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報告書&レポート

2023年9月19日 ジャカルタ 事務所 白鳥智裕
23-24

「International Battery Summit 2023」参加報告

<ジャカルタ事務所 白鳥智裕 報告>

はじめに

2023年8月1~2日にかけて、インドネシアのNational Battery Research Institute及びニッケル鉱業協会が主催者となって、ジャカルタでInternational Battery Summit 2023が行われた。特に電気自動車(EV)用のバッテリーに関連して、上流のニッケル等の鉱石生産から下流のバッテリー生産及びリサイクルまでについて、各産業界が発表を行った。

本報告で主に、上流部門から下流部門までのEVエコシステムに関する発表の中で、特に興味深かったものについて報告したい。

1.インドネシアにおける電池への投資
(Ikmal Lukman, Secretary General, Ministry of Investment /Indonesia Investment Coordinating Board(BKPM))

インドネシアの製造部門における直接投資は、2018年の16.6bUS$から2022年には34.7bUS$と2.1倍となった。インドネシア全体としても、53.8bUS$から84.1bUS$と1.6倍となった。(金融部門及び石油・ガス上流部門を除く)。特に、金属・非製造産業での投資額が33.5bUS$と最も大きい。

2022年金属産業における投資額は、171.2tIDR(インドネシアルピア)(前年比46%増)に達しており、近年の天然資源の下流化政策の影響が大きい。金属産業の投資額の2019年の比率は7.6%であったが、2022年には14.2%となった。2019年の金属産業における投資額は、61.6tIDRであったことから、約3倍となっている。

インドネシアの脱炭素化政策は、6つの分野(グリーン及び低炭素経済、経済的生産性の向上、デジタルトランスフォーメーション、国内経済の統合、人的資源の発展)からなる。

鉱物資源及び石炭の下流部門における投資は、2040年までに431.8bUS$を見込み、石油・ガス下流部門に68.1bUS$、海洋・漁業・プランテーション・森林の下流部門に45.5bUS$を見込む。

天然資源の下流化政策は、インドネシアにポジティブな影響を与えている。具体的には、ニッケル鉱石の輸出禁止によって、ニッケル製錬所への投資が拡大し、鉄鋼及びバッテリー原料の輸出が促進された。2014年には3bUS$であった鉄鋼及びバッテリー原料の輸出額が、2022年には、28.2bUS$となった。インドネシアの以前の輸出品は、ニッケル鉱石だったが現在は、鉄と鉄鋼なった。将来は、バッテリーとEVになる。

2.世界の電池サプライ・チェーンにおけるインドネシアの潜在的資源のマッピングと電池製造の現状
(Agus Tjahajana Wirakusumah, Special Advisor to the Minister of Energy and Mineral Resources of the Republic of Indonesia(MEMR))

インドネシアのネットゼロ・エミッション(NZE)を目標としたエネルギートランジション・ロードマップは次のとおり。

表1.インドネシアにおけるエネルギートランジション・ロードマップ
    2021~2030年 2031~2040年 2041~2050年
供給サイド 新再生可能エネルギー ・屋上太陽光発電システムの増設
・廃棄物からのエネルギー回収の開発
・既存の石炭火力発電所における小規模バイオマス及び混焼
・2037年以降の大容量の変動性再生可能エネルギーの開発(特に太陽光と風力発電)
・2035年に11GWの地熱発電所の設置
・大容量の変動性再生可能エネルギー(Mass VRE)の展開(特に2037年からの太陽光発電及び風力発電(陸上及び洋上))
・一次エネルギーにおいて、化石燃料以上の新再生可能エネルギーの供給
・全電力が、新再生可能エネルギーによって発電されること。
エネルギー貯蓄 ・2025年から揚水システムの開始 ・2034年から大容量のバッテリーエネルギー貯蔵システムの開始
グリーン水素 ・2031年からグリーン水素の生産開始及び活用 ・暖房向けの天然ガスの利用をグリーン水素に転換
原子力 ・2039年からの原子力発電
需要サイド 電化 ・18.1百万世帯での電磁調理器の利用
・2百万台のEV及び13百万台のEバイクの普及
・37.9百万世帯での電磁調理器の利用
・22百万台のEV及び101百万台のEバイクの普及
・54.3百万世帯での電磁調理器の利用
・65百万台のEV及び175百万台のEバイクの普及
ガス化とバイオ燃料 ・10.2百万世帯によるガスネットワークの利用
・工業分野と交通分野でのバイオ燃料の利用率40%
・20.2百万世帯でのガスネットワークの利用
・工業分野と交通分野での燃料の40%をバイオ燃料の利用
・22.7百万世帯でのガスネットワークの利用
その他 ・スマート・エネジー・マネージメント及び最低エネルギー消費効率基準(MEPS)の実施 ・2036年からセメント業界及び鉄鋼業界でCCSの実施
・低炭素海運(ロー・カーボン・シッピング)の実施
・CCSの活用を13Mtpa CO2eに増加
CO2削減量  327.9百万tCO2e  629.8百万tCO2e  1,043.8百万tCO2e

出典:セミナー資料から筆者作成

インドネシアは長年、ボーキサイト、ニッケル、銅等バッテリーメタルの輸出国であった。近年のリチウム三元系(NMC)バッテリー技術の急速な発展は、インドネシアにとっても、有望な機会となっている。インドネシアでは、バッテリーメタル、特にニッケルやコバルトといった鉱物資源に恵まれている。既に複数の企業が、ニッケルの高圧硫酸浸出(HPAL)製錬に投資を行っており、HPAL製錬所におけるニッケル製品総生産量はニッケル純分で280,400t/年となり、EVバッテリーに換算すると373.9GWh/年の容量に相当する。2030年のバッテリー需要は108.2GWhの見込みである。

2030年までにバッテリーの生産能力として、172GWh追加で生産することが可能であり、インドネシアで生産したバッテリーを輸出するチャンスもある。

3.世界の電池生産の促進におけるインドネシアの重要な役割
Meidy Katrin Lengkey(General Secretary of Association of Indonesia Nickel Miners (APNI), Indonesia)

インドネシアの戦略的投資下流産業ロードマップについては、8つの優先分野が示されており、そのうち、鉱物資源及び石炭に関しては、2035年までの投資機会として、427.1bUS$を見込んでいる。ニッケルも戦略的なコモディティの1つである。

インドネシアはニッケル埋蔵量として21百万t(ニッケル純分。世界のニッケル埋蔵量88.71百万tの内の24%)を有しており、世界で最もニッケル埋蔵量を有する国である。そのため、インドネシアはニッケル供給サイドとして、世界でも重要な役割を果たしていくことになる。

インドネシアは、ニッケルを鉄、鉄鋼、バッテリー材料に加工する下流産業の発展に成功した。

表2.インドネシアのニッケル製品輸出収益      単位:mUS$
  2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
FeNi/NPI 1.493 1.437 2.655 4.868 7.166 13.507
鉄・鉄鋼 1.856 4.314 4.733 5.979 13.783 14.341
ニッケル・マット 629 777 782 764 953 3.764
MHP/MSP 311 2.198
合計 3.979 6.528 8.169 11.612 22.214 33.810

出典:セミナー資料から筆者作成

インドネシアに賦存するニッケル品位1.7%未満の低品位のニッケル鉱石(リモナイト)の埋蔵量は3.6十億t、2022年に立ち上がった湿式製錬所は4つ、ニッケル鉱石消費量は12百万wmt。湿式製錬所は、バッテリー・カソードの原料となるニッケル・コバルト混合水酸化物(MHP)を生産する。また、ニッケル品位1.7%超の高品位ニッケル鉱石(サプロライト)の2022年の消費量は101百万wmtで、乾式製錬を経て、ステンレス鋼の原料となるニッケル銑鉄、フェロニッケル、ニッケル・マットを生産する。

インドネシアで生産されたニッケル製品の86%は、ニッケル銑鉄若しくはフェロニッケルの形態で輸出される。ニッケル銑鉄若しくはフェロニッケルの内80~90%は中国に輸出されるため、販売価格は、LMEの価格指標より低くなるShanghai Metal Market(SMM)の価格指標が利用される。(ニッケル生産のロイヤルティは、LME価格をベースにして鉱石ベンチマーク価格(HPM)が使用される)
LMEニッケル価格が2022年11月に11%上昇した時、インドネシアのフェロニッケル価格は6%下がった。同様のケースが、2022年8月にも起きた。フェロニッケル価格は、LMEのニッケル価格を完全に反映していない。LME価格とインドネシアが販売するニッケル製品(NPI)の市場価格には、相関性がない。

ニッケル産業における重要なプレーヤーとして、インドネシアは、1つの価格指数だけを参照しないように独自の指数を確立する必要がある。新たな価格指数は、輸出税や国内でのニッケル鉱石の価格設定等、インドネシアの国家政策に利用することもできる。インドネシア政府はすぐにでも、鉱山業者や製錬所他、ニッケル関係者全てに公正なビジネスと利益を提供するために、インドネシア・ニッケル価格指数(Indonesian Nickel Price Index)を策定するべきである。

インドネシアで現在、操業中及び計画中を含めて、主なHPAL製錬所は6つある。6製錬所の総投資額は約6.253bUS$で、年間のニッケル鉱石需要は約51.1百万t/年である。ニッケル製品の国内生産能力合計は、MHPが167,000t/年、NiSO4が382,364t/年、CoSO4が32,000t/年、MSP40,000t/年である。

表3.インドネシアにおける主なHPAL製錬所プロジェクト
  場所 鉱石処理能力 年間ニッケル製品生産能力 状況
PT Kolaka Nickel Industry 南東Sulawesi州 3.65百万t/年 MSP 40,000t/年 FS
PT Huayue Nickel Cobalt 中部Sulawesi州 11百万t/年 MHP 70,000t/年 操業中(※)
PT QMB 中部Sulawesi州 5百万t/年 NiSO4 136,364t/年 建設中
PT Halmahera Persada Lygend Obi島 8.3百万t/年 NiSO4 246,000t/年
CoSO4 32,000t/年
商業運転中
PT Smelter Nickel Indonesia Banten州 2.4百万t/年 MHP 76,000t/年 建設中
PT Gebe Industry Nickel 東Java州 1.32百万t/年 MHP 21,000t/年 操業中

※セミナー資料では、「建設中」となっていたが、2022年2月8日に中国にMHPを輸出したという報道があったので、操業中と修正した。

出典:セミナー資料から筆者作成

4.持続可能な鉱業慣行の育成:インドネシアの世界の責任ある資源採取への道 電池製造
(Dr. Eng. Aditya Farhan Arif、Head of Strategic Planning、MIND ID – PT Mineral Industri Indonesia)

国営鉱業持株会社MIND IDは、株を保有している企業を通じて、ニッケル(PT Antam)、カーボン(PT Bukit-Asam)、銅(PT Freeport Indonesia)、アルミニウム(PT Inalum)、その他(PT Timah)のコモディティを取り扱うことによって、EVバッテリーのエコシステムを支えている。ニッケルはそのひとつに過ぎない。

ニッケルをベースとしたEVバッテリーのニッケル含有量は23%である。MIND IDは低品位の石炭を人造グラファイトに転換しているところであるが、EVバッテリーのグラファイト含有量27%である。また、EVバッテリーの需要が高くなることによって、多くの原料が必要になるが、サーキュラー・エコノミーの一環として、テーリング・マネージメントとバッテリーのリサイクルをMIND IDのESG(環境・社会・ガバナンス)戦略としている。

テーリング・マネージメントでは、MIND IDは、HPAL製錬によるニッケル鉱石の廃棄物から、有価金属を回収する技術に取り組んでいる。鉱業廃棄物は、まだ、環境にとって、有害な有害廃棄物と考えられていることが課題。

バッテリー・リサイクル及びリユースは、リサイクルの可能な廃棄物であることと、政策、リサイクル技術に依拠しているが、廃棄バッテリーの75%は、2030年までにリサイクルすることになるだろう。

5.インドネシアバッテリーコーポレーション:「インドネシアの電池製造を牽引する」産業:国有企業の重要な役割技術進歩する企業
(Tono Nugroho Pranatyasto, Director of Indonesia Battery Corporation)

International Battery Corporation(IBC)は、国営電力会社PT PLN、鉱山会社PT Antam、国営アルミニウム会社PT Inalum、国営石油会社PT Pertaminaがそれぞれ25%を出資して設立した国営企業である。目的は、EVエコシステム及びEVバッテリーにおいて、世界クラスのグローバル・プレイヤーになることである。

IBCのミッションは、上流から下流までの共同的なEVバッテリー・エコシステムの構築を通して、インドネシアの資源の潜在的な付加価値を最大限にすること、積極的にインドネシアのEVバッテリー市場及びエコシステムを形成すること、世界水準の企業となるために、インドネシアの将来性と競争力を継続的に強化すること、ASEANでのバッテリー生産とEVの生産拠点/ハブとして、インドネシアを支援すること、EVとバッテリー・エコシステムの発展において世界的なパートナーと協力することである。

インドネシアで進行中のプロジェクトによって、2030年までに見込まれる潜在的なバッテリー・セルの供給量は次のとおりである。

表4.インドネシアからのバッテリー・セルの潜在的供給見通し(GWh)
  2024 2025 2026 2027 2028 2029 2030  
Fulcurmプロジェクト(※1) 1.8 3.2 3.4 3.6 4 4 4.5 250万台のEバイク相当
Titanプロジェクト(※2) 2 4 6 8 10 26 30 40万台のEV相当
Dragonプロジェクト(※3)     0.06 3.2 13.7 15 15 20万台のEV相当
合計 3.8 7.2 9.4 15.8 27.7 45 49.5  

出典:セミナー資料から筆者作成

※1 IBCと中国Fulculm Consotioumとのバッテリーの供給、交換・充電ステーションの運用等を行うバッテリー・アセット・マネージメント・サービスの開発に関するプロジェクト
※2 IBC・PT AntamとLGコンソーシアム(LG Energy Solution、LG Chem社、LX International社、韓POSCO、華友コバルト)鉱業部門から下流のバッテリー生産・リサイクル部門までを扱う統合バッテリープロジェクト
※3 IBCと中国CBL(CATLの子会社)による鉱業部門から下流のバッテリー生産・リサイクルまでを扱う統合バッテリープロジェクト

6.Ministry of Industry

EV用バッテリーkWh当たりの原料の需要は、ニッケルは0.77㎏、マンガン0.096㎏、コバルトは0.096㎏であり、ニッケル、マンガン、コバルトの需要は次のとおりとなる。

PT Halmahera Persada Lygend, PT QMB New Energi Mineral, PT Huayue Nickel CobaltのMHPの年間生産能力は合計で915千t。MHPの後の加工製品であれば、硫酸ニッケルを毎年617千t生産することになる。また、加工製品には80千tの硫酸コバルトも生産することになり、16千t相当のコバルトを生産する可能性を持つ。必要なのは、16千t相当のマンガンを含む製品を生産するマンガン製錬所が必要である。2035年までは、ニッケルとコバルトの供給量が需要を上回るポテンシャルがある。更に、インドネシアは、バッテリーの原料として若しくはニッケル製品のための巨大なニッケル供給量を有する。加えて、MorowaliでPT Pugingにようにいくつかのリサイクリング活動も期待できる。

表5.インドネシアにおけるEVバッテリー原料の需要見通し
  2025年 2030年 2035年 EVバッテリー用原料の生産量の可能性
ニッケル(t) 25,133 37,699 59,506 136,000t
マンガン(t) 3,133 4,700 7,419
コバルト(t) 3,133 4,700 7,419 16,200t
EV生産量(台) 400,000 600,000 1,000,000
Eバイク生産量(台) 6,000,000 9,000,000 12,000,000

出典:セミナー資料からJOGMEC作成

7.インドネシアのエネルギートランジションにおけるバッテリー生産を推進するための政策
(Dr. Ir. Djoko Siswanto, M.B.A, Secretary General National Energy Council)

2060年までにネットゼロ・エミッション到達するという政府の約束を支援するため、低炭素エネルギー・システムを達成する。2020~2035年までのグランド・ナショナル・エネルギー戦略の課題である増加するエネルギー需要とエネルギー供給の制限に対処するための1つとして、EV使用を増加させる。

2030年までにガソリンの輸入を停止する。そのための努力の1つとして、2百万台のEV及び13百万台のEバイクの利用を推進する。この場合、EVやEバイクに対する10年間の免税措置が必要。

自動車や他の移動手段における電動化において、バッテリーは最も重要な技術である。そして、バッテリー市場は、自動車への搭載及びバッテリー・ステーションの両方で拡大していく。バッテリー生産に必要な鉱物資源と原料のサプライ・チェーンには、特定の国に依存しなければならないというリスクがある。バッテリー・セルにおいては、インドネシアは競争力を失いつつあり、外国に依存する必要性が増加している。原料の確保と原料とバッテリー・セルの製造インフラを確保するといったサプライ・チェーン全体を維持・強化することが必要である。

8.トランジションへの電力供給:インドネシアにおけるバッテリー技術躍進に伴う再生可能エネルギーを変革すること
(Edi Sriulyanti, Commerce and Retail Director of Indonesia State Electricity Corporation)

国営電力会社PT PLNは、十分な電力供給、EVチャージング・ステーション及びバッテリー・交換ステーションの供給、EV利用者へのインセンティブの提供によって、EVエコシステムの構築加速を支援している。インドネシアでは、12,395台のEV及び40,312台のEバイク(2023年3月時点)に電力を供給するために、EVチャージング・ステーション(SPKLU)及びバッテリー交換ステーション(SPBKLU)の設置数を増加させ、現時点でPT PLNが設置したSPKLUは842ユニット、SPBKLUは1,401ユニットである。

PT PLNは、全ての製造業者がバッテリーを交換できるようにバッテリーの標準化を実現するために、インドネシア・バッテリー・コーポレーションを通じて、バッテリー交換システムを構築する。バッテリーを標準化する公式な決定に関し政府の支援を必要とする。それによって、異なるEVメーカーの間で、バッテリーを交換することができるようにする。

PT PLNは、IBCを通じて、中国Fulcrum Consortiumとのパートナーシップを構築した。EVバッテリー技術の開発に関してインドネシアにおけるEVエコシステムを構築するための戦略的なステップとなる。さらに、国立銀行協会(Himbara)とともに、EVエコシステムを加速するため、EVを保有することがより簡易なものとなるような取り組みを行っている。具体的には、EV購入時において様々なインセンティブの提供や多様な支払い手段の選択などである。

9.EV転換プログラムを支援するバッテリー産業の課題
(Senda Hurmuzan Kanam(Head of Survey and Testing Center for Electricity, New, Renewable Energy, and Energy Conservation、エネルギー鉱物資源省)

エネルギートランジションは、エネルギーの可能性を確保するための努力であり、全てのコミュニティによって評価される。持続可能な開発のために長期的にエネルギーの適正な価格を維持することに注意が支払われる。

ネットゼロ・エミッションに向けて、石炭火力発電所の段階的な廃止、太陽光発電および風力発電等による新再生可能エネルギー開発の加速、より効果的な技術の利用EV及び電気ストーブ利用の促進、多様な再生可能エネルギーの断絶性を克服するためのスマート・グリッドの実施を戦略とする。

2060年のネットゼロ・エミッション発電所開発ロードマップで、全ての電力は、新再生可能エネルギー発電(708GW)になる。その内訳は、太陽光発電421GW、水力発電72GW、風力発電94GW、原子力発電31GW、バイオマス/バイオエネルギー60GW、地熱22GW、海洋エネルギー8GW、揚水発電4.2GW、バッテリー・エネルギー・ストレージ・システム140GWである。

EV転換政策としては、政府は、道路移動に関するバッテリー・ベースのEVの加速(大統領令2019年第55号)等の規則で、自動車のEVへの転換を促進している。

バッテリー原料として、インドネシアはアルミニウム、銅、ニッケル、マンガン、コバルトを保有しているが、グラファイト、リチウムは、保有していない。エナジー・ストレージが必要とするレア・アースの供給も不十分である。

おわりに

インドネシアでは、2009年に策定した鉱物石炭鉱業法以来、金属における高付加価値化政策を実施している。特に最近の世界的なEV化の潮流の中で、EV用バッテリーの原料としてニッケル等が注目されている中、インドネシアはニッケルの生産量・埋蔵量共に世界一であることから、資源の上流部門から下流部門まで、インドネシア国内でのEVエコシステムを構築し、EVバッテリー生産の東南アジアにおけるハブになろうとしている。このような動きの中で、インドネシアは未加工のニッケル鉱石の輸出を2020年1月から禁止し、他の未加工鉱石についても例外を除き、2023年6月から輸出を禁止している。

インドネシアは、高付加価値のための政策を続けており、EV政策とも大きく関係しているので、今後もEV政策の動向を追っていきたい。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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