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報告書&レポート

2025年2月5日 バンクーバー 事務所 五十畑樹里
25-06

BC Natural Resources Forum 参加報告

<バンクーバー事務所 五十畑樹里 報告>

はじめに

BC Natural Resources Forum(BCNRF)は、加C3 Alliance社が主催するカナダ西部の先住民族、政府、天然資源に関するカンファレスである。BC州中部に位置する交易の要所であるカナダPrince Georgeで2025年1月14~16日にかけて開催され、BC州だけでなく、カナダ全土の資源関連のニュース、トレンド等について議論された。本レポートでは、重要鉱物に関するパネルディスカッションで議論されたことを紹介する。

写真1.BC Natural Resources Forum舞台

写真1.BC Natural Resources Forum舞台

ファーストネーションのテーマから舞台左側にトーテムポールが設置されている。

Permit to Prosperity: Unlocking BC’s Critical Mineral Mining and Refining Opportunities

BC州は、2024年1月に重要鉱物戦略を公表。アルミニウム、コバルト、銅、ゲルマニウム、インジウム、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、ニオブ、白金族元素、レアアース、タンタル、タングステン、亜鉛を重要鉱物と定め、先住民との意思決定事項の共有や和解の促進を目的としたパートナーシップのほか、持続可能な鉱山開発のための投資の誘致を推進する方針を立てた。現在、BC州では銅や金など16件の鉱山が操業中であり、進行中の主な重要鉱物案件は、加Giga Metals社のTurnagainニッケル探鉱、加FPX Nickel社のDecarニッケル探鉱、加Nano One社のリチウムイオン電池(LIB)の正極材技術開発などである。

本ディスカッションでは、BC州の経済に貢献する鉱業の重要な役割が再認識されたほか、効率的な許認可プロセスと先住民との強力なパートナーシップの必要性が強調された。Mining Association of British Columbia (MABC)の最新の調査によると、BC州の操業中鉱山は、平均マインライフが24.1年で24.8bC$のGDPを生み出し、長期的には約800bC$の経済効果を生み出す可能性があるとしている。一方で探鉱許認可プロセスの取得には平均で1年を要することもあり、資源企業はBC州政府に対してより迅速な対応を求めている。

BC州北西部で金の探鉱を進める加Seabridge Gold社からは、プロジェクトの開発には、複数の許可が必要であり、同社のKerr-Sulphurets-Mitchell(KSM)プロジェクトはこれまでに各種78件の許認可を取得したことを挙げた。また各種許認可を取得し続けるには、膨大な作業が必要となり、州政府、先住民政府も含め人的リソースが不足していることが課題であると指摘した。

Prince Georgeでニッケルの探鉱を進めるFPX Nickel社からは、許認可手続き(規制)には確実なタイムラインが必要と述べた。投資を行うには、許認可取得の見通しが立つことが不可欠であり、BC州の新民主党(NDP)政権下で新規開設されたCritical Mineral Officeに対して許認可取得への道筋が明確になるよう期待を示した。

また、先住民とのパートナーシップについて、加Teck Resources社からは、同社が先住民の優先事項や意見を踏まえて、先住民コミュニティとの早い段階からの緊密な関係構築に重点を置いていると述べた。加えて、許認可の実効性の向上とプロセスの迅速化を両立させる点において、先住民側の専門性の向上も重要な課題であるとした。

おわりに

BC州には鉱業のほかにも液化天然ガス(LNG)・林業・電力など多くの産業が存在しており、これらは地域経済を支える要として重要視されている。一方、新規案件の件数や開発スピードは鈍化傾向とみられ、その背景に、各種許認可取得に係る複雑性、不確実性があるのではないかと推測する。

BC州政府は、2025年1月22日、重要鉱物戦略の第1フェーズとして、先住民の権利に関する国連宣言に則り、重要鉱物産業を拡大し、クリーン経済を確立すると発表。同戦略のKey actionに先住民との協力が記載されていることと共に、重要鉱物プロジェクトを推進し、連邦政府からの資金調達機会を最大化することを掲げている。BC州は、過去数年間で探鉱許認可の承認待ちの件数を52%削減しているが、州政府の許認可プロセスのさらなる迅速化と、インフラ投資が今後期待される。

参考

Permit to Prosperity: Unlocking BC’s Critical Mineral Mining and Refining Opportunities登壇者

  • Doug Brown, Teck Resources Limited, Vice President, Communications and Government Affairs
  • Nadia Haider, Conuma Resources Ltd, VP, Regulatory Strategy, Innovation & Environment
  • Gabe Jutras, Galore Creek Mining Corporation, Director, Operations and External Relations
  • Elizabeth Fillatre Miller, Seabridge Gold, Vice President, Environment and Social Responsibility
  • Martin Turenne, FPX Nickel Corp , President & CEO

British Columbia Mine Information(British Columbia政府HP)
MABC_Backgrounder_EconStudy_2024_01_08_FINAL.pdf
https://news.gov.bc.ca/releases/2024PREM0003-000063(British Columbia政府プレスリリース)

おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

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