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報告書&レポート

2025年1月10日 金属企画部 調査課
25-01

2024年 金属鉱物資源をめぐる動向

<金属企画部調査課 報告>

はじめに

JOGMEC金属企画部調査課にて、2024年内の鉱物資源分野において注目されたトピックを選び、以下のとおり解説を加えた。前年に引き続き、金属鉱物を巡る動きは目まぐるしい年であった。供給不安による価格上昇が見られた鉱種がある一方で、価格低迷が生産に影響を及ぼした鉱種もあり、市場の動きだけを見ても鉱種ごとにその特徴は様々である。また、上流での課題がサプライチェーンの下流にも大きく影響し、サプライチェーンの結びつきを強く意識する事案も多くなってきている。今後においても精緻な情報が求められる分野であり、重要トピックを整理していく上で本レポートを活用していただければ幸いである。

◆ バッテリーメタル(コバルト、リチウム)・レアアース市況動向

コバルト(LME Cash Settlement)は、28,440.0US$/tで開始したが、8月まで価格が下落基調、8月23日に年最安値となる23,720.0US$/tをつけた。DRコンゴやインドネシアでのコバルト生産能力増強による供給過剰や、LIB正極材へのリン酸鉄リチウム(LFP)採用の広がり等により期待していたほど需要増が見込めないことによるとみられる。その後は24,000US$/t前後で推移し、2024年は24,050.0US$/tで越年した。

リチウムは、2022年に史上最高値を更新した後2023年に急落、その後も下落基調が続いている。2024年の下落幅は前年と比べて緩やかにはなったものの、上昇に転じるきっかけなく越年した。中国を中心に電気自動車(EV)需要が振るわない一方で、これまで原料のリチウムは毎年対前年比20%の増産傾向であり、供給過剰に陥っているとみられる。年後半には豪州の鉱山等の減産等、また大手リチウムメーカーのコスト削減・純損失等の発表が相次いだ。

レアアースは、2023年から続く中国経済失速下での供給過剰と需要低迷により、1年を通じて低価格で推移した。中国政府が発表した2月及び8月の「採掘・製錬分離総量規制指標」、3月の「大規模設備の更新と消費財の買い替え推進行動プランに関する通知」による下流産業の発展への期待感、7月の「レアアース管理条例」を経て、小幅な下落と上昇を繰り返した。11月初旬までにミャンマーでkahkyin独立軍が同国のレアアース採掘地域を占拠し一時的に供給懸念が広がったものの、価格への影響は限定的で、磁石向け軽希土類は年初からほぼ横ばいの1割安、重希土類は同比約3割安で越年した。

◆ ベースメタル市況動向:銅は米国利下げ観測や中国景気刺激策が押し上げ、史上最高値更新

銅は、2023年末に発生したパナマCobre Panamá銅鉱山の操業停止等による供給懸念から8,500US$/t付近の高値圏でスタートした。年初は、収益悪化に伴う中国の大手銅製錬会社19社による協調減産合意や、豪BHPの英Anglo Americanへの買収提案等による銅需要増大への期待など、需給タイト化の懸念により上昇した。加えて、中国の建設業界への景気刺激策が発表されたことや、米国の早期利下げ観測なども価格を押し上げた。急激な米ドル安の進行によりChicago商品取引所(CME)でショートスクイーズが発生、LMEでも投機筋がショートカバーを迫られるなど投機筋の動向も上昇に拍車をかけ、5月20日に史上最高値10,857US$/tを記録した。6月以降は米利下げ観測が後退したことや中国の景気刺激策が具体的内容を欠いたこと等で下落し、8月には再び9,000US$/tを割り込んだ。その後チリEscondida、Caserones鉱山のストライキなどによる供給懸念や再度の利下げ観測等により11月に9,500US$/t付近まで回復したものの、根強い世界的な需要減退懸念が上昇を抑制し、8,700S$/t前後で越年した。

亜鉛も、銅と同様に世界的な経済減退の影響が重しとなった。2月中旬、需要減少による余剰分がLMEに大量流入した影響で、2,285.5US$/tと半年ぶりの安値圏まで下落したが、その後ペルーAtacocha、ボリビアSan Cristobal、豪McArthur River各鉱山の一時操業停止等の混乱に起因する鉱石不足懸念を背景に上昇に転じ、2023年6月以降操業停止していたアイルランドTara鉱山は操業を再開した。10月、5月に生産再開したDRコンゴKipusi鉱山の生産量見通し減少、露Ozernoye鉱山の生産開始遅延、豪Century鉱山の森林火災による操業一時停止等が重なり、10月24日には年最高値となる3,237.5US$/tを記録、そのまま3,000US$/t前後で越年した。

鉛は、最大用途である自動車用鉛蓄電池の一定の需要が維持され、1,900~2,300US$/tのレンジで安定的に推移した。中国景気に対する過度な警戒感の緩和から同国での需要の伸びが期待されたことで、5月21日には8か月ぶりの高値となる2,291.0US$/tを記録した。

ニッケル(LME Cash Settlement)は、2023年に急激に下落し、16,600.0US$/tで開始した。年前半は、米国及び英国政府による対露制裁の強化を目的としたロシア産ニッケル等の輸入禁止で徐々に価格は上昇、5月にはニューカレドニアにおける先住民の抗議活動を発端とする暴動の懸念により年最高値21,275.0US$/tとなった。しかしその後、この暴動の影響は限定的という見方が広まったことから下落した。年後半は、9月末の中国の追加景気刺激策等で上昇局面もあったが、11月の次期米大統領にTrump候補が当選したことによるドル高の影響、中国全人代常務委員会が11月8日に発表した景気刺激策への失望感により、ニッケル価格は上昇せず横ばい気味で推移し、12月19日及び12月20日に14,965.0US$/tの年最安値を記録した。その後も横ばいのまま、15,100.0US$/tで越年した。

表1.2024年におけるベースメタルLME Cash Settlement価格概要(US$/t)
鉱種 年初価格 年末価格 最高値 最安値 年平均
8,430.0 8,706.0 10,857.0
(5月20日)
8,085.5
(2月12日)
9,146.8
亜鉛 2,607.0 2,974.0 3,237.5
(10月24日)
2,285.5
(2月14日)
2,779.0
2,033.0 1,921.5 2,291.0
(5月21日)
1,905.0
(8月6日)
2,072.7
ニッケル 16,600.0 15,100.0 21,275.0
(5月21日)
14,965.0
(12月19日)
16,811.4
図1.2024年ベースメタル(LME)月平均価格の指標推移

図1.2024年ベースメタル(LME)月平均価格の指標推移

(2024年1月=1.00)

◆ 貴金属市況動向:露宇・中東紛争等の世界情勢を踏まえ金は高騰、白金族は需要減で安値推移

金は、年初~2月はほぼ横ばいの2,000US$/oz台で推移したが、3月以降上昇、史上最高値を更新し続け、10月末2,780.9US$/ozに達した。2022年2月から始まったロシア・ウクライナ戦争は2年以上経過したが収束の兆しが見えず、2023年10月から始まったイランとイスラエルの対立も激化、そして半導体関連の輸出入を巡る米中対立等、世界情勢への懸念は拭えないままであった。中国、ロシア、トルコ、インド等の中央銀行による外貨準備としての金買い、世界的なインフレ、金の生産コスト上昇等に伴う生産量減少懸念等も上昇に拍車をかけた。

自動車の排ガス触媒に使われるプラチナ、パラジウムは、EVの普及により安値が継続した。特に世界の供給量の4割をロシアが担うパラジウムは、2022年のロシア・ウクライナ開戦直後に一時高騰したものの、その後下落の一途を辿り、2月、2018年2月以来6年ぶりにプラチナを下回った。10月末、米国がG7に対しロシア産パラジウム、チタンへの制裁要請との報道で一時的に上昇したが、2018年以降続いた高値によってガソリン車触媒用途はパラジウムからプラチナへの代替が進展し、内燃機関車需要が見込めない中、排ガス触媒以外の新規用途も見込めず、米中の排ガス規制強化、露Nornickel社のパラジウム生産量減少も相場を押し上げるには至らなかった。

一方、プラチナは2023~24年が供給不足と言われる中、米中の景気不振や需要の低迷等からパラジウム同様に上昇要因に欠けるが、燃料電池触媒や水素吸蔵合金等、新規用途への期待感もあり、概ね900~1,000US$/oz台を安定的に推移した。

表2.2024年における貴金属LBMA価格(AM/PM平均)概要(US$/oz)
鉱種 年初価格 年末価格 最高値 最安値 年平均
2,071.2 2,610.9 2,780.9
(10月30日)
1,988.0
(2月14日)
2,388.2
プラチナ 991.5 914.0 1,069.5
(5月20日)
873.5
(3月1日)
955.6
パラジウム 1,106.5 909.0 1,227.0
(10月29日)
856.5
(8月6日)
983.6

◆ 中国、デュアルユース品目の輸出管理規制を強化

中国政府は、2023年に続いて輸出規制の一部を強化した。2023年8月からガリウム及びゲルマニウム、同年12月にグラファイトの輸出管理規制を施行、更に2024年8月15日にはアンチモンの輸出管理規制を公表、9月15日に施行した。輸出管理規制施行後の中国からの対日輸出状況は、中国税関統計によると、金属ガリウムは2~9月に計約16tの連続的な輸出実績があった。金属ゲルマニウムは輸出規制前から元々輸出量が少なかったところ、1~11月の輸出実績はゼロであった。グラファイトは、鱗片状黒鉛が施行直後の2023年12月は0tであったが、2024年3月には前年同月程度まで回復した。アンチモンは施行直後の10月以降、金属アンチモン、三酸化アンチモンともに減少した。このように2024年中は鉱種によって輸出許可の対応が分かれる結果となった。

更に、中国政府は12月3日、ガリウム、ゲルマニウム、アンチモンの規制を強化し、原則としてデュアルユース品目の米国向け輸出は不許可となった。またグラファイトでは、デュアルユース品に対してより厳格なエンドユーザーと最終用途の審査を実施することが発表された。

中国依存度の高い鉱種はまだ他にもある。2025年は米国がTrump政権となり更なる米中対立が見込まれるところ、今後の規制にも注視が必要である。

◆ 米大統領選の結果、今後の重要鉱物政策への影響

米国にて9月に行われた大統領選挙でTrump候補(前大統領)が再選、同国の今後の重要鉱物政策に与える影響が注目されている。近年、重要鉱物政策は、各国及び国際的に、エネルギーや経済の安全保障の面、そして軍需の国家安全保障の面を背景にして種々の議論を呼んでいる。Biden政権下では、インフレ抑制(IRA)法をはじめ、国内のみならず世界の重要鉱物サプライチェーンに影響を与える施策が導入されたが、もともと米国において重要鉱物を政策の前面に押し出したのは先の第1次Trump政権下においてであった。この第1次Trump政権下において2度大統領令が発出されたが、2020年大統領令13953においては、重要鉱物の中国一国依存に対処すべく、米国国内の採掘及びプロセシングを強力に支援することが唱えられている。第2次Trump政権では、重要鉱物サプライチェーンを強化する方向性はBiden政権下と変わらないと考えられるが、そのやり方において、米国国内資源の開発の推進や中国とのデカップリングなど、早くもその対応が注視されている。

◆ 中国によるレアアース関連政策の強化:2大集団への業界再編と管理条例の施行

中国によるレアアースの中央集権的な統制強化も目立った。2021年12月に4大集団となっていた同国内レアアース業界はさらに再編が進み、2023年12月に広東省の広晟控股集団有限公司(広晟集団)の子会社である広東稀土集団(広東稀土)の全株式を中国稀土集団(中国稀土)が取得し完全子会社化した。さらに、中国稀土の厦門タングステン業股份有限公司(厦門タングステン業)とのJV企業である中稀厦タングステン(福建)稀土鉱業有限公司(中稀厦タングステン)における中国稀土の出資比率が51%となったことで、鉱山等の支配権が同社へ移った。以上の再編状況は、2024年2月に中国政府より発表された「採掘・製錬分離総量規制指標」において割り当て先が中国北方稀土(集団)高科技股份有限公司(北方稀土)と中国稀土の2社のみとなったことで明確になった。この業界再編は、国務院国有資産監督管理委員会の監督管理下での直轄的な価格統制や、他国への販売制限の容易化が主な目的とみられている。

また、レアアース管理条例が6月末に発表、10月に施行された。同条例は全32条で構成され、中国国内レアアース産業の、採掘、選鉱、製錬、分離、金属化、総合利用、製品流通、輸出入まで含めたサプライチェーン上の各活動について、既存の通達規制等の根拠となる統一的な上位法令となっている。具体的には、レアアース管理の際の中国共産党と国家の方針・政策の徹底、レアアースの国家所有、国家によるレアアースの採掘等に対する総量管理、トレーサビリティシステムの構築及び輸出等に従事する企業の同システムへの入力義務、レアアース備蓄システムの強化等を明文化している。また、これまでは既存の他の法律や規制等を根拠に処罰対象としていた国内での違法採掘、選鉱、製錬、分離したレアアース製品の購入、加工、販売輸出に対しても、改めて今般の管理条例で罰則が規定された。2025年は、米Trump政権発足に伴い、レアアース関連で何らかの動きがあるか否かも注目される。

図2.中国レアアースの業界再編

図2.中国レアアースの業界再編

出典:業界関係者・現地報道によりJOGMEC作成

◆ 資源メジャーによるポートフォリオ見直しの動き

資源業界を代表する資源メジャーが、エネルギートランジションなどの変化を見据えて、従来の活動領域であった鉄鉱石やベースメタル事業全般から銅事業を強化、さらにリチウムなどバッテリーミネラル事業に乗り出すなど、ポートフォリオの見直しに動き出している。

豪BHPは、4月から3回に亘って英Anglo Americanに買収を提案した。この買収は、南アのプラチナ・鉄鉱石事業権益売却という条件を巡って合意には至らなかったものの、BHPが将来の銅需要増加を予想して事業拡大を目指していることが示唆された。なおこの買収提案に対抗するため、PGM事業を行うAnglo Americanの子会社である南アAmplats社は、Anglo Americanから分離されることとなった。

英・豪Rio Tintoは、リチウム事業の強化に乗り出している。2018年、チリSQM社の株式5bUS$の買収を試み、この買収は頓挫したものの、2022年にアルゼンチンLinconリチウムプロジェクトを100%買収した。そして10月、米Arcadium Lithium社を総額6.7bUS$で完全買収した。Arcadium Lithium社は1月に豪Allkem社と米Livent社の合併で設立された企業で、この買収によりRio Tintoは米Albemarle社、チリSQM社に次ぐリチウム生産企業に躍り出るといわれている。さらに12月、アルゼンチンLinconプロジェクトに2.5US$を投資して生産能力を60千t/年まで拡張することを発表している。

加Teck Resourcesも、製鋼・石炭事業を売却し、部門を組み直すことで銅事業へより注力できる体制としている。

2025年以降も、こうした資源メジャーの脱炭素化に向けた流れは一層進展しそうな様相である。

◆ 豪州ニッケル・リチウム資源産業の危機

世界有数の資源国として知られる豪州だが、鉱物価格の急落に伴い、特にニッケルおよびリチウム資源産業において存続の危機に直面した。

ニッケルは、インドネシアの生産量急増に伴う供給過剰により市況が悪化、豪州のニッケル産業を直撃し、1月以降、豪IGO社がForrestania、Cosmos各プロジェクト、豪Wyloo Metals社がKambaldaプロジェクト、加First Quantum社がRavensthorpeプロジェクトを次々と操業停止・休山もしくは閉山した。また、豪州最大の生産者BHPも子会社Nickel West社の事業およびWest Musgraveプロジェクトを2027年まで一時停止と発表したほか、豪Mallee Resources社と豪Panoramic Resources社は2023年9月と2024年1月にそれぞれ経営破綻を発表した。

リチウムも同様に、EVの需要減少とそれに反する世界的な供給急拡大により価格は急落、豪Core Lithium社がFinnis鉱山の操業を停止、米Albemarle社がKemerton水酸化リチウムプラントの生産を縮小したほか、米Arcadium Lithium社がMt Cattlin鉱山の操業停止に追い込まれた。

連邦政府は、5月に発表した「Future Made in Australia」でニッケル、リチウムを含む重要鉱物の生産者に対し関連する加工・精製コストの10%相当の生産控除を与えるほか、特に豪州産ニッケルをESG(環境・社会・ガバナンス)基準に準拠したものとして差別化を働きかけるなど、価格低迷による打撃を受けた企業を支援しようとしている。しかし、現段階でその効果があるとは言えず、さらにアナリストの大半は今後数年にわたって供給過剰が続くと予測しており、2025年も豪州のニッケル・リチウム産業は苦境に立たされる可能性がある。

◆ インドネシア・ニッケル高付加価値化政策、高まる存在感

インドネシアは天然資源の高付加価値化政策を推進しており、特にニッケルに対しては積極的な政策及び中国による製錬所への投資が進められてきた。近年では、鉱石及びニッケル製品(フェロニッケル・ニッケル銑鉄(NPI)及びニッケル混合水酸化物等(MHP))の生産量が世界第1位となり、大きな存在感を放っている。

2月の大統領選挙で当選したPrabowo大統領は、Joko前大統領の高付加価値化政策を継承するとし、就任後、高付加価値化政策への取り組みを表明、10月23日の第1回閣議でAirlangga経済担当調整相、Rosan投資・下流相、Bahlilエネルギー・鉱物資源相に対して、下流分野でのプロジェクトを一刻も早く開始するため、直ちにプロジェクトのリストを作成し資金を調達するよう要請した。ニッケルの高付加価値化では、EV用バッテリーの世界的サプライチェーンの主要プレーヤーになることを目指すとした。しかし、この政策はニッケル製品の供給過剰とニッケル価格の下落を引き起こし、また上述のとおり豪州で鉱山の操業が一時停止となる等、他国にも影響を与えている。こうした中、現在、インドネシアのニッケル鉱業におけるESGの水準・実効性、ニッケルにグリーン・プレミアムといった価値を付加する議論が、欧米やEVを生産する自動車業界等で巻き起こっている。

◆ 西側諸国を中心とする重要鉱物の多国間連携が深化

鉱物安全保障パートナーシップ(MSP)は、2022年に米国国務省が主導して立ち上げた西側諸国中心の最大の重要鉱物の多国間連携の枠組みであり、責任ある重要鉱物サプライチェーンへの世界中の官民投資を促進することを目的としている。パートナー国は、豪州、カナダ、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、ノルウェー、韓国、スウェーデン、英国、米国、EU(欧州委員会)であり、このほかに資源国を中心に複数の国が参加している(12月現在)。4月には、欧州委員会は重要鉱物政策の効率化を目指すべく、欧州原材料法に基づいて定めた重要原材料の確保を目的とした法整備である欧州原材料クラブとMSPが協力することを決定した。

2024年は、このMSPのパートナー国間の、資源国と消費国が連携するプロジェクトが次々と立ち上がった。9月、豪Black Rock Mining社と韓POSCO社は、タンザニアにおけるグラファイト取引プロジェクトに対する40mUS$投資に係る合意を行った。DRコンゴGécaminesの子会社であるSTL社とベルギーUmicore社とのゲルマニウム取引・処理プロジェクトでは、10月にゲルマニウムが初出荷された。MSPはこういった重要鉱物の供給源多角化を目指したパートナー国間の個別プロジェクト推進を歓迎している。上流~下流にわたって様々なシナジーが期待できる枠組みであるため、今後も更なるサプライチェーン多角化への取り組みが期待される。

おわりに

近年、政策や外交の場面で重要鉱物が話題になることが多くなり、より動向を踏まえた情報の重要性が増していると実感される。されど、鉱種によっては、サプライチェーンが複雑で不透明なものも多くあり情報収集や整理の難しさがある。一方で、欧州ではバッテリーパスポートなどの上流から下流に至る情報を共有するためのシステム作りが動き出している。それぞれの鉱種のトピックのみならず、このようなサプライチェーン全体を捉える動きについても、今後の進展を注視していく必要がある。

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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