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報告書&レポート

2016年4月7日 金属企画部国際業務課
No.16-11

ボツワナ共和国及びジンバブエ共和国における探査・環境保全セミナー成果報告

 JOGMECは2013年の日アフリカ資源大臣会合で採択された「日アフリカ資源開発促進イニシアティブ」、そして2015年の第2回日アフリカ資源大臣会合で採択された「日アフリカ資源大臣パートナーシップ(JAMP)」の一環として、鉱物資源の探査・鉱山環境保全を主題としたセミナーを開催し、日本の技術や知見を共有することで資源国との関係強化を図っている。本事業は鉱物資源のポテンシャルは高いが、探査技術や環境対策が不十分な地域において行っており、これまでにアフリカでは5カ国で開催してきた(平成25年度:ザンビア、南アフリカ、平成26年度:マダガスカル、平成27年度:ボツワナ、ジンバブエ)。
 本稿は平成27年度に開催したボツワナ共和国とジンバブエ共和国における探査・環境保全セミナーの結果について報告するものである。

1. ボツワナ共和国

(1)経緯・概要

 JOGMECはボツワナに地質リモートセンシングセンターを設置しており、2008年の開所以降、同国とは友好関係を維持してきた。同国はSADC諸国の中でも鉱業投資環境が比較的良く、将来の資源供給ソースとしても有望であると考えられる。
 セミナーは平成27年10月30日(金)にボツワナのハボロネ市にあるAVANI Gaborone Hotelで経済産業省とボツワナ鉱物エネルギー水資源省(以下MMEWR)との共催で行われた。当日はSADC諸国の鉱業関係者を中心に約130名が参加し、活発に意見交換が行われた。セミナーには在ボツワナ共和国日本国大使館の尾西特命全権大使が出席し、ボツワナのこれまでの支援に感謝の意を示すとともに、2016年の日本―ボツワナの外交樹立50周年を機に更なる関係強化を図りたい旨の発言があった。また、ボツワナ側からはオバケンMMEWR次官補が出席し、セミナーの冒頭でJOGMECの人材育成事業の重要性とこれからの協力関係の継続の必要性について言及した。
 講演ではJOGMECからは南部アフリカでの探査活動の紹介や、JOGMECリモートセンシングセンターの事業についての報告、最新のリモートセンシング技術の紹介のほか、鉱山環境保全技術について紹介を行った。一方、ボツワナ側からは同国の鉱業政策や探査状況、環境保全への取り組み、政策等の発表が行われた。

(2)ボツワナ側のプレゼン要旨

 ボツワナは鉱業分野が国内のGDPの23.1%を占めており、その主たる産物はダイヤモンド、銅、ニッケル、金などである。これらに加え、マンガンや銀などの賦存も確認されている。現在ボツワナの鉱業は転換期に差し掛かっており、様々な問題が散見されている。第1に近年の価格低迷を受け、探査・開発活動が下火になっている点であり、この影響で雇用の縮小が起こっている。第2に新規鉱床はより深いところに存在しているため、探査が困難になっている点である。今後は探査が困難な鉱床を開発していかざるを得ない状況に直面しており、その対策として、データの解析・マネジメントの強化、新技術の導入、熟練した技術者の育成等に力を入れていくとのことであった。
 ボツワナの環境対策については1960年代後半から1970年代にかけて法制を整備してきており、同国内の鉱業活動については環境アセスメントに沿って、すべて国に報告することになっている。MMEWRの中に環境対策を扱う部門を有しており、廃棄物、環境汚染についてハイリスクなオペレーションの管理、環境汚染の監視・規制等を行っている。所有者がいる鉱山では基本的に所有者が閉山後も管理をすることになっているが、BCL(ボツワナ政府系の鉱山公社)が基金を設立し、管理の費用の補助を行っている。所有者不在鉱山では、基本的に政府がリハビリテーションを行っているとのことであった。

セミナーの様子写真2点

2. ジンバブエ共和国

(1)経緯・概要

 平成27年9月にJOGMECはジンバブエ鉱山・鉱業開発省(以下MMMD)と足掛け5年にわたる協議の末、金属資源開発分野における協力を目的とした覚書(MOU)を締結した。同国は白金やクロム等のポテンシャルが高いことと国民の教育水準の高さのため、日系企業の注目も高い。同国との関係強化は、日本の将来の資源の安定供給のため重要である。
 セミナーは平成28年3月3日(木)にジンバブエのハラレ市にあるMeikles Hotelで経済産業省とMMMDとの共催で行われた。セミナーにはジンバブエ官民の鉱業関係者や在南アの日系企業の代表者等約130名が参加した。セミナーの冒頭では在ジンバブエ日本国大使館の平石特命全権大使より、日本―ジンバブエ間の鉱業分野の関係の進展を歓迎するとともに本セミナーの重要な意義について言及された。ジンバブエ側からは閉会の際に、本セミナー開催に感謝の意が表明され、日本との関係強化に期待を寄せるとともに日本企業からの投資を呼び込みたい旨の発言があった。
 講演ではJOGMECからは南部アフリカ地域での探査活動の紹介のほかリモセン技術の紹介、鉱山環境保全技術について紹介を行った。またボツワナセンターでの研修事業の際にジンバブエ専門家に対しても行ったリモセン解析のデモンストレーションを行った。一方、ジンバブエ側からは国内の鉱業政策や探査状況、環境保全への取り組み・政策等の発表が行われた。また今年2月に行われた上記研修のジンバブエ研修生代表者による研修の成果の報告が行われた。
 Q&Aでは非常に活発に意見交換が行われた。日本―ジンバブエ間のMOUをベースとする今後の関係の進展について質問があり、JOGMECから新年度の研修事業等の予定を説明した。また同国内ではSmall Scale Miningによる水銀汚染が深刻な問題となっており、ジンバブエ政府も対策を講じていくが、日本にも支援を求める要望があった。

(2)ジンバブエ側のプレゼン要旨

 ジンバブエは鉱物資源に恵まれており、60種以上の鉱物の存在が確認されている。鉱業部門が国内のGDPに占める割合は16%以上あり、特に外貨収入の約6割は同部門が占めていることから、同国政府は国内産業の柱と認識している。そのため、同国は鉱山権益の51%を現地化するという政策をとり、国内事業者の基盤強化を図っている。その他にも資源の高付加価値化政策にも乗り出しており、白金鉱山会社に国内に製錬所を作るように働きかけている。現在このプロジェクトについては交渉が継続中であり、平成28年7月には結論が出るとのことであった。国内の探査状況としては国土の約60%がマッピングされており、各地域の詳細なマップは同国の地質調査所で閲覧可能とのことであった。
 環境保全については近年意識の高まりが国内にみられる傾向にあり、SHEQ(Safety Health Environment & Quality)マネジメントの人材登用を義務付ける鉱業セクターが増えている。その一方でMedium Scale Mining やSmall Scale Miningはコンプライアンスや鉱業開発に関する知識不足のため、現行法が認知されておらず、環境規制に従わずに鉱業開発が行われているのが現状。また、現行のプロジェクトであっても、廃棄物や汚染水の処理、騒音などが問題視されている。ジンバブエ政府は対策として、Small Scale Minerへの適切なアドバイス、NGOや関連機関を通じた環境保全技術研修、監視機関等の設置に取り組むとのことであった。

セミナーの様子写真2点

3. 所感

 両セミナーには現地の民間企業や政府関係者が多数参加し、両開催国の鉱業開発の現状、政策、課題、日本のこれまでの取組、探査・環境技術動向等について積極的な情報交換がなされた。両開催国からはこれまでの日本の活動に対し感謝の意が示されるとともに更なる日本の支援、将来の投資を期待する旨のコメントが多くなされた。
 ボツワナ及びジンバブエは、日本にとって金属資源の供給ソース多角化の観点からも注目すべき国である。足元の金属価格は低迷しており、日系企業による積極的な投資が困難な状況が続いてはいるが、JOGMECとしては今後も研修事業等の活動を継続して日本の探査技術等ノウハウを両国に伝授しつつ良好な関係を維持・強化し、将来の具体的な成果につながるように努力していく所存である。

※両国の発表内容にご関心がございましたら、下記連絡先にお問い合わせください。
Email:ask-metalseminar■jogmec.go.jp(■を@に変えてください)

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