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チリで新たに導入される高地の職場環境衛生に関する規則
チリでは職場における環境衛生に関する規則(大統領令第594号:Regulamento sobre condiciones sanitarias y ambientales básicas en los lugares de trabajo)の改正により、2013年11月8日より海抜3,000 m以上の高地の職場における環境衛生規則が新たに導入される。 チリにおける銅生産の多くは斑岩銅鉱床からもたらされており、高地に位置する斑岩銅鉱床の鉱山生産量が全体の半分以上を占めている。鉱山開発の遠隔化が進む可能性の高い将来は、さらにその割合が高まるであろう。したがって、今後のチリでの銅鉱山操業及び開発において上述の規則の内容を理解しておく必要性が高まると考えられる。 本稿では、チリでの高地における鉱山開発の現状及び新しく導入される高地の職場での環境衛生に関する規則の内容について紹介する。 |
1. チリでの高地における鉱山開発の状況
チリ北部に分布する銅鉱床タイプには、マント型鉱床、酸化鉄・銅・金鉱床、斑岩銅鉱床が知られている。これらの銅鉱床は、それぞれ類似の形成年代を有するものが南北に連続し、鉱床生成ベルトを形成している。チリの銅生産の多くは斑岩銅鉱床からであるが、その多くがチリの東側に分布し、海抜3,000 m以上に位置している鉱山も多い(図1-1)。海抜3,000 m以上に位置する鉱山からの銅生産量は309.4万t(2012年)で、チリ全体に占める割合は57%に達する(図1-2)。
金やホウ酸類でも海抜3,000 m以上の高地で鉱山開発が行われており、主な金鉱山及び開発プロジェクトとして、Maricunga(第Ⅲ州)、La Coipa(第Ⅲ州)、Cerro Casale(第Ⅲ州)、Pascua Lama(第Ⅲ州)がある。

(出典:Sillitoe(2013)、Kojima(2011)及びSONAMI(2013)を基にJOGMECサンティアゴ事務所作成)
図.1-1 チリ北部の銅鉱床ベルトと主要銅鉱山及び開発プロジェクト
(海抜3,000 m以上の鉱山及び開発プロジェクト:赤字)

(出典:COCHILCO(2013))
図.1-2 海抜3,000 m以上に位置する鉱山の銅生産がチリ全体に占める割合
(2012年)
2. 新しく導入される高地の職場での環境衛生に関する規則
2-1. 高地特有の職場環境と身体への影響
低地の職場と比較すると、高地特有の環境条件として、紫外線量の増加、酸素分圧の低下、空気の乾燥、寒さ、下界からの隔離が挙げられ、これらは様々な病気を発生させる原因となりうる。この様な条件における労働の懸念事項として、酸素の不足からくる物理的能力の低下や睡眠の質の低下、心理的負担が挙げられる。
また、気圧及び酸素分圧が低い状況下に人間が曝される場合、呼吸器・心臓・腎臓の生理学的機能の順応が起きる。
2-2. 職場における環境衛生に関する規則と改正の背景
2000年に公布された職場における環境衛生に関する規則(1999年の大統領令(Decreto Supremo)第594号、以下、DS594)は、文字通り職場における環境衛生基本条件を定めたものであり、保健省(Ministerio de Salud)が所管している。
冒頭でも述べたとおり、DS594は2012年11月8日に公布された2012年の政令(Decreto)第28号により改正され、海抜3,000 m以上の高地にある職場の環境衛生に関する規則が付け加えられた。政令第28号の施行は、公布の1年後、すなわち2013年11月8日と定められている。
この改正は、人が高地において慢性的(crónica)で間欠的(intermitente)な低圧に曝されることにより、高山病、赤血球増加症、肺高血圧症、不眠症などの神経性及び心肺性の疾患にかかる可能性が科学的に指摘されていること、また、低標高地に居住し、慢性的で間欠的な低圧に暴露される海抜3,000 m以上の職場に働く労働者の病気の予防及び健康の保護に関する措置を規定することを目的して行われた(2012年の政令第28号序文)。
2-3. 高地の職場での環境衛生条件に関する規則の概要
2012年の政令28号によってなされるDS594の改正は、既に存在していた条文を改定するものではなく、第Ⅳ編第Ⅲ節9番の後に、新たに10番「高地の慢性的、間欠的低圧について」を新たに加えるものである。以下では、新たに定められる第110b条~第110b.10条の内容を順に紹介する。(仮訳全文を本稿末尾に添付したのでご参照願いたい)
◆ 第110b条
DS594の第Ⅳ編第Ⅲ節10番が慢性的、間欠的に低圧に曝される労働者の高地(3,000 m~5,500 m)における労働を規制するものであり、海抜5,500 mを超える極端な高地の労働には適用されないことが謳われている。海抜5,500 m以上での労働は別途用意される「高地において慢性的、間欠的に低圧に曝される労働に関する技術ガイドブック(Guía Tecnica sobre Exposición Ocupacional a Hipobaria Intermitente Crónica por Gran Altitud)」に基づいて所轄保健当局の事前評価及び許可を得た場合のみ実施できる。
◆ 第110b.1条
本政令の条項で使用される次の用語、高地順応(Aclimatación en altitud、適応(Acomodación)、習得順応(Aclimatación adquirida)、自然・適応順応(Aclimatación natural o adaptación))、標高(Altitud、高地(Gran altitud)、極端な高地(Extrema altitud))、低圧に対する慢性的間欠的曝露(Exposición a hipobaria intermitente crónica)、低圧(Hipobaria)についての定義がなされている。
◆ 第110b.2条
高地での労働リスクについての労働者への周知、高地労働リスクの“職場の安全及び健康管理システム(sistema de gestión de seguridad y salud en el trabajo)”への組み入れ、高地労働者のためのリスク防止プログラムの作成・文書化及び1年毎の更新、高地労働が与える健康リスクとその対処法に関する毎年の労働者教育の実施を義務付けている。
◆ 第110b.3条
高地で断続的に勤務する労働者の適性を、技術ガイドブックの指示に準じて身体検査等によって採用前に判断することを求めている。
◆ 第110b.4条
高地勤務による健康リスクの予防、監視、早期診断を目的とした定期健康診断及び退社前健康診断実施を義務付けている。評価は法律第16,744号(労働災害及び職業病に関する規則)が規定する保健管理機関が実施する。さらに、高地勤務の労働者に毎年の健康診断及び慢性病のフォローアップを義務付けている。健康診断等の結果を基に、医師が労働者の適性証明書または不適性証明書を発行、不適性とされた労働者は健康リスクのない別エリアの作業に配置転換しなければならない。
◆ 第110b.5条
散発的(esporádica)または時々(puntual)、海抜3,000 m以上の高地で働く労働者は、技術ガイドブックにしたがって実施される健康診断を年に1度受診しなければならない。健康診断費用は雇用者が負担する。
◆ 第110b.6条
海抜3,000 m以上に設置されている全てのキャンプは低圧の影響を緩和するために、海抜3,000 m以下の環境と同様の酸素供給、加湿のための措置の導入が求められている。
◆ 第110b.7条
直接雇用、請負等の契約形態に関係なく、合計50名以上の労働者を有する海抜3,000 m以上の全ての職場または作業場には、保健の専門家を配置した昼夜対応可能な簡易診療所を設けなければならない。配置が求められる保健の専門家の人数は、労働者数や標高、アクセス等の条件が点数化されその総合点をもとに決定される。
◆ 第110b.8条
簡易診療所に備えるべき条件(労働者の高地への順応状況の監視やモニタリング、初めての高地労働、または6ヶ月間高地勤務がなかった場合の職場到着時の初期健康診断、24時間及び48時間後のフォローアップ及び年間の再診断が可能なこと、治療設備一式の導入)が定められている。
◆ 第110b.9条
緊急救助隊の編成義務とその活動範囲、救助隊員の教育義務について述べられている。救助隊を構成する作業員の活動は緊急事態においてのみとし、事故にあったものが医師の処置を受けるまでの間に限定されている。
◆ 第110b.10条
高地に関連した病気及び事故の報告義務を定めた条項。収集された情報は、毎年4月の最終勤労日に保健省地方局へ提出する。
おわりに
本稿で紹介した規則の運用には、第110b条等で記されている技術ガイドブックが必要不可欠であるが、現在のところ内容は明らかになっていない。ガイドブックの公表時期について、本規則を運用する保健省に問い合わせても明確な回答は得られなかった。したがって、本規則の施行は2013年11月8日となっているものの、実際に適用されるのはしばらく先のことになると思われる。本規則の適用に当たっては、簡易診療所の設置や高地キャンプに海抜3,000 m以下と同様の酸素供給・加湿のための措置、高地労働を不適とされた労働者の配置転換を求めるなど、高地に職場を持つ会社に新たな投資を求める内容になっていることから、ガイドブック公表の遅れの背景には投資余力の小さな中小企業の反発があることも考えられる。大規模鉱山ではそれぞれが独自の対策を既に施しており、本規則施行の影響はあまり大きくないかも知れないが、新しく導入される規則として、チリに投資を行う方々の参考になれば幸いである。
参考文献
COCHILCO, 2013, Anuario de Estadísticas del Cobre y Otros Minerales 1993-2012: 168 p.
Sillitoe R. H., 2013, Copper Provinces: Geology and Genesis of Major Copper Deposits and Districts of the World: A Tribute to Richard H. Sillitoe: p. 1-18
Kojima S., 2011, An Overview of Chilean Economic Deposit: SGA News, v. 29, p. 1-17
SONAMI, 2013, Caracterización de la Minería Chilena en Altitud: MinAlet2013講演資料
職場における環境衛生条件に関する規則の改正(政令第28号)の仮訳
原文のウェブサイト:http://www.leychile.cl/Navegar?idNorma=1045465&idParte=9310942&idVersion=2013-11-08
職場における衛生及び環境に関する基本的な条件を規定する、1999年の政令第594号の改正
№28.サンティアゴ、2012年6月28日。
審理:1967年の保健省の法律第725号により承認された衛生法第2条、第82条及び次緒条項;労働事故及び職業病に関する法律第16.744号の第65条及び第68条;保健省2005年の法令第1号の第4条;職場における衛生及び環境に関する基本的な条件を規定する、保健省の1999年の*政令第594号;国家監査院の2008年の裁定第1600号;そしてまた
‒ 科学情報によると、高地において慢性的、間欠的に低圧に曝されると、短期的又は長期的に何らかの種類の可逆性の病気、主に様々な種類の高山病、赤血球増加症、肺高血圧症、不眠症(以前から閉塞性無呼吸症だったものは症状が悪化する可能性がある)などの神経性及び心肺性の病気に罹る可能性があること
‒ 住宅が標高の低い所にあり、職場が海抜3,000 mを超えていて、慢性的、間欠的に低圧に曝される労働者の健康の予防及び保護に関する措置を規定する必要があることから:
共和国憲法第32条第6項により与えられた権限およびこれら記述事項を考慮して下記を布告する:
第一項:職場における衛生及び環境に関する基本的な条件を規定する、保健省1999年の政令第594号を下記に示すように改正せよ:
1.第Ⅳ編第Ⅲ節9番の次に下記に示す10番を追加せよ:
“10. 高地の慢性的(Crónica)、間欠的(Intermitente)に低圧について”
第110b条:この10番の規定は慢性的、間欠的に低圧に曝される労働者の高地における労働を規制するものであり、極端な高地の労働には適用されない。
海抜5,500 m以上での労働は、共和国大統領命令に基づいて保健省が発布した政令に従い、高地に於いて慢性的、間欠的に低圧に曝される労働に関する技術ガイドブックに基づいて与えられた所轄保健当局の事前の評価及び根拠ある明確な許可を得た場合にのみ実施することができる。
第110b.1条:高地の慢性的、間欠的な低圧暴露に関する条項における、次の語句は下記に示すような意味を持つ:
高地順応(Acliminación en altitud):人が気圧の低下に曝され、吸入する酸素の量が減少した場合に始まる生理的プロセスであり、数週間、あるいは何ヶ月も続く場合もあり、細胞に供給する酸素量の減少を防ぎ、器官が高所に耐える能力を向上するためのものであり、次のような段階がある:
* 適応(Acomodación):低酸素症に対する器官の即座な反応の第一段階で、酸欠の度合いと原因により軽度であったり顕著だったりする。メカニズムは過呼吸及び心拍数の上昇である。
* 習得順応(Aclimatación adquirida):標高の低い所に住み、海抜3,000 m以上の場所で何週間あるいは何ヶ月も働く者の順応プロセスである。これが一番多い順応のケースである。
* 自然・適応順応(Aclimatación natural o adaptación):高地で生まれ、又は幼年および少年時代に高地で生育した人の順応で、長期間そのような環境に曝された結果、その生活環境において生理的な活動の維持が可能になる。
標高(Altitud):地理的な高度のことで、海抜何メートルという単位で表し、次のように区別する:
・ 高地(Gran altitud):海抜3,000 m 以上5,000 m以下の高地のことで、大部分の人は生理的、身体構造上ならびに生化学的な可逆変化を経験する。
・ 極端な高地(Extrema altitud):海抜5,000 m以上の高地で、人間は順応できないものの、短期間であれば滞在することはできる健康上のリスクが大きい極端な高地のこと。
低い大気圧に対する慢性的、間欠的な暴露(Exposición a hipobaria intermitente crónica):労働者が労働上の理由で6ヶ月間以上断続的に低圧に曝され、その期間の30% 以上をシフト体制により高地で勤務し、標高の低い場所で休養すること。
低圧(Hipobaria):海面の気圧に比較して気圧が低いこと。
第110b.2条:労働者を高地において慢性的、間欠的に低圧に曝している企業又は作業場は、下記のような措置を採用して危険防止を行わなければならない:
a):労働者に対して、高地において慢性的、間欠的に低圧に曝される特定のリスク及びそれに対する対策について、次のような表現で通知しなければならない:
「高地において慢性的、間欠的に低圧に曝されると、短期的又は長期的に何らかの種類の可逆性の病気、主に様々な種類の高山病、赤血球増加症、肺高血圧症、不眠症(以前から閉塞性無呼吸症だったものは症状が悪化する可能性がある)などの神経性及び心肺性の病気に罹る可能性があること」
b):このリスクを職場の安全及び健康管理システムに組み込むこと。
c):高地において慢性的、間欠的に低い気圧に曝されている労働者のリスク防止プログラムを当規定で述べる技術ガイドブックに従って作成し、文書にし、毎年それを更新すること。
d):毎年、労働者に対して、高地において慢性的、間欠的に低い気圧に曝されて労働することが健康に対して大きなリスクを与えること及びその対策に関して理論的及び実践的教育を行うが、その授業は最低3 時間とし、その教官は国家により認められた高等教育機関で最低8 半期間保健に関する教育を受けた証書を有する専門家でなければならない。このプログラムは文書化しなければならない。
第110b.3条:高地において断続的に勤務する労働者の適性は、採用する前に身体検査、健康上のアンケート、評価及び禁忌事項などを当細則で述べる技術ガイドブックの指示にに従って判断する。
第110b.4条:高地において慢性的、間欠的に低い気圧に曝されることが健康に与える影響の予防、監視及び早期診断を行うために、労働者は前記技術ガイドブックの指示に従って労働管理プログラムに加入して、定期健康診断及び退社前の診断を行う。このような評価は、労働者の健康状態がそのような条件下で勤務出来るかどうかを判断するために、法律第16.744号に規定する保険管理機関が行う。
それに加えて、高地で働く労働者は健康保険システムの規定に従って、毎年一度、一般的な健康診断及び慢性病のフォローアップをしなければならず、労働保健診断をする際に提出し、その結果を保管しなければならない。
健康監視プログラムを審査する医師は、労働適正評価の結果及び予防医療検査の結果を考慮して、労働者の適性又は不適性証明書を発行する。
不適性と評価された労働者は、健康に危険を及ぼさない別のエリアの作業に再配置される。そのような健康に関する評価は労働衛生及び山岳医療の資格を有する医師により行わなければならない。
第110b.5条:当細則の定義に該当しないが、散発的(esporádica)又は時々(puntual)、海抜3,000 m 以上の高地で働く労働者は、前条で述べている技術ガイドブックの指示により行われる健康診断を年に一度受けなければならない。その健康診断の費用は雇用者が負担する。
第110b.6条:海抜3,000 m 以上の場所に設置されている全てのキャンプは低圧による影響を緩和するために、海抜3,000 m 以下の環境と同様の酸素供給、加湿又は科学・技術の発達による手段等を適用する措置を採らなければならず、それは急性又は慢性の生理的変化を呈した全ての労働者に適用できるものでなければならない。労働者に対する酸素の供給は、当細則で述べる技術ガイドブックにおいて規定する手順に従って、保健の専門家により行わなければならない。
第110b.7条:直接雇用又は請負等の契約形態如何にかかわらず、合計50 人以上の労働者を有する 海抜3,000 m 以上の場所にある全ての職場又は作業場は、保健の専門家を配置した、昼夜応対できる簡易診療所を設けなければならず、それには次の表を適用する:
労働者 | 標高 | 医療センターまでの時間 | アクセス | |||||||||||||
人数 | 点数 | 海抜(m) | 点数 | 時間(h) | 点数 | 難度 | 点数 | |||||||||
50-99 | 1 | 3,000-3,499 | 0.5 | <1h | 0.5 | 容易 | 0.5 | |||||||||
100-499 | 1.5 | 3,500-3,999 | 1 | 1-1.5h | 1 | 中程度 | 1.5 | |||||||||
500-999 | 2 | 4,000-4,499 | 4 | 1.5-2h | 2 | 困難 | 3 | |||||||||
1,000-1,499 | 3 | 4,500-4,999 | 4.5 | ≥2h | 3 | |||||||||||
1,500-1,999 | 5 | 5,000-5,500 | 5 | |||||||||||||
≥2,000 | 7 | |||||||||||||||
総合点数 | 保健人員 | ||
救急医療員 | 看護夫(婦) | 医師 | |
2.5-5.5 | 1 | – | – |
6-7.5 | 2 | – | – |
8-10 | 3 | 1 | |
≥10.5 | 4 | 1 | 1 |
簡易診療所の人員数及び資格は、その人数を決めた前記の表の何れかの数値が10% 以上変化した場合には、該当する人数に調整しなければならない。
簡易診療所の救急医療員は労働衛生、山岳医療及び緊急医療に関する知識を持っていなければならない。
看護婦(夫)は山岳医療に関する知識の他に、労働衛生及び医学的緊急事態に関する知識を持っていなければならない。
医師は労働衛生、医学的緊急事態及び山岳医療に関する研修を受けていなければならない。
看護婦(夫)及び救急医療員のための上記研修は、同じ医師により行われることができる。
それに加えて、職場が病院又は簡易診療所から50 km 以上離れていて、前記の表による総合点が8又はそれ以上の場合には、少なくとも一台の基礎的な救急車M1を備え、作業する日又は現場に人が居る日は24 時間待機していなくてはならない。
第110b.8条:高地の職場の簡易診療所は管轄の保健省地方局の衛生許可を取得していなければならず、前述の技術ガイドブックに従って作成された次のような要素を備えていなければならない:
・ 簡易診療所の手順に関する議定書で内容は、高地における労働者の順応の監視、モニタリング及び追跡;慢性病の追跡及び補償; 一回目あるいは6ヶ月間高地に登らなかった後、作業現場または職場に着いた時の初期診断、そして到着後24 時間及び48 時間後のフォローアップ、ならびに年間の再診断に関するもの。
・ 治療設備一式。
第110b.9条:職場あるいは作業現場では緊急救助隊を編成しなければならず、その人数は現場の面積と作業員の数に応じて管理部が決定し、緊急事態においてのみ事故にあった者が医師の手当てを受けるまでの間活動する。その隊員は年に一度、次のような内容に関する2 時間の教育を受けなければならない:
・ 負傷者への応対、応急手当て、多発外傷及び救出に関する基礎的な扱い。
・ 血液中の病原菌の保護のような基礎的な医療上の注意事項。
・ 高地に関連して生じる生理的変化及び病気に関する基本的な概念。
・ 閉鎖空間、化学薬品の漏洩、火災及び漏出に関する基本的な概念。
救助隊を構成する作業員は、緊急事態においてのみ事故にあった者が医師の手当てを受けるまでの間活動する。
第110b.10条:法律第16.744号に規定する保険の管理者は、保健省の地方局、健康的な公共政策振興部労働衛生課に対して、高地に関連した病気及び事故を報告しなければならない。
収集された情報は毎年4 月の最終勤労日に、保健省が指定する書式により、電子的手段又は自ら出頭して提出しなければならない。その情報には次のような内容を含まなければならない:
- 労災の軽傷、中度の負傷、重傷又は死亡、その詳細:
‧ 性別
‧ 年齢
‧ 事故の種類及び原因
‧ 時刻
‧ 曜日 (シフトの何日目)
‧ シフトのスキーム
‧ 身体の負傷した個所
‧ 州名
‧ 事業内容
- 職業病の詳細
‧ 診断
‧ 病原体
‧ 年齢
‧ 性別
‧ 州名
‧ 事業内容
第二項:当政令は官報に公表されてから一年後に効力を発する。
記録し、理解し、公表せよ。
共和国大統領:SEBASTIÁN PIÑERA ECHENIQUE
保健大臣代理:Jorge Díaz Anaiz
2012年6月28日付け政令第28号を転写し通知する。
公共衛生次官:Jorge Díaz Anaiz
*政令(decreto)第594号:当該法令は大統領令(Decreto Supremo)であるが、法文中にはdecretoの記載しかないことから、原文を尊重し政令を訳語として当てている。
