報告書&レポート
Mining Indaba 2018の結果について
はじめに(African Mining Indaba 2018 概要)
2018年2月5~8日の4日間、24回目となるAfrican Mining Indaba 2018がケープタウン国際会議場に於いて開催された。Indaba 2018では、アフリカ諸国の資源開発の促進のために約30か国の政府が参加し、236社の企業・団体が出展した。
今回のMining Indabaでは、JOGMECはAnglo American等とともにスポンサーとして参加し、5か国(ボツワナ、マダガスカル、ナミビア、ザンビア、ジンバブエ)の鉱業関連大臣、政府高官、鉱業協会CEOの合計20名をケープタウンに招聘し、サイドイベント(JOGMECセミナー)の開催、各国鉱業関係者とJOGMEC黒木啓介理事長との個別会談の実施(上記5か国、南ア、DRコンゴ)を行う等、Indaba事務局と連携して積極的な活動を行った。
展示会場ではJOGMECは、パネル展示に加えて、3Dプロジェクションマッピングによりリモートセンシング技術の具体的なPRを行う等、魅力的なスペース作りに工夫を凝らした。

Indaba2018にJOGMECが招聘した大臣等とのオープニング会議
1.大串経済産業大臣政務官の講演(2月5日午後)
「電気自動車が日本とアフリカの結びつきを強くする」“Electric Vehicles Warm Up Ties Between Japan and Africa”というタイトルで講演。電気自動車の普及は素材産業に大きな影響を与え、バッテリーに必要なリチウム・コバルト・ニッケル・黒鉛の需要予測は2015年と2030年を比較すると15倍~36倍に急増するとの見通しを紹介した。資源が豊富なアフリカと日本との関係は非常に重要であり、持続維持可能な鉱業を実現するために日本として様々な方法で協力していきたい旨の言及があった。

大串正樹経済産業大臣政務官メインステージ講演
2.各国鉱業大臣等との個別会談(2月5日~7日)
南ア、ボツワナ、マダガスカル、ナミビア、ザンビア、ジンバブエ、DRコンゴの鉱業関連大臣あるいは政府高官とJOGMEC黒木理事長との個別会談を実施した(南ア、ザンビア、DRコンゴについては経済産業省大串政務官との個別会談に同席)。先方からの主要な発言は下記の通り。
- 南ア:Zwane鉱物資源大臣
南アの門戸は開放されており、高付加価値化、R&D、探査という鉱物資源省の課題に関連して、日本の投資を期待する旨の言及があった。 - ボツワナ:Malebe 鉱物資源・環境技術・エネルギー安全保障省鉱山局長
これまでのJOGMECのリモートセンシング事業の協力に感謝するとともに、ボツワナは、水資源の開発に投資が必要であり、日本の協力が必要であるとの言及があった。 - マダガスカル:Carl鉱山石油省次官
JOGMECの協力に感謝するとともに、Ambatovyプロジェクトはマダガスカルにとって重要であり、政府としてサポートしていく旨の言及があった。 - ナミビア:Kandjoze鉱山エネルギー省大臣
ナミビアは豊富な鉱物資源、人的資源もあることから工業国として発展させていきたい、またナミビアでは法の支配が担保されており、投資環境は非常に安定している旨言及があった。
会談後、JOGMECのリモートセンシング事業の5年間延長(2018年4月~2023年3月末)に係るMOUの署名式を行った。 - ザンビア:Yaluma鉱山・鉱業開発省大臣
日本によるこれまでの人材育成等の取り組みに対する謝辞が述べられ、今後は日本の投資家を引きつけるような投資環境の整備に引き続き取り組む旨の言及があった。 - ジンバブエ:Chitando鉱山・鉱業開発省大臣
JOGMECとのリモートセンシング事業のMOUの延長について積極的な姿勢が示され、具体的なタイムフレーム、事業内容等について協議を進めたいとの言及があった。 - DRコンゴ:Kabwelulu鉱物資源大臣
JOGMECのリモートセンシング研修について評価する旨の発言があり、DRコンゴでは電力が不足しており、鉱業開発に係わるインフラ整備の要請があった。

南アZwane鉱物資源大臣と大串経済産業大臣政務官の個別会談

ザンビアYaluma鉱山・鉱業開発省大臣(中央)

マダガスカルCarl鉱山石油省次官(左)
3.JOGMECセミナー(2月6日)
Mining Indaba2018のサイドイベントとして、2月6日午後にJOGMECセミナーを開催した。日本とアフリカ各国官民の約180名の参加者を得て、大盛況であった。JOGMECからはリモートセンシングセンター事業について説明。設立してからこれまでの10年間で1,068名の人材育成を実施し、今後は、具体的な探査プロジェクトの組成に重点を置いていく旨を説明した。
セミナーにおける各大臣等の講演、パネルディスカッションの概要は下記の通り。
(1) 南ア:Mokoena鉱物資源局長
南アは、資源が豊富で、これまでの100年もの間、南ア経済を支えてきた。鉱業政策についても変化しており、Mine Health and Safety Act(1996)、鉱物石油開発法(MPRDA)(2002)及び黒人の社会・経済的権利拡大に関する憲章(Broad-Based Black Socio-Economic Empowerment Charter)(2010)が三本柱。また南アにとっては高付加価値化が重要である。
(2) ボツワナ:Kebonang鉱物資源・環境技術・エネルギー安全保障大臣
1970年から鉱山開発が進み14鉱山(ダイヤモンド、石炭、メタル、金等)が開発された。2017年6月には鉱物資源政策を改定し、政府の役割を強化することとなった。税制についても整備し、インフラの向上も計っている。
(3) マダガスカル:Carl鉱山石油省次官
Ambatovyニッケル鉱山について説明し、鉱業が大きく経済に寄与している一方、宝石類については違法採掘が多く300mUS$もの損失が出ていることから、今後は宝石類を売買できるビジネスセンターを創設し、数年後にはもっと収入を上げていきたいと説明。現在新規ライセンスについてはモラトリアムとなっているが、これまで約4,000のライセンスを付与したものの報告書が提出されたのは10%程度で、現在鉱区のクリーンナップを行っているところとの説明があった。
(4) ナミビア:Kandjoze鉱山エネルギー省大臣
ナミビアの資源ポテンシャルについて説明し、鉱山開発されたところに道路が整備され、アクセスが向上した、特に北西部はポテンシャルがあるとの言及がなされた。2015年に導入されたNEEEF(New Equitable Economic Empowerment Framework)(新公平経済力枠組み)等鉱業政策について説明が行われた。
(5) ザンビア:Yaluma鉱山・鉱物開発省大臣
ザンビアは、8か国に囲まれ、人口15百万人、GDP260億US$であるが、鉱業がザンビアの経済や外貨獲得に寄与していると説明。銅等の資源ポテンシャルについても説明が行われ、高付加価値化が重要であることが言及された。
(6) ジンバブエ:Chitando鉱山・鉱業開発省大臣
ジンバブエでは、資源が重要な役割を果たしており、ステージの異なる4種類のライセンス、鉱業政策等について説明が行われ、プラチナ、クロム等の資源ポテンシャルについても言及された。
(7) パネルディスカッション
JOGMEC黒木理事長から南米ペルー、チリでのベストプラクティスの例を挙げ、日本と資源国とがWin-Winな関係となることが重要である旨言及した後、アフリカ各国大臣等から下記の趣旨を強調する発言が行われた。
―アフリカ各国にとっては高付加価値化が重要であり、JOGMECはその点を考慮して欲しい。
―鉱業開発には道路、港湾、電力等のインフラ整備も重要であり、その点の支援もお願いしたい。
JOGMECからは、投資を誘致するための各国の競争力の重要性(安く安定的な資源があることとインフラ、労働力等のコストが低いこと等)を強調した。
(8) JOGMEC主催ディナーレセプション
本セミナー後に各国からの参加者が率直な意見交換をするためのディナーレセプションを実施。ケープタウン市のPatricia de Lille市長のご挨拶に始まり、参加各国のテーブルを設け、意見交換、ネットワーキングが行われた。
<JOGMECセミナープログラム>
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12:50-13:20 |
Seminar Registration |
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13:20-13:30 |
Photo Session |
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13:30-13:35 |
Introduction |
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13:35-13:40 |
Opening Remarks |
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13:40-14:40 |
Mineral Resources Policy and Investment Opportunities in African Countries |
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14:40-14:50 |
Overview of JOGMEC Activities and Future Strategy in Africa |
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14:50-15:10 |
Q&A Session |
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15:10-15:40 |
Coffee Break |
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15:40-16:25 |
Panel Discussion by Ministers of African Countries and JOGMEC |
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16:25-16:35 |
Japanese Mining Business in Africa ① Contribution to the Development of Madagascar through Ambatovy Nickel/Cobalt Project Mr. Kazuyuki Takahashi, Managing Director of Sumitomo Corporation Africa Pty Ltd, President of Japanese Chamber of Commerce and Industries in South Africa |
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16:35-16:45 |
② Japanese Ferroalloy demand impact to the World Market
Mr. Takeshi Amano, Corporate Officer, Nonferrous Metals Department of Hanwa Co., Ltd. |
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16:45-16:55 |
Q&A session |
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16:55-17:00 |
Closing Remarks |
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17:30-19:30 |
Dinner Reception at the Ballroom East of Westin Hotel |

JOGMECセミナーの様子

JOGMECセミナー・パネルディスカッションの様子
4.展示会場(ブース出展)
昨年並みの236のブース展示があった。JOGMECはJBIC、阪和興業と共同で日本ブースとして出展し、JOGMECのミッション、リモートセンシング事業、JV探鉱等について来場者(政府機関、探鉱ジュニア、設備のサプライヤー等訪問者数約600名)に説明した。日本のアフリカにおける資源分野の活動に高い関心が寄せられた。

ザンビアYaluma鉱山・鉱物開発省大臣(中央)、マダガスカルCarl鉱山石油省次官(右)
(JOGMECブースにて)
南アZwane鉱物資源大臣(JOGMECブースにて)
おわりに:Indaba 2018の意義
今年で24回目を迎えたMining Indabaではあるが、世界の景気回復傾向を反映して会場内での参加企業等の活動は活気が感じられたが、Indaba事務局も認めるように会場内でのイベントの構成・内容については変更すべき時期を迎えているように思われる。
このような状況の下でJOGMECは自らイニシアチブをとる形でサイドイベント(JOGMECセミナー)を6か国(南ア、ボツワナ、マダガスカル、ナミビア、ザンビア、ジンバブエ)の大臣、高官、鉱業協会CEOを招待してハイレベルの内容で開催し、関心がある日本企業の積極的な参加も得て行ったが、今後のアフリカでのビジネス創出に資する貴重な機会となったと考える。多くの参加者からは、セミナーについて各国大臣等からの最新の政策に関する情報等が得られ、非常に意義深いイベントであったとのコメントが寄せられた。
今回のMining Indabaで強化したアフリカの資源国との信頼関係をベースにJOGMECは今後も日本の権益獲得を目指して活動していく予定である。

JOGMEC主催ディナーレセプション(Patricia de Lilleケープタウン市長の挨拶)
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