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報告書&レポート

2024年6月13日 リマ 事務所 初谷和則
24-08

エクアドルで進展する銅鉱山開発プロジェクトの概況

<リマ事務所 初谷和則 報告>

はじめに

エクアドルにはチリ、ペルーから連続するアンデス山脈が国を横断し、銅鉱床のポテンシャルが高い。EcuaCorriente社(中CRCC-Tongguanコンソーシアム子会社)が保有するMirador銅鉱山(Zamora Chinchipe県)が2019年に開山し、現在操業している。

そして、これから開発が見込まれる銅鉱山プロジェクトが多数ある。銅はカーボンニュートラルに必要な鉱種として将来の需要増が見込まれており、これらのプロジェクトは将来の銅の供給源として有望視される。本レポートではこれらプロジェクトの現状をまとめた。

1.El Domo – Curipamba銅・金プロジェクト

加Adventus Mining社が75%、加Salazar Resources社が25%(以下「両社」)出資するエクアドルCurimining社が、Curipamba銅・金プロジェクトを実施している。Bolívar県に位置し、標高は100~1,000mである。鉱区内のEl Domo銅・金鉱床(塊状硫化物)が開発対象となっている。El Domo鉱床を中心に、これまで約75,000mの試錐が実施されてきた1

El DomoプロジェクトのFSは2021年12月に公表されており、露天掘り採掘はマインライフ10年、税引き後IRR 32%、NPV(8%)259mUS$、初期CAPEX 248mUS$、回収期間2.6年、AISC(All-In Sustaining Cost)1.26US$/lbである。生産量は銅10,463t/年、銅換算21,390t/年である。推定+確定埋蔵量は6.5百万tで粗鉱品位は銅1.93%、亜鉛2.49%、金2.52g/t、銀45.7g/t、鉛0.25%である。またFSとは別に、マインライフ追加(+4年強)が期待される坑内掘り操業の更新PEAも公表されている2

2021年11月、両社は環境社会影響評価(ESIA)をエクアドル政府に提出した3。2022年1月、El Domo鉱床開発に必要な資金の一部235.5mUS$を、加Wheaton Precious Metals社及びTrafigura社より確保したと発表した4。2022年12月、エクアドル政府との間でEl Domo鉱床開発に係る投資保護協定を締結した5

そして2024年1月22日に建設・操業に向けての環境ライセンスが環境・水・エネルギー転換省から発行(2021年11月提出のESIAが承認)され6、また同月30日に、尾鉱堆積場に係る環境ライセンスがエネルギー鉱山省から発行されたことを発表した7

なおエクアドルでは、環境協議の詳細プロセスに関する規則がなく、Curipambaなど鉱業プロジェクトや様々なセクターの事業(計176件)が環境協議を行えず停滞していたが、こうした規則を定める大統領令第754号(Decreto Ejecutivo Nro.754)が2023年5月31日に公布され、環境協議が可能となり、これらプロジェクトが進展すると見込まれた8。しかし2023年7月31日、憲法裁判所は、共同体と協議をしていない規範を基に一部の協議プロセスが開始されたことを理由に、改正された環境協議実施規則の適用一時中止を裁定した9

その後2023年11月17日、憲法裁判所は大統領令754号が形式的(por su forma)に違憲であり、環境協議プロセスは国会のみが議決できるとしたが、その議決の時まで、本大統領令は(違憲ではあるものの)その効力を延長すると裁定した10

そのため現在、一旦ストップした環境協議が再開可能となっており、Adventus、Salazar両社は「最近の規則に従ってEl Domo-Curipambaの推進を継続できることに満足している」と発表した11

昨今、Adventus社を巡るM&Aが活発である。2023年11月21日、Adventus社と加Luminex Resources社は合併を発表した12。Adventus社は、同社の普通株と引き換えに、Luminex社の発行済み普通株全てを取得する。この合併の目的は、Adventus社とLuminex社のエクアドル国内計135,000haの金・銅の開発・探鉱ポートフォリオを統合し、特に、El Domo鉱床開発と、Luminex社のCondor金プロジェクト(Zamora Chinchipe県、PEA段階)を進展させるためである。この合併はLuminaグループメンバー、エクアドル人投資家、加Altius Minerals社、加Wheaton Precious Metals社を含む戦略的投資家が資金支援した。

2024年4月26日、Adventus社は加Silvercorp社への株式売却を発表13、Silvercorp社はAdventus社の株式約15%を25.6mC$で購入し最大株主となった。2024年5月、Adventus社は本売却金により、Altius Minerals社14、Trafigura社15に対する負債を返済した。

 図1.El Domo – Curipamba及びその他(他社も含む)プロジェクト位置図

図1.El Domo – Curipamba及びその他(他社も含む)プロジェクト位置図

出典:Adventus社Corporate Presentation April 2024

図2.Curipambaプロジェクト内、El Domo鉱床及びその他ターゲット位置図

図2.Curipambaプロジェクト内、El Domo鉱床及びその他ターゲット位置図

出典:Adventus社Corporate Presentation April 2024

2.Cascabel銅・金プロジェクト

豪SolGold社が100%の権益を有する(かつてSolGold社が85%、加Conerstone社が15%の権益を有していたが、両社は2022年10月に合併)。Imbabura県に位置し、標高は600~1,800mである。Alpaca鉱床(斑岩型銅・金)が主な開発対象である。2013年9月からの試錐の総掘進長は約310,000m(うちAlpaca鉱床では約265,000m)である。

2023年12月31日付け更新PFS16によると、税引き後IRR 24%、NPV(8%)3.2bUS$、生産前CAPEX 1.55bUS$、回収期間4年である。生産量は銅123千t/年、金277千oz/年、銀794千oz/年、銅換算182千t/年である。初期マインライフ28年で推定+確定埋蔵量は540百万t、銅3.2百万t(粗鉱品位0.6%)、金9.4百万oz(同0.54g/t)、銀28百万oz(同1.62g/t)である。富鉱部は地表から地下2,000m程度まで分布することが分かっており、最適な採鉱法としてブロックケービングが提案されている。

2023年7月20日付けSolGold社の発表17によると、エクアドル政府と同鉱床開発に必要な法的および財務上の条件を定めるタームシートに合意した。SolGold社は合計75mUS$のロイヤルティ前払いに応じ、政府は操業期間中の法人税率を20%(従来は25%)に引き下げるものである。2024年6月6日SolGold社は、エクアドル政府と、本条件とタームシートを確約する採掘契約(Exploitation Contract)を締結したと発表した18

SolGold社の主要株主はBHP 10.36%、Newmont社 10.31%、DGR Global社 6.80%、Jiangxi Copper社(江西銅業股份有限公司)6.02%となっている(2024年6月3日S&P参照)。Jiangxi Copper社による株式買収は2022年末に行われており、その額は36mUS$である19

図3.Cascabelプロジェクト位置図

図3.Cascabelプロジェクト位置図

出典:Sol Gold社Corporate Presentation April 2024

図4.Cascabelプロジェクト、銅鉱化分布図

図4.Cascabelプロジェクト、銅鉱化分布図

出典:Pre-Feasibility Study NI 43-101 Technical Report, December 2023

3.Warintza銅プロジェクト

加Solaris Resources社が100%の権益を有する。Morona Santiago県に位置し、標高は1,000~2,700mである。鉱区内には銅・モリブデン・金の鉱化を伴う斑岩が複数認められ、クラスターを形成している。本プロジェクトは40km南方には操業中のMirador銅鉱山あり、太平洋へのアクセスに大きな障害はない。

主にWarintza Centralターゲットに対して実施された2021年11月までの試錐(計65,000m弱)の結果から資源量算定を行い2022年4月にNI43-101技術レポート20が公表された。レポートによると、予測+概測資源量(カットオフ品位:銅換算0.3%)は1,466百万t、粗鉱品位:銅0.42%、モリブデン0.02%、金0.04g/t、銅換算0.52%である。2021年11月以後もステップアウトを目的とした試錐が実施され複数の着鉱を確認しており、2024年第2四半期に予定される鉱物資源量の更新により、資源量は大きく拡大すると見込まれている21。また、2024年後半に環境影響評価(EIA)が2025年後半にPFSが完了する予定となっている22

なお、2022年12月にはエクアドル政府との間で本プロジェクト実施に係る投資契約を締結した。内容は所得税の減税、資本流出税と輸入関税の免除である23

2023年末時点でSolaris社の最大株主は、加Augusta Group社(企業管理会社)の設立者かつExecutive ChairmanのRichard Warke氏であり約40%を保有している24

2024年1月11日、Solaris社は中Zijin Mining Group(紫金鉱業集団股份有限公司、以下「Zijin社」)による130mUS$の投資(株式買収)を発表した25。Zijin社はSolaris社の株式約15%を保有する計画となっていたが、2024年5月21日、Solaris社は本売却の中止を発表した26。中止の理由として、カナダ投資法に基づくカナダ規制当局の審査が4か月を経ても完了していないこと、Solaris社の株式が35%以上も上昇しており売却価格が市場価値を反映していないことを挙げた。

図5.Warintza銅プロジェクトの位置、周辺インフラ

図5.Warintza銅プロジェクトの位置、周辺インフラ

出典:Solaris社Corporate Presentation December 2023

図6:Warintza銅プロジェクトのターゲット分布

図6:Warintza銅プロジェクトのターゲット分布

出典:Solaris社Corporate Presentation December 2023

おわりに

エクアドルでは2022年以降治安が悪化している。2023年5月には国会での弾劾に直面したLasso大統領(当時)が深刻な政治危機・内乱を理由に国会を解散した。2023年10月には大統領選決選投票が実施され実業家Noboa氏が勝利を収めた。Noboa大統領は治安回復を最優先課題としつつ、国内経済復興のため鉱業プロジェクト推進に取り組む方針を掲げている27

先に挙げたプロジェクトは2023年から現在において進展が認められるが、仮に、エクアドルの治安が更に悪化しプロジェクトエリアに影響が及ぶことになれば、プロジェクトが停滞する可能性はある。今後エクアドル政府の治安対策が功を奏しプロジェクトが平穏な環境下で継続されることを期待したい。

なお、同国では先住民団体による反鉱業運動が盛んである。一部の先住民族には反鉱業の心情が根深く存在するため、それら先住民族の理解や信頼関係を如何に得るのか、検討を重ねる必要がある。将来、治安と先住民族の課題が解決されれば、エクアドルは世界有数の産銅国になるであろう。


  1. 1.Curimining社ウェブサイト、Área técnica
  2. 2.Adventus社ウェブサイト“Adventus and Salazar Announce Feasibility Study Results and Updated Mineral Resources for the Curipamba Copper-Gold Project
  3. 3.Adventus社ウェブサイト“Adventus and Salazar Complete the Environmental and Social Impact Assessment for the Curipamba Copper-Gold Project and Commence the Environmental Licensing Process with the Government of Ecuador
  4. 4.Adventus社ウェブサイト“Adventus Mining and Salazar Resources Secure US$235.5 Million with Wheaton Precious Metals and Trafigura to Construct the Curipamba Copper Project
  5. 5.Adventus社ウェブサイト“The Government of Ecuador Signs the Investment Contract for the Development of the El Domo-Curipamba Project with Adventus Mining Corporation and Salazar Resources Limited into Law
  6. 6.Adventus社ウェブサイト“El Domo – Curipamba Project is Granted the Environmental License for Construction and Operation
  7. 7.Adventus社ウェブサイト“El Domo – Curipamba Project Achieves Major Permitting Milestone with Approval of the Tailings Storage Facility
  8. 8.Adventus社ウェブサイト“President of Ecuador Signs Environmental Consultation Decree Clearing the Path for the Final Stage of Environmental Licensing for El Domo – Curipamba Project
  9. 9.憲法裁判所ウェブサイト、Caso 51-23-IN, Jueza ponente: Alejandra Cárdenas Reyes
  10. 10. 憲法裁判所ウェブサイト、Inconstitucionalidad por la forma del Decreto 754
  11. 11.Adventus社ウェブサイト“Constitutional Court of Ecuador Issues Ruling on Constitutionality of Environmental Consultation Decree: Leaving the Decree and Consultation Process in Effect Pending Law from National Assembly
  12. 12.Adventus社ウェブサイト“Adventus and Luminex Announce Merger to Create a Growth-Focused Copper-Gold Company in Ecuador”及びLuminex社ウェブサイト“Adventus and Luminex Announce Merger to Create a Growth-Focused Copper-Gold Company in Ecuador
  13. 13.Adventus社ウェブサイト“Silvercorp to Acquire Adventus, Creating a Geographically Diversified Mining Company by Adding the Advanced El Domo Project
  14. 14.Adventus社ウェブサイト“Adventus Completes Full Repayment of Convertible Loan to Altius Minerals
  15. 15.Adventus社ウェブサイト“Adventus Completes Full Repayment of Credit Facility to Trafigura
  16. 16.Cascabel Pre-Feasibility Study NI 43-101 Technical Report, Effective Date of the report: 31 December 2023
  17. 17.Announces Agreement with Government of Ecuador on Exploitation Agreement Terms and Conditions
  18. 18.SolGold plc, Exploitation Contract for Cascabel Project, 06 June 2024
  19. 19.SolGold plc, Completion of Issue of Shares, 12 December 2022
  20. 20.NI 43‐101 Technical Report for the Warintza Project, Ecuador
  21. 21.Solaris社ウェブサイト“Solaris Provides 2024 Preview Including Planned NYSE American Listing and Updated Warintza Mineral Resource Estimate in Q2/24
  22. 22.Solaris社ウェブサイト“Solaris Provides Update on Warintza Operations, Optimization Progress, and Appointment of Leading Consultants for the EIA and PFS
  23. 23.Solaris社ウェブサイト“Solaris and Government of Ecuador Sign Investment Contract for Warintza Project, Securing Investment Protections, Regulatory and Fiscal Stability, and Tax Incentives
  24. 24.Solaris社Corporate Presentation December 2023
  25. 25.Solaris社ウェブサイト“Solaris Announces $130 Million Strategic Investment by Zijin Mining Group
  26. 26.Solaris社ウェブサイト“Terminates Minority Equity Investment, Pursues Focused Warintza Strategy
  27. 27.Ministerio de Producciónウェブサイト“Ecuador proyecta la concreción de más de USD 4.800 millones en nuevas inversiones mineras sostenibles

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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