われ、その鉄鋼ストックは日本、米国、韓国、西ドイツ等の一人当たりの20年間の総量(例えば、米国は1960-80年、日本は1980-2000年)で比較すると小さく、今後もチャイナストーリーは継続すると思われる。一方で、プロジェクトを保有する企業のアナウンスと実際に完了したプロジェクト数には大きな開きが認められる傾向にあり、新規の鉄鉱石鉱山開発には引続き制約が見られるだろう。また、中国国内でも鉄鉱石は生産されているが、長期的には高コストのために、他国からの供給量の増加、スクラップの増加及びスポット価格の不安定さの継続により中国国内の鉄鉱石生産量は減少していくと思われる。
この10年間、Rio Tintoは生産量を増加することに注力してきたが、現在はシステムの最適化及びインフラの開発を通じた生産性の改善及び操業コストの削減を中心に投資している。しかしながらRio Tintoも、認可プロセスの問題、特殊技能者の不足、遠隔地勤務の困難さ及びプロジェクトファイナンスソースの減少等、鉄鉱石供給の改善に関する多くの課題に直面しており、インフラの拡張(主に、無人車両及び鉄道ネットワーク)、及び更なる革新技術に対する投資によって幾つかの問題が解決されることを望んでいる。Rio Tintoの掲げるMine of the FutureTMにより、生産コストが低減され、生産性及び安全性が向上し、技術および自動化により加速的に改善が進展することを期待している。
操業という観点から見ると、Rio Tintoは鉱山の生産能力拡張に関して多くのオプションを保有しており、さらに現在操業中の鉱山位置においても低コストで生産を増加する機会を有している。また、他社と比較した場合、Rio Tintoは一般に開発プロジェクトを予算内で完了しており、そのことによっても最も低コストの生産者となっていると思われる。Rio Tintoは、競争優位性を高めるために、“low spend, high return”という考えのもと、自身の価値及び生産性を改善し、操業コストを減少できると確信している。
(3) 空中重力偏差測定による迅速な鉄鉱石探査ターゲットの抽出, Craig Smith, Fugro Airborne Surveys
異なる鉱床タイプは異なる地球物理学的特徴を有する。磁鉄鉱に富む鉱床は、磁鉄鉱に因る局所的な高重力及び高磁気で示される。赤鉄鉱に富む鉱床は、赤鉄鉱は酸化により消磁しまた密度は保存または増加しているため高重力及び磁気アノマリーの欠如で示される。磁鉄鉱及び赤鉄鉱が混合するタイプの鉱床は、様々に変化するが一般に高重力及びやや高磁気という特徴で示される。鉄鉱石の鉱化の分布を把握し、磁鉄鉱と赤鉄鉱を認識するためには、磁気と重力の特徴を利用することが必要になる。カナダLabradorでのケーススタディ結果を示す。Labradorトラフは古原生代の褶曲・スラスト帯でLabrador半島を約1,100kmにわたって縦断しており、1954年以来20億t以上の鉄鉱石を生産している。この地域の鉄鉱床はスペリオル型の縞状鉄鉱層で、ケーススタディの対象となるLabradorトラフ南部の鉱山では強変成作用を受けた粗粒の鉄鉱層である変タコナイト鉱床から鉄鉱石を生産しており、石英、鏡鉄鉱、少量の磁鉄鉱からなる。そのため、本地域の鉄鉱床は高重力及び様々に変化する磁気アノマリーで特徴付けられる。Labradorトラフ南部に位置するConsolidated Fire Lake Northプロジェクトにおいて、FALCON空中重力偏差・磁気及びLIDAR探査を実施した。測線間隔は200mで、平均対地高度は117m。図3に調査結果を示す。左に磁気アノマリー図(RTP)、右にFALCON鉛直重力偏差図を示す。磁気アノマリー図から大規模で複雑に褶曲した鉄鉱層の分布が認められる。西側南部の磁気アノマリーには80 eotvosを超える鉛直重力偏差と一致するエリアが認められ、東側南部の磁気アノマリーには50 eotvosを超える鉛直重力偏差と一致するエリアが認められた。また2010年及び2011年の試錐位置を○印で示している。これらの試錐のうち図4に厚さ150mを超える鉄鉱層を捕捉した試錐のみを表示した結果、重力偏差アノマリーと厚い赤鉄鉱鉄鉱層が強い相関を持つことが示された。精密磁気探査及びFALCON空中重力偏差計のデータは赤鉄鉱の分布及び構造的に層厚になった部分を非常に効果的に抽出できると思われる。

図3. 空中物理探査結果5
(左:磁気アノマリー図(RTP)、(右:FALCON鉛直重力偏差図、スケールは3km)

図4.空中磁気探査結果及び試錐結果6
(150mを超える鉄鉱層を捕捉した試錐のみを表示)
5 講演資料に加筆
6 講演資料を一部修正
3. Pilbaraツアー
3日間の会議の後、Pilbara地域の代表的な3つの操業中の鉱山を訪問する2日間のPilbaraツアーに参加した。Pilbara地域の鉄鉱石鉱山、鉄道及び港湾位置を図5に示す。今回のツアーでは、FMG社のHerb Elliott積出港及びCloudbreak鉱山、BHP BillitonのMt Whaleback鉱山及びRio TintoのBrockman 4鉱山を訪問した(図5参照)。参加者は豪州、ブラジル、南アフリカ、英国、スウェーデン、日本から19名だった。

図5. Pilbara地域の鉱山、鉄道及び港湾位置図7
(1) Herb Elliott積出港及びCloudbreak鉱山
Herb Elliott港は2008年に操業を開始したFMG社の自社港湾施設で、見学日(8月15日)に第4 Berthの開所式が開かれ1億5,500万tへの拡張にも対処できると説明された。Herb Elliott港からCloudbreak鉱山までは263kmありFMG社の鉄道でつながっている。Cloudbreak鉱山は2008年に生産開始したFMG社最初の鉱山で年間粗鉱採掘量は4,800万t、鉱石生産量は3,900万t、Pilbara最大級の鉱石処理設備を持つ。
FMG社の鉄鉱石開発の歴史は、以下の通り。
・ 2006年:Cloudbreak鉱山及びHerb Elliott港建設開始。
・ 2007年:Fortescue鉄道建設開始。
・ 2008年:上記施設建設工事完了、操業開始。
・ 2010年:Christmas Creek鉱山建設開始、2011年操業開始。
・ 2011年:Solomon鉱山建設開始、2013年操業開始。

写真2. Port Headlandの港湾施設遠景(北方を臨む)
Herb Elliott港の位置するPort Headlandは天然の良港で、FMG社のNo1~No4 Berthの他、BHP BillitonもA~Hの8つのBerthを所有。Roy Hillプロジェクト(Hancock Prospecting社)も港を建設する計画となっている。FMGは2015年にはBerth 4の西側にBerth 5を建設する計画。 BHPはE&F Berthの南東延長に二つのBerthを建設する許可を得ている。

写真3. Cloudbreak鉱山露天採掘及びサーフィスマイナー
現在、東西約18 kmにわたり、Marra Mamba Iron Formationの鉱化層を5~6ピットで採掘している。現在は鉱区の西側を中心に採掘しており、写真はBrawpton Pit(走向方向(NW方向)に2 km×200 mで採掘する。鉱化層準の傾斜は南西に4°)。現在の採掘エリアでは約20 mの表土を発破、除去後、採掘の70~80%はサーフィスマイナーにより実施している。
現在、FMG社全体の年間生産能力は、1億2,000万t。2014年3月までには1億5,500万t体制に拡張することを計画している。しかし2013年8月には、年産6,000万tを計画していたNyidinghu鉱山の開発が先送りされる模様との報道もあった。
(2) Mt Whaleback鉱山
Mt Whaleback鉱山はMt Newman JV(BHP Billiton 85%、伊藤忠商事 8%、三井物産 7%)によって操業されている世界最大の露天掘り鉄鉱石鉱山。1968年に操業を開始した。

写真4. Mt Whaleback鉱山及びNewmanの町(展望エリア掲示板)
現在、露天採掘ピットは長径約5 km、短径約1.8 km、深さ450 mで、最終的にはさらに250m深くなる計画。現在の採掘品位は64%。Marra Mamba及びBrockman Iron Formationを採掘対象とする。

写真5. 露天採掘西側のピット最深部付近

写真6. 露天採掘中央付近(北方を臨む)
Mt Whaleback鉱山の東方約30kmにはJimblebar鉱山が位置しており、Jimblebar鉱山等、周辺鉱山を含めた年間生産量は6,000万tに達する。Jimblebar鉱山は2014年に年産3,500万tへ 拡張され、さらに5,500万tへの拡張も計画されている。
BHP BillitonのWA州鉄鉱石生産量は、2012/13年度1億7,410万t、2013/14年度は1億9,900万tと計画されている。さらに2015/16年度には2億2,000万tまで拡張する計画。Port Headland積出し港Inner Harbourの拡張は2013/14年度10~12月期にコミッショニングを開始する計画。また、年産3億5,000万tへ向けたPort Headland Outer Harbourの拡張計画は、2012年8月に2012年12月の決定時期を1年先送りされたままになっている。
(3) Brockman 4鉱山
Brockman 4鉱山は、2008年に開発を開始し、2010年に年産2,200万tで生産を開始したRio Tintoの鉱山で、2012年9月から年間生産量を4,000万tへ拡張した。将来的にはさらなる拡張も検討されている。

写真6. Brockman 4鉱山Pit 3露天採掘エリア(↓は鉱区西端のPit6)
採掘対象は走向延長約14 kmに及び、現在、鉱区ほぼ中央のPit3から西側を中心にBrockman Iron Formationのスーパージーン鉱化ゾーンを採掘している。最大層厚は240 mで北に30~50°傾斜している。 鉄鉱石品位は約60%。鉱石の85%は地下水面より上に分布している。リンの含有量が高めだが、剥土比は低く(2.5~2.7)、埋蔵量は巨大(5~10億t)。

写真7. Brockman 4鉱山(中央部にPit 3、北東方を臨む)
現在、ほぼ東西方向に分布するBrockman Iron Formationを採掘しているエリアの南側にはMarra Mamba Iron Formationがほぼ平行して分布しており、Rio Tintoは現在探査を実施している。写真7中央右側の緩い丘陵地には100 m×15 m間隔で試錐位置が認められる。Marra Mamba Iron Formationは7年後からの採掘を計画している。
Brockman 4鉱山には568ルームの鉱山操業キャンプ及び1,400ルームの建設キャンプがあり、Fly-in / Fly-outで操業、カンタス便が毎日就航している。専用空港は約8ヵ月前に完成し、それまでは約90 km離れたTom Price鉱山からバスで移動していた。カンタス便はBrockman 4及びPerth間、もしくはPerth、West Angelas の3点を結んでいる。
Rio Tintoの2013年H1の生産量は1億2,000万t(100%換算)と過去最高を記録した。また、2013年Q3には2億9,000万tへの拡張、2015年H1には3億6,000万tへの拡張を計画している。
7 Department of State Development, Government of Western Australia
(http://www.dsd.wa.gov.au/documents/Rapidly_Expanding.pdf)に加筆
おわりに
豪州のBureau of Resources and Energy Economics(BREE)は、2013年Q1の鉄鉱石スポット価格の平均が141 US$/tだったのに対し、2013年6月には中国の経済成長及び鉄鋼生産に対する観測から約115 US$/tに下落したことを受けて、2013年6月、2013年全体の鉄鉱石契約価格を117 US$/tと予測、また2014年のスポット価格を112 US$/tと予測した8。しかし、その後2013年7月にはスポット価格は127.2 US$/t9と回復し、8月には130 US$/tを超えた。このように鉄鉱石価格の不安定さが続く中、豪ドル高、コスト高、生産性の問題等で磁鉄鉱を始めとする多くの新規プロジェクトは延期、棚上げされている。しかし、Rio Tinto Pilbara鉱山Gollschewski社長の講演にもあったように、豪州鉄鉱石の最大輸出先である中国の鉄鋼生産は2030年にピークを迎えると言われている。また、中国の鉄鉱石供給を見ると、国内産の鉄鉱石が約60%を占め、輸入鉄鉱石は増加傾向にあるものの約40%にとどまる9。Gollschewski社長の講演では、中国国内の鉄鉱石生産者は高コストのために今後淘汰され、輸入鉄鉱石量は益々増加するとされた。
2013年9月30日付The Australianは、今後中国国内での鉄鋼生産におけるスクラップ使用量が大幅に増加し、特に鉄鉱石の需要に対して影響を与える可能性があると報じた。報道では、BHP Billitonは中国のスクラップの成長に対して最も高い予想を示しており、2030年には現在の約5倍、年産5億tを超えるとしている。一方、Rio Tintoは、Gollschewski社長の講演でも指摘されたが、現在の中国の鉄鋼用途は建造物やインフラの割合が多く、リサイクルされる車両や電化製品に関する割合は増加傾向にあるものの、実際にリサイクルされるまでにはまだ時間がかかるとし、2030年のスクラップ量を約2億tと予想している。
BHP BillitonのMt Whalebackでの説明では、2015/16年度の2億2,000万t体制以降にも、Port Headland Outer Harbourを含めた更なる拡張の可能性が紹介されたが、2013年9月30日付The Australianによると中国のスクラップ量の変化も重要な要素として考慮してから最終決定されるとのことだった。また、Rio Tintoは3億6,000万t体制へのインフラ整備は実行しつつ、実際の鉱山生産量増に関してはまだ評価中として正式決定は2013年12月に行われる予定であり、両社とも状況を見つつ、柔軟に対応できる様、着々と拡張準備を進めている印象を持った。
(参考)
図6. 豪州鉄鉱石輸出価格10
8 BREE「Resources and energy Quarterly・June Quarter 2013」
9 BREE「China Resources Quarterly・August 2013」
10 BREE「Resources and energy Statistics 2012」から作成
