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報告書&レポート

2022年8月23日 リマ 事務所 初谷和則、村井裕子
22-08

EXPOMINA PERÚ 2022参加報告

<リマ事務所 初谷和則、村井裕子 報告>

はじめに

2022年4月27~29日の3日間、首都LimaのCentro de Exposiciones Jockeyにおいて鉱業イベント「EXPOMINA PERÚ 2022」が開催された。
EXPOMINA PERÚではペルー内外の鉱業サプライヤーの展示や商談が行われる。今回のイベントでは、会場の一角で鉱業会議「CONFERMIN(Conferencia Internacional de Minería)」も開催され、鉱山企業代表、コンサルタント、政府関係者による講演やパネルディスカッションが行われた。

ペルーでは2021年7月にCastillo大統領率いる左派政権が誕生し、政権幹部は鉱業・エネルギーセクターに対して強権な姿勢を垣間見せ続けている中、著者は、業界と政府との間には大きな溝が生じたと感じているところである。そうした背景か、本会議の講演では業界からの政府に対する忖度のない改善提案が多く聞かれた。また、持続的鉱業や地域共生の実現に向けての、企業のポリシーや具体的取り組みについても多くの説明があった。

本稿では、本会議で視聴した講演の概要を紹介する。

鉱業会議CONFERMIN

鉱業会議CONFERMIN

1.プロジェクト関係

1.1. Luis Rivera, Gold Fileds Peru社長

「適切なプロジェクト管理における重要な要素」

鉱山開発における課題は、これまではインフラやエンジニアリングなど技術的なものがほとんどであったが、現在はESG(環境・社会・ガバナンス)が加わり、これらが投資決定の重要な要素となっている。

具体例として南アGold Fields社のSalares Norte金鉱山開発プロジェクト(チリAtacama州)は、海抜4,400m、最寄りの送電線まで120kmの位置にあり、かつてはディーゼル発電が唯一の電力供給の方法であった。しかし大規模な太陽光発電が可能であることが確認され、開発が決定された。建設する太陽光発電所は世界一高所となる見込みで、12MWで操業開始後、40MWへの増設を予定している。

ESG、COVID-19、政府による管理強化などの課題に立ち向かうには既存の体制では不可能であるため、組織改編が必要である。Cerro Corona金鉱山(Cajamarca州)の場合、保健関連だけで120名、Salares Norteプロジェクトでは(外部委託も含めて)50名の人員増加を行った。

CSR(Corporate social responsibility:企業の社会的責任)に関しては、例えば、かつては地域コミュニティにサッカー場を建設しフットサル大会で交流を深めることでプロジェクトを実施でき皆が満足していたが、もはやこれは過去の事例となった。現在地域コミュニティは、鉱山企業のバリューチェーンの一部となることを求めている。またコミュニティ企業設立や雇用創出に加え、将来の閉山後に残る別の産業の創造が求められている。今後は、社会的に複雑な課題を抱えた地域では、地域コミュニティの生活の質向上を実現できない鉱山の持続的な操業は不可能となるだろう。

1.2. Magaly Bardares, Nexa Resources社法務・渉外担当部長

「プロジェクト管理における社会経済的要素」

社会争議に対して政府機関が全く機能していない。さらに、2021年は資源国有化や4鉱山の閉山など、法的安定性を揺るがす政府発表が行われた。

ペルー中央準備銀行によれば、2001年の鉱業関連法規の数は12であったが、2016年には200以上に増加した。鉱業の実施には合計407件の規則や232件の行政手続が存在し、29の行政機関が関与している。これら機関は相互連携しておらず、許認可手続きの予見可能性が低く、プロジェクトの工程や見通しに支障を与えている。

探査に際しての先住民事前協議については、現在、協議が必要かどうかの判断に約1年、(必要な場合)協議実施にさらに1年が必要で、過剰な期間が明らかに探鉱投資低下に影響しており、改善が必要である。

以上により、以下の3点が政府に提案される。

  • (1)鉱業由来の財源の有効活用:鉱業セクターは過去10年間に40bPEN(ソーレス)納税したが有効活用されていない。格差是正を図り、地域住民が受益を実感できる活用を目指すべき。
  • (2)行政手続の簡素化:経済財務省(MEF)を筆頭とする鉱業・エネルギー執行協議会(Mesa Ejecutiva Minero Energética)は鉱業セクター業界団体などが参加し手続の改善を実現した実績があるが、残念ながら現在活動は中止されている。本協議会の再開が待ち望まれている。
  • (3)行政機関強化:能力主義による行政の質の向上、法支配の強化、法的安定性の改善が必要である。

1.3. María Alejandra Delgado, Rio Tinto Perú 社General Manager

「鉱業プロジェクト成功の鍵となる要素」

プロジェクト管理では、全てのコンポーネントを含めた工程表の策定が重要である。排水や固形廃棄物処理、キャンプの有無、人員移動手段、物資輸送ルートなどの各コンポーネントを把握し、必要な許認可や予算を確かめ、工程表に整合させなければならない。

鉱区は、企業の短期・中期・長期的戦略に基づいて申請しなければならない。ペルーの鉱区付与システムは長年近隣国の見本だったが、残念ながら近年手続のスピードが鈍化しており、改善が望まれる。

鉱業プロジェクトは国家機関が十分機能していない農村に位置することが多い。ペルーの登記監督庁(SUNARP)における登記は単なる申告であり、登記により権利や効力が発生する訳ではない。従い、必要となる土地を特定する際には、SUNARPや不法占拠地正常化庁(COFOPRI)、区役所など公的機関の情報は必ずしも実情を反映していないということを踏まえ、入念な事前調査を行わなければならない。

ロジスティクスについては、地域雇用・調達の優先に加え、契約に係る明確なルール設定や、地域コミュニティと企業間のコミュニケーションルートの統一が重要である。住民の大部分が親族であるような小さな集落におけるコンプライアンスや利益相反などへの留意は難しい面もあるが、できるだけ違反回避に努めなければならない。

1.4. Hernan Carbajal, Anglo American Quellaveco社購買部長

「目的主導型サプライチェーンの再構築」

Anglo Americanのサプライチェーン部門は、企業目標である「人々の暮らしを改善するための鉱業」を目指し業務に取り組んでいる。

現在、鉱業に限らずあらゆる産業のサプライチェーンの傾向は、(1)DX(デジタルトランスフォーメーション)、(2)顧客志向型へのビジネス転換(鉱業を単なる資源採取産業ではなく、世界に必要な金属というソリューションを提供する産業とみなす)、(3)目的主導型(パーパス・ドリブン)である。

具体的に何から始めればよいのか。まずは目的を伝えること、そして顧客、サプライヤー、コミュニティ、従業員、投資家にどのように貢献できるのかを見定め、各ステークホルダーとの良好な関係を構築し、目標達成度の評価プロセスを策定することが重要である。また旧態依然な組織によるこれらの目的達成は不可能であるため、組織の改編も必要となる。

プロジェクトの影響エリアを知ることも重要である。Quellaveco銅鉱山開発プロジェクトが位置するMoquegua州では、銅関連産業がGDPの44%を占める一方、漁業や農業の割合は低いが地域では重要と認識されている。そのため、サプライチェーン部門はその他部門と協力し、企業活動と地域の期待・強みを結びつける必要がある。

2.鉱業政策・制度関係

2.1. Xennia Forno, Rubio Leguía Normand法律事務所

「新たな鉱業一般法の必要性について」

新たな鉱業法一般は必要ないが、現行法改正の余地はある。

現政権に限らず、過去の政権の時代から鉱業関連の様々な法律や制度変更の必要性が訴えられてきた。例えば、鉱業Canonやロイヤルティの制度改正の必要性が議論されて久しいが、これらはCanon法、鉱業ロイヤルティなどの個別の法律によって規定されており、その改正に鉱業法一般(LGM:Ley General de Minería)は関与しない。

同様に環境制度に関しても改正の必要性が頻繁に議論されるが、ペルーでは1990年代から環境関連法規の整備が開始され、現在は管轄機関である環境省を中心に環境影響調査の審査承認、監査業務を実施しており、やはり環境関連の制度や変更にLGMは関与しない。また、そもそもするべきでない。同様に先住民事前協議や鉱業税制(安定契約を除く)も、LGMの管轄外である。

つまり、必要性が指摘されている制度改正について、一般的にLGMの改正の必要性はないといえる。これは私個人の見解ではなく、数年前に公表された持続鉱業開発委員会の最終報告書においても、LGMは鉱業関連の数多くの法規の1つにすぎないため、大幅な改正は必要ない旨が明確に示されている。

しかしながら、LGMの改正すべき点は以下のとおり挙げられる:

  • 鉱業権の種類:現状金属と非金属に分かれているが、分ける必要性はない。
  • 契約関連:LGMに未規定の事項については民法が代替適用されることになっているが、例えばオプション契約など鉱業特有の契約期間が一般の民法規定を適用しないことから改正が必要である。
  • 鉱区申請プロセス:現在、鉱区申請プロセスの一環として地方紙における公告掲載が義務付けられているが、地方でもインターネットが普及しており不要な手続である。

2.2. Francisco Tong, Rodrigo Elias & Medrano法律事務所

「ペルーにおける閉山」

2021年に着手された閉山法改正と施行細則改正(案)では、政府機関から鉱業権者の閉山計画実行への監査権限が強化されている。これは、鉱業権者が閉山計画を実行せず鉱山を放棄する遺憾な事案が数件発生したため、その防止が主な目的となっている。保証金に関しても同様の理由から、設定金額の納付を行わなかった場合の罰金が強化されている。個人的には、一部の鉱業権者の失態に過剰に反応し、規制強化を行ったように思える。

また規則改正案では、FSレベルの閉山計画書作成や、閉山計画書実行のための詳細設計策定義務、半期レポートに関する要件などのほか、閉山計画書を承認後3年目、その後5年ごとに更新することや、環境影響調査(EIA)の変更を行う場合、EIAの承認1年後までに閉山計画書を更新・提出することが定められている。

なお規則改正案では、最終閉鎖証明書の発行についての規定が存在するが、段階的閉鎖の証明書の発行については規定がない。閉鎖の段階的完了により鉱業権者には保証金の一部が返還される制度に鑑み、段階的閉鎖の証明書発行は重要であり、本件が改正内容に含まれることが望ましい。

2.3. Kaimer Dolmos, エネルギー鉱山省(MINEM)持続鉱業促進総局長

「ペルーの鉱業政策」

ペルー政府は、新規鉱業プロジェクトや、社会的利益に焦点を当てた持続的開発の促進による、世界におけるペルー鉱業の地位向上を目標としている。ペルー鉱業は世界的に評判が高くFraiser Instituteによる最新の鉱業投資魅力度ランキングは84か国・地域中42位であった。ペルーの魅力度が下がっているとの指摘もあるが、これは現政権が樹立後間もなくまだ本来の力を出せていないことを考慮すれば当然のことである。一般的に世間はネガティブなニュースばかり溢れ、鉱業について非常に好調だった2021年の成果についは何も報道されていない。ペルーでは人に害をもたらす科学的根拠のない情報や噂ばかりが出回っている。

鉱業は常に国や地方に貢献する産業である。活動周辺地域が貧困から脱却できないとすれば、ひとえに自治体や地域リーダーの能力の低さが原因で、企業の責任ではない。

このことからペルー政府は多セクター鉱業政策を策定し、持続的な鉱業活動実現を阻む要因の特定と解決に多セクターで取り組んでいる。本政策は、並行的にペルーが実施するSDGs、2050ペルービジョン、2030鉱業ビジョン、独立200周年2021年国家開発計画などに合致するものである。

2.4. Ivan Lanegra, 元環境省環境管理副大臣

「持続鉱業開発委員会 報告書紹介」

2019年に政府のイニシアチブにより、様々な専門分野のメンバーが鉱業セクターの持続性確立のための政策提言を行うことを目的として、持続鉱業開発委員会が設置された。

同委員会は、持続的鉱業の実現には主に(1)競争力の強化と、(2)地域コミュニティや国の開発と福利向上の2点が必要であるとの考えのもと、現状分析や問題の要因特定、解決提案を行った。

その結果確認された事項のうち、特に重要なものは以下のとおり:

  • 国家経済において鉱業は重要である。
  • 社会争議は鉱業開発におけるリスクや課題である。
  • 鉱業は地域開発のきっかけとなるが、既存の制度や措置では不十分である。
  • 鉱業関連法規全体の見直しの必要性:鉱業一般法は、その他様々な法規により何度も改定されたほか、現在は鉱業を規定する数多くの法律の1つにすぎない。
  • 地方分権化、関連行政機関の役割の整理:鉱業には200件以上もの行政手続のほか、合計29件もの行政機関が介入する。

3.全体論

3.1. Miguel Cardozo, 加Alturas Minerals社長

「ペルーの地質ポテンシャル」

ペルーは世界的な鉱業国であり特に地質ポテンシャルは素晴らしいが、長期的な経済・鉱業政策が不在のうえ、過度な規制により鉱業プロジェクトの進捗が遅く、鉱業セクターの競争性は低下している。

ペルーの地質ポテンシャルは非常に多様性に富み素晴らしい。現在の鉱産物生産量の85%が、特に重要な5つの鉱床帯(ポーフィリ型鉱床帯3列、エピサーマル鉱床帯1列、多金属鉱床帯1列)に由来する。

銅については、Mina JustaやQuellaveco銅プロジェクトの操業開始により今後数年間は増産の見通しである。なお政府はTía María、Rio Blanco、Zafranal、Cañariaco、El Galeno、Michiquillayなどが開発に至れば2030年には銅生産量が5百万t/年に達する見通しを示しているが、ここにいる多くの方々はこの目標達成はかなり困難であると感じているだろう。政情不安がさらに増大する現在、今後の見通しは一層不透明となっている。

当然鉱山には寿命があるため、探鉱により新規鉱床を発見し開発しなければ将来的な生産は維持できない。Arequipa州やCajamarca州などは社会争議によりプロジェクトが進んでおらず、Tacna州は国境50km内の活動制限がネックとなっている。また、探査段階ではリスクの高さに見合わない厳しすぎる規則や手続きが適用され、許認可取得に1~2年を要するのは長過ぎる。先住民事前協議は、探査段階で実施すべきではない。

3.2. Victor Gobitz, Minera Antamina社長兼ペルー鉱業技師協会(IIMP)会長

「2030鉱業ビジョン」

2030鉱業ビジョン:「2030年、ペルーの鉱業は包摂的な活動、即ちグッドガバナンスや持続的発展の枠組みの中で、社会・環境・地域と一体化した活動となる。また鉱業は、競争性やイノベーションを備えた活動として確立され、社会全体からその価値を認められるようになる」はどのように実現できるのか。

鉱業で最大の懸案の一つが社会争議である。Andes地域には解決すべき短期的・長期的社会問題が多様に存在する。鉱業は長期のビジネスであるため、両者(地域社会と鉱山企業)が共通の目標を設け、共に社会経済格差の縮小に取り組むことが必要である。

市民オンブズマンによると、地域住民の大部分は鉱業に反対していない。問題は、多くの地域で、格差是正の方法が、誤った理解に基づいてしまっていることだ。これは当然、持続的な開発に繋がるような方法ではない。

必要なのは、各地域における開発ポテンシャルが何なのかを共に考えること。鉱山企業は、持続的に活動したいのであれば活動地域について知り、ほかに観光、牧畜、水力発電などどのような開発ポテンシャルがあるのかを把握しなければならない。

地域開発を実現するには、(1)計画、(2)公的予算、(3)管理能力が必要だが、ペルーの場合、(2)予算は既に存在する一方、(1)計画が不足しているほか、(3)行政の管理能力は不足だけでなく汚職問題が存在する。

Canon財源が有効活用されていないことは、社会争議の重大な要因の1つである。一方、現在計画される鉱業プロジェクトの全てが開発された場合、格差解消のため予算は倍増する見通しである。したがって必要とされるのは増税ではなく予算の管理や実行能力強化である。原因を把握し対処しなければ、問題を解決することはできない。そして、我々鉱業セクターはこの問題解決の一助とならなければならない。

おわりに

EXPOMINA PERÚ 2022は、COVID-19によるパンデミックが始まって以来、ペルーで行われた初めての大規模鉱業イベントであった。久々に商談が行われたことや、銅・亜鉛等の金属価格が高水準であった(2022年4月当時)ことから、各種展示や講演からは活気が感じられた。

このイベントの後、金属価格は下落し、Las Bambas銅鉱山(Aprimac州)の地元争議の継続、燃料費や物資の高騰、Castillo政権の迷走など、鉱業を取り巻く状況は厳しさを増している。今後もペルー鉱業は、このイベントで感じられたような活気を持ち続け、ペルー経済をけん引するセクターとなり続けるのか、動向を見守ってまいりたい。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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