報告書&レポート
2025年秋季国際非鉄研究会(INSG、ILZSG、ICSG)参加報告
はじめに
2025年10月6~10日にかけてポルトガルLisbonにおいて国際非鉄金属研究会が開催された。New and Innovative Technologies for Mining and Metalsと題したジョイントセミナーも開催され、需給予測について議論が行われたほか、非鉄研究会事務局やゲストスピーカーによる講演が行われた。需給予測や主な講演内容は次のとおり。なお、記載の数値についてはすべて純分換算である。
1.需給予測
1.1. ニッケル: 2025年は209千t、2026年は261千tの供給過剰
- 供給面では、一次ニッケル生産量について、2025年及び2026年の予測は、それぞれ3.810百万t及び4.085百万tに増加するとした。インドネシアにおける鉱業許可の発行遅延等の鉱業規制の影響は一時的であるとし、ニッケル銑鉄(NPI)、高圧酸浸出(HPAL)プラントからの混合水酸化物沈殿物(MHP)などの各種ニッケル製品の生産は増加するとしている。一方で、中国のNPI生産は引き続き減少すると見込まれている。
- 需要面では、一次ニッケル消費量について、2025年及び2026年の予測については、それぞれ3.601百万t及び3.824百万tに増加するとした。ステンレス鋼分野のさらなる成長が見込まれるものの、電気自動車(EV)用バッテリー分野でのニッケル需要は、リン酸鉄リチウム(LFP)電池の普及及びプラグインハイブリッド車(PHEV)需要の増加により、当初予測を下回ると見込まれる。
| 2025年予測 | 前年比 | 2026年予測 | 前年比 | |
|---|---|---|---|---|
| 一次ニッケル生産 | 3.810 | 7.9% | 4.085 | 7.2% |
| 一次ニッケル消費 | 3.601 | 5.3% | 3.824 | 6.2% |
| 需給バランス | 0.209 | 0.261 |
出典:INSG会議資料よりJOGMEC作成
※需給バランスについて、正数は供給過剰、負数は供給不足を示す。以下同
1.2. 銅: 2025年は178 千tの供給過剰、2026年は150千tの需給逼迫
- 供給面では、銅鉱石生産量について、2025年は対前年比1.4%増とし、2026年は同2.3%増と予測した。2025年の予測については、同年4月25日に発表した2.3%の予測を下方修正し、DRコンゴのKamoa-kakula鉱山及びインドネシアのGrasberg鉱山における事故を生産減の要因としている。 2026年の増加については、チリやペルーの生産増に加え、インドネシアにおける稼働率の回復を見込む。
- 銅地金生産量については、2025年は対前年比1.5%増とし、2026年は、同0.9%増と予測した。2025年は、DRコンゴ、インド、インドネシアなどにおける生産能力の拡大、ザンビアにおける稼働率の改善を主な要因とし、一次製品及び二次製品の増加を見込む。一方で、2026年については、新規・増産設備の稼働による増加は継続するものの、一次製品の生産増加は原料の供給制約により生産が鈍化するとしている。
- 需要面では、銅地金消費量について、2025年は対前年比3.0%増とし、2026年は同2.1%増と予測した。主要なエンドユーザの製造業活動の改善、エネルギー転換及びデジタル化(データセンター)への継続的需要、インド等における新規半導体生産能力の拡大により、需要量が引き続き支えられるとしている。
| 2025年予測 | 前年比 | 2026年予測 | 前年比 | |
|---|---|---|---|---|
| 銅鉱石生産 | 23,305 | 1.4% | 23,841 | 2.3% |
| 銅地金生産(供給) | 28,420 | 3.4% | 28,676 | 0.9% |
| 銅地金消費(需要) | 28,168 | 3.0% | 28,760 | 2.1% |
| 需給バランス | 178 | -150 |
出典:ICSG会議資料よりJOGMEC作成
※上記の計数は所要の調整後であり、表3の計数とは一致しないことがある
| 鉱石生産 | 地金生産 | 地金消費 | |||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 地域/年 | 2024 | 2025 | 2026 | 2024 | 2025 | 2026 | 2024 | 2025 | 2026 |
| アフリカ | 4,135 | 4,368 | 4,759 | 2,765 | 3,020 | 3,262 | 193 | 193 | 186 |
| 北米 | 2,245 | 2,321 | 2,458 | 1,611 | 1,645 | 1,736 | 2,204 | 2,277 | 2,341 |
| 中南米 | 8,757 | 8,917 | 9,232 | 2,364 | 2,374 | 2,491 | 388 | 395 | 407 |
| ASEAN 10か国 |
1,150 | 730 | 839 | 575 | 491 | 836 | 1,188 | 1,245 | 1,318 |
| CIS諸国 | 982 | 984 | 1,064 | 507 | 488 | 501 | 107 | 107 | 107 |
| ASEAN・CIS以外 アジア | 2,668 | 2,830 | 3,039 | 15,500 | 16,385 | 17,139 | 19,416 | 20,043 | 20,417 |
| EU | 763 | 762 | 787 | 2,403 | 2,401 | 2,559 | 2,949 | 2,979 | 3,011 |
| EU以外欧州 | 1,430 | 1,627 | 1,736 | 1,242 | 1,302 | 1,363 | 882 | 912 | 942 |
| オセアニア | 871 | 837 | 850 | 433 | 452 | 452 | 0 | 0 | 0 |
出典:ICSG会議資料よりJOGMEC作成
1.3. 鉛:2025年は91千t、2026年は102千tの供給過剰
- 供給面では、鉛鉱石生産量を2025年は対前年比0.7%増の4.57百万t、2026年は同2.2%増の4.67百万tと予測した。ボスニア・ヘルツェゴビナのVares鉱山の増産や、アイルランドのTara鉱山の操業再開、ロシアのOZernoye鉱山の操業開始などを増産の要因として見込む。
- また、鉛地金生産量について、2025年は対前年比2%増の13.34百万t、2026年は同1%増の13.47百万tと予測した。カナダ、ドイツ、インド、メキシコ、スウェーデン、ブラジルでの生産量の増加に加え、これらの国々での二次精錬の稼働開始を増加要因として見込む。
- 需要面では、鉛地金消費量を2025年は対前年比1.8%増の13.25百万t、2026年は同0.9%13.37百万tと予測した。米国内における電池生産量の増加等の要因を見込む。
| 2025年予測 | 前年比 | 2026年予測 | 前年比 | |
|---|---|---|---|---|
| 鉛鉱石生産 | 4.57 | 0.7% | 4.67 | 2.2% |
| 鉛地金生産(供給) | 13.34 | 2.0% | 13.47 | 1.0% |
| 鉛地金消費(需要) | 13.25 | 1.8% | 13.37 | 0.9% |
| 需給バランス | 0.09 | 0.10 |
出典:ILZSG会議資料よりJOGMEC作成
1.4. 亜鉛:2025年は85千t、2026年は271千tの供給過剰
- 供給面では、亜鉛鉱石生産量を2025年は対前年比4.6%増の12.51百万t、2026年は同2.4増の12.80百万tと予測した。欧州、南アフリカ、中国、メキシコ、DRコンゴのKipushi鉱山やペルーのIscaycruz鉱山の操業再開による増加等が見込まれる。
- また、亜鉛地金生産量を2025年は対前年比2.7%増の13.80百万t、2026年は同2.4%増の14.13百万tと予測した。中国やノルウェーのOdda製錬所拡張等の要因で生産が増加する一方、イタリア、韓国、日本では一部製錬所の閉鎖や操業停止の影響により減少すると見込む。
- 需要面では、亜鉛地金の消費量を2025年は対前年比1.1%増の13.71百万t、2026年は同1%増の13.86百万tと予測した。欧州、中国、インドで増加する一方、韓国では減少が見込まれる。
| 2025年予測 | 前年比 | 2026年予測 | 前年比 | |
|---|---|---|---|---|
| 亜鉛鉱石生産 | 12.51 | 4.6% | 12.80 | 2.4% |
| 亜鉛地金生産(供給) | 13.80 | 2.7% | 14.13 | 2.4% |
| 亜鉛地金消費(需要) | 13.71 | 1.1% | 13.86 | 1.0% |
| 需給バランス | 0.085 | 0.271 |
出典:ILZSG会議資料よりJOGMEC作成
2.主な講演等の概要
2.1. INSG
〇 Septian Hario Seto氏(インドネシア経済諮問委員会)
インドネシアにおけるニッケルの供給拡大に関する見解が示された。同国のニッケル生産見通しは堅調で、大幅な生産能力増強が控えている一方、市場動向や品質問題といった課題への対応が求められる状況にある。2025年8月までのインドネシアのニッケルの総輸出量は、ニッケル銑鉄(NPI)と混合水酸化物沈殿物(MHP)分野の成長により、約1.6百万tに達すると予測されており、前年(1.3百万t)と比べて顕著な増加となる。しかしながら、生産量の増加につれ品位は急速に低下しており、特に現在1.1%の低品位な褐鉄鉱(リモナイト)の品位低下への懸念がある。MHPの生産能力は2026年に大幅に拡大する見込みで、複数の主要プロジェクトが完成間近であり、2027年には750~800千tの能力増強が予想される。一方で、この拡大は市場の飽和とMHP価格下落の可能性が危惧される。政府は市場安定化のため減産を検討中だが、投資への影響やニッケル供給過剰回避の必要性を慎重に検討している。
〇 Alberto Xodo氏(LME:London Metal Exchange)
London金属取引所(LME)によるニッケル市場の現状と過去数年間の動向について見解を示した。エネルギー転換により、錫や銅などの他の商品が大幅な価格上昇を経験する中、ニッケルは主に供給過剰市場のため、より悲観的な見通しに直面している。変動はあるものの、ニッケル価格は2023年半ば以降安定を保っており、LME価格は上海金属取引所価格に対して、一貫してプレミアムで取引されている。ただしこのプレミアム幅は縮小傾向にあり、市場の価格差は縮まりつつある。また、金属・鉱業・リサイクル業界向けのデジタル取引プラットフォームとサプライチェーン管理ソフトウェアを提供する独Metalshub社との提携し、低炭素ニッケルの確立に取り組んでいる。市場流動性の不足から低炭素ニッケルのプレミアム価格は未確立だが、LMEはこの新興セグメントに対し厳格な認証基準を維持する方針を示している。
〇 Markus Moll氏(SMR Group)
世界のステンレス鋼市場について、地政学的問題と業界が直面する課題について見解を示した。現在、ステンレス鋼業界が重大な岐路に立っており、多くの企業が存続の危機に直面している。生産数においては、炭素鋼が大半を占めており、平均ニッケル含有量5.2%のステンレス鋼は小規模セグメントとなっている。現在、欧州ステンレス鋼産業は、世界生産量におけるシェアが40%から10%未満に大幅に減少し、現在中国とインドネシアが70%以上を占めており、産業の健全性とサプライチェーン管理への懸念を招いている。また、欧州の製鉄所は、高い稼働率と輸入品との競争に直面しており、それがニッケル価格の変動性と収益性に影響を及ぼしていることから、多くの欧州生産者が採算維持に苦戦している。今後の見通しとして、欧州における輸入関税引き上げなどの保護措置が、輸入製品の競争力を高めることで意図せず脱工業化を加速させる恐れがあり、消費者の景況感が悲観的であることがステンレス鋼消費にさらなる影響を与える可能性がある。
〇 Shirley Wang氏(上海金属市場:SMM)
上海金属市場から見たニッケル市場についての市場概況、生産動向、価格変動についての見解を示した。硫化鉱の市場シェアが低下傾向にあり、2030年までに20%を下回ると予測される一方、リモナイト鉱やサプロライト鉱などのラテライト系のシェアは拡大が見込まれる。ニッケル市場においては、インドネシアは引き続き主要プレイヤーを担うものと考えており、世界のニッケル生産量、特に中間市場において大きな割合を占めており、混合水酸化物沈殿物(MHP)生産の86%のシェアを保持している。一次ニッケルの生産量は増加傾向にある一方、硫酸ニッケルの成長率は今後10年間で大幅に低下すると予想。ステンレス鋼の需要は、成長率が大幅に低下している電池生産と比較して、より高い伸び率で成長すると予測する。また、フィリピンからのニッケル輸出の動向が変化しており、インドネシア向け輸出が顕著に増加している。
〇 Antonio Amorim氏(ブラジル鉱業監督庁)
ブラジルの鉱物資源の潜在力についての見解が示された。同国は、特に世界有数のニッケル鉱物埋蔵量を誇るにもかかわらず、生産量は世界の2%未満に留まっており、この分野で大きな成長余地があることを示している。ニッケル埋蔵量の分散化は新規投資の機会をもたらしており、現在の生産は少数の企業に集中している。同国では、鉱物地理情報プラットフォーム「Sigmine System」は、鉱業権や探査区域に関する必須データを提供しており、鉱物生産データにアクセスするインタラクティブプラットフォームも整備されるなど、政府は重要鉱物セクター強化政策に積極的に投資し、エネルギー転換と国内産業ニーズを支援している。最近の動向としては、Anglo Americanがブラジル国内のニッケル事業を中国MMG社に約500mUS$で売却した案件が審査中である。この取引には2つの生産事業(Barro Alto及びCodemin)と2つの未開発プロジェクトが含まれる。
〇 Nitesh Shah氏(米Wisdom Tree社)
同社の資産運用部門における事業概要や投資家の商品市場アクセスについての説明。NY州に本社を置くグローバル資産運用会社であるWisdam Tree社は、130bUS$超の資産を運用しており、そのうち約45bUS$が欧州で運用されている。同社の運用資産は現物商品に大きく偏っている。金属鉱物分野において、鉱業会社の株式を通じた間接的な投資が主流であり、現物投資は貴金属以外では保管コストの高さから現実的ではなく、大半の投資家にとって先物市場が主要ルートとなっている。一方、一般投資家にとって先物へのアクセスは困難なため、貴金属などの実物資産に裏付けられたETF(上場投資信託)や商品特化型ファンドを含む様々な取引所信用商品が開発されてきた。
また、先物契約の理解とロール最適化の概念の重要性が強調された。これは先物カーブに沿って戦略的に移動しロール・ドラッグを最小化することでパフォーマンスを向上させ得る。Shah氏は商品投資戦略に3つの主要要素(バックワーデーション、スロープ・モメンタム、価格モメンタム)を組み込んだ最近の革新を紹介した。これらの要素は市場の逼迫度を特定し、特に変動の激しい市場環境において商品へのエクスポージャーを最適化するのに役立つ。
〇 Jianbin Meng(INSG)
金属・鉱物分野における貿易政策の役割についての分析、特に関税が貿易フローに与える影響を示す事例研究が示された。米国が中国産金属に課した関税は、生産コストを押し上げ、下流産業に影響を及ぼしており、インドのアルミニウム輸出関税は、輸出量の大幅な減少を招き、現地鉱山労働者の生計を脅かしている。また、2019年のインドにおける鉛合金製品を誤って未加工と分類した問題は、輸出業者による高関税回避を可能にし、市場歪曲と政府歳入減をもたらしている。貿易プロセスの自動化と近代化は貿易量拡大の要因であり、中国の輸出割当導入・撤廃が金属価格に重大な影響を与えている。
また、貿易協定が貿易フローに及ぼす影響について、協定締結と貿易パターンの変化との間に正の相関関係があることを強調した。鉱業分野における輸出管理と投資競争にも言及し、効率的な貿易促進のためには簡素化された通関手続きが必要であると指摘した。
2.2. ICSG
〇 Jon Barnes 氏(英Project Blue)
銅市場における二次原料の重要性についての見解を示した。再生銅は一次銅の価値の95%を維持し、一次生産と比較して最大90%のエネルギー節約が可能である一方、CO2排出量を少なくとも65%削減できる。リサイクル含有率の高い銅製品に対する消費者需要が増加しており、業界では差別化されたブランディングが進んでおり、生産者はリサイクル含有率に基づき様々なグレードの商品を提供している。
また、米国やEUが銅を重要素材と位置付けたことで、戦略的に重要性を増す銅スクラップの輸出制限などリスクが生じており、企業はこの必須資源へのアクセスを確保するため、スクラップのサプライチェーン管理を開始している。加えて、EUの廃棄物輸出規制がもたらす潜在的な規制リスクにも触れ、特にEUが非OECD諸国への高純度銅スクラップ輸出禁止を検討していることから、この問題が未解決の場合、銅スクラップ市場に混乱が生じる可能性がある。
〇 Rameeza Haq Duggal氏(英TGS)
洋上風力セクターにおける銅消費量についての見解を示した。洋上風力に関する国家目標が約672GWに達し、2030年までに大規模な建設が計画されていることが強調され、現在の設置容量と比較して堅調な成長軌道が示された。欧州、特にドイツと英国が洋上風力発電の野心において主導的立場にあり、ベトナムは91GWという単独国別目標で首位を占めている。現在、洋上風力発電設備容量は84GWが設置済みで、34GWが建設中、379GWが様々な計画段階にある。2040年までに総設置容量は511GWに達する可能性があり、深海域での浮体式技術への顕著な移行が見込まれる。洋上風力コンポーネントの需要予測も詳述され、洋上風力9.6t/MW銅(主にケーブルとタービン発電機用)が必要と強調された。2040年までに推定214千kmのケーブルが必要となり、その大半を欧州が占める見込み。764基の洋上変電所と2万2700基のタービン設置計画は、洋上風力産業の規模をさらに浮き彫りにしている。洋上風力発電だけで2040年までに必要となる銅の総需要は約3.9百万tと予測され、野心的な設置計画を持つ欧州が最も多くの銅を必要とする見込みだ。洋上風力発電への投資需要は膨大で、欧州では2025年から2040年にかけて約443b€が必要と予測されている。これは主にタービン供給と変電所向けである。これに対し、中国は720b€、アジア太平洋地域は220b€の投資が見込まれる。米州は20GWの予測で、投資額は51 b€と比較的小規模だが、2030年代後半には成長が加速すると予想される。全体として、洋上風力は世界のエネルギー転換における重要な構成要素として位置付けられ、主要素材への多大な投資と需要を牽引している。
〇 Fernando Acosta氏(ICSG事務局)
ICSGにおける銅市場への見解等が示された。リサイクル銅が約11百万tに達し、リサイクル在庫率が32%を維持した。米国では政府が銅を含む重要鉱物リストを更新し、国内生産強化を図っている。カナダは規制変更と探査への財政支援を通じ、信頼できる供給源としての地位を確立しており、メキシコは環境影響を懸念する市民団体からの反対を受け、鉱業禁止の可能性を再検討している。鉱業における社会的認可の重要性が大きくなっており、地域社会との関わりが単なる評判上の懸念ではなく法的要件になりつつある。また、小規模・零細鉱業が果たす役割は、サプライチェーンに不可欠と認識されており、安全・環境管理を確保するための正規化イニシアチブが求められる。鉱業へのAI影響については、データ分析とリアルタイム監視を通じた業務効率化・持続可能性向上の手法を検証しているが、AI技術のエネルギー需要に伴う環境負荷が危惧される。
〇 Scott Crooks氏(智Codelco)
世界的な富とインフラ開発を推進する上で、特に鉄鋼、銅、リチウムなどの金属に代表される商品蓄積が果たす決定的な役割を強調する。鉄鋼蓄積とGDP成長の相関関係が強く、経済発展にはインフラが不可欠であることを指摘する。鉄鋼消費量に国間で大きな格差があることを指摘。米国などの先進国では1人当たり14~15tを消費する一方、発展途上国でははるかに低い数値となっている。2050年までに世界の貧困を緩和するには、鉄鋼生産の大幅な増加に加え、銅生産の劇的な増加が必要であり、これは過去の水準を超える必要があると強調している。鉱業セクターが直面する課題が単なる採掘を超え、政治・教育・金融セクターを含むバリューチェーン全体の連携を必要とする点を強調。中国の急速なインフラ投資と資源消費を事例として、こうした投資が経済成長を牽引し、中国を世界最大の消費国に押し上げた経緯を解説。
〇 Anita Palukiewicz氏(波SSW Solutions,)
ポーランドの鉱物資源事情に関する見解が示された。特に地質情報へのアクセスや採掘事業に必要な権益取得手続きに関して、ポーランドで投資家が直面する法的課題を概説した。戦略的鉱物については気候・環境省の許可と鉱物利用権契約の両方が必要となるなど、現行制度は市場参入障壁となっていることから、銅生産への投資を促進するため地質・鉱業法の改正が進行中である。これにより、探査・採掘権の取得手続きの簡素化や、環境評価制度の強化、外資規制の緩和などが進められる。
また、2012年に導入された鉱物採掘税についても、投資環境の改善において大きな問題となっている。これは鉱山収益ベースではなく鉱石市場価格と採掘量に基づいて算出される課税方式であり、実質税率の高さから投資意欲を阻害している。この税制構造により、ポーランドの銅生産量は世界ランキングで低下し、現在稼働中の企業は1社のみとなっている。現在、ポーランド政府は、地域開発の促進と新規鉱業プロジェクト誘致のため、2026年を目途に税制改正を検討中で、これには税制優遇措置や対象経費の拡大案が含まれる。
EU規制、特に戦略的プロジェクトの手続きを合理化する目的の重要原材料法の影響についても言及した。これらの規制を成功裏に実施するためには、効果的なデジタル化、地質データへのアクセス改善、地方自治体と中央政府間の協力が必要であると強調した。
〇 Juan Carlos Guajardo氏(智Plusmining)
重要鉱物におけるラテンアメリカの重要性及び発展のための課題についての見解が示された。ラテンアメリカは、地球表面積のわずか15%を占めるにもかかわらず、世界の重要鉱物埋蔵量の約30%を保有している。チリ、ペルー、ボリビアなど一部の国では鉱業が経済の要である一方、他国ではその重要性は低く、資源ナショナリズム、規制上の障壁、課税問題といった課題が、これらの埋蔵量を商業生産へ転換する妨げとなっている。同地域は複数の重要鉱物の主要生産地であり、金・銀・亜鉛などの主要商品では世界生産量の41%以上を占める。特に、銅はラテンアメリカにおける鉱物投資の主力となる可能性があり、多数のプロジェクトが計画中である一方、大半は実現可能性調査段階にあり、現在建設中のプロジェクトは限られている。
また、将来の生産に向けた重要な要素として探鉱が必要とされるが、重要鉱物需要の増加にもかかわらず探鉱予算は停滞しており、将来の鉱物需要を満たす上で重大な課題となっている。今後、同地域における持続可能な鉱物生産を確保するためにも、積極的なアプローチの必要性が求められる。
2.3. ジョイントセミナー:採掘及び金属分野の革新的な技術
〇 Atilla Widnell氏(星Navigate Commodities社)
同社が提供する地球空間衛星データを活用した世界の商品流通を監視する手法についての説明。シンガポールに設立された同社は、AIやAIS(Automatic Identification System)データ、光学衛星画像などの先端技術を活用し、特に海運と地球観測分野において、様々な市場における需給状況をリアルタイムで監視している。海事分野では海上輸送される商品の追跡に注力し、地球観測分野では短波赤外線データを活用して産業プロセスからの生産量を評価する。AISデータの3種類(陸上・衛星・動的)を説明し、これらを統合することで船舶動向の包括的追跡が可能になり、この機能により同社は4時間ごとの需給監視を実現し、市場インテリジェンスを大幅に向上させている。また、同社はこの技術を鉄スクラップやニッケル鉱石などのニッチ市場に適用し、商品フロー追跡の高精度化に成功している。衛星データと市場価格の相関関係、特にニッケル市場における流通量と生産量の連動性が、データ活用による取引戦略の立案や商品トレーダーの収益性向上に寄与しており、技術の限界がありながらも、完貴重なトレンドと洞察の提供を可能としている。
〇 Alex Laugharne氏(英Wood Mackenzie)
鉱業・製錬企業が直面する現状の課題及びこれらの問題解決に向けた技術的ソリューションの統合について説明された。電力の電化やデータセンター産業の成長に牽引され、銅や金などのベースメタル需要は増加しているが、将来の銅需要増加のわずか20%がEVや再生可能エネルギーに関連し、残る80%は従来型用途に起因する。この需要増加は供給不足の予測と対比され、コスト上昇と資金調達難の中、より多くの鉱山プロジェクトが必要とされている。
鉱山における鉱石の品位は、過去20年間で4.8%超から約6%へ低下しており、同量の銅生産には大幅に多くの鉱石を採掘する必要が生じ、操業コストとエネルギー消費の増加を招いている。また、企業はCO2排出量削減のため、再生可能エネルギー源の採用や採掘作業の電化を積極的に模索しており、排出が発生する箇所、特に採掘トラックのディーゼル使用や処理工程の電力消費を特定することが重要となる。鉱山車両の電動化はまだ初期段階にあるものの、効率向上と燃料消費削減のため、電気トロリーや自律走行車両などの技術が模索されている。プロセス効率の観点では、粉砕工程が運営コストとエネルギー使用量の大部分を占めており、廃棄物とエネルギー消費を最小化するため、選鉱・処理技術の革新が進められている。これには、回収率向上とエネルギー要求削減を目指す高度な選別技術や新たな鉱石処理法が含まれる。リサイクルについては、消費後スクラップは汚染により低品質用途に流用されることが多く、二次金属の生産への組み込みを制限していると指摘した。
〇 Carolina Vargas(挪TOMRA Mining)
同社の選別技術における人工知能(AI)の統合に関する知見を発表した。TOMRAは、選別効率を高めるため様々な先進技術を採用している。同社は世界中で約250台の機械を稼働させており、レーザー、カラー、電磁、近赤外線、X線の5つの主要技術を活用しているおり、その技術が材料の精密なスキャンと選別を可能とし、運用コスト、エネルギー消費、環境負荷を大幅に削減している。同社の選別システムは、破砕・篩分け後の処理工程に戦略的に配置されており、下流工程前に原料の15~30%を排除できる。この機能は輸送コストを削減するだけでなく、水使用量とカーボンフットプリントの最小化にも寄与する。また、選別システムは、シュート式とベルト式の両方を採用しており、後者はX線透過技術を用いた詳細な材料分析が可能となる。
選別精度については、基本的なAIを用いたカラー選別が、機械学習へ進化し、現在では深層学習技術を組み込んでおり、この進歩により、選別機は近接した材料の識別といった複雑なタスクを処理可能となり、処理能力の向上と製品品質の維持を実現している。現在、サウジアラビアにおける世界最大級のセンサー式リン酸塩選別プラントと、豪州の大規模リチウム選別施設を進めている。資源管理におけるTOMRAの革新と持続可能性への取り組みを実証するため、複数国にまたがる研究所で広範な試験を実施し、様々な材料に最適な選別技術を特定することで、実環境での最適な性能を確保している。
〇 Charles Davis氏(英Earth-i社)
衛星データを用いて重要な資材サプライチェーンを監視する同社の取り組みについて説明された。同社は10年間にわたり衛星データ管理に積極的に取り組み、金融サービス、政府、防衛など、さまざまな分野に知見を提供してきた。現在では、解像度の向上により宇宙からの詳細な観測が可能になり、毎日膨大な量の衛星データが生成している。同社のプラットフォーム「Second」は、光学、レーダー、熱、ハイパースペクトルなど、さまざまな種類の衛星データを統合し、世界約1,500か所を監視しており、このデータは迅速に処理され、顧客に生産レベルやサプライチェーンの動向に関するタイムリーな洞察を提供している。また、API(Application Programming Interface)を通じてデータにアクセスでき、マクロレベルと詳細レベルの両方で生産活動を分析することが可能で、業界レポートや取引アルゴリズムと結果を照合して検証を行い、予測の精度を高めている。
同社は、サプライチェーンの透明性に対する需要の高まりに対応し、さまざまな金属や鉱物にも焦点を広げており、生産能力や市場の状況の変化を反映するためにプラットフォームの更新を続けており、顧客が最新のデータにアクセスできることに取り組んでいる。
〇 Ignacio Herraez Chamorro氏(西Tecnicas Reunidas社)
鉱業分野における同社の技術的進歩、特に湿式冶金技術について説明された。同社は65年以上の実績を持つスペインのエンジニアリング企業であり、石油・ガス、化学、再生可能エネルギーなど多様な分野における設計・調達・建設(EPC)を専門としている。1980~90年代に開発された「ThinkX」技術は、二次原料や残渣から亜鉛などを回収するために設計されたもので、現在はバッテリー生産や太陽電池リサイクルに不可欠なマンガンやガリウムなどの金属を抽出するための補完技術も開発している。同社は、これらの技術の顧客へのライセンス供与を中心に展開しており、国内および欧州資金によるプロジェクトでの協業に重点を置いている。また、同社は技術センターで徹底的な試験を実施し、回収方法の経済的実現可能性を判断している。湿式製錬プロセスには、浸出、溶媒抽出、ストリッピングなど複数の工程が含まれ、高純度硫酸亜鉛を生成する。世界各地域での特殊ハイブリッド亜鉛生産など、技術導入の成功事例を示す産業事例も紹介された。同社は不純物削減と電解精錬プロセスの効率化により、経済性と環境性能の向上を目指す。
〇 Ana Carina Verissimo氏(EIT RawMaterials)
EIT RawMaterialsが原材料分野で果たす役割の概要について説明された。同組織は欧州において、産業界、学術界、スタートアップ、公的機関など様々なステークホルダーを結びつけ、イノベーションを促進するとともに、採掘からリサイクル、循環型経済イニシアチブに至る原材料バリューチェーン全体を支援している。約300の加盟機関を有し、2023年までに約6m€をプロジェクトに投資、2027年までに資金拡充を計画している。主な強みは、資金調達やアクセラレータープログラムを通じたスタートアップ・スピンオフ支援、業界の高度人材ニーズへの対応、若手人材の誘致にあり、新たな技術的要請に応えるため、既存専門家の再教育・スキルアップを進めている。
EIT RawMaterialsは、重要資源の回収率向上や持続可能な実践促進を目的とした取り組みを含む、数多くの戦略的プロジェクトに関与しており、現在は回収率向上のために金属からエポキシ樹脂を分離する技術のスタートアップや、自律的に動作し運用効率を高める安全監視装置に取り組んでいる。また、オープンイノベーション・チャレンジにも注力し、大規模産業と豊富なスタートアップ・ポートフォリオのソリューションを結びつけることにも取り組んでおり、レアアース原料や採掘技術など特定テーマに対応する戦略的影響グループを複数立ち上げ、資金調達や教育リソースへのアクセス提供を推進している。
2.4. ILZSG
〇 William Tankard氏(英CRU)
亜鉛産業の現状についての見解が示された。過去18~24か月間、業界は大幅な価格変動を経験し、2022年には顕著な急騰に続いて下落が発生した。これが精鉱供給に影響を与えており、新規鉱山の稼働開始や閉鎖鉱山の操業再開により供給動態が変化している。こうした変化にもかかわらず、特に鉱石処理量における総生産量の傾向は安定を保っている。生産コストには国ごとの格差があり、副産物クレジットの恩恵を受ける低コスト生産者が存在する一方、他国では高コストに直面している。また、平均生産コストとスポット価格の差は依然として大きく、安定しつつも競争の激しい市場を示唆している。また、最近のコスト圧力、特に処理料金の減少が、亜鉛生産の鉱物経済性を改善につながっており、鉱石品位のわずかな低下によるコスト上昇が予想されるものの、全体的なコストは安定を維持すると予測した。特に予想を上回る金・銀の副産物クレジット供給を背景に、マージンの拡大が継続すると見込む。
今後の見通しとして、処理料金の上昇が鉱山企業にとって純コスト圧力となるが、副産物クレジットの利益によって相殺されると考えており、供給増加により亜鉛価格は横ばいまたは小幅下落する可能性があるものの、市場が新たな供給力学に適応するにつれ、今後数年間でマージンは改善すると見込まれる。
〇 Jeff Reeves氏(米Battery Council International)
鉛電池についての自動車用途における見解が示された。自動車セクターの成長は鈍化しており、鉛蓄電池の売上は今後10年間安定的に推移すると予想される。米国における鉛蓄電池のリサイクル率は99%と非常に高い水準を示しているが、将来の需要を満たすためには、依然として一次鉛の需要がある。米国の変化する政治環境、特にエネルギー省が化石燃料に重点を置いているという状況がありつつも、差し迫った抜本的な規制がないことは、業界に一定の安定性をもたらすだろう。今後、従来の鉛蓄電池や、ナトリウムや亜鉛などの新しい代替電池など、最も適切なエネルギー貯蔵技術を進展させる上で、自動車技術における鉛蓄電池が重要な役割を果たすと思われる。
〇 Zhang Zhiwei(Beijing Antaike Information Co., China)
中国の深加工・大型産業の現状と将来展望について見解を示した。今後の見通しとしては、新疆や広州などの地域における大型プロジェクトが成長を牽引すると予想され、2025年および2026年までに生産能力が大幅に増加するとの予測が示されている。具体的には、需要回復と生産集中化を反映し、中国の生産量は2025年に94.8百万t、2026年には24.3百万t:に達すると予測されている。また、再生可能原料供給の35%が限られた数か国に依存している点を指摘し、中国小売市場における輸入の重要性を強調した。中国の風力エネルギー部門の成長は顕著であり、風力発電容量と需要の増加が見込まれている。さらに、二次鉛生産部門も進化しており、より持続可能な手法への移行が進み、今後数年間で生産量の増加が予想される。全体として、課題は残るものの、中国の産業構造は成長の軌道に乗っている。これは、生産能力の強化と国内外の需要を満たすことを目的とした技術進歩と戦略的プロジェクトによって推進されている。
〇 Dieudonné Tambwe 氏(DRコンゴ政府)
同国の鉱業ポテンシャル及びKico Sasプロジェクトについての見解を示した。同国は、1990年代後半に同セクターが大幅な衰退を経験したものの、資源管理における透明性や説明責任の強化、鉱業セクターの投資魅力を高めた主要な立法文書を整えるなど、規制枠組みの改善により回復基調にある。また、カッパーベルトに位置するKico Sasプロジェクトは、新たな選鉱施設の建設を完了しており、2025年には108~240千の亜鉛生産を計画、2026年までに年率20%増で250千t達成を目指しており、大幅に生産を拡大する。同プロジェクトはこれにより世界有数の亜鉛生産者の地位を確立すると見込まれている。エネルギー転換や電子産業にとって、同国の豊富な鉱物資源の貢献は欠くことができないものであり、同地域の鉱業セクターは非常に重要なものになるだろう。
〇 L. Pugazhenthy氏(印・鉛亜鉛開発協会)
インド鉛亜鉛開発協会の取り組みについての説明。同協会は、亜鉛・鉛セクターの生産者、リサイクル業者、製造業者を含む275の会員企業に対し、技術情報の普及と市場開発支援に注力している。若年層人口の多さとインフラ・製造業への大規模投資を原動力とした経済成長は、鉄鋼・鉛・亜鉛・アルミニウム・銅などの金属需要の増加につながると予測している。現在、インドにはVedanta社が運営する主要な亜鉛製錬所が1か所のみ存在するが、同社は生産能力の拡大と再生可能エネルギーへの投資を進めている。2030年までに生産能力を200万tに増強する計画であり、世界有数の低コスト亜鉛生産企業として認知されている。インドの亜鉛消費量の大部分を占める亜鉛めっきの重要性が強調された。亜鉛の72%が建設・鉄鋼産業で使用され、腐食からの長期保護に亜鉛めっきが不可欠であると指摘。インフラプロジェクトにおける亜鉛めっき製品の使用拡大の可能性を示し、従来の塗装方法に比べてめっきが持つ経済的優位性を強調した。
〇 Martin Kopf氏 (European General Galvanizers Association)
亜鉛めっき業界における自身の豊富な経験について概説。亜鉛メッキ鋼は、COVID-19のパンデミックによる課題があったにもかかわらず、過去10年間で生産量が7.5百万tから約8.3百万tに増加しており、競争環境、特に欧州市場への輸入品の影響、そして業界の持続可能性を維持するためのイノベーションと生産性が主な要因として挙げられた。また、鉄鋼業界における二酸化炭素排出量の差し迫った課題にも言及し、特に欧州連合(EU)が掲げる2030年までのCO2排出量削減という野心的な目標に焦点を当てた。低炭素技術の採用や、特に中小企業(SME)にとってのこうした変化に伴う財務的課題を含む、業界内の変革の必要性を強調した。亜鉛メッキ鋼の利点と持続可能な建設手法におけるその役割を促進するため、建築家や政策立案者を含む様々なステークホルダーとの協働の重要性を強調した。材料のカーボンフットプリント評価や鋼材製品の改修・再利用の可能性を評価する進行中の取り組みが、業界にとって重要な機会であると指摘した。結論として、Kopf氏は環境課題への対応と世界市場における亜鉛めっき鋼の競争力強化に向け、業界内での継続的な対話と協力を呼びかけた。
〇 Valentin Spiess氏(Mercuria Energy Trading)
鉛・亜鉛市場における現物トレーダーの重要な役割について議論し、市場効率性とリスク管理への貢献を強調した。同社は元Goldman Sachsのトレーダーによって設立され、原油取引から発展し、銅、鉛、亜鉛などのベースメタルを含む幅広い商品を取り扱っており、自己資本6bUS$、年間取引高約120bUS$を誇る世界第3位のトレーディンググループである。特に伝統的な銀行融資の確保が困難な中小鉱山会社に対して、資金調達や流動性ソリューションを提供する。供給源の分散化と多様な価格構造が特徴の濃縮物市場の複雑性が強調され、効果的な運営にはトレーダーの専門知識が不可欠であることが示された。トレーディングにおいては、カスタム市場と統合市場の差異、需給に影響する地理的・地政学的要因、取引業務における品質とタイミングの最適化の重要性などを考慮する必要があり、トレーダーは価格リスク、ベースリスク、信用リスク、流動性リスクなど様々なリスクを管理し、ヘッジやブレンドといった戦略を用いてこれらの課題を軽減している。また、マクロ経済要因と地域市場の力学によって駆動される鉛・亜鉛市場固有のボラティリティにも触れられた。
〇 Martin van Leeuwen 氏(International Zinc Assosciation)
自動車用途における亜鉛の使用の進化、特に内燃機関(ICE)車からEVへの移行という観点から、その見解を述べた。同氏は、自動車製造における亜鉛メッキ鋼板の市場シェアの拡大と、亜鉛の使用量に与える影響について強調した。この調査は、2034年までの自動車生産の傾向を予測し、中国やインドを含むさまざまな地域の成長パターン、およびICE車からEVへの移行が製造技術に与える影響を分析することを目的としている。世界の自動車生産は増加が見込まれ、2030年までにEV生産が大幅に増加すると予測する。ICE車の生産ピークは2025年と予測される一方、安全基準と効率基準を満たすため、自動車業界では先進高張力鋼やアルミニウムなどの軽量素材への移行が進んでいる。また、EV移行に伴うコスト影響についても言及され、地域ごとの移行コスト差異が全体的な生産戦略に影響を与えると指摘した。自動車製造における鋼材は依然として主要材料であるものの、代替材料の普及に伴いそのシェアは低下すると予測される。高張力鋼の使用は増加する一方、軟鋼の需要は減少する可能性がある。テスラ社の材料選択に関する戦略的決定にも言及し、コストと性能のバランスを取るため鋼材とアルミニウムの混合使用へ移行している点を強調した。
〇 Federico Zanotti氏(Bureau of International Recycling)
2025年1月に施行された国連バーゼル条約の付属Ⅱに追加された新たなコード(特別な考慮を要する廃棄物)についての説明。本改正により、非有害な使用済み電子機器は新たなコード「Y49」に分類され、有害物質と同様の貿易規制の対象となることから、リサイクル資材の越境移動が遅延し、リサイクル業者に影響を与えるとともに、循環型経済の取り組みを阻害することが予想される。例えば、Y49の広範な定義は組成ではなく原産地のみに基づいて材料を分類するため、洗濯機の電動モーターなどの部品が使用済み電子機器に分類されるようになり、これらの金属需要が高いパキスタン市場への輸出が複雑化していることから、欧州のリサイクル業者は供給過剰と価格下落に直面している。また、既存のコードで分類可能な材料に対する免除規定に関する明確な指針が欠如していることから、電子機器の微量含有を理由に、Zorba(金属リサイクル分野で使用される混合非鉄金属スクラップの一種)が税関当局によって差し止められる事態が発生し、リサイクル市場に深刻な混乱と雇用喪失をもたらしている。
これらの課題に対処するため、BIRはバーゼル条約が設置した作業部会に積極的に参加し、新規制の対象となる資材と免除対象となる資材を区別するための指針策定に取り組んでおり、政府関係者との対話を通じて規制の明確化を図るとともに、リサイクル産業の健全な発展に向けた提言活動を支える調査を実施している。
〇 Andrew Green氏(International Zinc Assosciation)
同協会の取り組みと、さまざまな市場における亜鉛の重要な役割について説明された。IZAは、鉱山会社や生産者など47の正会員を代表し、関連団体や準会員と協力しながら亜鉛の用途拡大を推進しており、市場開発、規制環境、コミュニケーションの3つの主要分野に焦点を当てて活動している。エネルギー転換、特に太陽光および風力エネルギーに分野において、2030年までに652千tの亜鉛需要が見込まれており、データセンターの成長おいても、亜鉛の消費量は、特に亜鉛メッキ鋼および電池においてさらに増加すると予想した。5年前に発足した亜鉛電池イニシアチブ(ZBI)では、多大な投資と開発が進められており、2030年までにこの分野でさら45千tの亜鉛消費が見込まれており、防衛・安全保障分野においても、軍用車両や装備への亜鉛バッテリー用途に取り組んでいる。また、同協会は、鋼材保護における亜鉛使用の環境的メリットを定量化しており、炭素排出量削減とライフサイクルコスト低減効果の実証を目指しており、インフラに亜鉛メッキ鋼材を採用することで、大幅な炭素排出削減が可能となり、頻繁な交換の必要性が減少する。
〇 Huw Roverts氏(英CHR Metals)
鉛蓄電池についての自動車および産業分野におけるその用途についての見解が示された。鉛蓄電池の需要は大幅に増加しており、SLI(始動、照明、点火)用バッテリーにおける鉛の使用量は、1990年の2.8百万tから、現在では7.9百万tにまで増加している。一方、産業用バッテリー市場はさらに急速に成長し、1980年の1百万t未満から、現在では6百万t近くにまで拡大している。EVにおいては、リチウム電池の採用が増加している一方、欧米の伝統的な自動車メーカーは、内燃機関車には引き続き鉛蓄電池を採用しているがリチウム電池のコストは劇的に低下しており、これが市場動向に影響を与える可能性がある。
エネルギー貯蔵分野では、鉛蓄電池は現在、グリッド規模の貯蔵システムにおいてわずかな割合を占めるに過ぎないが、鉛蓄電池の特徴であるより長いライフサイクル、大きな残存価値、確立されたリサイクルインフラなどの利点から、特に中国においてその使用が顕著に増加しており、データセンター分野においても、鉛蓄電池、特に無停電電源装置(UPS)システムに新たな機会をもたらしている。
〇 Andy Bush氏(International Lead Association)
亜鉛産業における現状について説明された。行政負担の軽減による競争力強化を目的とした規制の簡素化について主に触れられた。EUにおける主要な規制動向としては、電池関連法規を統合し有害物質に対処する工場規制が挙げられ、自動車廃棄物(EOV)指令の継続的な見直しは極めて重要となる。特に鉛蓄電池の免除規定については、業界への圧力を緩和するため、これらの免除を2030年まで延長する必要がある。米国では政治情勢の変化により環境関連法案の進展が鈍化しているが、各州が独自に鉛の曝露基準の策定を進めている。有害物質規制法(TSCA)は、鉛やその他の金属の評価を継続し、進化を続けている。また、鉛関連問題に特化した唯一のESG(環境・社会・ガバナンス)認証である「鉛実務・産業バリューチェーン管理プログラム」について触れられた。
おわりに
ニッケルは、EVにおける需要は低くなる一方、インドネシアにおいてNPIやMHPが引き続き増産されると予想され、供給が増加する見込みである。銅は、エネルギー転換やデータセンターなど用途の拡大から、今後需給がひっ迫するとされている。鉛と亜鉛は、欧州、アイルランド、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ロシアなどでの増産が見込まれ、供給過剰が続くとされている。また、ジョイントセミナーでは、採掘や製錬過程における種々の技術について議論され、新技術の導入が新規及び既存の鉱山開発において重要な役割を果たすことが強調された。
次回は2026年4月にLisbonにて開催予定。
おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報をお届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結につき、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。


