報告書&レポート
ニッケルLIBサプライチェーンと韓国について
はじめに
2022年8月16日、米国で「インフレ抑制法(the Inflation Reduction Act:IRA)」が成立した。エネルギー安全保障や気候変動対策を掲げ、米国国内の製造業に対する投資を促進するほか、重要物資の調達については国内もしくはFTA(自由貿易協定)国からの調達を奨励するものである。
この米国FTA国からの調達という点で、昨今アジアでは韓国が注目されるようになった。LG Chem社、Samsung社、SDI社、SK-ON社など韓国電子機器メーカーのリチウムイオン電池(LIB)事業は活発であったが、製造国である日中韓の中で、唯一のFTA国であるということが、さらに注目度を高めている。
LIB製造の世界最大シェアは中国であるが、原材料のサプライチェーンにおいて、一国への調達依存度を下げ、調達元を多様化しようとする動きが米国で強まっており、IRA法もその流れを受けて成立した背景がある。
韓国は、日本と同じくNCM(三元系)正極材の生産国であり、NCMの中で最も比率が高いのはニッケルとなる。ニッケルはNCM正極材の原材料の中で主要原材料であり、サプライチェーンが複雑である。
よって、本稿では、バッテリーメタル、中でも特にニッケルに焦点を当て韓国の製錬フロー、主要韓国企業の動向を中心に動向をまとめる。
1.韓国のEVバッテリー関連企業のニッケル製錬動向
韓国のバッテリーメーカーは、バッテリー工場のみならず、正極材製造の拡大も計っている。そのような状況下、POSCO社やEcoPro社といった韓国の製錬業の進展が注目される。また、IRAの観点からは、それら製錬所の原料ソースがどこになるのか、中国の関与がどの程度かといったところがポイントになる。
韓国鉄鋼メーカーのPOSCO社が49%出資しているSNNC社が所有するGwangyang製錬所は、54千t/年ほどのフェロニッケル生産の生産能力を持っている。Gwangyang Bay Area Free Economic Zone(GFEZ)で2008年に第1フェロニッケル製錬所が、2012年に第2フェロニッケル製錬所が完成した。
原料となる鉱石はニューカレドニアSMSP社(Nickel Mining Company)から調達している。POSCO社は、今後はフェロニッケルだけでなく、電気自動車(EV)バッテリー向けにマットから高品位ニッケルを生産する精錬所を2023年下期には完成させる計画で、2022年10月14日に起工した。POSCO社のプレスリリースによると、SNNC社でフェロニッケルから鉄分を除去しマット(品位:Ni 70~75%)を製造後、POSCO社の高品位ニッケル精錬プロセスによって、二次電池向け高品位ニッケルを生産する。硫酸ニッケルベースで生産能力は、20千t/年とされている。

図1.POSCO社バッテリー向けニッケル精錬プロセス
出典:POSCO社HP
生産された高品位ニッケルは、POSCO Chemical社などの二次電池正極材メーカーに供給される。なお、POSCO Chemical社は、同じくGFEZに正極材量で90千t/年の生産能力をもつ、ハイニッケル系正極材(NCMAとNCM)工場を2022年11月に建設した。同社のプレスリリースによると、これは、2023年10月時点で、世界最大の正極材工場と言われている。
POSCO社は、バッテリー原料から正極材までの生産を一貫して行えるクラスターをGFEZに建設する計画であり、上記の他にも廃バッテリーリサイクル施設“POSCO HY Clean Metal”が2023年7月に完成している。このプロジェクトは、POSCO社、韓GS Energy社、中Zhejiang Huayou Cobalt社(浙江華友鈷業股份有限公司)のJVである。12千t/年のブラックマスの処理能力を持ち、ポーランドのバッテリーリサイクル工場PLSCで生産されたブラックマスを原料にバッテリー原料(硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、炭酸リチウム)を生産する。さらに、2023年5月には、中Zhejiang Huayou Cobalt社とPohang(浦項市)で前駆体工場の建設についてMoUを締結した。本件については、2027年までに完成予定とされている。
バッテリー原料供給元としては、先に述べたニューカレドニアとポーランドの他にインドネシアがある。Weda Bay工業団地で52千t/年のニッケルマットを生産する計画とSulawesi島で混合水酸化物(MHP)を最大120千t/年を生産する計画がある。このMHP生産プロジェクトは、中Ningbo Richin Industry & Trade社とのJVである。
POSCO社の他にも、複数の韓国企業がバッテリー向け精錬加工事業を開始しており、例えば、EcoPro社は、2006年にすでにNCA前駆体の生産を始めていたが、2016年にECOPRO BM社を立ち上げ、正極材(NCA、NCM等ハイニッケル系)事業を強化した。インドネシアのHPAL(高圧酸浸出)プロジェクトPT QMB Energy Materialsに出資しているのも、このECOPRO BM社である。既に同プロジェクトは2022年8月に稼働を開始しており、韓国が輸入するMHPには同社のものが含まれていると推察される。
また、EcoPro社としては、インドネシアでMHP生産プロジェクトを計画しており、韓国企業SK-ON社、中GEM社とのJVである。本件は、30千t/年の生産目標で、2024年第3四半期に操業開始を予定している。原料となる鉱石は、インドネシアSulawesi島のHengjaya鉱山から調達する。
インドネシアは、ニッケルの最大生産国であるが、プロジェクトの開発、投資においては中国企業の存在感が大きい。昨今では上記の通り韓国企業も存在感を示しており、特にここ数年、中間製品と呼ばれるマットやMHPなどの製錬プロジェクトが活発化している。
| 韓国企業 | 中国企業 | 生産物 | 生産能力 (マテリアル量) |
稼働予定 |
|---|---|---|---|---|
| – | Tsingshan | マット | 75千t/年 | 稼働済 |
| – | Tsingshan(豪Nickel Industires社) | マット | – | 稼働済 |
| – | Weiming、Extension Investment Pte(Indigo) | マット | 40千t/年 | 2025 |
| – | Chengtun Mining、Extension Investment Pte(Indigo) | マット | 40千t/年 | – |
| – | Chengtun Mining, Huayou、Eternal Tsingshan |
マット (硫酸ニッケル) |
34千t/年 | – |
| – | CNGR | マット | 60千t/年 | – |
| POSCO | Ninbo Richin | MHP | 120千t/年 | 2025 |
| POSCO | – | マット | 52千t/年 | 2025 |
| – | GEM | マット | 20千t/年 | – |
| EcoPro、SK-ON | GEM | MHP | 30千t/年 | 2024 |
出典:INSG、報道情報
なお、EcoPro社は、ECOPRO MATERIALS社という前駆体企業も、2017年に中国GEM社と立ち上げた。このECOPRO MATERIALS社が、韓国国内ではRMP(Raw Material Plant)を操業しており、輸入したMHPから硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン、前駆体を生産していると考えられる。また、POSCO社と同様に、自社グループ内でブラックマスを原料としたMCP(Metal Carbonate Precipitates)も生産しており、MHPのほかMCPも硫酸ニッケル等の原料となっている。
韓国の非鉄大手Korea Zinc社は、2017年に硫酸ニッケル生産のためKEMCO社を設立した。2022年時点で80千t/年の硫酸ニッケルの生産能力を保有する。韓国蔚山広域市に工場をもっているが、周辺にはLG Chem社の工場もある模様。両社は、2022年にIRA法を念頭に置いた北米用バッテリー原料のためのパートナーシップを締結している。
バッテリー生産に必要とされる硫酸ニッケルの生産を行っている主な韓国企業としては、以下の表のとおり認識している。
| 企業名 | 場所 | 生産能力 |
|---|---|---|
| KEMCO | 蔚山広域市(Ulsan Onsan plant) | 100千t(硫酸ニッケル量) |
| LS MnM | 忠清道(Toricom Nickel Sulfate Plant) | 5千t(硫酸ニッケル量、2030年までに270千tまで拡大) |
| 蔚山広域市(LS MnM’s Onsan smelter近く) | 22千t(硫酸ニッケル量、2024年上半期に建設開始、2026年初期までに完了) | |
| EcoPro※ | 浦項市(Raw Material Plant) | 54千t(前駆体) |
| POSCO | 光陽市(POSCO HY Clean Metal) | 12千t(ニッケル、コバルト、リチウム抽出量) |
出典:報道情報、各社HP
※硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガンを生産後、前駆体を生産
LG Energy Solutions社(LGES社)は、2022年6月にインドネシアでニッケル製錬所の建設を開始した。同社主導のコンソーシアムを設立し、インドネシア国営International Battery Corporation(IBC)と共同でEVバッテリープロジェクトを開発中である。
韓国国内にニッケル鉱山はないため、韓国は基本的に製錬原料を輸入する。調達先は、先に述べたニューカレドニア、インドネシアの他に、今後は豪州からも2023年以降にオフテイクが開始されるプロジェクトがいくつか存在する。
| 韓国企業 | 相手企業 | オフテイク量 |
|---|---|---|
| LGES | Australian Mines Limited | 6年間で71,000tのニッケル、7,000tのコバルト(2024年末~)をSconi Projectから調達 |
| LGES | Queensland Pacific Metals | 10年間※で70,000tのニッケルと7,000tのコバルト(2023後期~)をTECH Projectから調達 ※7年+3年オプション |
| POSCO | Queensland Pacific Metals | 10年間※で30,000tのニッケルと3,000tのコバルト(2023後期~)をTECH Projectから調達 ※7年+3年オプション |
| POSCO | First Quantum Minerals | MHP 7,500t(2024~)をRavensthorpeから調達 |
出典:各社HP、報道情報等
2.韓国のニッケル製品輸入動向について
硫酸ニッケルの調達という点では、フィンランドやベルギーからの輸入が多いようだが、米国のIRA法を考えると、韓国のバッテリー関連企業としては、同じく米FTA国である豪州は原料の調達先としてメリットがある。
上記の通り、LGES社とPOSCO社は、Queensland Pacific Metals社とTechプロジェクトについて、オフテイク契約込みで戦略的パートナーシップを締結したが、Queensland Pacific Metals社は米GM社とも長期オフテイク契約を締結している。LGES社とGM社は、米国に電池工場を合弁会社で建設する計画となっており、両社ともIRA法を見据えたバッテリー原料の確保に注力している。
また、POSCO社は、2023年8月にフィリピンのMC GroupとMOA(Memorandum of Agreement)を締結し、LIB正極材用のMHPの生産開発を行うことを公表した。ESG(環境・社会・ガバナンス)基準も注視するとして、MHP生産時に排出される二酸化炭素量を50%以上削減する技術を採用するとしている。フィリピンはFTA国ではないが、フィリピン産MHPを韓国で正極材に加工すれば、IRA法の税額控除適用基準を満たすという理解で、同社は今後もフィリピンにおけるJVを促進させていくと発表している。

図2.2022年 硫酸ニッケル 韓国輸入国割合
(全体量:7,273t)
出典:ITCデータ

図3.2022年 ニッケル塊粉 韓国輸入国割合
(全体量:34,700t)
出典:ITCデータ
もともと、韓国企業が出資するニッケル鉱山としては、マダガスカルのAmbatovyがある。本プロジェクトは、韓国鉱害鉱業公団(KOMIR(前KORES))が45.82%出資しており、EVバッテリーにも使用されるブリケットを生産している。2022年の同社のアニュアルレポートによると、35,737tのニッケルを生産している。
韓国の2022年のニッケルの塊・粉輸入量は、ITCによると全体で約34,700t、そのうちマダガスカルは11%であった。ブリケットは、ニッケルの塊であるが、酸に溶けやすいためLIBの前駆体製造にも使用される。世界でブリケットを生産している企業は、主に豪BHP、露Nornickel社、スイスGlencore、加Sherritt社、マダガスカルAmbatovy社、南アImpala社である。Ambatovy社は、2020年のコロナによる操業停止で一時生産量が落ち込んだが、2022年は回復した。表4の通り、先に述べたブリケット生産企業の生産量のうち、Ambatovy社が占める割合はおよそ14%である。同精錬所の足元の操業は比較的安定している模様で、日本も2022年はコロナ前の2019年と同程度の輸入量が認められた。
| 企業名 | プロジェクト名 | 生産量(2022) |
|---|---|---|
| BHP | 豪Kwinana(Nickel West) | 76,800t |
| Glencore | 豪Murrin Murrin | 35,700t |
| Sherritt | キューバMoa JV | 32,367t |
| Ambatovy | マダガスカルAmbatovy | 35,737t |
| Impala | 南アImpala Refining Service | 11,498t(2021) |
| Nornickel | フィンランドHarjavalta | 66,000t(生産能力) |
出典:各社HP、アニュアルレポート、INSG
※ブリケット以外の生産を含む
ニッケルは、Class1だけでなく、Class2も含めたニッケルの生産量(通称プライマリーニッケル)が統計上公表されることが多く、ブリケットなどのClass1ニッケルのみの正確な生産量は不明である。
インドネシアで生産されるニッケルのほとんどがClass2ニッケルであるため、世界のニッケル生産量が約3百万tであるとすると、世界のニッケル生産量のうち50%がClass2ニッケル、26%がClass1ニッケル(地金)(Nornickel社のデータによると)であることから、ブリケットなどのClass1ニッケルは、世界全体で780千tほどの生産量と考えられる。
足元では、世界のニッケルは、インドネシアを中心に供給過剰となっており、Class1ニッケルそのものの取引よりもNPIをニッケルマットに転換し、硫酸ニッケルを生産するような、Class2ニッケルからClass1への転換が中国を中心に増えている。インドネシアの韓国企業のプロジェクトは、表1の通り、POSCO社とEcoPro社が、それぞれMHPプロジェクトを予定しているほか、POSCO社はマットの生産を予定している。
世界の需給という観点では、Class2ニッケルのClass1ニッケルへの転換が今後の需給バランスの鍵となるが、インドネシアからの中間製品の輸出が、今後どのように変化するか、韓国の輸入相手先として、インドネシアがどの程度の割合を占めていくかという点についても着目したい。
3.LIB電池産業における中韓の関係と韓国政府のサプライチェーン政策について
中国のLIB電池産業の一部は、海外生産プロジェクトへの投資を強化しており、特に韓国企業とのJVやパートナーシップはここ数年活発化している。韓国国内外で複数の共同のプロジェクトが確認されており、2023年7月に中国企業は、少なくとも4.4bUS$相当のプロジェクト投資を発表した。2023年に発表された韓国企業と中国企業の共同プロジェクトは以下のとおりである。
| 韓国企業 | 中国企業 | 内容 |
|---|---|---|
| SKOn・EcoPro (25.5%以上) |
GEM(49%以下) | 韓国国内に前駆体工場を建設。3社合計で945mUS$の投資。 |
| POSCO(20%) | CNGR(80%) | 韓国で前駆体工場を立ち上げ。 |
| POSCO(60%) | CNGR(40%) | 韓国で硫酸ニッケル工場のJV立ち上げ。 |
| POSCO(-) | Ninbo Lygend社(-) | 尼Sulawesi島でMHP120千t/年のPJ立ち上げを計画。 |
| LG Chem(-) | Huayou(-) | 韓国セマングムに前駆体工場を建設することを決定。920mUS$を投資し、2028年までに完成予定。生産能力は最大100千t/年を目標。 |
| POSCO(-) | Huayou(-) | 韓国浦項市に前駆体工場を建設。 |
出典:各社HP、報道情報
韓国企業としては、上記プロジェクトを通じて、韓国企業向けに部材を提供する目的があると思われる。
これらのサプライチェーンと米国IRA法が、どの程度関係しているのかは不明だが、前述の通り、韓国は米国のFTA締結国である。IRA法の控除条件では、生産付加価値(バリュー)のうちFTA国で製精された鉱物がどのくらいの割合を占めるかによって、控除対象になるかどうか分かれる。
実際は、サプライチェーンの中で、各製品フェーズにおいて、FTA国と非FTA国が入り混じる複雑な状況であり、ニッケルについては、例えば、硫酸ニッケルから正極材までの付加価値と精鉱から硫酸ニッケルまでの付加価値を比較する必要があると思われ、外部からは判断することが難しい。
また、IRA法の指針によると、中国、ロシア、イラン、北朝鮮の政府によって支配されている企業や組織は、懸念される事業体(FEOC)と認定され、その組織を通じて生産された自動車は、控除の対象外とする方針が発表された。米国エネルギー省のガイダンスによると、①対象国に本社を置いている場合②対象国で法人設立または関連活動を実施している場合③議決権、取締役会の議席、または持分権の25%以上が対象国政府によって保有されている場合④対象国政府とのライセンスまたは契約を通じて対象国政府によって実質的に支配されている場合、事業体はFEOCとみなされる。1中国企業と韓国企業のJVでは、表5の通り、中国企業が25%以上を占めているものが確認されており、例えば、POSCOとCNGRのプリカーサー工場は、POSCOが20%、CNGRが80%、硫酸ニッケル工場は、POSCOが60%、CNGRが40%とされている。
韓国では、海外におけるリチウム電池用の資源調達サプライチェーンを強化する動きが強まっており、前述の通り、インドネシア・オーストラリアに多角化する方針である。
韓国政府は、2022年11月に「二次電池産業革新戦略」を発表し、この中で二次電池サプライチェーンにおける中国依存度の高さをリスクとして挙げている。2023年には「素材・部品・装備グローバル戦略」を掲げ、ニッケル、コバルト、希土類など、重要鉱物の安定的調達のために、インドネシア、フィリピンといった資源国との関係を強化、2030年までに「素材・部品・装備供給網安定品目」の国内生産比率を50%以上に高め、特定国への依存度を50%以下に引き下げることを目標とした。
なお、上記の中韓プロジェクトがIRA法の影響によって、韓国企業の権益比率が75%以上に変更となったという報道は確認できていない。
米国市場を視野に入れた場合、出資比率の調整の必要がある一方、韓国のバッテリー産業協会によると、韓国のバッテリー関連企業は米国車メーカーと中長期的契約を締結し、米国内バッテリーセル生産量の50%を確保しており、品質と技術力もリードしているため、今回の規定の影響は大きくないと予想されている2模様で、韓国企業の大きな動きはなく、依然様子見の状況である。
韓国のバッテリー企業は、IRAの控除条件の1つである「北米における電池部品の製造」をクリアすべく、北米への進出も推し進めている。正極材や電池工場の建設については、欧米OEM(Original Equipment Manufacturers)や日本の本田技研工業との合弁会社が多い。韓国政府は、海外生産能力増強支援を発表し、北米でプラントを建設予定の国内のバッテリーメーカーに対して、輸出入銀行や貿易保険公社を通じて、2023年から5年間かけて7tKRW(韓ウォン:約5.32bUS$)の資金支援を行うとしている。
| 企業 | 投資額 | 内容 |
|---|---|---|
| 米General Motors社 韓POSCO Chemical社 |
400mUS$ | GM社のUltiumバッテリー向けの正極材製造工場を加QC州Bécancourに新設。2025年までの稼働を目指す。 |
| 蘭Stellantis社 韓LG Energy Solution社 |
5bC$ | 加ON州WindsorにEV向けバッテリー工場を新設。生産能力45GWh/年、2024年Q1稼働開始予定。 |
| 本田技研工業 韓LG Energy Solution社 |
4.4bUS$ | 2022年8月に発表したバッテリー生産合弁会社の工場建設地を米OH州に決定。2025年中に北米で生産販売されるHondaおよびAcuraのEV向けに量産を開始し、全量をHondaの北米工場へ供給する。 |
| 韓現代自動車 韓LG Energy Solution社 |
4.3bUS$ | 米GA州にEVバッテリー製造工場を設立すると発表。 |
出典:各社HP、報道情報
おわりに
韓国のバッテリーメーカーや部材メーカーが北米への進出を進め、米国IRAのインセンティブが意識される。一方で、ニッケル・サプライチェーンにおける中国企業との連携も多い。
日本と韓国は、世界のリチウムイオン電池サプライチェーンの中・下流に位置し、原料の大半は輸入している。同じアジア国であり、資源消費国として立場が似ている。
2023年は、5年ぶりに日韓のエネルギー協力対話が開催され、日韓両政府は、カーボンニュートラル実現に向けて両国の協力を推進することが合意された。
その協力関係が両国の鉱物サプライチェーンにどのような影響を与えるか注視していく必要がある。
- 1.DOE Releases Final Interpretive Guidance on the Definition of Foreign Entity of Concern | Department of Energy
- 2.JETRO短信「韓国官民合同会議、米インフレ削減法(IRA)新規定案の影響を「大きくない」と評価」
おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。


