報告書&レポート
豪州連邦政府における重要鉱物中流工程の支援
はじめに
2024年5月14日、豪州連邦政府は2024/2025年度連邦予算案においてネットゼロに向けた施策「Future Made in Australia」を発表した。同施策は投資の誘致、再生可能エネルギー能力の強化、資源の高付加価値化及び経済安全保障の強化、研究開発、人材育成を図るものであり、重要鉱物(Critical Minerals)に関しては生産時の税優遇措置「Critical Minerals Production Tax Incentive(CMPTI)」が発表された。
CMPTIは、豪州連邦政府の重要鉱物戦略「Critical Minerals Strategy 2023–2030」に基づき、重要鉱物の国内での高付加価値化により、経済性の向上や安全保障の強化を図るものである。CMPTIは2027年7月1日に導入予定であり、2024年6月30日にはコンサルテーションペーパーが公表された。
本稿では、豪州における重要鉱物について整理するとともに、CMPTIを主とした重要鉱物中流工程の支援策やプロジェクト例について報告する。
1.豪州における重要鉱物
重要鉱物(Critical Minerals)はその国により対象となる鉱物が異なるが、豪州では表1に示す31鉱種が重要鉱物として定義されている。また戦略物質(Strategic Meterials)として、アルミニウム、銅、リン、錫、亜鉛が定義されており、2024年2月に価格低迷を背景として、新たに重要鉱物リストにニッケルが追加された1。
豪州は重要鉱物資源が豊富であり、特にリチウムにおいて、2022年生産量は74.7純分千tと世界全体の51.2%を占めたが2 、生産されたリチウム精鉱はそのほぼ全量が中国に輸出されている3。また、ニッケル生産量は155純分千tと、世界全体の4.7%を占める2。ニッケルについては精鉱に加えて、豪州内で処理した中間製品や地金も輸出されており、2023年度における輸出量は、精鉱168千グロスtに対して、中間製品・精製品137千グロスtであった4。
| Critical mineral | 日本 | 米国 | EU | 豪州地質ポテンシャル | 豪州EDR (2022) |
豪州生産量 (2022) |
世界生産量 (2022) |
豪州生産シェア(2022) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| High-purity Alumina | High | HPA ore: 16,700 kt |
0 | No data | No data | |||
| Antimony | 〇 | 〇 | 〇 | Moderate | 139.4 kt | 2.3 kt | 110 kt | 2.1% |
| Arsenic | 〇 | 〇 | Moderate | No data | No data | 61 kt | No data | |
| Beryllium | 〇 | 〇 | 〇 | Moderate | No data | No data | 280 t | No data |
| Bismuth | 〇 | 〇 | 〇 | Moderate | No data | No data | 20 kt | No data |
| Chromium | 〇 | 〇 | Moderate | 0 | 0 | 41,000 kt | 0.0% | |
| Cobalt | 〇 | 〇 | 〇 | High | 1,742 kt | 5.8 kt | 185 kt | 3.1% |
| Fluorine | 〇 | 〇 | 〇 | Moderate | 343 kt | 0 | 4,000 kt | No data |
| Gallium | 〇 | 〇 | 〇 | High | No data | No data | 550 t | No data |
| Germanium | 〇 | 〇 | 〇 | High | No data | No data | No data | No data |
| Graphite | 〇 | 〇 | 〇 | Moderate | 8,500 kt | 0 | 1,300 kt | No data |
| Hafnium | 〇 | 〇 | 〇 | Moderate | 14.5 kt | No data | No data | No data |
| Indium | 〇 | 〇 | Moderate | No data | No data | 900 t | No data | |
| Lithium | 〇 | 〇 | 〇 | High | 7,046 kt | 75 kt | 143 kt | 52.4% |
| Magnesium | 〇 | 〇 | 〇 | High | Magnesite: 284,000 kt |
Magnesite: 500 kt |
Magnesite: 25,000 kt |
2.0% |
| Manganese | 〇 | 〇 | High | Manganese ore: 496,000 kt |
Manganese ore: 4,500 kt |
18,700 kt | 24.1% | |
| Molybdenum | 〇 | Moderate | 687 kt | 0.28 kt | 250 kt | 0.1% | ||
| Nickel | 〇 | 〇 | 〇 | High | 24.1 Mt | 0.15 Mt | 3.3 Mt | 4.5% |
| Niobium | 〇 | 〇 | 〇 | Unknown (interpreted moderate) |
216 kt | No data | 79 kt | No data |
| Platinum-group elements | 〇 | 〇 | 〇 | Moderate | 359.3 t | 0.492 t | 400 t | 0.1% |
| Rare-earth elements | 〇 | 〇 | 〇 | High | 5,700 kt | 16 kt | 300 kt | 5.3% |
| Rhenium | 〇 | Unknown (interpreted moderate) |
157 t | No data | 58 t | No data | ||
| Scandium | 〇 | 〇 | High | 36.65 kt | 0 | No data | No data | |
| Selenium | 〇 | Unknown (interpreted moderate) |
No data | No data | 3.2 kt | No data | ||
| Silicon | 〇 | 〇 | High | No data | No data | 8.8 kt | No data | |
| Tantalum | 〇 | 〇 | 〇 | High | 110 kt | 0.1 kt | 2 kt | 5.0% |
| Tellurium | 〇 | 〇 | Unknown (interpreted moderate) |
No data | No data | 0.64 kt | No data | |
| Titanium | 〇 | 〇 | 〇 | High | Ilmenite: 303,300 kt Rutile: 39,000 kt |
Ilmenite: 700 kt Rutile: 200 kt |
Ilmenite: 14,900 kt Rutile: 600 kt |
No data |
| Tungsten | 〇 | 〇 | 〇 | High | 568 kt | 0.23 kt | 84 kt | 0.3% |
| Vanadium | 〇 | 〇 | 〇 | High | 8,510 kt | 0 | 100 kt | No data |
| Zirconium | 〇 | 〇 | High | Zircon: 88,300 kt |
Zircon: 500 kt | Zircon: 2,200 kt | 22.7% |
出典:Australia’s Critical Minerals List and Strategic Materials Listを基に筆者作成
豪州連邦政府は2023年6月には重要鉱物戦略「Critical Minerals Strategy 2023–2030」を公表しており、(1)強固で安全な国際的パートナーシップを通じた多様で弾力性のある持続可能なサプライチェーンの構築、(2)重要鉱物の処理・精製能力の構築、(3)再生可能エネルギー大国になるための豪州産重要鉱物の利用、(4)豪州資源からのより多くの価値抽出、雇用と経済機会の創出を目的としている。
2.Crtical Minerals Production Tax Incentive
2024年5月14日、豪州連邦政府は2024/2025年度連邦予算案においてネットゼロに向けた施策「Future Made in Australia」を発表した。同施策は、投資の誘致、再生可能エネルギー能力の強化、資源の高付加価値化及び経済安全保障の強化、研究開発、人材育成を図るものであり、重要鉱物に関しては生産時の税優遇措置「Critical Minerals Production Tax Incentive(CMPTI)」が発表された。このCMPTIは豪州鉱業協会Association of Mining and Exploration Companies(AMEC)によるレポート「Production Tax Credit for value-add processing of Australia’s critical minerals」を踏まえたものと推察される。
AMECは2023年11月に同レポートを公表しており、豪州における重要鉱物の中流工程の支援策について、米国Inflation Reduction Act(IRA)におけるAdvanced Manufactureing Production Tax Credit(AMPTC)と同様に、豪州でも重要鉱物生産税控除の導入を推奨していた5。同レポートによると、豪州における重要鉱物の処理・精製及びバッテリー原材料の生産のコストは米国と比べて平均10%高く、これは米国が重要鉱物やバッテリー原材料の生産をAMPTCにより支援していることに起因する。豪州において米国のAMPTCと同様に生産税控除を導入した場合、重要鉱物やバッテリー原材料の生産が増大し(2025年度推定生産量に対する2035年度推定生産量は、水産化リチウム8.4倍、硫酸ニッケル2.1倍、酸化バナジウム6.2倍、レアアース酸化物1.6倍)、2035年までに24bA$の経済効果と4,220人の雇用創出が見込まれると示されていた。
CMPTIは、豪州連邦政府の重要鉱物戦略「Critical Minerals Strategy 2023–2030」に基づき、重要鉱物の国内での高付加価値化により、経済性向上と安全保障強化を図るものであり、今後10年間で7bA$が拠出される。CMPTIは豪州連邦政府の定める重要鉱物31鉱種を対象として、各施設における処理・精製費用の10%に対して、還付可能な税額控除として提供される。2027年7月1日から2040年6月30日までの期間において、最初の生産から最大10年間利用可能である。2024年6月30日に公表されたコンサルテーションペーパーでは次のような利用条件や注意点が提案された6。当コンサルテーションは2024年6月30日から2024年7月12日にかけて行われた。
(主な利用条件)
- 豪州にて所得税の対象となる法人が対象
- 豪州に位置する施設に適用される。施設は既存と新規ともに対象
- 生産物の用途は、国内供給か輸出か問わない
- 税額控除が申請者の納税義務を超える際は現金還付を受けることが可能
- CMPTIに上限はなく、需要を踏まえ決定される
- 事業者が複数の施設を所有するとき、条件を満たす全ての施設において適用可能
(主な注意点)
- 重要鉱物リストが更新されても、自動的にCMPTIの対象となる訳ではない
- 申請者は2030年7月1日までにFIDまたは生産している必要あり
- 対象鉱物を処理・精製する際の直接費用が対象であり、薬剤など消耗品費、人件費、光熱費、メンテナンス費、物流費などが含まれる見込み。間接費用やマーケティング、Financing cost、Capital works、減価償却費、原材料費等のコストは含まれない
- 対象となる生産物は鉱種ごとにDepartment of Industry, Science and Resources(DISR)が設定。例えば、リチウムであれば水酸化リチウム、炭酸リチウムまたは質量換算でリチウム純度99%以上のものを対象として設定される見込みである
| The incentive |
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| Eligible entities |
|
| Eligible facilities |
|
| Eligible processing activities/outputs |
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| Eligible expenditure |
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| Maximum project size/output |
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| Maximum incentive claimed |
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| Community benefit criteria |
|
出典:Critical Minerals Production Tax Incentive Consultation paper
CMPTIは現在初期の協議段階にあり、2027年7月1日の導入に向けて、業界とのコンサルテーションや評議会による審議などが実施されると思われる。なお一般的な政策策定までの大まかな流れとして、コンサルテーションを経て作成した法案の草案が評議会に提出され、評議会より承認されたのち、法案が議会に提出され、両院(上院、下院)を通過したとき法案として策定される7。
3.重要鉱物プロジェクトへの金融支援
豪州連邦政府は導入計画のあるCMPTIとは別に、既にCritical Minerals FacilityやNorthern Australia Infrastructure Facility(NAIF)などを通じて重要鉱物プロジェクトへの金融支援を行っている8。その他、Critical Minerals National Productivity Initiativeでは、連邦と州が連携し、重要鉱物の共通インフラプロジェクトを支援している。
3.1 Critical Minerals Facility
2021年に豪州連邦政府によって設立され、Export Finance Australia(EFA)による管理の元、重要鉱物プロジェクトへの資金提供を行っている。2023年10月に、連邦政府はCritical Minerals Facilityの資金を2bA$から4bA$に倍増することを発表した。
今まで融資したプロジェクトとして、次のようなレアアースやグラファイトのプロジェクトが例として挙げられる。
- WA州Eneabbaレアアースプロジェクト(豪Iluka Resources社)に1.25bA$融資
- NT準州Nolansレアアースプロジェクト(豪Arafura Resources社)に495mA$融資
- SA州Siviourグラファイトプロジェクト(豪Renascor Resources社)に185mA$融資
3.2 Northern Australia Infrastructure Facility(NAIF)
豪州連邦政府の金融機関であり、豪州北部のインフラプロジェクトなどを支援している。豪州連邦政府「Critical Minerals Strategy 2023–2030」の一環として、500mA$が割り当てられている。
重要鉱物関係では、リチウム鉱山の拡張プロジェクトや、レアアースプロジェクトに対して融資を行っている。
- WA州Pilgangoora リチウム鉱山の拡張プロジェクトP680(豪Pilbara Minerals社)に125mA$融資
- NT準州Nolansレアアースプロジェクト(豪Arafura Resources社)に最大200mA$融資
- WA州Yangibanaレアアースプロジェクト(豪Hastings Technology Metals社)に最大220mA$融資
4.豪州における重要鉱物中流工程プロジェクト
豪州で生産されたリチウムは、スポジュメン精鉱としてほぼ全量が中国に輸出されているが、一部の重要鉱物は豪州内で中間製品や地金まで処理し、輸出されている。
ニッケルに関しては、BHPがWA州のNickel Westで生産した硫化鉱精鉱を、Kalgoorie SmelterやKwinana Refineryで処理し、マットやニッケル地金を生産している。Glencoreは、WA州Murrin Murrin鉱山にて採掘した酸化鉱を山元で湿式処理し、ミックスサルファイド、ニッケル地金、コバルト地金まで生産して出荷している。なおBHPは、2024年10月からWA州におけるニッケル事業を一時的に中止することとしており9、Kalgoorie Smelter、Kwinana Refineryも対象に含まれるため、これにより豪州におけるニッケル生産量・輸出量は減少することが予測される。
レアアースに関しては、Lynas Rare EarthがWA州Mt Weldで生産したレアアース精鉱を、2023年12月に同州Kalgoorieに新たに建設したCracking & Leachingプラントに給鉱開始している10。レアアース精鉱の一部はKalgoorieプラントで混合レアアース炭酸塩まで処理した後、マレーシアLAMPに輸送され、分離精製が行われる。
その他にも開発中の重要鉱物中流工程プロジェクトが複数存在しており、ニッケル・コバルト、リチウム、レアアースのプロジェクト例を次のとおり紹介する。なお、これらの開発段階や生産能力については、Austrade発行のAustralian Critical Minerals Prospectus7や各社ホームページ情報を引用したものである。
4.1 ニッケル・コバルト
(1)Sunrise Project(豪Sunrise Energy Metals社)
- NSW州シドニーの西約350kmに位置するラテライト鉱床
- 硫酸ニッケル(21.3純分千t/年)、硫酸コバルト(4.4千純分千t/年)を生産予定
- 2022年にFSのアップデートが完了
(2)Sconi Project(豪Australian Mines社)
- QLD州Townsvilleの北西220kmに位置するラテライト鉱床
- 年間あたりニッケル71千t、コバルト7千t相当のMixed Hydroxide Precipitate(MHP:混合水酸化物)を生産予定
- MHPのオフテイク先は豪LG Energy Solution社
- 2023年に採掘リースを取得しており、2025年までにFID、2028年に試運転開始を目指す
- その他、硫酸コバルト、硫酸ニッケル、副産物としてスカンジウム酸化物の生産計画あり
(3)NiWest Project(豪Alliance Nickel社)
- WA州に位置するGlencoreのMurrin Murrinに隣接する
- 露天掘りで採掘した硫化鉱をヒープリーチングや溶媒抽出により処理し、硫酸ニッケルや硫酸コバルトを生産
- 当初の生産目標は硫酸ニッケル90千t/年。将来的にはニッケル地金20千tを生産する構想
- 2024年DFS完了、2025年半ばに建設開始、2027年に生産開始を目指す
(4)NTownsville Energy Chemicals Hub(TECH)(豪Queensland Pacific Metals社)
- ニューカレドニア産のラテライトが原料。Société Le Nickel(SLN)、Société des Mines de la Tontouta (SMT)、Société Minière Georges Montagnat(SMGM)の3社と鉱石供給契約を締結
- 硫酸コバルト1.7千t/年、硫酸ニッケル15.9千t/年、高純度アルミナ4千t/年、ヘマタイトペレット607千t/年など生産予定
- 硫酸コバルトと硫酸ニッケルのオフテイク先はGeneral Motors、LG Energy Solutions、POSCO
(5)Kwinana Cobalt Refinery(豪Cobalt Blue社)
- WA州に位置し、NSW州Broken Hillや第三者から調達したMHPなどを処理し、硫酸コバルトなどを生産
- 初期段階の生産能力は硫酸コバルト3.0 千t/年、ニッケル地金500千t/年
- 2024年にFID、建設開始して、2025年に試運転開始を目指す
4.2 リチウム
(1)Kemerton Lithium Hydroxide Processing Plant(米Albemarle社)
- 豪Greenbushes鉱山から精鉱供給。生産能力50千t/年(2つのトレインにおいて25千t/年)
- 生産能力強化のために新たなトレインを建設予定であったが、2024年8月にトレイン3を建設中止、トレイン2をケア&メンテナンスに移行し、当面はトレイン1のみで生産すると発表11
(2)Kwinana Lithium Hydroxide Refnery(豪Tianqi Lithium Energy Australia社)
- Tianqi Lithium Energy Australia社はTianqi Lithium社およびIGO社がそれぞれ50%の権益を保有するJV企業
- 豪Greenbushes鉱山から精鉱供給。生産能力48千t/年(2つのトレインにおいて24千t/年)
- トレイン1は試運転中であり、2024年にはトレイン2のFEEDが完了予定
(3)Kwinana Lithium Hydroxide Refnery(豪Covalent Lithium社)
- Covalent Lithium はSociedad Química y Minera de Chile社およびWesfarmers社がそれぞれ50%の権益を保有するJV企業
- Mt Hollandから精鉱供給。生産能力48千t/年。現在建設が遅れており、2025年上半期に生産開始予定
4.3 レアアース
(1)Dubbo Project(豪Australian Strategic Materials社)
- NSW州Dubboの南25km㎞に位置。鉱山に隣接してプラントを建設する計画
- 2023年にEPCD終了
- 年間あたりZrO2 16千t、HfO2 30t、Fe2Nb 2.65千t、NdPr酸化物 1,342t、Tb酸化物 22t、Dy酸化物 142tを生産予定
- 2023年に連邦政府はCritical Minerals Development Programを通じて6.5mA$を提供、また2024年10月にはInternational Partnerships in Critical Mineralsプログラムを通じて5mA$を提供
(2)Eneabba Rare Earths Refnery(豪Iluka Resources社)
- Eneabbaでは、Phase1としてStock pileから鉱石を回収してMonazite-Zircon精鉱を生産、Phase2としてZirconと分離してMonazite精鉱を生産、Phase3 としてレアアース分離精製を計画
- Phase3 は2022年4月にFID。2023年にレアアース分離精製施設を建設開始しており、2025年の生産開始を目指す
- EneabbaにあるStockpileのほか、Iluka社の他プロジェクトや、Browns Range(Northern Minerals社)などの第三者からレアアース精鉱を給鉱予定
- レアアース酸化物の生産能力17.5-23千t/年
- Critical Minerals Facilityから融資
(3)Nolans Rare Earths Project(豪Arafura Resources社)
- NT準州のAlice Springsから北135kmに位置
- レアアース鉱石を山元で処理し、NdPr酸化物や重希土炭酸塩を生産
- 生産能力は、NdPr酸化物4.4千t/年、重希土炭酸塩470t/年、また副産物としてリン酸144千t/年
- 2023年上半期に建設を開始し、2024年下半期のFIDを目指す
- オフテイク先は韓Hyundai社、韓Kia社、Siemens Gamesa Renewable Energy社など
- 2024年3月、豪州連邦政府はA$840mの資金提供を発表。うち495mA$はCritical Minerals Facility、200mA$はNAIFから拠出
おわりに
豪州連邦政府は重要鉱物の中流工程の強化を図っており、従来のCritical Minerals FacilityやNorthern Australia Infrastructure Facilityを通じた金融支援のほか、新たにCMPTIを導入する計画を立てている。重要鉱物のサプライチェーンにおいて、処理・精製といった中流工程の多くは中国に依存している中、日本のような資源輸入国は経済安全保障の観点から調達先の多角化が求められており、豪州における重要鉱物の中流工程強化は歓迎されるものである。豪州では価格低迷などを背景としてニッケルやリチウムのプロジェクトの停止が散見され、事業者から政府に対して早急な支援を求める声がある一方、適切な政策を実施するためには業界との十分なコンサルテーションが必須である。
CMPTIについて、公表されたコンサルテーションペーパーでは各鉱種において支援対象となる生産物の形態が明示されておらず、例えばニッケル・コバルトではMHPが対象に含まれるかどうか定かではない。また、CMPTIを利用するためには2030年7月1日までにFIDを行う必要があるが、Early stageのプロジェクトにとってはFIDまでの期間が短く、新規プロジェクトが同制度を利用することは難しいという見方もある。これらの課題については今後のコンサルテーションを通して適宜更新、見直されるものと思われるため、今後もその動向を注視していきたい。
- 1. https://www.industry.gov.au/publications/australias-critical-minerals-list-and-strategic-materials-list
- 2. https://pubs.usgs.gov/publication/mcs2024
- 3. https://www.industry.gov.au/publications/resources-and-energy-quarterly-september-2024
- 4. https://www.industry.gov.au/publications/resources-and-energy-quarterly-september-2024
- 5. https://amec.org.au/ptc-resources/
- 6. https://treasury.gov.au/sites/default/files/2024-06/c2024-541266-cp.pdf
- 7. https://commonslibrary.org/windows-and-cycles-how-policy-gets-made/#:~:text=The%20Australian%20Policy%20Cycle,-One%20of%20the&text=Governments%20identify%20issues%20requiring%20policy,to%20understand%20the%20issue%20better
- 8. https://international.austrade.gov.au/en/news-and-analysis/publications-and-reports/critical-minerals-prospectus
- 9. https://www.bhp.com/news/media-centre/releases/2024/07/western-australia-nickel-to-temporarily-suspend-operations
- 10. https://wcsecure.weblink.com.au/pdf/LYC/02751000.pdf
- 11. https://www.albemarle.au/news/albemarle-announces-asset-and-cost-actions-toenhance-competitiveness-and-proactively-respond-to-dynamic-market-conditions
おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。


