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銅需給、2015年の供給過剰は下方修正、2016年も供給過剰―2015年春季国際銅研究会(ICSG)需給予測―
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2015年4月23日と24 日の2日間にわたって、リスボンにて国際銅研究会(ICSG)※の春季定期会合が開催された。参加者は、ICSG加盟国や産業団体、企業、専門家等の約70名。23日に開催された統計委員会では、2015年と2016年の銅需給バランスに関して、加盟国から提出された数値をもとに、専門家及び各国参加者らで検証が行われた。本稿では、統計委員会において議論された銅需給見通しについて報告する。 |
1. 需給バランス―2015年の供給過剰幅は前年から縮小し36万4千 t―
ICSGのまとめでは、2015年の需給バランスは、銅地金生産が見かけ銅地金需要を36万4千 t上回り、6年ぶりの供給過剰に転じる予測。2016年も23万 tの供給過剰との見通しである。ただし生産増加の伸びはあるものの、需要の回復が大きく、余剰幅は、前回の秋季会合の予測(2015年の39万6千 t、2016年の58万7千 t)からいずれも縮小となった。
表1:世界の銅需給バランス
(単位:千t)
| 区分 | 2013年 | 2014年 予測 | 2015年 予測 | 2016年 予測 | 2013/14年 成長率 |
2014/15年 成長率 |
2015/16年 成長率 |
| 銅鉱石生産 | 18,265 | 18,710 | 19,533 | 20,536 | 2.4% | 4.4% | 5.1% |
| 銅地金生産(供給) | 21,043 | 22,487 | 23,410 | 23,985 | 6.9% | 4.1% | 2.5% |
| 銅地金消費(需要) | 21,386 | 22,910 | 23,046 | 23,757 | 7.1% | 0.6% | 3.1% |
| 需給バランス | ▲344 | ▲430 | 364 | 228 | |||
(出典:ICSG会議資料より作成)
ICSG事務局によると、データの信頼性については、本予測に使用されたデータは、加盟国が実施した調査結果と企業からの個別報告による情報が7割を超え、その他企業の四半期報告からの算出推計データ、業界団体からの提供値を用いている。そのいずれも入手できないものについては、第三者機関からの推計データを採用している。このうち、世界の銅需要のうち4割を占める中国については、公式の統計値が存在しないため、国の生産、貿易、および上海先物取引所の在庫情報に基づき保税在庫の調整を行って予測値としている。また中国保税在庫については、非公式な在庫情報は考慮していない。このうち中国の消費量については、前年の見かけ消費量を産業利用量(産業用在庫および保税倉庫量)と調整し、産業利用の成長予測にしたがって導き出した値である。
2. 需給動向
2014年から2016年にかけての世界の銅鉱石生産・銅地金生産及び消費について、地域別の数値を表2にまとめた。さらに図1において当該数値をグラフ化し、需給バランスを赤字で示す。
2015年および2016年の世界の銅鉱石生産量、銅地金生産量及び消費量の見通しについては、2.1以降のとおり。
表2:世界の銅鉱石生産・銅地金生産及び消費(2014~2016年)
(単位:千t)
| 区分 | 銅鉱石生産 | 銅地金生産 | 銅地金消費 | ||||||
| 2014 | 2015 | 2016 | 2014 | 2015 | 2016 | 2014 | 2015 | 2016 | |
| アフリカ | 1,931 | 2,212 | 2,512 | 1,362 | 1,515 | 1,684 | 247 | 268 | 279 |
| 北米 | 2,598 | 2,792 | 2,912 | 1,809 | 1,905 | 1,970 | 2,316 | 2,358 | 2,403 |
| 中南米 | 7,562 | 7,887 | 8,407 | 3,362 | 3,331 | 3,335 | 579 | 592 | 616 |
| ASEAN-10/オセアニア | 1,725 | 1,958 | 2,377 | 999 | 999 | 1,098 | 898 | 947 | 996 |
| 中国 | 1,963 | 2,070 | 2,210 | 7,640 | 8,550 | 9,100 | 10,986 | 11,097 | 11,596 |
| その他アジア | 582 | 663 | 745 | 3,149 | 3,179 | 3,325 | 3,505 | 3,593 | 3,637 |
| アジア CIS | 578 | 625 | 675 | 370 | 437 | 485 | 102 | 103 | 103 |
| EU | 847 | 844 | 864 | 2,741 | 2,723 | 2,708 | 3,179 | 3,214 | 3,247 |
| その他欧州 | 924 | 926 | 924 | 1,057 | 1,085 | 1,100 | 1,099 | 875 | 880 |
| 世界計 | 18,710 | 19,976 | 21,625 | 22,487 | 23,723 | 24,804 | 22,910 | 23,046 | 23,757 |
| 生産世界計(調整後) | 18,710 | 19,533 | 20,536 | 22,487 | 23,410 | 23,985 | ― | ― | ― |
| 変化率 | ― | 4.4% | 5.1% | ― | 4.1% | 2.5% | 6.1% | 3.1% | |
| 需給バランス | -423 | 364 | 228 | ||||||
| 中国保税在庫調整後の需給バランス | -430 | ||||||||
(出典:ICSG会議資料より作成)
(出典:ICSG会議資料より作成)
図1:世界の銅鉱石生産・銅地金生産及び消費(2014~2016年)
2.1 銅鉱石生産量―2015年は主要生産各国で増産傾向―
2014年の銅鉱石生産量の伸びは、生産が好調だった2013年と比較すると低調な2.4 %にとどまり、生産量は1,871万 tであった。主要生産国のチリやペルー、インドネシア、ザンビアでの生産障害のほか、見込まれていた増産計画や新規鉱山開発の遅延が影響している。
2015年の世界の銅鉱石生産量は、1,953.3万 tで、増産計画や前年遅延した新規鉱山生産分が寄与するとの予測から、前年比4.4 %の成長が見込まれる。その要因には、生産の増加分としてザンビアSentinel鉱山の拡張(15万 t/年→30万 t/年)、メキシコBuenavista鉱山の拡張(12.5万 t/年→31.3万 t/年)、ペルーのConstancia鉱山(2015年11.5万 t生産開始)、チリのSierra Gorda鉱山及び Caserones鉱山, ペルーのToromocho鉱山, ブラジルのSalobo鉱山における増産が加味されている。
2016年の供給過剰要因は、ペルーのLas Bambas鉱山(40万 t/年)およびCerro Verde鉱山(27万 t/年)の拡張である。但し2015年から2016年にかけての増産予測要因には、新規鉱山プロジェクトが多数含まれることから、操業支障リスクや開発動向次第で変動が見込まれる。
さらに、世界の銅鉱石生産の2割を担うアフリカでは、ザンビアの税制改革をはじめとする操業リスクの高さが懸念材料であるほか、銅価格の低下が進めば生産抑制につながる可能性がある。またインドネシアの鉱石禁輸動向には今後も注視を要する。
表3:2015年・2016年の鉱石生産増産要因となる主要国の増減量一覧
| 主要生産国 | 2015年 | 2016年 | ||
| 増減量 (千t) |
増減率 | 増減量 (千t) |
増減率 | |
| インドネシア | 269 | 71% | 264 | 41% |
| ザンビア | 231 | 33% | 215 | 23% |
| チリ | 190 | 3% | 233 | 4% |
| ペルー | 120 | 9% | 300 | 20% |
| 中国 | 107 | 5% | 140 | 7% |
| メキシコ | 96 | 19% | 120 | 20% |
| DRコンゴ | 73 | 8% | 130 | 13% |
| ブラジル | 56 | 19% | 15 | 4% |
| 米国 | 52 | 4% | 30 | 2% |
| カナダ | 46 | 7% | -30 | -4% |
| モンゴル | 40 | 15% | 20 | 7% |
| イラン | 35 | 16% | 39 | 15% |
| アルゼンチン | -43 | -42% | 20 | 33% |
| 豪州 | -60 | -6% | 140 | 15% |
(出典:ICSG会議資料より作成)
2.2 銅地金生産量―2015年、2016年とも2014年に引き続き中国が牽引し増産―
2014年の世界の銅地金生産量は、中国、DRコンゴ、日本、米国における一次地金の生産が堅調で、前年比7 %増の2,248.7万 tであった。
2015 年は、DRコンゴのKamoto鉱山の拡張(SxEw16万 t/年→31万 t/年)に代表されるアフリカでの増産のほか、中国での増産が引き続き寄与し、前年比4.1 %増の2,341万 tと予測される。SxEwを除く銅地金生産についても、銅精鉱の増産が寄与して6 %の増産が見込まれる。一方で二次地金生産については、スクラップの供給がタイトなため2015年は2 %の減産予測となった。なお2016年の銅地金生産量については、成長はするものの伸びは鈍く前年比約2.5 %増の2,398.5万 tと予測される。このうち主な増産国と主な要因は表4に示す通り。主な増産国は中国で、11.9 %増となる91万 tの増産が予想される。
表4:2015年・2016年の銅地金増産主要国の増減量とその要因
| 主要生産国 | 2015年 | 2016年 | 主要因 | ||
| 増減量 (千t) |
増減率 | 増減量 (千t) |
増減率 | ||
| 中国 | 910 | 11.9% | 550 | 6.4% | 電解容量の拡張 |
| ザンビア | 92 | 18.1% | 55 | 9.1% | SxEw拡張と稼働率の向上 |
| メキシコ | 90 | 22.9% | 40 | 8.3% | SxEw拡張 |
| DRコンゴ | 61 | 7.8% | 110 | 13.2% | 新規SxEw拡張 |
| インドネシア | 47 | 20.6% | -8 | -2.9% | 生産抑制解除、2016年は補修 |
| ブラジル | 26 | 10.8% | 10 | 3.8% | 前年の操業抑制から回復 |
| フィリピン | 50 | 38.5% | 0 | 0.0% | 前年の操業抑制から回復 |
| 韓国 | 68 | 11.4% | 18 | 2.7% | 製錬所拡張 |
| 米国 | 13 | 1.2% | 25 | 2.3% | SxEw稼働率の向上 |
| カザフスタン | 67 | 25.0% | 48 | 14.2% | Zhezkazgan製錬所の再開 |
| イラン | -4 | -1.9% | 53 | 27.3% | 2016年に新製錬所操業 |
| 豪州 | -54 | -10.5% | 45 | 9.9% | 2015年に補修予定 |
| 欧州 | -18 | -0.7% | -15 | -0.6% | スペイン、ポーランドの製錬所で補修 |
| 日本 | -19 | -1.2% | 74 | 4.8% | 2015年に補修予定 |
| チリ | -64 | -2.3% | -6 | -0.2% | 既存SxEwの生産削減 |
(出典:ICSG会議資料より作成)
2.3 銅地金消費量―2015年世界成長0.6 %増にとどまり、2016年は3.1 %増―
2014 年の世界消費は前年同期比で7.1 %増加した(表1)。
2015年については、中国の産業利用の銅需要において4.5~5 %増が見込まれるものの、見かけ消費が1 %増にとどまる見通しであることから、世界成長は0.6 %増の2,304.6万 tとの予測となった。同年中の中国を除くその他世界の銅消費量は、ほぼ横ばいの予測である。
2014年のEUの銅地金消費は6 %増となり、予測を上回る伸びであった。2014年9月に導入されたロシアの輸出関税廃止の影響により1、ロシアからのワイヤロッド輸入が伸び、欧州内でのマーケットシェア拡大が認められた。さらに湾岸諸国における消費の伸びもロシアからの供給増に下支えされる。豪州では2014年にワイヤロッド工場の閉鎖で消費量が落ち込んだが、台湾とマレーシアでの消費増がこの影響を相殺した。日本では2015年に前年比1.2 %減が予測される。
2016年については、中国における産業利用の銅消費が5 %増に回復するとの見込みから、世界的な銅地金消費も堅調に推移し、3.1 %増の2,375.7万 tに至る予測である。
おわりに
今回の統計委員会では、2014年の中国における地金輸入量と地金消費量の数値にかい離があったことを受け、中国国家備蓄局(SRB)の在庫放出と輸入動向をいかに正確に把握するかが議論され、事務局と加盟各国との情報共有を通してより現実に即した予測手法を目指す方向性が示された。今後のICSGにおいては、中国から入手可能なデータを予測のなかにどのように反映させるかが統計手法上の課題となる模様である。
さらに講演の一部として中国から国家統計データ集計に関する現状と課題を紹介する発表がなされ、参加者の注目を集めた。経済環境委員会および統計委員会で行われた講演においてもコンサルタント会社数社から銅需給と価格予測について報告がなされたことから、これらの発表内容については別号にて報告する。
(注記)国際銅研究会(ICSG)※
国際銅研究会は、国際非鉄3研究会の中では最も新しい研究会で、国連の招請・勧告によって1992年に発足した国際機関である。世界の銅経済に関する情報の提供、政府間協議の場の提供及び銅に関する諸問題について国際協議・協力を推進することが目的で、世界の主要銅鉱石生産国、地金生産国及び消費国の23カ国及びEUが加盟している。事務局は、2006 年からポルトガル・リスボンに設置されている。
同研究会は、主に銅市場の需給予測に関する統計分析を始め、国際的な貿易取引に係る環境・経済面の課題について研究しており、統計等の刊行資料は、世界的に一定の評価を得ている。通常、定期会合は春季、秋季の年2回開催されている。
1 JOGMECニュースフラッシュ「ロシア:政府、ニッケル及び銅の輸出関税廃止を前倒し」
https://mric.jogmec.go.jp/public/news_flash/14-30.html#18


