報告書&レポート
ペルーの2014年の鉱業の動向
2015年4月付けでエネルギー鉱山省が公表した資料によると、ペルーの2014年の輸出総額は39,326百万 US$で2013年(42,474百万 US$)に比べて約7.4 %減少し、その内、鉱産物輸出額の合計は全体の52 %に当たる20,410百万 US$であり、2013年(23,554百万 US$)に比べ13.3 %の減少となった。また、鉱産物輸出額の約84 %を占める銅、亜鉛、金の2014年の鉱石生産量は、銅を除き2013年と比較してわずかに減少した。 本稿では、これら主要鉱種について、エネルギー鉱山省により公表された2014年の生産量とペルーの鉱業プロジェクト及びそれらの最近の動向を概観する。 |
1. 2014年の金属鉱石生産量
ペルーにおける主要鉱種の2014年の生産量、世界生産量及び世界順位を表1に、また、銅、亜鉛及び金の過去10年の生産量の推移を図1に示す。
表1. 金属鉱石生産量(2014年)
図1. ペルーにおける金属鉱石生産量の推移(2005~2014年)
(1) 銅
2014年のペルーの銅生産量は1,379.6千tであり、2013年比で4千t(0.3 %)の増加と前年並みに留まった。2014年の世界の銅生産量は、2013年比で1.1 %増の18,511.1千tであり、ペルーの世界順位は、チリ、中国に次いで第3位を保っている。ペルーの銅生産量は、伸びが鈍化してはいるが、2013年に引き続き増加しており、史上最高を更新した。
2014年の生産量を鉱山別にみると、ペルー最大のAntamina鉱山は2012年3月の拡張工事完了以降、順調に生産量が増加した2013年には461千t(全体の33.5 %)を生産したが、2014年は労働者ストライキと平均銅品位の低下(2013年末の1.16 %から2014年末には0.95 %に)による影響を受け、362千t(全体の26.3 %)に留まった。
ペルー第2位の銅生産量で現在拡張工事を実施中のCerro Verde鉱山は、Sx-Ewによる生産量を増加させたものの、拡張工事の影響もあり浮遊選鉱による生産が約35千t減少し、全体の生産量は2013年と比較して10 %減の235千tとなった。
2012年11月に生産を開始したGlencoreのAntapaccay鉱山は銅生産量を10.5 %伸ばしたほか、El BrocalのColquijirca鉱山が前年比で63.6 %生産量を伸ばした。
なお、2013年12月に開山したChinalcoのToromocho鉱山は、当初年間銅生産量を250千tに設定していたが、2014年内には生産量が伸びず70千tに留まっており、鉱石中のヒ素濃度が高いことが原因と伝えられている。
一方、Cusco州のConstancia銅鉱山(Hudbay社)が、2014年第4四半期に生産を開始した。同鉱山では2015年第2四半期に本格生産を開始する予定で、それ以降の年間銅生産量は82千tとされている。
表2. ペルー上位10 銅鉱山の生産量(2014年)
ペルーにおける銅の生産は、Antamina鉱山及びCerro Verde鉱山の生産量の減少の影響で、外資が操業する上位5鉱山の生産割合が全体の85 %から78 %に減少したが(図2)、これは一時的なものであり、今後のペルーの銅の生産推移は、外資が操業するこれら5鉱山の生産動向と、新規開発プロジェクトの進捗が鍵を握っている状況に変化は無い。
図2. 上位5銅鉱山の占める割合
(2) 亜鉛
2014年の亜鉛の生産量は1,318.7千tとなり、2013年比で32千t(-2.4 %)の減少となった。世界順位は中国、豪州に次ぎ、世界第3 位と変化がなかった。ペルーにおける亜鉛の生産量は、2008年の1,602.6千tをピークに2011年まで減少が続き、2012年、2013年と増加したが、2014年には再び減少に転じた(図1)。
生産量を個別にみると、ペルーの亜鉛生産量の20.2 %を占めるAntamina鉱山は、2013年には316千tの亜鉛を生産したが、2014年は266千t(-15.8 %)に留まった。これは銅の場合と同様、処理鉱の品位低下と労働争議の影響を受けたものと伝えられている。
一方、ペルー第2位のCerro Lindo鉱山、第7位のCatalina Huanca鉱山、第10位のCarahuacra鉱山は生産量を大きく伸ばしており、Antamina鉱山を除く亜鉛鉱山生産量は2014年はわずかではあるが伸びていることから、2014年のペルー全体の亜鉛生産量は、Antamina鉱山の生産減の影響が大きい(表3)。
表3. ペルー・上位10 亜鉛鉱山の生産量(2014年)
図3. 上位5 亜鉛鉱山の占める割合
(3) 金
2014年のペルーの金の生産量は、2013年の生産量を約10.1 t(-6.7 %)下回る141.3 tであった。2011年以降生産量が増加傾向にある銅とは対照的に金の生産量は減少し、2014年は、ここ10年間で最も生産量が多かった2005年の生産量207.8 tの約68 %となった(図1)。
2014年の生産量を鉱山別にみると、2005年には104 tの金を生産したペルー最大のYanacocha鉱山の金生産量は大幅に減少し、2013年比でも1.5 t生産量が減少(-4.6 %)し、2014年は30.2 tに留まっている(表4)。
Yanacocha鉱山と同様Cajamarca州に位置し、同じプロジェクト会社(Yanacocha社)により進められてきたMinas Conga金プロジェクトに関しては2011年末から反対運動が激化し、翌2012年8月末にプロジェクトの中断に至ったが、その後も断続的に発生した反鉱業運動に伴いYanacocha鉱山においても今だに継続的に生産に影響が出ているとみられている。
エネルギー鉱山省の統計ではペルー第3位の金生産量であるM.D.D.は、小規模鉱業事業者や手工業的な零細規模の事業者の集合である。その金生産量は、2011年には22.5 tであったが、翌2012年は、インフォーマル鉱業(鉱業活動が認められる地域内における、正規手続きを踏まずにおこなわれる鉱業活動)の合法化措置による強制的な操業中断と、違法鉱業(鉱業活動が禁止されている地域内での鉱業活動)取締りによる影響で生産量が11.4 tに半減した。2013年には合法化された鉱業事業者の増加等により、前年比35 %増の15.4 tまで回復したかに見えたが、2014年のM.D.D.の金生産量は約7.9 tであり、2013年と比較して半減している。この原因は、エネルギー鉱山省も明確にしていないが、金の違法採掘の取り締まり、その一環としての資機材の販売規制強化やボリビア等隣国への輸出の禁止措置など、生産に大きな影響を与える措置が合法的な金生産者に対しても事業を行いにくい状況を作り出していること、更に2013年の生産量統計に違法採掘により生産された金が含まれていた可能性等が考えられる。
表4. ペルー・上位10 金鉱山の生産量(2014年)
図4. 上位5金鉱山の占める割合
2. 2014年の地金生産量
ペルーにはIlo(Moquegua州、銅)、Cajamarquilla(Lima州、銅・亜鉛)、La Oroya(Junín州、銅・鉛・亜鉛)、Funsur(Ica州、錫)の4か所の製錬所が存在する。
Southern Copper社のIlo銅製錬所は、2014年は、ほぼ前年並みの255千tの銅地金を生産した。
米国Doe Run社が所有するLa Oroya製錬所は、2008年には銅地金を54千t、亜鉛地金を43千t、鉛地金を114千t生産していたが、資金繰りの悪化によって2009年半ばから操業を停止、2010年末には債権者会議で一旦会社清算を決定したが、環境対策プログラムを進めるためとして、2012年7月末に銅、亜鉛の製錬再開を発表、2012年9月に銅と亜鉛の製錬を再開した。その後2013年4月には債権者会議において清算手続きを中止し、会社更生後にHuancavelica県のCobriza銅鉱山とともに売却することが決定され、それ以後は断続的な生産に留まっている。
一方、Cajamarquilla製錬所では生産設備の拡張工事の結果、亜鉛地金の生産量が2009年の140千tから2011年には313千tへとおよそ2.2倍の増産を達成し、以後順調に操業は推移し、2014年も328千tの亜鉛地金を生産した(表5)。
表5. ペルー・地金生産量(2014年)
3. 鉱業投資の動向
ペルーでは、2011年7月に左派のウマラ政権が誕生し、反自由主義経済や民族主義を打ち出すことが懸念されたが、当初の方針は中道寄りに変換され、民間投資を促進する経済政策が継続されている。ウマラ政権は発足から丸4年が経ち、鉱業ロイヤルティ法の改正、鉱業特別税及び鉱業特別賦課金の新設など鉱業税制が変更・強化され、一方ではインフォーマル鉱業者の合法化・違法鉱業に対する取締りが行われ、健全な鉱業の発展に向かうべくいくつかの施策が実行された。鉱業界からは一定の評価をもって受け取られていたが、政権4年目の後半から終盤にかけて、金属価格低下や鉱業投資額の減少、反鉱業運動等があり、鉱業政策の点では苦しい状況を迎えている。
エネルギー鉱山省によると、ペルーの鉱業投資額は2013年までは過去最高を更新し続け、2013年は97.3億 US$に達したが、2014年の鉱業投資額は86.5億 US$と減少に転じた(図5)。2014年の鉱業投資のうち、探鉱費は19.5 %減、鉱山開発工事費は12.1 %の減、プラント設備・鉱業機器費用は34.3 %の減、インフラ整備費は20.4 %の減となった一方で、地元対策費(水道、学校、教育、地元への説明等の費用)や環境影響評価に要する費用と見られる準備費及びその他の費用は7.6 %増加している。
これは、比較的ステージが進んだプロジェクトの鉱山開発工事の遅れ、地元報道や企業からのヒアリングでも伺われるように鉱山経営の選択と集中に起因するものと考えられるほか、鉱山企業に対する地元の要望が高くなってきていることを反映しているものと考えられ、前述のとおり準備費及びその他の費用も伸びが鈍化していることからも鉱業プロジェクトが停滞し始めたことの表われと見られる。
2014年に最も鉱業投資額が多かったのはArequipa州(20.2億 US$)で、以下Apurimac州(16.8億 US$)、Cusco州(13.1億 US$)、Junin州(6.9億 US$)、La Libertad州(5.2億 US$)と続く。鉱業投資額を企業毎に見ると、2014年に最も鉱業投資額が多かったのはCerro Verde社(17.7億 US$)で、以下、Las Bambas社(16.4億 US$)、Hudbay社(7.4億 US$)、Antapaccay社(5.7億 US$)、Chinalco社(4.5億 US$)と続く。
図5. ペルーにおける鉱業投資額の推移
4. 進行中の鉱業プロジェクト
2015年5月のエネルギー鉱山省発表によると、鉱山拡張、鉱山開発、探鉱などの主要プロジェクトが、リン及びカリウムを対象とするプロジェクトを除き47件あるとされ、これら47プロジェクトによるプロジェクト実施期間中の総投資予定額は合計で590億 US$に上る。2015年5月のエネルギー鉱山省発表によると、鉱山拡張、鉱山開発、探鉱などの主要プロジェクトが、リン及びカリウムを対象とするプロジェクトを除き47件あるとされ、これら47プロジェクトによるプロジェクト実施期間中の総投資予定額は合計で590億 US$に上る。
主要47プロジェクトは、鉱山拡張5件、環境影響評価(EIA)書承認済み~鉱山開発工事中17件、EIA審査中1件、探鉱段階24件であり、探鉱が初期段階であるものや小規模なものを含まない。また、47プロジェクトの内、28件は銅ないし銅を主対象とするプロジェクトである。
また、前述の主要47プロジェクトと4件のリン及びカリウムプロジェクトを加えた51件のプロジェクトの総投資額は631.1億 US$に達するが、これを国別資本で見ると、第1位中国(226.6億 US$、35.9 %)、第2位カナダ(101.5億 US$、16.1 %)、第3位米国(100.7億 US$、16.0 %)、第4位ペルー(43.3億 US$、6.9 %)、第5位メキシコ(41.6億 US$、6.6 %)、第6位豪州(37.9億 US$、6.0 %)、第7位ブラジル(24.2億 US$、3.8 %)第8位日本(21.4億 US$、3.4 %)第9位英国(16.5億 US$、2.6 %)と続く。
今後のEIA承認手続き等の動向次第ではあるが、現時点で比較的早期に拡張工事完成や生産開始が見込まれている、主な鉱業プロジェクトを表6に示す。
表6. ペルーの主な鉱業プロジェクト
5. Tia Maria銅プロジェクトの動向
Tia Maria銅プロジェクト(Southern Peru Copper社(SPC社)、Arequipa州)は、Arequipa州Islay郡のCocachacra、Dean Valdivia、Punta de Bombon、Mejia、Mataraniの地域住民が農業用水の汚染・枯渇を危惧して反対運動が始まったとされている。
2009年9月の上記5地区の住民投票(法的拘束力はない)の結果、反対派が80 %を占める結果となり、翌2010年4月には、プロジェクト反対派がArequipa州内のパンアメリカンハイウェーを封鎖、ボリビア、アルゼンティン、チリとの輸送が止まり、多大な経済損失が発生するに至り、政府はプロジェクトを一時中止させ、環境影響評価(EIA)の見直しを実施させることとし、プロジェクトで使用する用水は海水を淡水化して利用するよう要請した。
2011年3月にはペルー政府の要請を受けて当初のEIA審査や手続きに関する助言を行った国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)の報告書が公表されたことを受け、Tia Maria銅プロジェクトの地元では無期限抗議行動が開始され、翌4月には抗議行動で死者3名が発生した。この事態を受け、エネルギー鉱山省は当初のEIAを承認しないことを決定し、SPC社に対し、同プロジェクトの活動停止、重機・設備・資機材の撤去命令を発出した。
その後、Tia Maria銅プロジェクトに対する大きな抗議行動は伝えられなくなった。そのような中の2012年2月、SPC社は、新たなEIAを実施中であることを発表した。
2013年11月、SPC社は、新たなEIAをエネルギー鉱山省に提出し、EIAで義務付けられた公聴会が2014年4月までに10回実施され、翌2014年8月には再提出(2回目)のEIAが承認されたとエネルギー鉱山省は発表した。
2014年10月には統一地方選挙が実施され、Tia Maria銅プロジェクトに反対の立場を取るAle氏が地元Islay郡の知事に、また、同郡のDean Valdivia及びCocachacra地区の村長にも反対派の人物が選出された。
2015年1月、SPC社の親会社であるGrupo Mexicoは、Tia Maria銅プロジェクトの鉱山建設が許可され、2月末ないし3月頭から鉱山建設工事が開始される予定であると発表した。
そして3月23日、Arequipa州Islay郡では、Tia Maria銅プロジェクトの実施に対し、道路封鎖や古タイヤを燃やすなどする反対派による抗議行動が再燃した。これを受け翌3月24日、内務省は2,000名の警官を配備したが、3月25日には4,000名の農家や周辺住民が抗議行動に参加し、混乱の規模は拡大した。
この事態を収拾すべく、4月10日にはエネルギー鉱山大臣、環境大臣、内務大臣、農業大臣がArequipa入りしてArequipa州のOsorio知事と協議するなど、対策が検討されたが、4月22日には銃創によりデモ隊から死者が発生する事態となった。
中央政府は、事態収拾のため要人を現地に派遣し、度重ねて地元反対派との対話の方策を探ったが、反対運動にはNGOから資金提供を受けた政党や外部団体が介入しているとも言われ混乱は収まることなく、地元農民は警官隊に対し投石紐を利用した「攻撃」をしかけ、5月9日には警官1名が死亡し、Humala大統領は、Arequipa州Islay郡に軍隊を派遣し、治安維持、交通確保、暴力取締まりを行うこととした。
5月15日、Humala大統領は全国向けテレビでTia Maria銅プロジェクトへの抗議運動に関して混乱収拾に向けて演説を行い、その直後SPC社は60日間のプロジェクト停止を申し出た。
軍隊派遣とプロジェクト中止による落ち着きもつかの間、5月22日には再びArequipa州Islay郡で反対派と警官隊の衝突で死者1名が発生した。Humala大統領は同日から60日間(2015年7月20日まで)、Arequipa州Islay郡に対し非常事態宣言を発令した。2015年3月からこの時点までで4名の死者、少なくとも300名以上の負傷者が出ている。
その後もArequipa州で反対派のデモ行進が行われたほか、5月25日にはIca州において同州のShougang鉄鉱山に対する雇用問題からの抗議デモで死者が発生、5月27日にはPuno州でも鉱業反対を訴える抗議行動が、また北部Cajamarca州でも現在身柄拘束中のSantos元知事の身柄釈放を求めるデモ行動が発生している。
2015年6月2日には、SPC社は60日間の停止中であるTia Maria銅プロジェクトの停止期間を延長する可能性があること、しかし同社はTia Maria銅プロジェクトを実施する方針で、撤退する予定は無いことを表明した。
このように、Tia Maria銅プロジェクトに対する抗議運動は過激なものであり、現状ではプロジェクト反対派に歩み寄りの姿勢は見られない状況が続いている。この抗議行動に我に返ったかの如く、他所においても鉱山に対する抗議行動が始まっており、ペルーにおける健全な鉱業と国家の発展を願う人々からは強い懸念の声が聞かれる。
また、外部者や民衆を扇動する人物が関与し、一部では抗議行動を止める代わりに金を要求する人物の存在も伝えられるなど、様々な思惑が入り乱れて混乱が深まっている。
6. おわりに
ペルーは、輸出総額の52 %を鉱産物が占める鉱業国である。この比率は、ペルー経済における鉱業の相対的な位置づけを示すものであり、金属価格高騰の波が通り過ぎ、ペルー経済の発展とともに年々低下の傾向がみられるものの、ペルーにとって鉱業が重要な産業であることには変わりはない。
2014年は、ペルーの主要鉱産物である銅、亜鉛、鉛、銀はほぼ前年並みの生産量を記録しており、わずかではあるが銅は2012年以降史上最多生産量を更新し続けているほか、2012年11月に生産を開始したAntapaccay銅鉱山も2014年は前年比で10.5 %生産量を伸ばした。また2014年第4四半期には、新たにConstancia銅鉱山が生産を開始するというニュースも聞かれた。
2014年のペルー政府の鉱業政策上の取り組みとしては、インフォーマル鉱業合法化推進への検討・違法鉱業取り締まりや、景気減速への措置としての性格を持ち、鉱業・環境規制緩和を含む経済活性化対策法案の制定による手続き簡素化への取り組みなどがあった。
ペルー鉱業は、この3年間では、例えば2006年から2008年の3年間ほど順調に生産量が伸びている訳ではないが、2014年までは比較的堅調に生産が行われてきた。
一方、年間鉱業投資額の推移は、2008年以降初めて減少に転じた半面、準備費及びその他費用は増加が続いており、地元対策費等の企業の負担が大きくなっていることを表していると見られる。
また、2014年には、これまでCajamarca州のMinas Conga金プロジェクトと並んで反対運動の行方が注目されてきたArequipa州のTia Maria銅プロジェクトの2回目のEIAが承認され、翌2015年1月には鉱山建設許可を取得したものの、実際の鉱山開発開始と時期を同じくして地元で強烈な反対運動が再燃することになった。
鉱山開発が環境に与える影響は不可避であり、鉱業が地元への配慮から逃れることもまた不可避で、ペルーにおける鉱山開発は容易ではないが、環境への影響を最小限に抑えるための関係者の地道な努力と正しい理解、富の配分の公平性・透明性が大きな資源ポテンシャルを持つ国ペルーを支え、発展させていくものと思われる。
2016年は大統領選挙が実施(4月とみられる)され、7月末には新政権が誕生することになる。かつて日本において富国強兵・殖産興業と言われていた時代とは世界の金属鉱物資源の供給構造やスタイル、国際情勢、内需の多寡が異なり、国民性も異なるため、ペルーの発展にはペルーに合った形とスピードが別にあるはずである。鉱物資源が豊富に存在することは大きなアドバンテージであるには変わりなく、ペルーにおいて健全な鉱業が発展することを祈りたい。
図6. ペルーの主要鉱山・製錬所・鉱業プロジェクト位置図
(本文あるいは図表で取り上げた鉱山・プロジェクト等を示した)