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インドネシアにおける鉱石輸出禁止政策の動向(その1)- 鉱物資源高付加価値義務化の概要 -
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インドネシアでの新たな鉱業法となる「鉱物・石炭鉱業に関する法律」(2009 年法律第4 号。以下本シリーズでは「新鉱業法」という。)が公布・施行された2009 年1 月から5 年が経過し、新鉱業法で新たに盛り込まれ、同国にとって重要な施策の一つである鉱物の高付加価値義務に関し、その施行期限となっていた2014 年1 月、様々な議論を経て、政府は最終的な方針を打ち出し、関連する政令、大臣令を相次いで発効した。結果、銅、鉄、鉛・亜鉛などの一部の金属鉱物については、中間鉱産物となる精鉱などの輸出は限定的に認められることになったものの、大部分の金属鉱物には製精錬処理が義務付けられることとなり、これまで輸出が認められていた未処理鉱石の輸出は禁止となった。 本シリーズでは、その鉱物資源高付加価値義務化の概要や、2012 年以降、ここに至るまでの経緯、今後の見通しなどを取り上げてみる。 |
1.鉱物資源高付加価値義務化の概要
鉱物の高付加価値義務化は、新鉱業法の施行日(2009 年1 月12 日)から5 年以内での実施が同法に規定されていたところであるが、その期限の前日となる2014 年1 月11 日、ユドヨノ大統領は、最終的な決定を下すため、関係閣僚を招集の上、約5 時間に及ぶ会議を実施、その結果、次のような方針・内容を決定した。
鉱業事業許可(IUP)事業者又は旧鉱業法による鉱業事業契約(Contract of Work:COW)事業者に対し、改めて鉱物の選鉱又は製精錬処理を義務化し、未処理鉱石は原則輸出禁止とした
一部の金属鉱物については、輸出税の課税を条件に、選鉱処理済み鉱産物(精鉱)の輸出を3 年間に限り認めることとした
精鉱輸出への輸出税課税は、2014 年1 月当初の税率20%から、6 ヶ月又は1 年ごとに段階的に引き上げることとし、最終的に2016年7月以降は60%の税率とした
2014 年1 月12 日以降の鉱産物の輸出は、許可制とした
以上の決定内容は、同日公布された以下の政令及び3つの各大臣令に規定され、即時施行された。
(1) 「鉱物・石炭鉱業の事業活動の実施」に関する政令2010 年第23 号を改正する政令(政令2014 年第1 号。政令2010 年第23 号の2 次改正政令)
(2) 「国内における鉱物の選鉱・加工処理と製精錬活動を通じた鉱物の付加価値 の増加」に関するエネルギー・鉱物資源大臣令(同大臣令2014 年第1 号)
(3) 「輸出税の課税対象品と税率」に関する財務大臣令2012 年PMK.011第75 号を改正する財務大臣令(2014 年PMK.011第6 号)
(4) 「選鉱・精錬済み鉱産物の輸出規定」に関する商業大臣令(2014 年M-DAG/PER/1第04 号)
(1)~(4)の各大臣令の主な規定内容は、次のとおりであるが、そのうち(2)については参考として巻末に日本語仮訳及び原文を添付したのでそちらもご参照願いたい。
(1) の改正政令では、製精錬処理後の鉱産物に加え、選鉱処理後の鉱産物も輸出できる内容が盛り込まれ、詳細規定はエネルギー・鉱物資源大臣令に委任することとした。
(2) 「国内における鉱物の選鉱・加工処理と製精錬活動を通じた鉱物の付加価値の増加」に関するエネルギー・鉱物資源大臣令(同大臣令2014 年第1 号)
関連する大臣令中、最もポイントとなる規定であり、同大臣令においては、対象となる鉱物は金属鉱産物、非金属鉱産物、岩石鉱産物の3 区分に大別され、それぞれ個別鉱物毎にインドネシア国内での選鉱、加工、製精錬処理の最低基準が規定された。基準に満たないものの国外への輸出・販売は許可されないこととなった。
金属鉱産物の最低基準は表1のとおりとなる。重要な点は、ニッケル、ボーキサイト、金、銀、クロムは製精錬製品のみ輸出が認められる一方、銅、鉄鉱石、マンガン、鉛・亜鉛等の一部の金属鉱物については、輸出税課税(20%~60%)が条件となるが、中間製品となる精鉱も本大臣令施行後3年間は経過的に認められることとなった点である。この点について、1 月11 日の閣議後のエネルギー鉱物資源大臣の会見では、この決定は、鉱石輸出禁止を完全実施した場合の、鉱山労働者の大量解雇や地域経済へのダメージに加え、輸出額減少による経済への悪影響を回避することが重要であるとの認識に立ったものである、としている。
また、選鉱・加工又は製精錬事業は、鉱業事業許可(IUP)事業者等が自ら実施するか、あるいは他の事業者と協力実施するかの方法によるが、他事業者との協力実施の場合、原鉱石(原料又は鉱石)又は精鉱の売買による協力も可能である。
なお、今回の新たな大臣令が公布・施行されたことに伴い、2013 年11 月に最高裁判所により違法判決が出され、取消を命じられていた2012 年2 月公布の旧エネルギー・鉱物資源大臣令2012 年第07 号(最終改正同大臣令2013年第20 号)は、廃止された。
表1:金属鉱産物の選鉱加工処理・精錬の最低基準
| 鉱物 | 選鉱製品 | 製精錬製品 | 最低製品基準 |
| 銅(製錬プロセス) | 銅精鉱 | - | ≧ 15% Cu |
| - | a. 銅カソード | Metal Cu ≧99% | |
| b. 陽極泥 (アノードスライム) |
a. Metal Au ≧99% b. Metal Ag ≧99% c. Bullion Pb ≧90% d. Metal Pd ≧99% e. Metal Pt ≧99% f. Metal Se ≧99% g. Metal Te ≧99% h. PbO≧98% i. PbO2≧98% j. SeO2≧98% k. 希少金属及び希土類 (錫における希土類 の条件を参照) |
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| c. テルル化銅 | a. Metal Cu ≧99% b. Metal Te ≧99% c. TeO2 ≧98% d. Te(OH)4≧98% |
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| 銅(リーチング・プロセス) | - | 金属 | a. Metal Cu ≧99% b. Metal Au ≧99% c. Metal Ag ≧99% d. Metal Pd ≧99% e. Metal Pt ≧99% f. Metal Se ≧99% g. Metal Te ≧99% h. 希少金属及び希土類 (錫における希土類の条件を参照) |
| ニッケル及び(又は)コバルト(製錬プロセス) a. サプロライト b. リモナイト |
- | ニッケルマット、合金及びニッケル金属 | a. Ni Mate ≧70% Ni b. FeNi ≧10% Ni c. Nickel Pig Iron (NPI) ≧4% Ni d. Metal Ni≧93% e. Metal Fe≧93% f. NiO≧70% Ni |
| ニッケル及び(又は)コバルト(リーチング・プロセス) リモナイト |
- | 金属、金属酸化物、金属硫化物、混合水酸化物/硫化物、炭酸水酸化ニッケル | a. Metal Ni≧93% b. 混合水酸化物(MHP) ≧25%Ni c. 混合硫化物(MSP) ≧45%Ni d. 炭酸水酸化ニッケル(HNC) ≧40%Ni e. NiS ≧40%Ni f. Metal Co ≧93% g. CoS ≧40%CO h. Metal Cr ≧99%Ni i. Cr2O3 ≧40%Ni j. MnO2 含有量Mn≧15% |
| ニッケル及び(又は)コバルト(還元) a. サプロライト b. リモナイト |
- | 合金 | a. FeNispon (Sponge FeNi) ≧4%Ni b. Luppen FeNi ≧4%Ni c. Nuget FeNi ≧4%Ni |
| ボーキサイト | - | 金属酸化物/水酸化物、金属 | a. スメルター・グレード・アルミナ ≧98% Al2O3 b. ケミカル・グレード・アルミナ ≧ 90% Al2O3 ≧ 90% Al(OH)3 c. Metal Al ≧ 99% |
| 鉄鉱石 | 鉄精鉱 | - | ≧62% Fe |
| ラテライト鉄精鉱 | - | ≧51% Fe 含有量(Al2O3+SiO2) ≧10% |
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| - | スポンジ、金属及び合金 | スポンジ鉄≧ 75% Fe 銑鉄 ≧90% Fe 合金 ≧ 88%Fe |
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| 砂鉄 | 砂鉄精鉱 ペレット |
≧58% Fe及び(又は) ≧56%Fe |
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| - | 金属 | スポンジ鉄≧ 75% Fe 及び(又は) 銑鉄≧90% Fe |
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| スラグ | a. TiO2 ≧90% b. TiCl4≧98% c. 合金≧ 65% Ti d. V2O5 ≧ 90% e. 合金≧ 65% V f. 希少金属及び希土類 (錫における希土類の条件を参照) |
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| 錫 | ジルコン、イルメナイト及びルチル精鉱の副産物 | - | 非金属鉱物のジルコンにおけるジルコン、イルメナイト、ルチルの条件を参照 |
| モナザイト及びゼノタイムの精鉱 | - | a. 酸化希土類(REO) ≧99% b. 水酸化希土類(REOH) ≧99% c. 希土類≧99% |
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| - | 金属 | Metal Sn ≧99.90% | |
| スラグ | a. Metal W ≧90% b. Ta2O5 ≧90% c. Nb2O5 ≧90% d. Sb2O5 ≧90% |
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| マンガン | マンガン精鉱 | - | ≧49%Mn. |
| - | 金属、合金、化学マンガン | a. フェロマンガン(FeMn), Mn ≧60% b. シリカマンガン(SiMn),Mn≧60% c. 一酸化マンガン(MnO), Mn≧47.5%, Mno2≦4% d. 硫化マンガン(MnSO4) ≧90% e. 塩化マンガン(MnCl2) ≧90% f. 合成炭酸マンガン(MnCO3)≧90% g. 過マンガン酸カリウム(KMnO4) ≧90% h. 酸化マンガン(Mn3O4) ≧90% i. 合成二酸化マンガン(MnO2) ≧98% j. スポンジマンガン(還元マンガン) Mn≧49%, MnO2≦4% |
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| 鉛及び亜鉛 | 亜鉛精鉱 | - | ≧52% Zn. |
| 鉛精鉱 | - | ≧57% Pb. | |
| - | 金属、金属酸化物/水酸化物 | a. Bullion ≧ 90% Pb b. PbO ≧98% c. Pb(OH)2 ≧98% d. PbO2 ≧98% e. Bullion ≧90% Zn f. ZnO ≧98% g. ZnO2 ≧98% h. Zn(OH)2 ≧98% i. Metal Au ≧99% j. Metal Ag ≧99% |
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| 金 | - | 貴金属 | a. Metal Au ≧99% b. Metal Au ≧99% |
| 銀 | - | 貴金属 | a. Metal Ag ≧99% b. Metal Ag ≧99% |
| クロム | - | 金属及び合金 | a. Metal Cr ≧99% b. 合金 ≧ 60% Cr. |
(3) 「輸出税の課税対象品と税率」に関する財務大臣令2012 年PMK.011 第75号を改正する財務大臣令(2014 年PMK.011 第6 号)
前述のとおり、エネルギー鉱物資源大臣令2014年第1号により、銅、鉄鉱石、マンガン、鉛・亜鉛等の一部の金属鉱物の精鉱の輸出は、同大臣令施行後3年間は経過的に認められることになったが、本財務大臣令により輸出税課税対象となり、その税率が規定された。最初の期間となる2014 年1 月からは20%(銅精鉱のみ25%)、以後、6 ヵ月又は1年ごとに10%又は5%引き上げられ、最終期間の2016 年7 月以降は税率60%となる。個別の税率は表2のとおり。
表2:輸出税が課税される鉱産物の輸出税率
| 明 細 | 輸出税率(%) | |||||
| 2014 | 2015 | 2016 | ||||
| 1/12~ 6/30 |
7/1~ 12/31 |
1/1~ 6/30 |
7/1~ 12/31 |
1/1~ 6/30 |
7/1~ 12/31 |
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| 銅精鉱 含有率 ≧15% Cu |
25% | 25% | 35% | 40% | 50% | 60% |
| 鉄精鉱(赤鉄鉱、磁鉄鉱、黄鉄鉱)含有率 ≧62%Te | 20% | 20% | 30% | 40% | 50% | 60% |
| 鉄精鉱(針鉄鉱、ラテライト)含有率≧51%Fe及び(Al2O3 +SiO2) ≧10% | 20% | 20% | 30% | 40% | 50% | 60% |
| マンガン精鉱含有率 ≧49%Mn | 20% | 20% | 30% | 40% | 50% | 60% |
| 鉛精鉱、含有率 ≧57%Pb | 20% | 20% | 30% | 40% | 50% | 60% |
| 亜鉛精鉱含有率 ≧52%Zn | 20% | 20% | 30% | 40% | 50% | 60% |
| イルメナイト精鉱、Fe含有率≧58%(砂状)、Fe含有率 ≧56%(パレット状) | 20% | 20% | 30% | 40% | 50% | 60% |
| チタン精鉱、Fe含有率≧58%(砂状)、Fe含有率 ≧56%(パレット状) | 20% | 20% | 30% | 40% | 50% | 60% |
(4) 「選鉱・精錬済み鉱産物の輸出規定」に関する商業大臣令(2014 年M-DAG/PER/1 第04 号)
エネルギー鉱物資源大臣令2014 年第1 号の規定により、2014 年1 月12日以後、輸出可能となる鉱産物に関し、本商業大臣令で具体的な輸出手続きが規定されている。主な規定内容は次のとおり。
1) 輸出事業者の認定
当該鉱産物の輸出事業者は、商業大臣から認定を取得することが必要
上記の認定申請には、以下の書類の提出が必要
・ 鉱業生産許可、特別鉱業生産許可又は工業事業許可のコピー
・ 納税者番号のコピー
・ 会社登記証のコピー
・ 関連の省庁からの推薦状:鉱業生産許可、特別鉱業生産許可の所有者はエネルギー・鉱物資源大臣から、工業事業許可の所有者は工業大臣から取得
輸出事業者の認定は3 年間有効
2) 鉱産物の輸出承認・検査
鉱産物の輸出時に、商業大臣の指定機関による検査を実施
一部の鉱産物の輸出には、商業大臣からの事前承認が必要。同承認申請には以下の書類の添付が必要
・ 生産活動許可又は加工・精錬専門生産活動許可のコピー
・ 納税者番号のコピー
・ 会社登記証のコピー
・ エネルギー・鉱物資源大臣からの推薦状
鉱産物の輸出承認の有効期間は6 ヵ月
次稿では、2009 年1 月の新鉱業法の施行から現在の法制度決定・高付加価値化政策実施までの主だった経緯をまとめる。
(参考資料)
● 「国内における鉱物の選鉱加工処理と製錬活動を通じた鉱物の付加価値の増加」に関するエネルギー・鉱物資源大臣令(同大臣令2014 年第1 号)日本語訳
● 「国内における鉱物の選鉱加工処理と製錬活動を通じた鉱物の付加価値の増加」に関するエネルギー・鉱物資源大臣令(同大臣令2014 年第1 号)原文


