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報告書&レポート

2022年1月12日 金属企画部 調査課
22-01

2021年 金属鉱物資源をめぐる動向

<金属企画部調査課 報告>

はじめに

国や地域によって状況は異なるものの、世界経済が新型コロナウイルス(以下、「コロナ」という。)による落ち込みから回復基調の兆しを見せる中、2021年の非鉄金属市況は前年後半からの高価格水準を維持する形で軒並み堅調に推移した。

ベースメタルについては、米国等主要国における景気刺激策やコロナワクチンの普及による世界経済活動の回復への期待感が高まる状況下、資源国における鉱山や港湾でのストライキをはじめ、新たな鉱業税制改革に係る審議や政権の左傾化といったいわば「資源ナショナリズム」的な動きのほか、環境保全策を背景とした中国における電力不足が需給タイト感を刺激して各鉱種の価格を下支えしたことがその主たる要素であり、これらは総じて2021年における金属鉱物資源を巡る動向を象徴するトピックスの一つであったと言えよう。

他方、コロナ危機以降世界経済の回復を下支えしてきた中国経済について、実質GDPの伸び率は2021年以降減速傾向が著しく、不動産投資に対する信用リスクの低下や先の電力不足などの供給制約を背景として、経済成長の勢いに陰りが見られた年でもあった。但し、前年から急速に高まってきた「脱炭素化」や「カーボンニュートラル」に向けた需要の高まりが期待されるレアメタルを中心として、同国企業による投資や政府による業界再編等が具体化している状況に鑑みると、そのプレゼンスが2021年の金属鉱物資源需給の動向においても主役を担ったといっても過言ではない。

JOGMEC金属企画部調査課では、2021年の金属鉱物資源分野における主な出来事を振り返り、その動向を以下のとおり取りまとめた。

◆ “ウィズコロナ”の鉱山・製錬所操業、コロナによる混乱からの回復

2020年は世界中でコロナ感染症が大流行(パンデミック)し、鉱山や製錬所の操業停止による一時的な生産量の減少や国境・都市封鎖による物流の混乱のほか、景気後退により需要も大幅に減少したため、2021年はこれらの混乱や落ち込みからの回復が期待された1年であった。コロナ変異株の流行で混乱した国や地域も見られたが、年初から世界中でコロナワクチン接種が始まり、感染対策や衛生管理の向上、遠隔操業の開始等、コロナとともに通常操業が図られるスタイルが定着してきたといえる。2021年末にも新たなコロナ変異株が発生し流行が懸念されるなど、完全終息には至らず予断を許さぬ状況ではあるが、人々の生活や経済活動も通常に戻りつつある。

各鉱種の需給バランスについて、銅及び亜鉛はコロナによる混乱により2020年は需給ギャップの度合いが大きかったものの、2021年はほぼバランスした。一方ニッケルについては、後述のとおり電気自動車(EV)向け需要が高まるなか、供給懸念材料が需給タイト感を刺激し、2020年の供給過剰から一転して2021年は供給不足に転じた(表1参照のこと)。

表1.2021年における鉱種別需給概要(千t)
生産量 消費量 バランス 出典
年次 2020 2021 2020 2021 2020 2021
24,510 24,955 24,989 24,963 -479 -42 ICSG
亜鉛 13,774 14,130 13,271 14,090 503 401 ILZSG
ニッケル 2,491 2,639 2,384 2,773 107 -134 INSG

注:2021年数値は2021年秋公表の予測値

各鉱種(ベースメタル、貴金属、バッテリーメタル)の動向について、以下のとおり詳述する。

◆ ベースメタル市況動向:経済活動の回復で堅調に推移、銅は史上最高値更新

2021年のベースメタル価格は、2020年から継続しているコロナ感染拡大と経済活動の両立によって、概ね高値圏で推移した。1~2月にかけては中国の需要が堅調であったことや、米Biden政権が1.9tUS$規模の景気刺激策を発表したことが、価格を下支えした。また、同時期にはコロナワクチン普及に対する期待感も世界経済活動の回復につながり、上昇要因となった。3月には、欧州でコロナが再拡大したことやワクチン普及が停滞したことにより価格は低迷したが、5月上旬に銅主要生産国におけるチリにて新鉱業ロイヤルティ法案が下院本会議にて可決されたほか、同国港湾労働者による年金問題を巡るストライキにより供給懸念が生じた。また、米Goldman Sachs社が銅を「新しい石油」と称するなど、再び「脱炭素化」に向けた需要に対する期待感が世界的に高まったことを受け、銅価格は5月10日に史上最高値を更新し、10,724.5US$/tを記録した。

2021年下半期は、米国の金融緩和引き締めの動向にも市場の注目が集まった。6月には、米連邦公開市場委員会(FOMC)が2023年までに政策金利の利上げを行う見通しであることを公表し、ドル高が進行したことを背景として、ベースメタルの上昇基調は一服したc7月以降、銅価格については、ペルーにおける急進左派政権の誕生のほか、南米地域でストライキや地元コミュニティによる抗議デモが相次いだこと、あるいはベースメタル全体でLME在庫の減少が進行したことが価格を下支えした。ストライキや抗議デモについては、各国で数か月に亘って複合的に影響を与えており、7月にはチリEscondida銅鉱山において、また翌月には同国のCaserones銅鉱山やAndina銅鉱山においてもストライキの懸念が生じた。10月には、ペルーにおいて地元の先住民コミュニティが鉱山の操業に抗議し道路封鎖を行ったことで、Las Bambas銅鉱山やAntapaccay銅鉱山にて影響懸念が広がったほか、11月には同国のAntamina銅・亜鉛鉱山において抗議でもが発生し、一時操業停止となった。なお、Antamina銅・亜鉛鉱山については操業停止からおよそ2週間以内に操業が再開され、価格に影響するには至らなかった。Las Bambas銅鉱山については、10月に一旦地元コミュニティとの暫定合意に至ったが、資金や雇用者数の面で協議が難航し、11月20日から再び地元コミュニティによる道路封鎖が行われ、2021年12月現在再度の操業停止が予定されている。

また中国の電力不足と世界的な電力価格の高騰も、下半期のベースメタル市況動向に影響を与えた。特に亜鉛の生産状況に影響が及び、中国雲南省では5月から干ばつによる電力制限が続いていたため、一部の亜鉛製錬所で生産制限が行われた。9月にはオランダのBudel-Dolplein製錬所が減産を公表したほか、10月にはベルギーNyrstar社が、電力コストの高騰から欧州の製錬所3か所での生産量を最大50%削減することを公表したことで、同月18日に当年最高値となる3,815.0US$/tを記録した。11月には電力価格上昇を受け、Glencoreが伊Portovesme製錬所での硫化亜鉛生産を2021年末までに停止すると発表している。

中国における電力不足は銅価格にも影響を与え、同国における銅生産が抑制される懸念が強まったほか、先の「脱炭素化」に向けた需要による投機筋の動きも重なり、銅の現物需給がタイト化したことで現物価格が先物価格を上回る「バックワーデーション傾向」が生じ、10月には一時史上最高値に迫る10,652.0US$/tまで上昇した。

鉛については、世界的な異常気象による高温や水害などを背景に自動車バッテリーの交換需要が増加したことや、7月に欧州で発生した洪水によりドイツの製錬所が操業を停止して不可抗力宣言したことで、現物の需給タイト化が加速した。これにより鉛価格においてもバックワーデーション傾向が7~8月にかけて継続し、8月には約3年ぶりの高値圏での推移となった。

2021年におけるベースメタルのLME価格概要は表2のとおりであるが、ニッケルについては「バッテリーメタル市況動向(価格・開発プロジェクト等)」にて詳述する。

表2.2021年におけるベースメタルLME(settlement)価格概要(US$/t)
鉱種 年初価格 年末価格 最高値 最安値 年平均
7,918.5 9,692.0 10,724.5
(5月10日)
7,755.5
(2月2日)
9,317.5
2,023.5 2,328.5 2,504.0
(8月18日)
1,896.0
(3月18日)
2,206.2
亜鉛 2,775.0 3,630.0 3,815.0
(10月18日)
2,539.0
(2月2日)
3,007.4
ニッケル 17,344.0 20,925.0 21,135.0
(11月24日)
15,907.0
(3月9日)
18,487.8
図1.2021年ベースメタル(LME)月平均価格の指標推移

図1.2021年ベースメタル(LME)月平均価格の指標推移

(2021年1月=1.00)

◆ 貴金属市況動向:金は高値で推移、プラチナも数年来の高値、パラジウムが史上最高値を更新

金は、コロナ不況からの経済回復への期待感が高まる中、次々に発生するコロナ変異株の流行に対する懸念、米国の利上げ開始時期を巡る様々な推測、中東(イスラエル、アフガニスタン)の政情不安、中国大手不動産開発会社・恒大集団のデフォルト懸念、原油等の資源燃料価格高騰等、価格を下支えする要素に事欠かず、1年を通じて1,700~1,900US$/ozの比較的高値圏で推移した。

プラチナは、ここ数年1,000US$/ozを概ね下回る安値が続いていたが、2020年に発生した南アAmplats社の精錬プロセス事故による減産や触媒需要としてのパラジウムからの代替のほか、将来の燃料電池車(FCV)向け需要増への期待感等から年前半は上昇し、2月には約6年ぶりに1,300US$/ozに迫る高値をつけた。しかし年後半は、トヨタ等の大手自動車メーカーが半導体不足による減産を発表し触媒需要が減少、一転して概ね下落基調となった。

パラジウムは、数年来プラチナを上回る高値かつ上昇基調が継続していた中、2月、露Norilsk Nickel社のOktyabrsky及びTaimyrsky多金属鉱山で発生した地下水流入事故により供給懸念が生じ上昇、欧州や中国等での排ガス規制強化による需要増加の予測も相まって、5月に2,993.5US$/ozをつけ史上最高値を更新した。しかし、大手自動車メーカー減産報道や、パラジウムをプラチナで代替する動きもあったほか、今後のEV普及によりパラジウム需要の減少が見込まれたこと等から下落に転じて9月には2,000US$/ozを割り、その後は比較的低水準で概ね年末まで継続した。

貴金属各鉱種のLBMA価格概要は、表3のとおりである。

表3.2021年における貴金属LBMA価格(AM/PM平均)概要(US$/oz)
鉱種 年初価格 年末価格 最高値 最安値 年平均
1,937.0 1,820.1 1,944.6
(1月6日)
1,688.2
(3月31日)
1,798.9
プラチナ 1,109.5 962.0 1,286.0
(2月15日)
911.0
(12月15日)
1,090.1
パラジウム 2,436.5 1,928.0 2,993.5
(5月4日)
1,592.0
(12月15日)
2,397.1

◆ バッテリーメタル市況動向(価格・開発プロジェクト等):EV需要を背景に堅調な値動き

2021年は、世界的な「脱炭素化」への移行が本格的に推進されたことを背景とした堅調なEV需要が、ニッケル、リチウム、コバルト等のいわゆる「バッテリーメタル」の価格を下支えした。中国では景気回復に伴い、2021年1月のEV販売台数は前年比239%増加するなど、同年年初からバッテリーメタルの需要拡大が予想された。

ニッケルは、1月にフィリピンDuterte大統領が環境汚染の懸念からTumbagun島におけるニッケル鉱石の採掘禁止を公表したことや、中国の堅調なステンレス需要を背景に、同月21日には2020年の最高値17,650US$/tを更新して18,370US$/tまで上昇した。2月には露Oktyabrsky銅・ニッケル鉱山での坑道への地下水流入事故により、露Norilsk Nickel社が同鉱山及びTaimyrsky銅・ニッケル鉱山を一部操業停止することを発表したことも供給懸念材料となった。しかし3月には、中国ステンレス大手の青山集団が、インドネシアで製造するニッケルマットを中Huayou Cobalt社及びCNGR社に提供することで合意したとの報道により短中期的に需給ひっ迫観測が緩和し急落、当年最安値となる18,344.5US$/tまで下落した。なお、青山集団はニッケルマットの原料としてニッケル銑鉄(NPI)を使用する技術も開発し、2021年12月に生産を開始したと公表した。

その後5月まではおおむね軟調に推移したが、6~8月は伯Valeの加Sudburyニッケル・銅鉱山及び製錬所において、労働組合と労働協約案の交渉が決裂したことで事実上のストライキが勃発し、同鉱山及び製錬所が一時操業停止されたことが影響して再び価格は上昇基調に転じた。

また、7月には鉱石の最大生産国インドネシアにおいて、コロナ変異株の感染拡大によって供給懸念が生じた。加えて、同国では資源の高付加価値化政策を目的として全ての原材料に輸出制限をかけることが検討され、フィリピンでも同様に輸出制限が検討されたことで需給タイト化の懸念が強まり、11月24日には当年最高値となる21,135.0US$/tを記録した。

リチウムについては、2020年のコロナによる低迷から一転してEV需要を背景に価格は上昇基調で推移し、2021年年初は53,000元/tであった炭酸リチウム価格(中国現物価格)は、12月には230,000元/t台まで上昇した。この高値に影響され、関連企業では買収が促進したほか(詳細は、後述の「EV販売台数拡大に伴う、LIB資源確保の熾烈化」を参照)、価格の低迷を背景に2019年11月から操業を停止していた豪Wodginaリチウム鉱山においては、2022年9~12月期に精鉱の生産が一部再開されることも決定した。

金属コバルトは、コロナの影響により航空機需要が限定的となっていたが、EV需要を背景に強含みに推移した。これらの堅調な需要を背景に、DRコンゴではGlencoreのMutanda銅・コバルト鉱山が2022年から操業を再開するほか、China Molybdenum社がTenke Fungurume銅・コバルト鉱山の拡張計画を公表し、2023年にプロジェクトが開始される予定となっている。LME現物価格は、2021年年初の33,000US$/tから3月には52,800US$/tにまで上昇、その後6月までは40,000US$/t台に一旦下落したが、7月には50,000US$/tまで回復し、再び上昇基調に転じた。12月には、69,000US$/t台まで上昇している。

◆ 中国・国家糧食・物資備蓄局による銅・アルミ・亜鉛の国家備蓄放出の実施、及びLME在庫の減少

2020年下半期に引き続き、2021年上半期においても多くの鉱種で価格は上昇傾向を示し、一部では最高値に近い価格を記録した。本価格上昇を受け、中国・国家糧食・物資備蓄局は2021年7月以降、4回に亘り銅・アルミ・亜鉛の国家備蓄の放出を実施した。国家備蓄放出の実施は、2010年以来となる。同局が2021年に放出した金属備蓄量は、銅が110千t、アルミが280千t、亜鉛が180千tの合計570千tとなった(表4参照のこと)。

表4.中国・国家糧食・物資備蓄局による国家備蓄放出(千t)
アルミ 亜鉛 合計
第一回(2021年7月5日) 20 50 30 100
第二回(2021年7月29日) 30 90 50 170
第三回(2021年9月1日) 30 70 50 150
第四回(2021年10月9日) 30 70 50 150
合計 110 280 180 570

また一部の鉱種については、LME在庫が減少した1年でもあった。例えば銅は2021年年初には約11万tのLME在庫があり、夏場には約25万tまで在庫は回復したが、中国の電力制限による供給不安から12月6日現在、8万tを下回っている。

◆ 南米資源国で左傾化、資源価格高騰による資源管理強化へ

南米で1990年代末~2000年代に見られた左傾化が、コロナ不況や金属価格高騰をきっかけに、資源管理に国家がより介入する思想が再び支持を得て、鉱業国で動きが再燃した。

5月、チリで新鉱業ロイヤルティ法案が下院本会議を通過し、近年議論に進展の無かったロイヤルティ引き上げの議論が一気に動き始めた。銅の場合、3%の新ロイヤルティに加え、LME価格に連動した変動税率が課されるもので、高騰する銅価格を睨みコロナ対策等の社会福祉費用の財源に充てることが目的とされた。本法案は11月末、上院本会議で骨子が可決されたほか、12月、大統領選挙で若干35歳の左派Gabriel Boric候補が超保守派José Antonio Kast候補を破り勝利した。就任は2022年3月が予定されているところ、本税制改革は資源国としてのチリの競争力や外資導入の見通しにも直接的にインパクトを与える要素であり、その動向が注目されるところである。

30年以上中道もしくは右派の政治体制が続いていたペルーでは6月、急進左派のPedro Castillo大統領が誕生した。コロナによりペルー経済が大打撃を受ける中、5月に銅価格は史上最高値を更新、ペルーの主要産業である鉱業をいかに活かし経済を立て直すかという点で左派の主張が国民に受け入れられる形となり、大規模鉱山が多く位置する地方州で絶大な支持を得た。同政権からは隣国チリの新ロイヤルティ法案を参考に増税案も飛び出すなど、2022年以降も議論が継続する見通しであり、先のチリにおける税制改革も相まって、これら南米資源国における資源政策から目が離せない。

◆「脱炭素化」に向けた世界的な取組の加速と再生可能エネルギー需要の増加

2021年は、前年に引き続き世界各国において脱・低炭素化社会実現に向けた取り組みが積極的に行われ、また米国や欧州が高い目標を掲げたことも大きく注目を集めた。

米国は、4月にBiden大統領により開催された気候変動サミットにおいて、米国の温室効果ガス(GHG)排出量を2030年までに2005年比で50~52%削減することを公約した。これに関連し、英国、カナダ、日本も従来の削減目標を引き上げる計画を発表した。

また、欧州委員会は、2050年に欧州における温室効果ガス排出量をゼロにする目標のもと、2035年に発売する新車を排出ガスゼロのみの車両とし、全てのガソリン車及びディーゼル車の新車販売を2035年以降実質禁止する規制を提案した。同時に、2030年までに新車のCO2排出量を2020年比55%削減、2035年までにゼロにするとの目標も打ち出した。

こうした政策等により、世界的に再生可能エネルギーやEVへの転換気運が一層加速し、銅やバッテリーメタルの需要増加や価格高騰といった影響をもたらしている。

◆ 中国の電力不足、レアメタルの生産及び価格動向に影響

中国では、2021年9月から広東省、湖南省、江蘇省、陝西省などの広い地域を対象とした電力供給制限が本格化したことにより、住宅地だけでなく工業地域においても電力不足による停電が発生した。これは、国際的に石炭価格が約20年ぶりの高水準となったことで中国国内の発電コストが2倍以上となり、電力会社が発電所の稼働率を低下させたこと、及び国内の環境規制の強化が原因となっている。中国政府は、2030年までにCO2の排出量をピークアウトさせ、2060年までに排出量の実質ゼロを目標として定めており、地方に対して石炭消費量の伸びを抑え込むことを求めている。これにより、国内では9月以降で31省・直轄市・自治区のうちの17地域と広い地域で電力供給が制限された。

鉱業分野においては、還元工程において多大な電力を消費する精錬所の操業停止または減産による影響が顕在化してレアメタルの生産量が減少し、価格が急騰する事態となった。金属シリコンはアルミ二次添加剤向けメタルグレード「553」が9,000US$/tで年初比4.5倍にまで上昇したほか、太陽光パネルなどに使用される「441」は5,000US$/tを突破したことで、9月以降史上最高値を更新した。また、供給量の8~9割が陝西省によって占められているマグネシウムは、9月20日に同省のマグネシウム工場に生産停止命令が出されたことにより、価格は一時15,000US$/tまで高騰した。

中国政府は、2021年1月からの段階的な石炭備蓄の放出、国内の主要な石炭生産事業者への増産要請、及び火力発電所へ可能な限りの運転を求めることとし、住宅地及び工業地域への電力供給の安定化に努めた。また、8月時点で中国各地にある53か所、9月及び10月時点で153か所の炭鉱の生産を許可し、石炭生産量の押上げを図った。鉱業分野では安定的な電力供給が期待されることから、急騰したマグネシウム価格は、対日輸出価格で10月中旬には8,100~8,500US$/t、10月末には6,800~7,000US$/t、11月4日には4,800~5,500US$/tと下落し、金属シリコンの価格もアルミ合金向けグレードで4,700~4,800US$/tと、10月下旬の9,000US$/t前後から急落した。

11月時点での全国の発電所への1日平均の石炭供給量は、前年同期比で30%増の8.1百万tとなった。石炭供給量が消費量を上回っているころから、11月20日時点での発電所の石炭在庫量は143百万tと、10月末時点より35百万t以上増加となり、冬季の石炭供給保障能力の高まりが顕著となった。中国の電力不足が解消することで、国内の精錬所における生量は段階的に回復し、資源価格急騰の懸念は徐々に払拭されつつある。

◆ レアアース関連動向:グリーンテクノロジー需要の増加を見越して各国が政策方針を公表

 2021年12月24日時点で、中国輸出価格で金属ジスプロシウムは600.5US$/kg、金属ネオジムで179.25US$/kg、酸化ジジムで132US$/kgとなり、レアアース価格は1年を通して上昇トレンドを形成した。上昇要因としては、コロナ感染症のパンデミック後の世界経済好調によるエアコンなどの耐久消費財、及び新エネルギー自動車増産による磁石用途など需要が急増したこと、また中国における輸出管理法やレアアース管理条例などにより供給量が制限されるとの憶測や懸念が挙げられる。

8月には、ミャンマーからの中国向けアアース輸出量が前月比91.8%減の23tと大幅に減少したことにより、中国国内で原料不足が顕在化した。コロナ感染の拡大防止策として、7月半ばより主要輸出入ルートの雲南省騰沖で国境が封鎖されたことが原因となっていたが、本処置は11月末に解除され輸出が再開された。但し、中国政府が炭素排出量削減等のグリーン投資に力を入れていることで、レアアース鉱石及び製品の需要が急増している中、一部の市場関係者では本措置によって価格が大幅な下落基調に転じるとの見方は限定的で、横ばい~上げ基調で推移するとみられている。

新エネルギー自動車だけでなく、洋上風力などのグリーンテクノロジーに活用されるレアアース磁石の将来的な需要増加を見越して、主要各国は将来的な供給量確保のための政策を打ち出している。米国は、1月21日に就任したBiden大統領のもとで、大統領令14017号に基づくレアアースを含めた重要製品のサプライチェーン強化のための政策提言案を公表した。特にネオジム磁石の輸入に関しては、1962年通商拡大法232条に基づいた国家安全保障への影響評価のため調査を開始するなど積極的な政策を展開している。また、EUも欧州原材料アライアンス(ERMA)が中心となり、レアアース確保のためのアクションプランにおいて、将来需要に基づいた供給量確保のための提言案を公開している。どちらもレアアースを廉価で供給する中国を念頭に置き、自国や自地域内でのサプライチェーン構築及びレアアース製品のリサイクル促進により将来的な供給量確保のための方針を示している。

一方、中国においては2011年に形成された6大レアアース集団が再編され、12月23日に新会社「中国稀土集団(チャイナ・レアアース・グループ)」が設立した。中国五鉱集団、中国鋁業集団、贛州希土集団有限公司のレアアース部門及び傘下の企業などが統合され、本社は江西省に設置された。この業界再編は、国務院国有資産監督管理委員会の監督管理下での直轄的な価格統制が主な目的とされており、世界の鉱石生産量の約60%を占める中国の動向は今後も注視する必要がある。

◆ EV販売台数拡大に伴う、LIB資源確保の熾烈化

世界的な「脱炭素化」への動きが加速化していることから、2021年の世界におけるEVの販売台数は前年比75%増の約4百万台になると予想されている。今後もEV販売台数は急速に拡大していくことが予想されることから、車載用リチウムイオン電池(LIB)メーカー各社はLIB資源確保に力を入れており、2021年は数々の買収が行われた。中でも、中国企業によるリチウム資源会社の複数の買収案件が目立った。例えば、10月には中Zijin Mining Group(柴金鉱業集団)社が、アルゼンチンCatamarca州に3Q Lithiumプロジェクトを保有する加Neo Lithium社の全株式を1株あたり6.50C$、総額約960mC$で取得することで合意した。また11月には、加Lithium Americas社が、加Millennial Lithium社の発行済み全株式を1株あたり4.70C$、総額約400mUS$で買収することで合意し、最終的な協議契約を締結した。Millennial Lithium社に対しては、7月に中Ganfeng Lithium(贛峰リチウム業)社が総額約353mC$の買収提案を行っていたものの、9月に中・寧徳時代新能源科技(CATL)社が総額約377mC$の買収案を提示したことを受けてGanfeng Lithium社はオファーを撤回、その後、11月にGanfeng Lithium社が出資しているLithium Americas社が、CATL社の買収額を上回る提案を行っていた。

◆ JOGMEC、豪Mount Isa東地域JV探査プロジェクトにおける地位を日本企業へ引継ぎ

JOGMECは、豪QLD州北西部に位置するMount Isa市周辺において、豪州探査ジュニア企業Hammer Metals Ltd.とMount Isa東地域JV探査プロジェクトを2019年11月15日から開始した。本プロジェクト対象地域の周辺には稼行中の銅鉱山等が複数存在し、インフラも整備されている。2020年12月には、同地域内Trafalgar地区のボーリング調査において、優勢な銅金鉱化帯を発見した(例えば、HMTRRC002区間長60メートルにて品位:Cu 1.04%、Au 0.25g/tを確認(2021年1月27日付 JOGMECニュースリリース))。また本鉱化帯では、銅と金に加えてコバルト(品位:Co 0.09%)やレアアース(品位:4,968ppm(セリウムなど))の随伴も認められた。同地区は、酸化鉄銅金型鉱床の胚胎ポテンシャルが高いエリアにもかかわらず、近代的かつ系統的な探査が未実施であり、JOGMECが有望地区として抽出、ボーリング調査を実施した。

その後、JOGMECは本プロジェクトにおける契約者としての地位を日本企業に引き継ぐべく、2021年6月に入札を行った結果、住友金属鉱山株式会社の100%子会社であるSumitomo Metal Mining Oceania Pty. Ltd.が落札し、2021年8月に引継ぎに関する契約の締結に至った(2021年8月18日付 JOGMECニュースリリース)。また、2021年10月にはHammer Metals Ltd.との三者による契約を締結し、引継ぎ手続きが完了した。JOGMECでは2003年度以降、様々な海外企業と数多くのJV探査プロジェクトを実施してきているが、本プロジェクトはそれらの中でも、最速の発見と引継ぎを達成するに至った。

本プロジェクトはまだ初期探査ステージではあるものの、今後の探査活動によって鉱床の規模や分布形態が明らかになることが期待される。

おわりに

新たなコロナ変異株が世界経済に与えるインパクトが取り沙汰され、世界のサプライチェーンや金属鉱物資源の需給に対する影響からの脱却については、未だ出口が見えない状況が続いている中、コロナを契機として具体化してきた「脱炭素化」や「カーボンニュートラル」へのシフトは、着実に進展している。特に2021年に入ってからは、国際機関や各企業が具体的な目標や数値化によってその姿勢を鮮明にしている。

例えば、国際エネルギー機関(IEA)は2050年ネットゼロに向けたロードマップの中で、2030年までに世界の自動車販売の60%をEVにすること(2035年までに内燃機関搭載車両の新規販売を停止)や2040年までに世界の電力部門におけるCO2排出のネットゼロ達成等を求めている。事実、2021年11月に開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に際しては、今後の気候変動問題に対処するにあたり、2030年までに再生エネルギーへの投資を現状の3倍に増やす必要があるとの見解を示し、パンデミック後のエネルギー投資では、太陽光や風力、水力、バイオエネルギーなどがより大きな割合を占める必要があると指摘している。

また、「カーボンニュートラル」にあたっての主要素たる車両の電動化に関して、欧州委員会では前述のとおり、7月に域内での温室効果ガスを削減するための包括的な政策パッケージ「Fit For 55」を発表した。本政策では、2035年に新車の平均排出ガス量を現状比100%削減するにあたり、同年以降のハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を含む内燃機関搭載車両を実質販売禁止とする方針を打ち出している。これらの動きに対して、欧州大手自動車メーカーでは、EV等の次世代技術に対して2022~2026年に総額89b€(約11.5兆円)を投資する目標を掲げ、うち52b€(約6.7兆円)をEV生産拠点向けに投じることで電動化戦略を推し進める、あるいは2030年までの全新車販売の完全電動化に向けて、総額約40b€(約5.2兆円)規模の大型投資を実現させる、といった具体的な投資計画が次々と明らかにされている。日系自動車メーカーでも、新車販売台数約10百万台のうち、2030年にはEVの割合を35%まで拡大する方針が示されたことは記憶に新しいほか、次世代バッテリーとして研究開発が進む全固体電池を2028年に商用化するといったマイルストーンが示されている中、昨今ではこれらメーカー自らがバッテリーの製造プロセスに対する投資のみならず、LIBの原料となるレアメタルの供給契約を締結するなど、その守備範囲を原料確保の領域まで拡大しており、サプライチェーン全体においてプレゼンスを高める動きが加速化している。

他方、金属鉱物資源の開発・生産プロセスにおいても「カーボンニュートラル」が益々重要な要素となっており、金属資源メジャー各社は温室効果ガス排出削減に向けた目標を公表、2050年までの「カーボンニュートラル」に向けた目標を示している。これら供給側における低炭素化事業への取組みの一例としては、鉱山における主要な温室効果ガス排出源となっている鉱山重機やトラックにおけるFCVやアンモニア燃料の導入、あるいは太陽光や水力等の再生可能エネルギーをソースとする電源の採用が進められている。また、将来的には鉱石輸送船舶におけるグリーンアンモニア燃料利用といった、Scope3分野を含むサプライチェーン全体に及ぶものと推測されている中、需給双方での「カーボンニュートラル」の実現に向けては、いわばこれらグリーン投資案件が主流になっていくものと見て間違いない。

コロナが常態化して早2年を迎えようとしており、未だコロナ前のような「ヒト」や「モノ」の動きが正常化する状況には至っていない中、金属鉱物資源を巡る動向は益々複雑化・多様化の様相を呈している。2030年はおろか、2~3年先の短期的な見通しも不透明な状況が継続するものと考えられるが、急速に進む様々な「トランジション」を適時・的確に捉えることができるよう、金属企画部では2022年もこれらの動向を注視して参りたい。


  1. 国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)2021年10月公表の数値では、2021年の需給バランスは217千tとなっているが、これは中国の国家備蓄放出分(180千t)を含んだ数値とされている。

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