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報告書&レポート

2014年12月4日 金属企画部鉱種戦略チーム 増田一夫
2014年49号

中国成都・レアアース会議2014参加報告

 2014年9月11日~12日、中国四川省成都にて、Rare Earths Conference 2014が開催された。

 以下、Rare Earths Conference 2014での講演を元に、中国レアアース産業の現状及び2014年上期における中国レアアース輸出について報告する。

写真1. 講演会場
写真1. 講演会場

1. 概要

 Rare Earths Conference 2014は、レアメタルやフェロアロイ等の価格や市場分析を専門とするArgus Metal-Pages社が主催しているレアアースの会議である。2010年まではMinor Metals & Rare Earths Conferenceとしてレアメタルの会議として開催されていたが、2011年からはレアアースに特化して開催されており、通算11回目(レアアース会議として4回目)の開催となる。レアアース会議となってからは、これまで北京、広州、上海と、何れも中国国内で開催されている。

 本会議は、中国五鉱化工輸出入商会(CCCMC:China Chamber of Commerce for Importers & Exporters for Minerals, Metals & Chemicals)が共催となっており、全15講演のうち半分近くを占める7講演が中国国内のレアアース関係者による講演であった。中国からの講演は、中国五鉱化工輸出入商会、中国レアアース産業協会、包頭稀土高新区、包頭稀土産品交易所及びレアアース製品企業の講演であった。中国国外からの講演としては、大学、コンサルタント、ライナス社、ジェネラル・エレクトリック(GE)社及びレアアース探鉱企業(Tasman Metals(加)、Krucible Metals(豪)、Northern Minerals(豪))の講演が行われた。

 参加者についても、登録者数156名中、104名が中国からの参加であった。残りの参加者は中国国外のレアアース開発・生産企業、探鉱ジュニア企業やトレーダーが多くを占めた。日本からは商社及びメーカーから数名の参加があった。

2. 主な講演内容

 中国からの講演のうち、初日の午前中の基調講演となった2講演について、その概要を紹介する。

2-1. 中国レアアース産業協会Chen Zhaheng副事務局長による中国レアアース産業の現状についての講演

 中国レアアース業界の再編は、2011年の管理強化に始まり、2014年8月4日までに、包鋼集団、厦門タングステン業及び中国アルミの3集団が、工業情報化部に登録された。2014年内には、残りの五鉱集団、広西有色金属集団及び赣鉱業集団の3集団の登録が見込まれ、2015年上半期には中国レアアース企業 6大集団への合併再編完了が見込まれている。

 この再編は、国による管理的手法ではなく市場原理に基づくものであり、承認制ではなく登録制となっている点が重要である。乱立した状況から安定した市場への改革を行い、上記の6大集団のみによってレアアースの採掘を行うことにより違法採掘を一掃することで、レアアース生産量の調整が可能となる。この再編が効果的か否かは、近い将来の市場を見ればわかるであろうと述べた。

 次に、世界の主なレアアース鉱床の価格競争力について述べた。具体的には、中国国内4鉱床、中国国外で採掘されるレアアース1kg当たりの平均バスケット価格を推定し、比較検討結果を述べた(2014年8月27日付のレアアース価格を元に推定)。

 中~重希土類が多く含まれる南方鉱(イオン吸着鉱)のバスケット価格は38US$/kgと見積ったのに対し、軽希土中心となる、その他の中国国内鉱床(バイユン・オボ鉱床)、中国国外鉱山のバスケット価格概算は10~16 US$/kgと見積った。

 一方で、操業コストは、鉱山によって異なり不明な点が多いとしながらも、中国国外鉱山は、16~19 US$/kgと見積り、包鋼集団の操業コストは、2014年上半期に利益が出ていることから、少なくとも14 US$/kg以下であると推定した。

 以上より、現在のレアアースの価格水準では、バスケット価格と操業コストの差が少なくなっており、より高いバスケット価格を有する鉱石を採掘し、より低い操業コストで採掘可能な鉱山のみが生き残ると述べた。

 最後に、レアアースの輸出量は徐々に回復するも、その価格が低迷しているデータを基に、現時点で中国レアアース企業の6大集団統合の動きに対して市場の反応がないと述べた。

 加えて、中国のレアアース生産はバスケット価格が高く、操業コストが低いため価格競争力があると述べる一方で、レアアース最終製品の新たな需要増を見込めるような技術は開発されておらず、現時点でレアアースの大幅な需要増を期待することはできないとの見通しを述べた。

写真2. 中国レアアース産業協会のChen Zhaheng副事務局長
写真2. 中国レアアース産業協会のChen Zhaheng副事務局長

2-2. 中国五鉱化工輸出入商会Liu Yinan副会頭による2014年上半期における中国レアアース輸出に関する講演

 2010年から2014年上半期までの各年のレアアース輸出量と輸出価格に基づき、レアアース全体では、2011年の価格急騰後からは輸出量・輸出価格とも下落し続けていることを示した。

 併せて、主な酸化物の2014年上半期の輸出量及び価格については、以下のように述べた。

● 酸化ランタンは、レアアース輸出量の41%を占めており、5,658t(前年同期比32%増)の輸出量であった。平均輸出価格は5,914US$/tで、前年同期比で42%下落した。国内価格及び輸出価格とも価格急騰前の2010年の水準まで低下している状況が続いている。この価格動向は酸化セリウムについても同じである。

● 酸化プラセオジムは、輸出量が70 t(前年同期比29%増)であった。平均輸出価格は120,000 US$/tで、前年比で60%上昇した。他の鉱種と比較した場合、国内価格及び輸出価格とも価格下落の度合いが少なく、価格急騰前の2010年価格と比較し、4~5倍の価格を維持している。

● 酸化ネオジムの輸出量は、178 t(前年同期比換算75%増)であった。平均輸出価格は70,000 US$/tで、前年同期比で1%下落した。酸化プラセオジムと比較して国内価格及び輸出価格とも振幅の度合いが大きく、価格急騰前の2010年価格と比較し、2~3倍の価格を維持している。

● 中~重希土類については、実質的に増加しており、中~重希土類で最大量を占める酸化イットリウムの輸出量は458 t(前年比63%増)であった。価格動向については、基本的には国内価格及び輸出価格とも同じ傾向を示しており、急騰前の2010年価格と比較し増加している。例えば、酸化ユーロピウムは国内価格が1.14倍及び輸出価格1.42倍、酸化テルビウムは国内価格及び輸出価格とも1.5倍、酸化ジスプロシウムは国内価格が3倍及び輸出価格1.8倍と、それぞれ上昇している。

 レアアースの輸入についても言及し、2013年は合計3,668 tが、主に米国、日本及びフランスから輸入された。一方で、2014年上半期の輸入量は1,100 tで、前年度の米国、日本及びフランスに加え、マレーシア及びミャンマーからも輸入されている。特にマレーシアは前年比33倍となっている。

 最後に、販売量が減少し生産が余剰となっている現状を変えるのは難しいこと、レアアース・バイヤーがこれまで抱えてきていた余剰在庫が徐々に減り始めていることから購入が再開されるにつれ輸出量は増加する一方で、価格は低いままであろう、との見通しを示した。

写真3. 中国五鉱化工輸出入商会のLiu Yinan副会頭
写真3. 中国五鉱化工輸出入商会のLiu Yinan副会頭

おわりに

 レアアースの需要及び価格については、中国の国内外の講演内容はほぼ同じであり、中国からのレアアース輸出量は徐々に増えていく傾向があるものの、レアアース需要が劇的に増加するといった予測を立てることが難しいことから、特に短期的なレアアース価格の上昇を期待することは難しい、との論調であった。

 この状況は、レアアースの探鉱・開発を行う側にとって見通しが明るいものであるとは言い難く、全世界的な探鉱・開発活動の低迷が続くことが予想される。一方で、中長期視点から、中~重希土を多く含むレアアース鉱床の探鉱・開発を引き続き推進することは重要であり、今後も動向に注目していきたい。

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