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報告書&レポート

2024年3月11日 ロンドン 事務所 平田哲人、南川亜美
24-04

2023年秋季国際非鉄研究会(INSG、ICSG、ILZSG)参加報告

<ロンドン事務所 平田哲人、南川亜美 報告>

はじめに

2023年10月2~6日にかけて、ポルトガルLisbonにおいて国際非鉄研究会が開催された。ニッケル、銅、鉛・亜鉛の各研究会のほか、The Role of Recycling in Meeting Future Demand for Metalsと題したジョイントセミナーも開催され、需給予測について議論が行われたほか、非鉄研究会事務局やゲストスピーカーによる講演が行われた。需給予測や主な講演内容は次のとおり(事務局の講演は省略)。

1.需給予測

1.1.ニッケル:2024年は239千tの供給過剰

  • 歴史的にニッケルの供給過剰はLMEのデリバラブル/クラスIニッケルとリンクしてきたが、2023年及び2024年の供給過剰の原因は主にクラスIIニッケルとニッケル化学物質(主に硫酸ニッケル)である。
  • 供給面では、一次ニッケル生産量は、2023年の3.417百万tから2024年は3.713百万tに増加すると予測。インドネシアではニッケル銑鉄(NPI)生産が引き続き増加し(中国は2024年も引き続き減少)、新たなニッケル・コバルト混合水酸化物(MHP)を生産するHPAL(高圧酸浸出)プラント生産増加に伴い、NPIニッケルマットへの転換もさらに拡大。
  • 需要面では、一次ニッケル消費量は、2023年の3.195百万tから2024年は3.474百万tに増加。ステンレス部門は2023年下半期に回復、2024年にはEV(電気自動車)バッテリー向けにさらに増加。
表1.世界のニッケル需給バランス(2023~2024年)            (単位:百万t)
2023年予測 前年比 2024年予測 前年比
一次ニッケル生産 3.417 11.7% 3.713 8.7%
一次ニッケル消費 3.195 8.1% 3.474 8.7%
需給バランス 0.222 0.239

出典:INSG会議資料よりJOGMEC作成
※需給バランスについて、正数は供給過剰、負数は供給不足を示す。以下同。

1.2.銅:2023年は27千tの供給不足、2024年は467千tの供給過剰

  • 2023年は27千tの供給不足、2024年は467千tの供給過剰と予測。
  • 供給面では、銅鉱石生産量は、2023年は対前年比1.9%増、2024年は同3.7%増と予測。2023年は主にDRコンゴ、ペルー及びチリでの新鉱山開発・拡張による生産増加が見込まれ、2024年には新規・拡張鉱山による追加生産に加え、2023年に操業制限を受けたチリ、中国、インドネシア、パナマ、及び米国などの生産率が改善する見通し。
  • 銅地金生産量は、2023年は対前年比3.8%増、2024年は同4.6%増と予測。主に中国における電解生産能力の継続的拡大やインドネシア、インド及び米国での製錬所の新設・拡張にけん引されると見込まれる。
  • 需要面では、銅地金消費量は、2023年は対前年比2%増、2024年は同2.7%増と予測。様々な国で進行中のエネルギートランジション、及び新たな半導体生産能力の開発が需要の後押しとなるほか、主要国におけるインフラ開発、クリーンエネルギー及びEVへの移行傾向が長期的な需要を支えるとされている。
表2.世界の銅需給バランス(2022~2024年)          (単位:千t)
2022年 前年比 2023年予測 前年比 2024年予測 前年比
銅鉱石生産 21,941 3.0% 22,360 1.9% 23,195 3.7%
銅地金生産(供給) 25,374 1.7% 26,329 3.8% 27,534 4.6%
銅地金消費(需要) 25,835 2.5% 26,357 2.0% 27,066 2.7%
需給バランス -461 -28 468

出典:ICSG会議資料よりJOGMEC作成
※上記の計数は所要の調整後であり、表3の計数とは一致しないことがある。

表3.世界の地域別生産・消費(2022~2024年)        (単位:千t)
鉱石生産 地金生産 地金消費
地域/年 2022 2023 2024 2022 2023 2024 2022 2023 2024
アフリカ 3,274 3,436 3,683 2,183 2,292 2,484 177 184 192
北米 2,534 2,418 2,590 1,649 1,603 690 2,267 2,227 2,264
中南米 8,556 8,975 9,376 2,580 2,383 2,361 384 384 392
ASEAN
10か国
1,078 1,065 1,104 494 461 633 1,182 1,183 1,264
CIS諸国 945 969 1021 515 505 524 107 106 107
ASEAN・CIS以外 アジア 2,649 2,689 2,938 13,825 14,857 15,742 17,770 18,362 18,845
EU 782 762 759 2,571 2,507 2,505 3,098 3,039 3,101
EU以外 欧州 1,229 1,242 1,431 1,156 1,305 1,376 845 866 897
オセアニア 895 915 935 401 437 465 5 5 5

出典:ICSG会議資料よりJOGMEC作成

1.3.鉛:2024年は52千tの供給過剰

  • 供給面では、2024年の鉛鉱石生産量は、対前年比2.9%増の4.71百万tと予測。主に豪州における豪Galena Mining社のAbra鉱山において95千t/年の操業成功による大幅な増加が引き続き見込まれ、2023年11月より英Adriatic Metals社による新たなVeres鉱山の操業が予定されているボスニア・ヘルツェゴビナ、ブルガリア、インド、及びロシアにおいてもさらなる増加が見込まれる。
  • 2024年の鉛地金生産量は、対前年比2.3%増の13.14百万tと予測。注目すべき要因としてシンガポールTrafigura社の独Stolberg製錬所が2021年の洪水被害による閉鎖から再開したことである。このほか、台湾及びUAEにおいても新規生産開始により増加が見込まれる。一方で、ブルガリア、イタリア及び韓国では減少が見込まれる。
  • 需要面では、2024年の鉛地金消費量は、対前年比2.2%増の13.08百万tと予測。欧州では2023年3.7%増の見込みであるほか、インド、メキシコ、台湾、及びベトナムでも増加が見込まれる。2024年にはインド、日本、及び韓国で需要が増加するとみられる。
表4.世界の鉛需給バランス(2024年)  (単位:百万t)
2024年予測 前年比
鉛鉱石生産 4.71 2.9%
鉛地金生産(供給) 13.14 2.3%
鉛地金消費(需要) 13.08 2.2%
需給バランス 0.06

出典:ILZSG会議資料よりJOGMEC作成

1.4.亜鉛:2024年は367千tの供給過剰

  • 供給面では、亜鉛鉱石生産量は、2023年前年度比0.1%増の12.43百万tとなり、2024年は同3.9%増の12.91百万tと予測。豪州及びロシアでの大幅な増加が主要因であるほか、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ブラジル、中国及びメキシコにて生産増が見込まれる。一方、操業停止の影響で、アイルランドのTara鉱山で130千t/年、ポルトガルのAljustrel鉱山で110千t/年の生産能力の減少が見込まれている。
  • 亜鉛地金生産量は、2023年対前年比3.7%増となり、2024年は同3.3%増の14.30百万tと予測。主に、中国において2023年と2024年にそれぞれ6.7%と4.1%と大幅な増加が見込まれるほか、豪州、及びOdda製錬所の拡張工事が2023年下半期に完了する予定であるノルウェーにおいても増加が見込まれる。
  • 需要面では、亜鉛地金の消費量は、2023年1.1%増の13,59百万tとなり、2024年は2.5%増の13.93百万tと予測。中国では2023年3%増、2024年は1.2%の増加が見込まれる。欧州、インド、日本、韓国、米国、及びベトナムで増加の見込みである。
表5.世界の亜鉛需給バランス(2023~2024年)  (単位:百万t)
2024年予測 前年比
亜鉛鉱石生産 12.91 3.9%
亜鉛地金生産(供給) 14.30 3.3%
亜鉛地金消費(需要) 13.93 2.5%
需給バランス 0.37

出典:ILZSG会議資料よりJOGMEC作成

2.主な講演等の概要

2.1.INSG

OECD(責任ある鉱物サプライチェーンのためのデュー・ディリジェンスガイドライン)
  • OECDは、ガイドライン“Due Diligence Guidance for Responsible Supply Chains of Minerals from Conflict-Affected and High-Risk Areas”を、鉱物サプライチェーンへの責任ある投資を促進することを目的とし紹介した。米Dodd Frank Actに基づくこのガイダンスは、OECD加盟国だけでなく、DRC等の非OECD加盟国も対象で、企業におけるリスク評価(紛争資金、人権侵害、経済犯罪との潜在的関連性)の優先順位付けを支援し、鉱物生産国の持続可能な発展への貢献支援を目指す。具体的にはサプライチェーンにおける実践的フレームワークの提供である。
  • 企業はリスクフリーのサプライチェーンを維持しようとするのではなく、サプライチェーンにおける高リスク箇所を特定し、地元政府及び社会を巻き込みサプライヤーと協力することでリスクを軽減することが求められている。
  • ステークホルダーの役割として、企業は、業界団体やイニシアチブを通じて、デュー・ディリジェンスと5段階(リスク特定、緩和及び管理、記録、第三者機関による監査、公的報告)のフレームワークの実施、政府は、責任ある鉱物サプライチェーンを可能にする環境作り、社会は世界の鉱物サプライチェーン全体にわたる鉱山部門のガバナンスと企業活動を監視することだと説明した。OECDは特にASM(Artisanal and Small-scale Mining:小規模・零細採掘)に関し積極的に取り組みを行ってきた。
  • OECDのデュー・ディリジェンスガイドラインはLMEの責任ある調達要件に組み込まれており、中国商工会議所では国際基準として同ガイドラインと同様のガイダンスを確立した。UAEでは最近、同ガイダンスを法的枠組みへと統合し、各業界基準がOECDガイダンスと実際どの程度一致しているかを確認するアライメント評価の方法論を開発した。
Nickel Institute(クリーンエネルギー開発におけるニッケルの使用)
  • BloombergNEFによると、2022年に初めて世界の低炭素エネルギー技術への投資額が1tUS$超を更新、再生可能エネルギーへの投資は過去最高の495.0bUS$に達した。これは2021年から17%増になる。
  • ニッケルはクリーンエネルギー技術において、洋上風力発電の発電塔、太陽光発電、地熱のダウンホール設備、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:二酸化炭素回収・有効利用・貯留)の輸送及び貯蔵、バイオ燃料の工場、原子力の構造物、水素の電解槽、EVバッテリー、及びバッテリー駆動の電動航空機において使用されている。
  • IEAデータによると、クリーンエネルギーにおけるニッケル需要は2017年の全体の6%に対し2022年は16%を記録した。
Wood Mackenzie(ニッケル需要及び供給分析)
  • 2022年第2四半期以降、ニッケルの供給は一貫して需要を上回っており、2023年は中国ステンレス市場の景気低迷の影響並びにインドネシアでのバッテリー原材料プラント新設により供給過剰となった。2022年と比較しても2023年は四半期生産量が約150千t増加した。なお、2022年から2023年のNPIにおける累積余剰は450千tである。
  • 世界生産は12%増を目標にしているが、需要は約7%増に留まっている。インドおよび中国を除いた、欧州、日本、及び米国においてステンレス鋼溶湯の製造が景気低迷及びエネルギーコストの上昇により減少している。
  • アジアにおける生産量が大幅に増加しており、この市場における供給過剰は拡大する一方、累積過剰は2022年から2025年で1百万tに達し、価格は10,000US$/tを下回る更なる下落も予想される。この供給過剰は2030年まで続くとみられる。但し中国の成長は緩やかになっており、過去2年間の13~14%の成長に対し、2023年は8~9%程の成長見込みである。
  • LME価格は、中国以外でのクラスIの供給が逼迫していることから支えられているが、中国におけるニッケル硫酸塩(NiSO4)クラスI生産転換への動きが2024年及び2025年のクラスIを供給過剰に追い込み、価格は下落との予測である。中国におけるクラスIの新規生産能力は215千t/である。
  • COVID-19パンデミックでの生産低迷を取り戻そうと、インドネシアでマット及びMHPを増産したことにより、NiSO4の需要が滞り、供給過剰に陥っている。
  • 2022年及び2023年の供給余剰要因は主に中国のクラスIIつまりNPIであり、スクラップの比率が18~20%程度に留まれば今後2年間でNPIの供給過剰は解決されるとしている。
  • LMEニッケル価格予想は、2025年までクラスI、NiSO4、マット、MHPすべて下落予想となっている。
その他

インドネシアニッケル鉱業者協会(APNI)(インドネシアニッケル市場分析)、Worldstainless(ステンレススチールの市場概要のアップデート)、Canada Nickel Company(ニッケル次世代の紹介)、Rho Motion(世界のEV市場分析)が講演した。

2.2.ICSG

United States Geological Survey(USGS)(米国の銅産業の概要)
  • 2022年、世界の銅鉱山における生産量は22百万tであり、そのうちチリが24%、ペルー11%、DRコンゴ10%、中国9%、米国6%であった。2022年の米国銅鉱山生産量は1.26百万tであり、そのうち銅精鉱は56%の704千t、SxEw法での銅生産は44%の555千tであった。米国における2022年銅生産の主要企業はFreeport McMoRan780千t(62%)、Rio Tinto179千t(14%)、米ASARCO社112千t(9%)、加Capstone Copper社57千t(5%)、ポーランドKGHM社51千t(4%)であった。
  • 米国で現在操業中の銅精鉱生産鉱山及びSxEw法にて銅生産を行う鉱山は25か所である。Morenci銅鉱山はFreeportが所有し、2022年生産量は401千tに達し米国で第1位、世界では第8位となった。Rio Tinto所有のBingham Canyon銅鉱山は米国で第2位、その次となるのはSafford銅鉱山でFreeport所有、2022年は129千tの生産量に達した。
  • 世界の銅埋蔵量は2022年現在890百万tとされており、チリ21%、豪州11%、ペルー9%、ロシア4%、メキシコ6%、米国5%、DRコンゴ4%となっている。
  • 米国における、2022年の銅精鉱輸入量は11.7千tで消費量の3%にあたる。一方で輸出量は353千tで生産量の28%。2018~2022年における米国銅精鉱の輸入先はメキシコ70.3%及びカナダ29.6%、一方で輸出先はメキシコ53%、中国13%、スペイン10%、カナダ9%、日本8%である。
  • 米国新規銅鉱山採掘プロジェクト
    • Excelsior社Gunnison鉱山:2024/25までに11千t/年
    • Nevada Copper社Pumpkin Hollow鉱山:2023末までに25千t/年
    • Rio Tinto Bingham Canyon鉱山:30千t/年の容量拡大の検討
    • Taseko社Florence鉱山:2024/25までに39千t/年のカソード
    • Highland社Copperwood鉱山:2026年までに29千t/年
    • Faraday Copper社Copper Creek鉱山:早くて2026年43千t/年
  • 2022年精錬銅の生産量は25.7百万t、中国43%、チリ8%、DRコンゴ7%、日本6%、ロシア及び米国4%。米国には19の稼働中の精錬所がある。
  • 2022年、米国は926千tの銅スクラップを輸出し、これは世界全体の18%を占めた。米国における精錬銅の二次生産は今後数年で増加する見通しで、2026/27年までに約145千t増となっている。
  • 米国新規銅二次加工精錬所プロジェクト
    • AMES Copper Group:NC州Shelby製錬所
    • wieland社:KY州Shelbyville精錬所
    • Aurubis社:GA州Augusta製錬所
    • exurban社:IN州加工精錬所
Concord Resources社(銅精鉱の市場)
  • 世界の銅精鉱市場バランスは2022年下期より、銅鉱山の生産量に対する銅精鉱産出量は下落傾向にあったが、2023年上期、銅生産量より銅精鉱の生産高が上回っている(過去2年間、鉱山生産量の増加率は製錬所生産量の増加を上回っていた)。背景として2021年より銅鉱山の生産減速、2023/24年に中国、インドネシア、インドにおける新規製錬所プロジェクトで生産能力が強化されること等が挙げられる。
  • 2023年の銅鉱山生産量増はDRコンゴ、ペルー、チリ、ブラジル、ロシアが貢献(DRコンゴが3分の1を占める)、一方で豪州、米国及びインドで生産高の減少が見られる。
  • DRコンゴの銅鉱山の生産量は2000年代後半と比較し10倍以上に増加、過去5年間でほぼ倍増、2023年には約2.5百万tに到達見込みである。世界の銅生産量に占めるシェアが12%に迫り、ペルーを抜いて世界第2位の銅鉱山国になる見通しである。
  • チリCodelcoの銅鉱山生産は低迷、生産高は2010年以降下落傾向にある。2023年の生産量は14年ぶりの低水準を記録(1.5百万t)し、チリ国内シェアが20%未満に減少した。
ジョイントセミナー(The Role of Recycling in Meeting Future Demand for Metals)
Bureau of International Recycling(BIR)
  • BIRの金属リサイクルにおける役割は、マテリアルリサイクル及びリサイクル性の向上、リサイクル材料の自由かつ公正な取引の促進である。
  • 世界のGHG排出量のうち鉱業は10%を占める。金属リサイクルは新たな原材料を使用する生産プロセスと比較して必要エネルギーがアルミニウムで95%、銅85%、鉄74%、亜鉛60%、鉛65%削減される。一次生産と二次生産を比較した際に、二酸化炭素排出量に関しては、アルミニウムで92%、銅で65%、鉄で58%が削減される。
  • スクラップからの生産拡大により、金属業界の二酸化炭素排出量を抑制し、プライマリーリソースの消費削減が期待できる。リサイクル金属を使用することで環境上の利益を再認識すること、回収目標及びリサイクルを効率化する技術開発の強化、及び貿易規制を取り除き自由で公正な貿易を促進することが金属リサイクルの効率性を上げるとしている。
Eurometaux
  • EurometauxはEUの法律を形成している欧州議会、欧州委員会、及び欧州理事会の3機関に対し、欧州の非鉄金属生産者、加工業者、リサイクル業者の代表となり、EUの法律に積極的に影響を与えている。
  • 2023年以降の持続可能性に向け、多くのリサイクル規制が改訂されていることを紹介。
    • BR:バッテリー規則(2023年夏、発行済み)
    • WSR:廃棄物出荷規則(レビュー中)
    • CRM:重要原材料法案(新法の提案がなされ議論中)
    • ELV:End of Life自動車法(見直しの開始)
    • WEEE:電気・電子機器廃棄物法(2024年レビュー予定)
    • PPWD:パッケージ及び包装廃棄物法(レビュー中)
    • ESPR:持続可能製品に対するエコデザイン規制(新法の提案がなされ議論中)
その他

Circular Energy Storage、中国非鉄金属工業協会(CNIA)、米スクラップリサイクル産業協会(ISRI)、インド鉛亜鉛開発協会(ILZDA)等が講演。

2.3.ILZSG

LME(LME亜鉛インデックス及び最新政策の紹介)
  • LMEは金属市場の運営方法をより近代的にするため、ニッケル取引に特に焦点を当てた市場強化のLME行動計画を2023年3月に発表した。先物市場やオプション市場にて馴染みのある新たなLME終値計算方法論を2023年9月に発表、2024年1月よりアルミニウムがこの方法論に移行し、同年3月に銅、亜鉛、及びニッケルにも導入される。
  • 世界亜鉛生産量は12.8百万tあり、亜鉛需要の60%以上が亜鉛メッキである。市場の大部分は亜鉛ジャンボ形状を使用しており、LME契約ではインゴットのみ認められていたが、亜鉛市場でのLMEの代表性を高め、在庫の流動性を改善するため2023年10月27日よりジャンボ形状での仕様もLME亜鉛契約に導入される。
CRU(グリーンエネルギーにおける鉛の長期的な機会)
  • 2050年までに排出量を実質ゼロにするには、世界経済を支えるエネルギーシステムの全面的な変革が必要で、政府公約と行動のギャップを埋める必要がある。IEAのロードマップには技術的に実現可能で、費用対効果が高く、社会的に受け入れられる方法が示されている。
  • 今後EV用鉛バッテリーの需要はある程度減少する可能性がある。ネットゼロ達成のためにはバッテリーグレードの鉛生産技術の強化が必要な一方で、LIBの使用が急増する中、より安価で対抗できる鉛バッテリーが予備電力エネルギー貯蔵システム(ESS)の市場シェアを獲得する可能性がある。
  • 発展途上国において、マイクロモビリティ(電動自転車、電動スクーター、電動人力車等)における鉛バッテリー成長の機会もある。
その他

加Teck Resources社(San Nicolas鉱山開発及びTeckプロジェクトの紹介)、加Lundin Mining社(Neves Corvo鉱山拡張)、Consortium for Battery Innovation(エネルギー貯蔵部門の成長における鉛蓄電池の重要性)等が講演。

おわりに

ニッケルは、中国ステンレス市場に景気低迷やインドネシアでの新プラント設立等により供給過剰が継続との見通しである。銅は、2024年にはDRコンゴ及びペルーでの新規・拡張鉱山による追加生産に加え、2023年に操業制限を受けたチリ、中国、インドネシア、パナマ、及び米国などの生産率が改善する見通しである。亜鉛及び鉛については、2024年は供給過剰が予想され、豪州にて大幅な増産があるほか、ロシア、ボスニア・ヘルツェゴビナ等にて生産増が見込まれている。ジョイントセミナーでは将来の金属需要を満たす金属リサイクルの役割が議論され、欧州バッテリー規則や重要原材料法など新たなリサイクル規制に関する持続可能性を焦点に充てた講演が行われた。

次回は2024年4月にLisbonにて開催予定で、ジョイントセミナーは責任ある調達をテーマに講演が行われる予定である。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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