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報告書&レポート

2021年8月10日 サンティアゴ 事務所 兵土大輔
21-12

第19回世界銅カンファレンス及びCESCO WEEK Santiago 2021参加報告

<サンティアゴ事務所 兵土大輔 報告>

はじめに

2021年4月12~15日の4日間、CESCO(Centro de Estudios del Cobre)主催のCESCO WEEK Santiago 2021が開催された。CESCOは、鉱業に関する調査・技術レポートの作成及びセミナーの開催等を通じた鉱業セクターの発展を目的としてチリに設立された非営利独立組織であり、毎年4月頃に首都SantiagoにおいてCESCO Dinner(Latin America Mining Dinner、5千人規模)を開催している。CESCO Dinner開催週には、様々な国際カンファレンスやセミナーがSantiagoで開催されることから、CESCO WEEKとして広く認知されている。2020年は3月の開催予定であったが、COVID-19感染拡大の影響により急遽中止され、今年はCESCO Dinnerを除くイベントについてはWebによる開催となり、イベント全体では1,600名を超える登録があった。

その中で2021年4月12〜13日の2日間、CRU International Ltd.(本社:ロンドン)が主催する第19回世界銅カンファレンス(WCC:World Copper Conference)が開催された。WCCは、南米を中心に世界各国から政府機関、鉱山会社、研究所、大学等の鉱業関係者が参加し、直近の銅産業に関する様々な話題について講演が行われる。本年度は、2日間にわたり基調講演ならびにパネルディスカッションが行われ、577名が参加した。日本人の参加者は20名程度であった。また2021年4月14~15日の2日間、CESCO主催により3つの無料イベントが一般公開され、気候変動、銅産業の見通し、チリの鉱業制度等の議題についてパネルディスカッションが行われた。

本稿では、WCC及びCESCO WEEKの主な基調講演及びパネルディスカッションの概要やスピーカーのコメント(抜粋)を紹介する。

1.第19回世界銅カンファレンス(World Copper Conference 2021)

1.1.基調講演及びパネルディスカッションの概要

議題は、チリの憲法改正、COVID-19による鉱業への影響とその対応、持続可能な開発、気候変動、ESG、脱炭素化、責任ある調達、中国における銅需要見通し及び現在の銅価格高騰に至った経済回復、銅需要に影響を与えるリサイクル等についてであった。

オープニングスピーチでは、CRUのRobert Perlman会長が「COVID-19感染拡大は、世界の市場へ長期にわたり影響を与えるだろう。またパンデミックの中で、鉱山会社は操業継続のためどのように対処したかは注目すべき話題である。」と述べ、昨年業界が直面した課題や今後の取り組みについて関心を示す発言がなされた。

1.2.基調講演

Juan Carlos Jobet Eluchansエネルギー・鉱業大臣

2020年はCOVID-19感染が拡大した一方で、チリの鉱業は停滞することはなく、銅生産量は5.7百万tに達した。また探鉱プロジェクトへの投資が14%上昇した。今後、2020~2023年にかけて19件の大規模プロジェクトが開発段階に移行する予定である。それらの投資額は14bUS$に相当し、30,000名の労働者を創出する。また、2020~2029年に見込まれる鉱業投資額は74bUS$を超えると予想される。

我々は、脱炭素化における再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及が将来の銅需要の主要な推進力になると期待している。2021年の銅需要は、対前年比3%増の23.9百万t、2022年は対前年比2.8%増の24.6百万tに達すると予想される。

2020年の鉱業部門による税収は、チリ全体の財政収入のうち6%を占めており、銅需要や銅価格の上昇を考慮すると2021年はさらに税収が増加するであろう。他方、国会審議中の鉱業ロイヤルティ法案に対し、政府としては「違憲」として賛成することは考えていない。現在の鉱業特別税は適切であり、鉱業から税収を増やす最良の方法は、生産を増やし競争力を向上させることである。

Robert Friedland, Founder and Chairman, Ivanhoe Capital Corporation

COVID-19による世界の産業変化は明白である。鉱業における今後の主なトレンドは、電気エネルギーの貯蔵、炭素またはメタンへの課税、鉱業が環境へ与える影響であろう。

世界の銅需要が増加傾向にある一方で、供給側では銅鉱石の品位が低下しているため生産量を増やす必要がある。加えて、気候変動問題への対応として、水力発電、原子力発電及び再生可能エネルギーへの移行が必要になる。世界がクリーンエネルギーへ移行するために、政府は業界に対し支援する必要がある。

経済を活性化するためには大規模な投資が必要である。米国では気候変動対策の一環として、電力網の刷新に100bUS$投資すると発表しており、これには天文学的な量の金属を必要としている。銅は世界の電化に重要であるため、銅を十分に確保することが国家安全保障上の問題になっている。

1.3.パネルディスカッション

1.3.1.パネルディスカッション:Charting a new course?
司会者:Erik Heimlich, CRU included panellists
スピーカー:Octavio Araneda, CEO, CODELCO
Diego Hernández, President, SONAMI

主題は、現在の鉱業トレンド、鉱業における持続可能な開発の役割等である。各スピーカーのコメント(抜粋)は次のとおり。

Osvaldo Araneda, CEO, CODELCO

事業者は、品位低下や高所での鉱山開発の傾向に対応し、生産性を保持する必要がある。それには技術開発、回収率向上に向けた精鉱処理の最適化、製錬所の生産量の増加、水消費量の最適化、操業及び輸送のリモート化などが重要である。特にCODELCOでは、Integrated Operations Center(IOC)をCalama、Rancagua、Los Andes、Santiagoの各都市に設置し、良い結果を生み出している。

Diego Hernandez, President, SONAMI

COVID-19により産業全体のイノベーションが加速された。一方、投資におけるCOVID-19の影響は、世界レベルで投資家が保守的となり鉱業への投資が鈍化している。また政治的変化が起こる可能性のある地域では、投資が消極的になっている。持続可能な開発に関しては、温室効果ガス(GHG)排出削減、水利用の削減、事業者と近隣コミュニティが非常に組織的に働くことが重要になる。

1.3.2.パネルディスカッション:Charting a new course?
司会者:Robert Perlman, Excutive Chairman, CRU
スピーカー:Vanessa Davidson, Director of Copper Research and Strategy, CRU
Ragnar Udd, President Minerals Americas, BHP
Aaron Puna, CEO, Chile, Anglo American
Ivan Arriagada, Group CEO, Antofagasta
Peter Kukielski, President and Chief Executive Officer, Hudbay Minerals Inc.
Joshua F. Olmsted, President And Chief Operating Officer – Americas Freeport McMoran
Bold Baatar, Chief Executive, Copper, Rio Tinto

主題は、COVID-19による操業の調整及び銅供給における影響、脱炭素化に関する再生可能エネルギーへの移行、ESG等である。各スピーカーのコメント(抜粋)は次のとおり。

Vanessa Davidson, Director of Copper Research and Strategy, CRU

COVID-19パンデミックの初期段階は生産に影響を与えたが、現在は通常生産にまで回復した。2020年の銅生産量は当初予想より低く、ペルーは最も影響を受けた国であると言える。2021年の世界の銅生産量は2.5%増と推定されている。銅需要は楽観的であり、脱炭素化への移行、電気輸送、再生可能エネルギーの新たなテクノロジーが需要を後押しするだろう。

Ragnar Udd, President Minerals Americas, BHP

BHPは、COVID-19に対しオフィスの閉鎖や衛生対策などの早期対策を講じた。技術的作業としては、ベストプラクティスイニシアチブによりC1コストの効率化を図り、大胆な技術開発、根本的転換を行った。その結果、Santiago事務所に地方のオペレーションを監視できる運用センターと、Antofagastaに統合されたリモートセンターを開設できた。

今後、資本や投資を引き込むにはESGや気候変動への取り組み及び実績が必要である。BHPは2019年から企業戦略として気候変動対策に400mUS$を投資し、またEscondida銅鉱山に4bUS$を投資して海水淡水化プラントを建設した。

Aaron Puna, CEO, Chile, Anglo American

全ての事業を2040年までにカーボンニュートラルにする目標があり、2030年までにGHG排出量を30%削減、エネルギー効率を30%向上、圧力水接種を50%削減する必要がある。そのため、エネルギー供給は100%再生可能エネルギーでなければならない。我が社の焦点は、新たなテクノロジーを推進することである。

Ivan Arriagada, Group CEO, Antofagasta

2020年はCOVID-19により大変難しい年であった。オンライン作業と衛生的なプロトコルの適応が推進され、地域管理及びサプライチェーン供給の多様性をもたらした。プロジェクトは数か月間中断され、労働者の調整を行った。一方、情報技術(IT)、コミュニティと密接な連携(ESG)、人員の安全性、リモートオペレーションセンターの運営開始、Centinela銅鉱山での自動化機器使用などの進展があった。

我が社の全ての鉱山操業における再生可能エネルギーの供給は、2022年までに達成されるだろう。また、現在鉱山で使用される水の50%は、海水から供給されている。Los Pelambres銅鉱山の海水淡水化プラントは、2025年までに95%が海水から供給できるだろう。我が社は、2021年までに300千tの炭素排出量削減を設定している。

Peter Kukielsky, President and Chief Executive Officer, Hudbay Minerals Inc.

我が社では、Constancia銅鉱山で導入されたCOVID-19に関する衛生プロトコルにより、操業を一時中断した。主なボトルネックは、メンテナンス担当者の可用性とサプライチェーンの複雑さであった。それらは、他の地域の鉱山との調整、メンテナンス及びサプライチェーンの拡大により緩和された。COVID-19に関し重要なことは、業界の回復力、マネージメントの機敏性、リモートワークの促進、持続可能な開発である。

Joshua F. Olmsted, President And Chief Operating Officer – Americas Freeport McMoran

カーボンニュートラルにおいて、テクノロジーを活用し生産力を改善することが重要と考えられ、メーカーの成長がカーボンフットプリントに著しく影響を与えるだろう。我が社の戦略は、実行計画において全ての問題に取り組むというものである(1千kmの旅は最初の1歩から始まる)。

Bold Bataar, Chief Executive, Copper, Rio Tinto

銅鉱山からの供給の展望は、将来的にモンゴルOyu Tolgoi銅鉱山のような大規模坑内掘り鉱山が増加するだろう。世界中の4件の大規模プロジェクトのうち、3件は今後のトレンドとなるブロックケービングによる坑内掘りを採用している。鉱山開発におけるコミュニティとの関わりは社会的信頼を構築するために必要とされ、ますますESGへの意識や投資への重要性が高くなる。

1.3.3.パネルディスカッション:Creating a competitive edge through environmental excellence
司会者:Andrew Keen, Panellists, CRU
スピーカー:Thomas Schulz, Group Chief Executive Officer, FLSmidth
Agustin Costa, Managing Director & Partner, Boston Consulting Group
Jon Stanton, CEO, The Weir Group

脱炭素化は業界内で意見が一致しており、高度な協力関係が存在すると言える。推奨される取り組みは、既存の鉱山操業における化石燃料からバッテリーへの転換や銅の選鉱・精錬のグリーンエネルギー(水素、太陽光等)の使用によるCO2排出量の削減である。粉砕プロセスにおける高圧乾式粉砕ロールの使用は、CO2排出量の多い従来の粉砕プロセスに代わり、節水にも貢献する。デジタル化と自動化はCOVID-19パンデミックにより促進され、ソリューションの提供やプロセス改善の糸口をもたらし、機械学習とAIは生産性向上の可能性がある。

1.3.4.パネルディスカッション:ESG
司会者:Francisco Acuña, Senior Consultant, CRU
スピーカー:Xiao Fu, Head of Global Commodities Strategy, BOCI Global Commodities
Johan Anderson, Strategy & Business Intelligence Manager, Boliden Smelters
Jose Tomas Morel, Director of Studies, Consejo Minero
Marta Dec, Senior Analyst, Base Metals, CRU
Joe Bormann, Managing Director, Deputy Regional Group Head, Fitch Ratings

中国の気候変動政策は、2030年でCO2排出量をピークに、2060年までにカーボンニュートラルを目指している。中国では大規模なEV産業(バッテリー充電基地やハイテク技術等を含む)に注力することで銅消費量が増加し、2035年までに銅需要が13百万tに達することが見込まれる。他の方策としては、2050年までに石炭の使用を80%削減し、水力発電、太陽光発電、原子力発電を増やすことである。

市場や顧客が製品のカーボンフットプリントを求め、CO2排出量の少ないクリーンな銅の需要が増加傾向にある。アルミニウム産業は、カーボンフットプリントの設定において銅産業より前進している。

ESGや脱炭素化の目標を達成することは、資本と運用コストに影響を与える一方、コミュニティとの関係構築と世界の気候変動問題に貢献するメリットがある。ESGにおける現在のイニシアチブは、再生可能エネルギーの利用、水使用の効率化、地元の人材を活用することである。

1.3.5.パネルディスカッション:The outlook for recycling in the copper industry
司会者:Terrence Ortslan, Mining Analyst and Metal Markets, TSO& Associates
スピーカー:Kurt Breischaft, President, Sdi LaFarga Copperworks
Samuel Grant, Analyst, Base Metals, CRU
Timm Lux, General Manager Non-Ferrous Metals at SMS group GmbH
Michael Lion, President, Lion Consulting Asia Ltd, and Everwell Resources Ltd

中国は廃棄物の輸入を禁止し、スクラップをリサイクル原料として再定義することを原料調達に関する実用的な解決策として採用した。国内のスクラップの精製は、2035年までには中国の銅需要の40%を満たすと予想される。

銅スクラップのリサイクルにおけるCO2排出量の削減は、デジタル化の促進により可能であり、エネルギー消費量の低減と、金属の歩留まりを最適化する。銅のリサイクルは循環型経済の一部であり、プロセスにおいてはCO2排出量が少ないことが重要である。

スクラップ処理の将来の動向は、銅をはじめとする金属のリサイクルが発展していくと考えられるが、最も重要なのは銅だけでなく、新たなテクノロジーで使用する金属を特定してリサイクルを促進することである。

2.CESCO WEEK Santiago 2021

2.1.パネルディスカッション

2.1.1.パネルディスカッション:The Copper Mark Roundtable on Climate Change: Risks and Opportunities
司会者:Jordy Lee, project Manager -Supply Chain Transparency at the Payne Institute for Public Policy, Colorado School of Mines
スピーカー:Carolina Schmidt, Minister of Environment, Chile
Ragnar Udd, President of BHP Minerals Americas
Deb Heed, Purchasing Manager, Human Rights and Working Conditions, Ford Motor Company
Tobias Kind-Rieper, Global Lead Mining & Metals, WWF

主題は、クリーンエネルギーへの転換における銅の役割と課題、脱炭素化への投資、銅産業におけるカーボンフットプリントである。各スピーカーのコメント(抜粋)は次のとおり。

Carolina Schmidt, Minister of Environment, Chile

環境省が主導する問題とチリの長期的な目標について、2050年にカーボンニュートラルという目標は最優先事項であり、鉱業部門はこの目標に貢献している。各鉱山会社は、鉱山操業に使用される大陸起源の水を削減し、海水淡水化プラントを設置して対応している。「グリーン水素」の開発は、政府によって支援されている。

Ragnar Udd, President of BHP Minerals Americas

BHPは「2℃シナリオ(2050年までに地球の温度を2℃低下させる)」を目標に掲げており、2050年までにカーボンニュートラル達成を目指して様々な取り組みを行っている。2022年には、鉱山操業において再生可能エネルギーを100%使用するエネルギー供給契約を通じてCO2排出量削減に努める。もう一つの目標は、液化ガスを使用することにより、ディーゼルやその他の化石燃料の使用を減らすことである。BHPは、2022年までに銅精鉱の全ての出荷及び輸出におけるCO2排出量を管理する予定である。2021年には、Escondida銅鉱山で利用される水は100%海水を利用する計画であり、Spence銅鉱山も同様のプロジェクトを進めている。

Deb Heed, Purchasing Manager, Human Rights and Working Conditions, Ford Motor Company

2019年にFord Motor社は、よりクリーンな世界を目指しつつ持続可能な生産を目標とし、全ての自動車生産工場で2050年までにカーボンニュートラルを達成すると公約した。カーボンニュートラルに焦点を当てたハイブリッド、セミハイブリッド製品及びEVの生産目標は、今後10年間で達成される見込みである。これにより、2030年までに銅の需要が大幅に増加することが予測される。2014年以降、我が社は世界中の施設で50のプロバイダーのサポートを含むPACEプログラム(よりクリーンな環境のためのパートナーシップ)のイニシアチブを発表し、国際的な非営利団体であるCDP(旧Carbon Disclosure Project)を通じて報告を行っている。サプライヤーや下請業者との契約には、GHG削減するための行動規範が含まれており、ビジネス目標との統一を実現している。

Tobias Kind-Rieper, Global Lead Mining & Metals, WWF

各銅生産国における鉱業の気候変動脆弱性評価は、気候変動への適応能力等を示している。物理的、規制的及び評判的リスクというようにグループ化された様々な鉱業リスクがあり、銅の場合は指標が平均を下回っている。

2.1.2.パネルディスカッション:Seminar Institutionality of Mining in the international context
司会者:Alejandra Wood, Executive Director, Cesco
スピーカー:James Otto, Lawyer and expert in Minerals Economics
Panellists: Rodrigo Valdes, Economist and Professor, Catholic University of Chile
Pilar Hazbun, Coordinator of the Legislative Program, Liberty and Development Institute
Ben Jones, Managing Consultant, CRU
Claudia Sanhueza, Director, Centre of Economics and Social Policy, Universidad Mayor
Juan Ignacio Guzmán, General Manager of GEM and member of CESCO

チリには多様で有用な鉱業情報がある。チリの鉱業権(探査/採掘)は、広域な非生産的/未探鉱の鉱区があり、特にそのような鉱区で探査または開発が迅速にできるよう改善が必要とされる。現在の鉱区システムと並行した譲渡オークション、そして非生産鉱区における探査を促進する形式が必要とされる。

世界の銅需要は増加する見通しであり、新たな鉱山開発に向けて国の長期的な支援が重要である。1つは、持続可能な開発プロジェクトに対する企業のESG等の取り組みを支援すること、もう1つは、長期的に持続可能な開発を目標に取り組む主導的なファンドを作り出すことである。

チリは数少ない鉱業ロイヤルティ課税のない国の一つであるが、Leiva(2015)1によると、現在銅価格のスーパーサイクルに直面していることから課税制度を改善する余地がある。過去30年間の鉱業における経済への貢献は、GDPの20%(直接及び間接的)、輸出額の50%に相当する。鉱業ロイヤルティ法案は正当なメカニズムであるが、集められた資金の使用と目的をより明確にすべきである。

おわりに

2020年はCOVID-19感染拡大により鉱業へ影響が及んだが、同年のチリの銅生産量は前年度並みの5.7百万tに達した。鉱山会社はCOVID-19への対応として、衛生プロトコルを遵守しながら操業の調整を図り、またリモートオペレーションを促進させたことで危機を乗り越えつつある。

近年では、持続可能な開発、脱炭素化及びESGに対し投資家等の関心が高まっており、また市場では少ないCO2排出量で生産されるクリーンな銅の需要が増加している。資源メジャーや大手鉱山会社は、脱炭素化に関する目標を設定し、再生可能エネルギーの使用率を増加させることやトラックの化石燃料の使用を減らすこと、あるいはテクノロジーを活用して操業の効率化を図ること等、具体的な取り組みを実施し成果を出している。

将来の銅需要については、脱炭素化に関連する再生可能エネルギーの普及やEV市場の拡大により増加すると予測され、価格の高騰や資源確保の激化が進行する可能性がある。現在チリで審議中の鉱業ロイヤルティ法案は、企業の投資意欲を減退させ、鉱山操業ないし将来の銅供給に大きな影響を与えかねないため、引き続き注視する必要がある。


  1. Benjamín Leiva Crispi (2015), ¿Apropiación privada de renta de recursos naturales? El caso del cobre en Chile, EL TRIMESTRE ECONÓMICO, vol. LXXXIII (4), núm. 332, octubre-diciembre de 2016, pp. 549-572:https://www.redalyc.org/pdf/313/31347950003.pdf

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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