報告書&レポート
DRコンゴにおける鉱業とインフラ開発の状況
1.DRコンゴの鉱業概況
DRコンゴの銅鉱石生産量は、5年前までは米国と並び世界第4位であったが、2022年においては世界第2位のペルーとほぼ僅差になった。米国地質調査所(USGS)のMineral Commodity Summaries 2023によると、両国の2022年銅生産量は2,200千t になっており、この数字は、DRコンゴの銅生産量としては、対2022年比26%増であった。副産物として生産されるコバルトについても2022年は生産量を伸ばし130千t(同比9%増)と見込まれている。
2.DRコンゴの輸送インフラ
鉱業生産量が伸びを示す一方で、DRコンゴにおけるインフラ整備が、新規開発プロジェクトを進める上での大きな課題になっている。その1つが、銅・コバルトなどの鉱業製品の輸送インフラである。現状、トラック輸送が主であり、国境での手続き遅延や混雑から、アフリカ内での輸送に数週間以上を要しているとされる。
また、タンザニアのDar es Salaam港への東ルート、モザンビークのBeira港や南アのDurban港への南ルートがあるが、これらのルートを介して、輸出の多くは、中国を含めた東アジアが占めており、EUや米国への量は限定的になっている(図1参照)。

図1.DRコンゴ精錬銅・精鉱輸出2022年(国別)
出典:International Trade Centreのデータを活用してJOGMEC作成
そのような背景があり、かねてより、アンゴラを経由して大西洋側に抜けるLobito回廊の鉄道インフラは、カッパーベルトの鉱産物をEUや米国に輸出する上で、コストと時間を大幅に節約することができると期待される。
2023年5月のG7広島サミットでは、米国は、世界インフラ投資パートナーシップ(PGII)を通じ、Lobito鉄道回廊の整備への支援をコミットした。同時に、米国国際開発金融公社DFCによる250mUS$の融資についてデューデリジェンスを開始する旨についても触れている。
この米国のアナウンスに先駆けて、2022年7月時点で、既にアンゴラにてLobito回廊のコンセッションが決まっており、EUの3社からなるコンソーシアムが30年の権利を獲得した。このコンソーシアムは、シンガポールTrafigura社(商業化を担当)、ポルトガルMota-Engil社(インフラ維持管理を担当)、ベルギーVecturis社(鉄道運営を担当)から構成されている。その後、2023年1月にはアンゴラ、DRコンゴ、ザンビア3か国政府によるLobito回廊輸送円滑化機関協定(LCTTFA)が調印され、3か国による共同開発の調整が開始された。Lobito港からアンゴラLuauまでの1,300kmの鉄道の運営・管理を30年間に渡って実施することになっていたが、更に400km延長され、DRコンゴとザンビアまでも視野に入れている。報道によるとコンソーシアムはアンゴラに455mUS$を投資し、1,555両の貨車と35両の機関車を確保する。DRコンゴには更に100mUS$を投資し、将来的にはザンビアへの追加投資の可能性もある模様である。
3.DRコンゴの電力インフラ
輸送インフラ以外にも、DRコンゴでは、電力インフラの問題も大きい。電力不足について、DRコンゴ側の報告によると、鉱山会社による需要は毎年15%増と急激な伸びを示しており、電力供給が追いついていない。銅・コバルト鉱山が集中する南部地域の消費電力は2,639MWであり、供給電力1,348MWの倍ほどになる(図2参照)。鉱業がこれらに占める割合は8割以上と非常に大きいとされている。電力インフラの不備の中、新たな鉱山プロジェクトは発電機等で電力供給を賄うことを検討する必要がある。

図2.DRコンゴ南部地域における電力需給
出典:DRC-Japan Mining Forum July 2023, SNL SA講演資料
JOGMEC主催で2023年7月13日に開催された「日・DRC鉱業フォーラム」でも、DRコンゴから来日した電力公社Societe Nationale d’Electricite(SNEL)による講演の中で、日本によるインフラ投資の要請がなされていた。DRコンゴは水力発電が主要電源であるが、講演の中ではIngaⅢ(4,800MW)ダムなどの新規開発への投資機会と併せて、SNELとの官民パートナーシップ(PPP)による投資ストラクチャーが紹介されていた。SNELはこのPPPに積極的であり、以前には、Ivanhoe Mines社が操業するKamoa-Kakula銅鉱山が、SNELとのPPPを活用して、将来の電力利用を確保した例もある。2021年4月にIvanhoe Mines社は、IngaⅡのタービン5の改修に係る資金調達を約束することで、鉱山の採掘作業や製錬に優先的に電力を利用できる契約をSNELと締結している。
DRコンゴ政府は鉱石輸出を禁止する立場をとっているが、製錬事業を進める上でも電力不足がネックになっており、銅硫化精鉱の輸出について、例外的に許可を出す状況は続いている模様である。
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