報告書&レポート
ボリビア政府によるリチウム事業国際公募(第2回目)について
はじめに
ボリビアには数多くの塩湖が存在しており、Uyuni塩湖(Potosí県)では豊富なリチウム資源の埋蔵が確認されている。ボリビア政府は自国のボリビアリチウム公社(YLB)によるこれら塩湖のリチウム資源開発を推進する一方、2010年頃より外国企業にも門戸を開いていった。近年の代表例として、2021年5月にUyuni塩湖、Pastos Grandes塩湖(Potosí県)、Coipasa塩湖(Oruro県)を対象とするリチウム直接抽出(DLE)の国際公募が挙げられる。数回の選定プロセスを経て、結果2023年に中国コンソーシアムCBC(CATL BRUNP & CMOC)、中CITIC Guoan社、露Uranium One Groupそれぞれとリチウム事業に関する協定を結んだ。
現在、CBC及びUranium One Groupのパイロット試験が開始されているが、その一方で、ボリビア政府は第2回目となるリチウム事業の国際公募を開始した。公募は2024年1月26日よりYLBウェブサイトに掲載されている1。本公募は前回と違い、DLEを技術要件とすることは記載されていないが、公募開始前の2024年1月17日付け炭化水素エネルギー省の発表によると2、「DLEの技術を持つ企業を対象とした国際公募を行う」とArce大統領が発言している。また、各フェーズにおける審査内容、提出期限が具体的に示されている。対象となる塩湖は下図に示された7塩湖である。前回公募の対象の3塩湖にCapina、Cañapa、Chiguana、Empexa塩湖(いずれもPotosí県)が追加された。

図.国際公募の対象の塩湖(OpenStreetMapを加工)
以下はスペイン語の公募をリマ事務所で仮訳したものである。正確な内容は原文をご確認いただきたい。
“蒸発資源活用のためのプロジェクト・技術開発に係る参加希望表明の公募”
A.公募の目的
技術・経済・財務的な実現可能性の証明のための協定の枠組の基で開発されるUyuni、Coipasa、Pastos Grandes、Capina、Cañapa、Chiguana、Empexa塩湖の実際の環境下における蒸発資源活用のためパイロットプロジェクトを実施すること。
B.手順
本公募は以下のフェーズに従って実施される。
フェーズ1.管理・技術的要件文書の提出
応募企業の法的代表者は、本公募公示の40暦日後までにYLBに対して、以下の文書のコピーを添付の上で「参加希望表明書」を提出すること。
- 会社名
- 当局に正式に登録された会社や団体の登記文書やその修正書、該当する場合
- 事業登録またはこれに相当するもの、該当する場合
- 法的代表権限証明書またはこれに相当するもの
- 法的所在地
- 納税者番号(NIT)またはこれに該当するもの
- 電話
- 電子メール
- 当該企業、本社またはその関連子会社が、過去5年間(2019~2023年)に、蒸発資源活用のパイロットまたは産業プロジェクトを少なくとも1件実施したあるいは実施中であることを証明する文書
- 公募対象のプロジェクトに取り組むマネージャークラスの専門スタッフが、蒸発資源活用のパイロットまたは産業プロジェクト関連活動に10年以上の経験を持つことを示す本社発行の証明書
- 技術利用の権利を証明する文書、該当する場合
参加希望表明の有効期間は、「参加希望表明書」の提出時から「交渉・協定締結フェーズ」の終了時までとする。
YLBは上記要件の適合/不適合を確認後、応募企業に対し「参加希望表明書」提出締切日の5営業日後までに電子メールで審査結果を通知する。
上記要件に適合し、第1フェーズの審査結果通知の受領後3営業日以内に守秘義務合意書やプロジェクト提案書提出誓約書をYLBと締結した企業のみに、次のフェーズへの参加資格が与えられる。
フェーズ2.プロジェクト提案書作成
本フェーズへの参加資格を得た企業は、守秘義務合意書とプロジェクト提案書提出誓約書の締結後52暦日後までに、プロジェクト提案書を提出しなければならない。
プロジェクト提案書は、本フェーズへの参加資格を得た企業によって、本公募の目的の枠内に基づいて、概念レベルクラス4、レベル2のプロジェクトに対するAACE基準を最低限考慮して作成されなければならない。
資格を有する企業は、プロジェクト提案書の作成のため、公募の対象である塩湖を視察し、提案するプロジェクトの特性、規模、範囲に応じて、YLBで入手可能な情報にアクセスすることができる。
第3フェーズへの参加資格は、上記の要件を考慮の上で少なくとも1件の提案書を提出した企業のみに与えられる。
YLBは本フェーズへの参加資格を得た企業に対し、プロジェクト提案書の提出締切日の5営業日後までに、本公募で有効な電子メールで、プロジェクト提案書のプレゼンテーションの実施を通知する。
プロジェクト提案書を1件も提出しなかった企業は、将来のYLBの公募への応募資格をも失うものとする。
フェーズ3.財務関連文書の提出
本フェーズの参加資格を得た企業は、プロジェクト提案書のプレゼンテーションに係るYLBからの通知後10営業日後までに、提示したプロジェクトの実施に必要な財務能力を証明する以下の文書を提出しなければならない。
- 直近5年分の監査済み財務諸表
- 国際的な権威ある機関によって発行された、少なくともレベルA3(ボリビア金融監督庁ASFI基準)あるいは、国内または国外のリスク格付け機関であれば同等レベル以上のリスク評価証明書
上記の要件を適合する企業のみが、次のフェーズへ参加する資格が与えられる。
YLBは上記要件への準拠を、適合/不適合の方法論に基づいて検証し、企業に対し財務関連文書の提出締切日の5営業日後までに、本公募で有効な電子メールで評価結果を通知する。
フェーズ4.プロジェクト提案書審査
YLBの審査委員会は本フェーズへの参加資格を有する企業のプロジェクト提案書を審査し、同提案書の提出から50暦日後までに、本公募の目的達成のための協定締結の妥当性を推奨する報告書をプロジェクトごとに発行する。
YLBは上記の報告書発行期間終了から5営業日後までに、企業に対し審査結果と次のフェーズへの参加資格について通知する。
フェーズ5.交渉と協定締結
資格を有する企業との、本公募の目的であるプロジェクト開発のための協定に関する交渉期間は、前フェーズの結果に関する企業への通知から最大30暦日間とする。
交渉終了後、資格を有する企業は協定締結を目的として、交渉終了後5営業日後までにアポスティーユまたは公証認証済みの文書原本を提出しなければならない。
C.本公募に係る提出先と提出様式
本公募で要求された文書は、定められた期間内に物理的及び/またはデジタル様式で、expresiones.interes@ylb.gob.boか、YLBオフィス所在地:Av. Mariscal Santa Cruz, Edificio Hansa, Piso 19, La Paz – Boliviaへ送付すること。
本公募に係る全ての通知や問い合わせ受付は、expresiones.interes@ylb.gob.boを通じて実施する。
D.開発に向けての活動について、必要となるその他の事項
全ての提出文書は宣誓申告書の性質を持ち、スペイン語に翻訳され、正規番号が付けられていなければならない。
おわりに
本公募参加にあたり「公募対象のプロジェクトに取り組むマネージャークラスの専門スタッフが、蒸発資源活用のパイロットまたは産業プロジェクト関連活動に10年以上の経験を持つ」(フェーズ1、要件10)ことなどが求められ、狭き門であると感じさせられる。
今後、本公募に応じる企業が現れ、協定締結までのプロセスを進めて行けるか、先行するCBC等のDLEパイロット試験が成功するかなど、注目に値する。2025年に予定されているボリビア大統領選挙にも影響を与えることであろう。引き続き、ボリビアのリチウム資源開発の動向を情報収集して参りたい。
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