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報告書&レポート

2016年11月11日

非鉄金属市況と需給動向 2016年10月レビュー

■ベースメタル

主要非鉄金属の価格推移(2003年5月=1)当該期間、銅は4,862.5US$/tでスタートし、米中の指標等を好感し緩やかに上昇、次期米国大統領に選出されたトランプ氏が掲げるインフラ投資計画や減税計画への期待感から株価は急反発、需要拡大への期待から銅価も9日以降急伸、11日には2015年6月以来の5,900US$台を回復し、その後は調整局面に入り値を下げながらも高値圏を維持し、5,740.0US$/tで越月した。亜鉛は供給不足懸念から2,400~2,600US$/tで堅調に推移したところ、投機的な買いや米中における需要増加の期待感から24日以降急伸し、28日には2,900US$/t台の高値を付けた。ニッケルはトランプ氏のインフラ投資計画に反応し需要拡大期待から大幅に上昇、11日には1年5か月ぶりの高値となる11,735US$/tの値を付けた。その後はドル高が下方圧力となりやや値を下げ推移、10,965.0US$/tで越月した。

■貴金属

製造業購買担当者景況指数(PMI)金は、11月8日の大統領選挙にてトランプ氏が次期大統領に選出され、同氏の経済政策に対する期待が広まったことによるドル高進行に圧迫され、下落傾向となった。さらに11月半ば以降はOPEC総会での減産合意に起因する株やドルの上昇も、金市場に対しては下方圧力となった。プラチナも、ドル高及び軟調な金の値動きにつられ下落基調を辿ったが、パラジウムは米国経済回復への期待から需要増加が見込まれ、堅調に推移した。月末には2015年1月以来となる767.0US$/ozの高値をつけた。

米国経済

11月の製造業PMIは54.1(前月53.4)。11/4労働省発表の10月非農業部門雇用者数は前月比+17.8万人(前月:+16.1万人)と市場予想の+18万人を下回ったものの、失業率は4.6%(前月:4.9%)と約9年ぶりの低水準となった。

中国経済

11月製造業PMIは、国家統計局発表が51.7(前月:51.2)と上昇し、財新/Markit発表の速報値も50.8(前月:51.2)と景気判断の節目となる50を上回った。

欧州経済

11月製造業PMIは53.7(前月:53.5)と上昇し、2014年1月以来の高水準を維持した。

「トランプノミクス」への期待感先行、一時、1年5ヶ月ぶりの5,900US$台回復

■LME価格

銅:当該期間の値動き米中の指標等を好感し緩やかな上昇:上旬は、月初に発表された中国製造業PMIや米国Q3労働生産性が約2年ぶりの高水準となり、また為替がドル安で推移したことで銅価は緩やかに上昇。7日には本年4月下旬以来となる5,000US$台回復。

米新政権への期待感が相場を刺激:トランプ氏が掲げるインフラ投資計画や減税計画への期待感から、ダウ平均株価は7日以降急反発。需要拡大への期待から銅価も9日以降急伸。11日には昨年6月以来の5,900US$台回復。14~15日にかけては「買われ過ぎ感」から一旦調整局面に入り(15日:5,448US$/t)、また17日の米FRBイエレン議長による12月利上げ示唆で、23日までは5,500US$前後で推移。

好調な米国経済とLME在庫減少:22~23日にかけて発表された米の経済指標(10月の中古住宅販売件数及び耐久財受注)が市場予想を上回り景気好調。またLME在庫減少(月初から約25%減)も手伝い、24日以降は一段高の5,800US$前後で推移。(11月30日:5,740US$/t)。

■需給動向

銅地金の需給バランスと在庫の動き国際銅研究会(秋季)の予測では2016年はほぼバランス(供給<需要、8千t)。2017年は供給>需要、163千t。
主要鉱山操業状況:DRコンゴTenke Fungurume鉱山(China Molibudenum)で11月13日、地滑り事故が発生し、13名が死亡。同鉱山では5~10千人の違法採掘者が採掘場に侵入しており、違法採掘者と地滑り事故との関係は現在のところ不明。
雲南銅業が内蒙古で赤峰製錬所の拡張工事着工。(現状12.5万t→計画50万t規模)

供給不足懸念及び米中需要拡大への期待感から大幅上伸、9年ぶりの高値

■LME価格

亜鉛:当該期間の値動き供給不足懸念による買いの動き:亜鉛価格は供給不足懸念から2016年は右肩上がりに推移し、11月下旬に価格が急伸、11/28には2,907US$/tに達した。年明けの中国春節(2017年1月27日~2月2日)にはさらに供給タイト化するとの見込みから、トレーダーや需要家が買いを増やし、投機資金も流入したものと見られる。

米中における亜鉛需要拡大期待:米中における経済指標が好調であったこと、トランプ氏が米大統領に選出され米国におけるインフラ投資が拡大するとの期待が広がったこと、さらに中国国家発展改革委員会が28日、北京市と近隣都市を結ぶ2,470億元(約4兆円)規模の鉄道計画を承認したこと等から亜鉛需要増が意識された。

LME在庫キャンセル増加:10月下旬、亜鉛在庫を最も多く抱える米国ニューオーリンズ倉庫で3万tがキャンセルワラントとなった。11月も引き続き追加で2万tのキャンセルワラントが発生し、在庫は減少傾向にある。SHFE在庫も減少傾向。

■需給動向

亜鉛のSHFE在庫推移国際鉛亜鉛研究会(秋季)の予測では2016年は34.9万tの供給不足、2017年は24.8万tの供給不足。
主要鉱山操業状況:Glencoreは2015年10月発表以降、年間50万tの減産体制。2016月10月ペルー・Antamina鉱山(BHPB、Glencore、Teck、三菱商事)は2017年の亜鉛生産量を倍増させる計画を発表(+18万t/y)、2016年11月東邦亜鉛は価格低迷により粗鉱処理量を4分の1へ減産していた豪州の亜鉛鉱山について、2017年1月から順次処理量を増やすと発表。

米国インフラ投資への期待感から1年5か月ぶりに11,735US$/tをつける

■LME価格

ニッケル:当該期間の値動き米国インフラ投資への期待:11月上旬は、米大統領に選出されたトランプ氏がインフラ整備に言及したことで非鉄金属需要が意識され、大幅に上昇。11日には、1年5か月ぶりの高値となる11,735US$/tの値を付けた。但し、月末には同氏の大統領選勝利が世界需要に及ぼす影響は緩やかとの見方が広がった。

ドル高の進行:11月中旬は、トランプ氏の掲げたインフラ投資への期待感が一服したことに加え、進行を続けるドル高が下方圧力となって11,100US$/t~11,250US$/tのレンジでほぼ横ばいに推移。

米中製造業への期待::23日に発表された米10月耐久財受注が1年ぶりの大きな伸びを見せた他、中国で大規模な鉄道整備計画が承認されたとの報道を受けて、11月下旬は両国製造業への期待感が高まり緩やかに上昇。月末にはやや値を下げて越月。

■需給動向

一次ニッケルの月別需給バランス国際ニッケル研究会(秋季)の予測では2016年は6.7万tの供給不足、2017年は6.6万tの供給不足。
主要鉱山操業状況:中国フェロニッケル11社、2016年20%減産提議(2015.12/15)。フィリピンニッケル鉱山生産者8社に操業停止命令(7/7-8/11)。フィリピンニッケル鉱山生産者15社を含む20社に操業停止勧告(9/27)。

米国大統領選の先行き不透明感、小幅な値動き続く

■金

金・プラチナ・パラジウム:当該期間の値動き米新政権への期待感の高まりによるドル高:8日、米国大統領選が実施され、共和党のトランプ氏が選出された。同氏の積極的な経済・財政政策への期待感から11月はドル高に振れ、安全資産としての金の価格を圧迫した。月初は1,286.4US$/ozでスタートした金も、月末は1,100US$/oz台と本年2月以来の安値で推移した。

OPEC減産合意による株高・ドル高:11月半ばは、OPECの減産合意に係る先行き不透明感から横ばい推移したものの、下旬には合意に至るとの見通しが強まり下落傾向となった。30日のOPEC総会で8年ぶりに減産が合意され、これにより原油価格は上昇、株やドルも上昇した一方、金市場に対しては下方圧力となった。

■プラチナ・パラジウム

為替の動き(US$/EURO)プラチナはドル高により軟調:プラチナは、米大統領選でトランプ氏が勝利し、米国経済回復への期待感が高まったことによるドル高進行に圧迫され弱含み。プラチナ需要の半分は自動車用排ガス触媒などの工業用途だが、これは主に欧州のディーゼル車向けであり、最近の自動車メーカー各社のEV開発に乗り出そうという機運の高まりが、プラチナ価格を圧迫しているとの見方もある。

パラジウムは米国需要増加へ期待:ガソリン車排ガス触媒需要の高いパラジウムは、トランプ氏の経済政策期待感から米国需要増が意識され、また投機資金も流入したものと見られ、上昇傾向で推移した。月初は629.0US$/ozだったところ、月末は2015年1月以来の高値となる767.0US$/ozで越月した。

 
LME現物
(US$/t)
亜鉛
LME現物
(US$/t)
ニッケル
LME現物
(US$/t)

AM・PM平均
(US$/oz)
プラチナ
AM・PM平均
(US$/oz)
パラジウム
AM・PM平均
(US$/oz)
本報告期 期初 4,862.5 2,444.0 10,445.0 1,286.4 989.0 629.0
期末 5,740.0 2,709.0 10,965.0 1,182.8 919.0 767.0
最高値 5,935.5 2,907.0 11,735.0 1,302.3 1,009.5 767.0
  11月28日 11月28日 11月11日 11月4日 11月9日 11月30日
最安値 4,862.5 2,423.0 10,335.0 1,182.8 908.5 622.0
  11月1日 11月2日 11月2日 11月30日 11月25日 11月4日
平均 5,443.3 2,568.8 11,143.0 1,270.0 978.8 660.7
先物
(11月30日)
3か月 5,755.0 2,720.0 11,010.0
12か月 5,760.0 2,713.0 11,185.0
24か月 5,745.0 2,553.0 11,285.0
2016年
(当年)
期初 4,645.0 1,600.0 8,515.0 1,077.5 885.5 550.0
直近 5,740.0 2,709.0 10,965.0 1,182.8 919.0 767.0
最高値 5,935.5 2,907.0 11,735.0 1,361.7 1,179.5 767.0
  11月28日 11月28日 11月11日 8月3日 8月10日 11月30日
最安値 4,310.5 1,453.5 7,710.0 1,077.5 815.5 467.5
  1月15日 1月12日 2月11日 1月4日 1月21日 1月12日
平均 4,790.1 2,029.7 9,468.9 1,259.9 995.5 600.8
2015年
(前年)
期初 6,309.0 2,183.5 14,880.0 1,193.6 1,108.0 775.0
期末 4,702.0 1,600.0 8,665.0 1,062.3 872.0 547.0
最高値 6,448.0 2,405.0 15,455.0 1,294.1 1,283.0 829.0
  5月12日 5月6日 1月7日 1月23日 1月21日 3月5日
最安値 4,515.5 1,487.0 8,160.0 1,053.0 830.0 528.0
  11月23日 11月19日 11月23日 12月3日 11月30日 12月3日
平均 5,493.6 1,927.9 11,806.4 1,159.2 1,052.1 690.1

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