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ニッケル需給予測、過剰幅は僅かながらも供給過剰が継続へ―2015年春季国際ニッケル研究会(INSG)報告―
2015 年4月20日から21日にかけて、ポルトガル・リスボンにおいて国際ニッケル研究会 (INSG)※の春季定期会合が開催され、INSG加盟国や産業団体、企業、専門家等の約70 名が参加した。第50回目にあたる統計委員会では、世界のニッケル鉱石生産、一次ニッケル生産及び一次ニッケル消費に係る2015 年の予測値について、加盟国から提出された数値をベースに参加者により検証が行われた。本稿ではINSGによる2015年の需給見通しについて報告する。 |
1. 需給バランス―過剰幅は大幅に縮小も供給過剰を継続―
表1のとおり、一次ニッケル生産量と一次ニッケル消費量との差分である需給バランスについて、2015年は2万 tの供給過剰になると予測した。前回の2014年秋季会合では2015年は2.6万 tの供給不足に転じると予測を出していたが、今会合では、中国GDP成長率の低下に伴い中国の一次ニッケル消費量を下方修正し、一方で中国NPI生産については前回予測よりも堅調であるとして、一次ニッケル生産量を上方修正した。その結果、過剰幅は僅かながらも、2015年も供給過剰が継続されると予測した。ニッケルは供給過剰が過去長い間継続していたが、供給不足には転じないものの、その過剰幅は2014年の13万 tから2015年に2万 tへと大幅に縮小する見通しである。
表1:世界のニッケル需給バランス(2012~2015年)
(出典:INSG会議資料より作成)
2. ニッケル需給動向
2012年から2015年にかけての地域別の数値を表2に掲げ、図1では当該数値をグラフ化して需給バランスを赤字で示す。また2015年の世界のニッケル鉱石生産量、一次ニッケル生産量及び消費量の見通しについて、詳細を以下に述べる。
表2:世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2012~2015年)
(出典:INSG会議資料より作成)
(出典:INSG会議資料より作成)
図1:世界のニッケル鉱石生産・一次ニッケル生産及び消費(2012~2015年)
(1) ニッケル鉱石生産量―フィリピン等の増産により2015年は前年比5.4 %増―
世界のニッケル鉱石生産量について、2015年は前年比5.4 %増の216.9万 tと推定した。インドネシアが2014年1月から鉱石禁輸に踏み切ったことにより、図1のとおり、2013年から2014年にかけて世界全体の生産量は大幅に減少した。2015年は、フィリピン、米国、ニューカレドニア、マダガスカル等の増産により生産量は若干持ち直すと予測し、国別の生産見通しは、上位からフィリピン40万 t、ロシア26.5万 t、豪州24.9万 t、カナダ23.5万 t、ニューカレドニア22万 t、インドネシア14万 tと予測した。フィリピンは前年比14 %増、ニューカレドニアは23.5 %増、一方でインドネシアについては前年比20.9 %減とさらに減産するとみている。
(2) 一次ニッケル生産量―中国の大幅減産により前年比2 %減へ―
世界の一次ニッケル生産量については、2015 年は前年比2 %減の195.8万 tと予測した。世界生産の3割を占める中国については、前会合ではインドネシア鉱石禁輸によりNPI生産を2014年の69.7万 tから大幅に減じて56.5万 tと予測していたが、2015年はフィリピンからの鉱石調達と在庫調整が進んでいるとしてこれを上方修正し、59万 tとした。2015年はこの他、ブラジル、コロンビア、ロシア及びウクライナで前年から1割程度減産するとみている。一方、ニューカレドニア、マダガスカル、グアテマラ、日本、フィンランド等では増産が期待されるとした。2015年の生産見通しは、上位から中国59万 t、ロシア22.3万 t、日本19.2万 t、豪州13.9万 t、カナダ15.2万 t、ノルウェー9.1万 t、ニューカレドニア9万 t、特にマダガスカル及びニューカレドニアにおいて前年比3割の増産が予想される。
(3) 一次ニッケル消費量―前年比3.7 %増と需要増鈍化へ―
世界の一次ニッケル消費量については、アジア、米州地域の需要拡大を下方修正し、2015年は前年比3.7 %増の193.9万 tと予測した。特に世界需要の5割以上を占める中国については、GDP成長率の減速に伴い過去2桁成長であった需要の伸びは2014年から鈍化し、2014年は前年比6.4 %増、2015年は前年比4.6 %増の100万 tと予想した。また消費量第2位の米国についても同様に、2014年の前年比5.2 %増から2015年は3.7 %増へと緩やかな伸びと予想した。国別では消費国上位から、中国100万 t、米国15.6万 t、日本14.6万 t、韓国8万 t、ドイツ及びイタリアで5.8万 tとなる見通しを出した。
まとめ
2015年の世界のニッケル需給について、これまでの供給過剰からインドネシア鉱石禁輸に伴って供給不足に転じる見通しを前会合で予測していたものの、今会合では、中国をはじめ欧米の需要成長を下方修正し、僅からながらも供給過剰を維持する方向に見直された。ただし過剰幅は2万 tと小規模であり、2015年の世界のニッケル需給はほぼバランスする見通しである。なお、中国のステンレス需要及びインドネシア製錬所建設動向等については、本会合でなされた講演を基に別途カレント・トピックスで報告を行う。
(注記)国際ニッケル研究会(INSG)※
国際非鉄研究会(銅、鉛亜鉛、ニッケル)の中では国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)に次いで2 番目に古い歴史を持ち、世界のニッケル市場の透明性の強化を目的に1991 年に国連の招請・勧告によって発足した国際機関である。現在、ニッケル生産国、消費国及び貿易国からなる14カ国及びEUが加盟している。事務局は、設立当初はオランダ・ハーグに、2006 年からポルトガル・リスボンに置かれている。同研究会は、ニッケル市場の需給予測分析を始め、国際的なニッケルの貿易取引に係る課題について研究するとともに、それらの課題に関して政府・産業界の利害関係者が定期的に話し合う機会を設ける機能を担っている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。