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報告書&レポート

2023年9月13日 金属企画部 調査課 井下浩良
23-23

中国新エネルギー車(NEV)市場の現状と展望(2022~2023年)

<金属企画部調査課 井下浩良 報告>

はじめに

中国の自動車業界団体、中国乗用車協会(CPCA)によると、2023年6月の世界自動車販売台数は前年同月比11%増の787万台、2023年1~6月の累計は前年同期比11%増の4,243万台だった。半導体チップ供給の改善で自動車業界の景気が世界的に上向き、大手自動車メーカーの販売台数の増加を促した。中国の自動車メーカーの世界シェアは2023年、31%に達している。中国自動車工業協会(CAAM)のデータによると、2023年上半期の同国輸出台数は214万台で、前年同期比75.7%増となり、このうち新エネルギー車(電動車両の総称、New Energy Vehicle、以下「NEV」)の輸出台数が160%と最も大きく伸びて53万4,000台だった。2022年の世界の電気自動車(EV)販売台数ランキングによると、上位15社のうち、中国企業が6社を占めた。その内、比亜迪股份有限公司(BYD社)の販売台数は185万台に達し、グローバルシェアが18.3%と、米Tesla社の販売台数(131万台)、グローバルシェア(13.0%)を抜き、世界1位に躍進した。また、中国EVの輸出台数は、2022年に前年比2.2倍の67.9万台へと急増し、EV輸出拡大は、中国の自動車輸出全体の拡大に大きく寄与している。

本稿では、このように中国国内外で急成長を見せる中国のNEVと自動車メーカー各社の海外展開ならびに車載用電池市場の動向、2022~23年の変化や成長について概説するとともに、将来の展望についても考えることとしたい。

なお、文中のNEVは新エネルギー車と定義し、BEV(電気自動車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCV(燃料電池車)を含み、文中のEVは、BEVとPHEVを対象としている。

1.中国自動車国内および輸出実勢

CAAMの報告によると、中国における2023年上半期(1~6月)の累計販売台数は1,323万9,000台(前年同期比9.8%増)、生産台数は販売台数とほぼ同水準の1,324万8,000台(同9.3%増)で、販売台数の内訳をみると、乗用車は1,126万8,000台(同8.8%増)、商用車は197万1,000台(同15.8%増)、NEVは374万7,000台(同44.1%増)で、自動車販売台数全体に占めるNEVの割合は28.3%となった。輸出は214万台(同75.7%増)となり、内訳は乗用車178万台(同88.4%増)、商用車36万1,000台(同31.9%増)、NEV53万4,000台(同2.6倍増)だった。2022年、中国の輸出台数は300万台を超え、2021年までは毎年100万台前後で推移していたが、初めて上半期だけで200万台を突破し、第1四半期には日本を抜いて世界トップの新車輸出国にもなり、2023年末までに400万台以上の自動車を輸出する見込みが公表されている。2023年上半期に10万台以上の輸出を達成したのは、上海汽車(SAIC社:上海汽車集団股份有限公司)、奇瑞汽車(Chery Automobile:奇瑞汽車股份有限公司)、米Tesla社、長安汽車(重慶長安汽車股份有限公司)、長城汽車(Great Wall Motor社:長城汽車股份有限公司)、吉利汽車(Geely Group Holding:浙江吉利控股集団)、東風汽車(Dongfeng Motor社:東風汽車集団有限公司)の7社で、中でも、奇瑞汽車は前年同期比170%増の39.4万台、長城汽車は同97.3%増の12.4万台を輸出した。BYD社は、2023年上半期の輸出台数が前年同期比1,060%増の8万1,000台と急成長を遂げており、ギガ上海工場で自動車を生産するTesla社は、18万2,000台を輸出して中国第3位の自動車輸出ブランドとして、中国の新エネルギー車輸出の3分の1を占めた。

CAAMは、2023年上半期の自動車市場動向について、中央と地方政府による消費促進政策や各地での販売促進活動、企業の相次ぐ新型車発売により累計販売台数は増加し、また自動車市場の要となる新エネ車などの輸出台数が継続して成長したこととともに、中国ブランドの販売台数が伸び、乗用車市場全体に占める中国ブランドの自動車の割合が50%以上にのぼったとしている。一方で、下半期の見通しについては慎重で、複雑な外部環境、相対的に弱い市場需要、事業運営の難しさなどを今後の課題と業界が直面する逆風として挙げ、政策の安定性と予測可能性を維持し、自動車セクターの安定的な運営を確保するための努力が必要とも述べている。

2.中国国内のEV市場

(1)乗用車

CPCAが発表したデータによると、2023年1~6月の中国自動車市場における新車販売台数のうち、209万3,000台がBEV、99万6,000台がPHEVで、2つのカテゴリーを総称したNEVは総販売台数の32.4%を占めた。

乗用車市場シェアでは、BYD社が109万8,409台を販売し、中国での販売台数シェア11.70%で、トップとなった。2位は独Volkswagen AG(以下、「VW社」)で、販売台数は98万2,290台、トヨタが79万7,605台を販売し、3位となり、ホンダは52万7,484台を販売し、4位、長安汽車は46万7,194台を販売し、トップ5入りした。注目すべきは、独VW社、トヨタ、ホンダ、日産といった伝統的な内燃機関(ICE)車の販売が、NEVの販売台数の増加の影響を受けて減少したことで、BYD社は、BEVとPHEVの販売台数をほぼ均等にバランスよく販売し、且つ中国市場で最大販売量を誇るEVメーカーのポジションを維持している。

表1.2023年上半期中国乗用車販売台数上位10社
順位 社名 販売台数 前年比(%) シェア(%)
1 BYD社(中国) 110万 72.1 11.7
2

VW社(ドイツ)

98万 -1.6 10.1
3 トヨタ(日本) 80万 -0.7 8.3
4 ホンダ(日本) 53万 -21.6 6.0
5 長安汽車(中国) 47万 19.9 4.5
6 吉利汽車(中国) 40万 6.0 3.9
7 上汽通用五菱(中国) 39万 -11.4 3.9
8 BMW(ドイツ) 33万 7.2 3.4
9 日産(日本) 30万 -25.2 3.1
10 Tesla(米国) 29万 48.9 3.1

出典:CarNewsChina情報を元に筆者編集

(2)BEV

BEVブランドでは、BYD社の電気自動車販売台数は524,184台で、市場シェアは25.04%と最大、2位はTesla社で29万4,105台を販売し、広汽埃安新能源汽車有限公司(GAC社)のAion は21万1,228台で3位、上汽通用五菱(SAIC-GM-Wuling Automobile社、上汽通用五菱汽車股份有限公司)と長安汽車は4位と5位だった。

表2.2023年上半期中国BEV販売台数上位10社・ブランド
順位 ブランド名 販売台数 シェア(%)
1 BYD社 52万 25.0
2 Tesla社 29万 14.1
3 Aion(広汽埃安新能源) 21万 10.1
4 上汽通用五菱 17万 8.2
5 長安汽車 5.8万 2.8
6 Neta(哪吒汽車) 5.5万 2.7
7 Nio(上海蔚来汽車) 5.5万 2.6
8 VW社 4.8万 2.3
9 Leap(零跑汽車) 4.5万 2.1
10 Zeekr(吉利汽車) 43万 2.0

出典:CarNewsChina情報を元に筆者編集

(3)新興EVメーカー

中国政府によるEV支援策で急拡大した自動車市場で、新興EVメーカーの淘汰が進みつつあると現地メディア媒体は口を揃える。EV普及を促すために13年間続いてきた購入補助金が、一定の成果を上げたとして終了すると、Tesla社など大手各社が相次ぐ値下げ攻勢を展開、上海蔚来汽車(NIO社)や理想汽車(Li Auto社)、小鵬汽車(Xiaopeng Motors社)など、販売が増えている新興メーカーでも2022年度決算は赤字となり、2023年度に入っても増収減益傾向が続き、新興EVメーカー全般の収益環境が悪化している。一方で、世界のEV車販売の約6割を占める中国で競争力を付けたメーカーは、EVの性能や価格競争力を決める車載用電池の供給網による利点に加え、厳しい競争で蓄積した電池開発技術力や人工知能(AI)を搭載した洗練された車載機能などで海外市場に活路を求めており、今後、中国の苛烈なEV競争が世界に波及する可能性もある。

(4)価格

中国国内の新エネルギー車の価格帯は主に2つある。1つは上汽五菱製の格安小型EV「宏光MINI EV」を代表とする10万元(約196万円)以下の価格帯と、もう1つはBYD社製の「BYD DOLPHIN」、AION社製の「AION S」、「AION Y」などを代表とする10~20万元(約196~392万円)の価格帯である。特に、「宏光MINI EV」シリーズは格安の価格で人気を集めており、最も安価なモデルは2.98万元(約58万円)で購入が可能、2023年には海外諸国へ輸出予定とも中国国内では報道されている。

(5)EVステーション

中国政府は、EV普及の課題となっていた地方への充電ステーションの設置拡大も推進している。国家発展改革委員会は、2023年5月末時点で中国の充電インフラ累積台数が636万台設置と発表した。この台数には、AC低速充電、DC高速充電、高電力充電、ワイヤレス充電などが含まれ、中国のNEV推進と浸透を力強くサポートしている。

また、国際エネルギー機関(IEA)の発表によると、2022年末の中国のバッテリー交換ステーションの設置数は約2,000か所と2021年末から2倍に増えており、これを主導する上海蔚来汽車(NIO)は、欧州でもバッテリー交換型EVの販売とバッテリー交換ステーションの設置を開始し、2025年までにステーションの設置数を世界合計で4,000か所に増やす考えを示している。

3.中国自動車メーカーの海外展開

中国自動車メーカー各社は、近年、自社ホームページや国内外メディア媒体を通じて積極的に海外戦略、特にカーボンニュートラルに繋がるNEVの海外展開について公表している(表3参照)。中国シンクタンクの一社はTesla社が主導する国内の価格競争に巻き込まれた中国のNEVメーカーにとって、海外市場が一筋の活路になると指摘するが、CPCAの2023年上半期のNEV輸出に関するコメントからは、東南アジアではタイ向け輸出が大幅に増加、西欧では従来の主要輸出国であるベルギー、スペイン、スロベニア、英国向けが順調に拡大していることが示された。韓SNe Researchの統計によると、2023年上半期のグローバルEV販売台数は、前年同期比41%増加の616万台に達したと報じた。グループ別電気自動車販売台数の上位3社では、BYD社が、好調な中国国内販売と前年比10倍の輸出台数率増加により、前年比100%増の110万台を超え、世界の電気自動車販売台数NO.1を維持、BYD社に次ぐ2位のTesla社は、注力するModel 3/Yの積極的な値下げ政策と、米国政府のインフレ削減法(IRA)税制上の優遇措置に牽引され、前年同期比57%の成長率を記録し、3位の上海汽車集団(SAIC)は、紅光MINI EV、MG-ZS、Bingoなどの比較的低容量の電気自動車の販売が好調で、前年同期比27%の成長を牽引したと報じた。

中国自動車メーカー各社は、カーボンニュートラルへの方向性を明確にするNEVタイプを主力ラインナップに加え、従来の完成車輸出ビジネスから、大型投資が伴う現地生産を視野に入れた現地化戦略が顕著になりつつある。IRA法などで障壁のある北米市場を避けながら、欧州、アジア、南米、中東、アフリカで、着々と存在感が定着しつつある。

表3.中国大手自動車メーカーの2023年海外展開
メーカー 2023年1~6月
輸出実績
2022年
輸出実績
2023年海外展開
BYD 8万1,000台
(前年上半期比
10.6倍)
・イタリア、フランスの代理店を通じて正式販売開始、欧州17か国以上で販売体制強化
・伯Bahia州政府と提携し、総投資額3bBRL(ブラジルレアル:約880億円)プロジェクト公表。リン酸鉄リチウム(LFP)電池、材料加工、年産15万台NEV生産の複合生産拠点
SAIC 48万3,000台
うちMGブランドEV
11万5,000台
90万6,000台 ・インドネシア海事・投資調整局と、NEV生産プロジェクトの投資覚書締結
・北米、中東、豪州・ニュージーランド、ASEAN、南アジア市場拡販に注力、欧州販売台数12万台目標
・SAICとタイCharoen Pokphand Group合弁会社SAIC Motor-CPは、NEV製造を中心とする工業団地着工、2025年竣工予定
長安汽車 17万8,000台 24万9,000台 ・タイにて年産10万台のEV工場設立に向け8.8bTHB(タイバーツ)の投資準備、BEV、PHEV、REEV、バッテリーの複合生産拠点
・創立160周年を迎え、2050年のカーボンニュートラルに向けた新エネルギー戦略を発表、国際市場開拓も再注力条項の1つ
長城汽車 12万4,000台 17万3,000台 ・2023年上半期、オマーン、UAEに続き、サウジアラビア代理店とEVのHAVALブランド展開開始
・ウズベキスタンADM社と同国市場開発に関する戦略的協定を正式締結
・既存販売市場タイ、マレーシア、ラオス、ブルネイ、フィリピン、カンボジアに加え、今年下半期、ベトナム、シンガポール、インドネシアに販売開始
吉利汽車 12万1,000台 19万8,000台 ・上海モーターショーで発表したEVブランドZEEKR 2モデルを欧州に投入
・マレーシアDRB-HICOMグループと枠組み協定締結、出資済み現地自動車メーカープロトン社を柱に、Tanjung Malimの自動車ハブ拠点へ10bUS$投資準備
・サウジアラビア国営Saudi Aramco社、仏Renault Group、吉利汽車は2023年3月投資意向書に署名、吉利汽車が開発したパワートレイン技術への戦略的投資を検討
奇瑞汽車 39万4,000台 45万2,000台 ・2023年2月、アルゼンチンに0.4bUS$投資、同国リチウム企業との協力による完成車工場建設発表
・2023年7月、インドネシア、マレーシア、タイに工場設立を発表、戦略的投資先とするタイでは、パートナー候補の選定に入り、2024年からOmoda5電気SUVを上市予定
・2023年8月南アで開催されるBRICS会議の南ア政府公式車として採用
東風汽車 10万3,000台 24万2,000台 ・プレミアムNEV VOYAHを中心に、ノルウェーやオランダの販売パートナーを通じてScandinavia市場含む欧州域内拡販目標
・2023年4月自社サミットで3か年計画を発表、欧州、南米、東南アジア、アフリカ、中東を戦略市場として輸出拡大
江汽集団* 8万9,000台 11万5,000台 ・2023年1月、ノルウェー向けe-JS4500台、フランスとスペイン向け電気小型トラック100台輸出、欧州展開加速
・2023年3月、コスタリカで開催されたExpoMovil 2023に、燃料車(JS2/JS3/JS4/M4)とEV(e-JS1/e-JS4/e-J7)のフルレンジで15モデルを出展
・VW社との提携を生かし、複数のNEVモデルによるグローバル市場拡大注力

*安徽江淮汽車集団股份有限公司(JAC)
出典:各社HPニュース、メディア情報を元に筆者編集

4.中国EV躍進を支える中国製バッテリー

世界のEV向けバッテリー市場において、中国の寧徳時代新能源科技股份有限公司(Contemporary Amperex Technology Ltd.、以下、「CATL社」)とBYD社はそれぞれ首位と2位にランクされ、両社を合わせてグローバルシェアの約半分を占めている。

中国自動車用動力電池産業イノベーション同盟(CAPBIIA)によると、2022年上半期には、中国で合計206.4GWhの電力電池が生産され、前年比176.4%の急増に相当し、三元系リチウム電池とリン酸鉄リチウム(LFP)電池の年初来の出力は、それぞれ82.9GWh(前年比125%増)と123.2GWh(前年比226.8%増)に達した。6月単月の動力用バッテリーの設置容量に関しては、CATL社とBYD社が依然として中国のEVバッテリー企業のトップ2であり、国の総容量の68.13%を占めており、CATL社のシェアは49.6%を記録した。

2022年に289GWhのリチウム電池販売量を記録し、世界のEV用電池と蓄電池の出荷量でそれぞれ37%と43.4%の世界トップシェアを占めるCATL社は、2025年までに中核事業でカーボンニュートラルを達成し、2035年までにバッテリーのバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを達成する計画を発表した。ゼロ・カーボン目標を達成するため、採掘、バルク原料、バッテリー原料、セル製造、バッテリー・システムの5つの重要なリンクで炭素削減を実施すると同時に、カーボンクレジットプログラムを推進し、透明性の高い、サプライチェーンのサステイナブルな開発意識を向上させるとしている。

BYD社は、1995年にバッテリーメーカーとして創業し、ITエレクトロニクス、自動車、新エネルギー、都市モビリティの4つの事業領域でグローバルに展開している。バッテリーはもとより、モーターやコントローラーなどEVのコアとなる技術を自社開発・製造しており、特に、自動車事業においては、中国国内だけでなく、世界70超の国・地域で販売を展開し、前述のように、2022年にはEV販売台数世界1位となり、更に2023年第1四半期には、ついに、中国市場において長年首位を守っていた独VW社を抜いた。同社は、バッテリー技術を強みとしており、独自の技術を用いたLFPをEVに搭載し、国内外で販売台数を伸ばしている。2020年末段階で、中国国内電池のシェアが38%だったLFPは、2022年末にはシェア60%超となり、三元系リチウムイオン電池(NMC)やハイニッケル系電池よりエネルギー密度が低いため、EV航続距離が短くなるというデメリットはあるものの、価格変動リスクの高いコバルトやニッケルに依存しない安価な製造コスト、長寿命、毒性が少ないなどのメリットに加え、エネルギー密度の低さも技術的改良によって改善していることから、中国地場EVメーカー向け以外でも、Tesla社のModel 3中国仕様への本格採用や、GM社、VW社など欧米メーカーでも、ハイエンドEVにはNMCあるいはハイニッケル系電池、エントリーモデルにはLFPを採用するすみ分け傾向もあり、更なる需要の増加が見込まれる。CATL社と提携した米Ford Motor社は、米MI州に3.5bUS$の投資による北米初のLFP電池工場建設計画を発表、2023年7月に入り米下院歳入委員会と中国特別委員会による本提携への調査が入り予断は許さないが、発表では2026年稼働開始予定としている。中国市場以外でのLFP電池生産供給システムが広がれば、車載電池の選択肢が広がり、また重要鉱物資源の需給バランスのゲームチェンジャーとなる可能性も出ている。

おわりに

中国のEV企業は、バッテリーミネラルサプライチェーン、バッテリー技術、電動駆動システム、スマートモビリティなどにおいて先駆者的優位性を持っており、これらの強みが発揮される形で、中国製のEVは航続距離、充電速度、自動運転などの技術面でも競争力を持つようになってきた。また中国は、大量生産によるコスト競争力、製造スピードと柔軟性を生かして、モジュール型産業において国際的競争力を発揮している。EVの市場浸透に欠かせない価格競争力についても、人件費を抑制するのではなく、LFP系バッテリー導入といった根本的な価格優位性から消費者の購買意欲を掻き立てるなど、中国発のLFP系バッテリーが海外市場でも浸透すれば、欧米や諸外国でのEV転換は加速される可能性がある。カーボンニュートラルに向けたグローバル市場のEV化はもはや止まらない中、重要資源確保を取り巻く中国と各国の駆け引き、バッテリーリサイクルシステムの確立、新興市場におけるEV需要取り込み、あらゆる観点においても中国EV産業から目が離せない。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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