資源ニュースを読み解く「ベースメタル経済学」:知っているようで知らない 金属ができるまで
鉱石から地金までの過程で品位は約1,000倍へ
金属は複数の工程を経て、ようやく製品となる。その出発点が“ 鉱石”だ。
鉱石とは、特定の有用鉱物を多く含んだ岩石のこと。たとえば銅を多く含んでいれば「銅鉱石」、ニッケルを多く含んでいれば「ニッケル鉱石」と呼ばれる。ただし、この鉱石には複数の金属のほか、不純物も含まれている。そのため、たとえば「銅鉱石」と呼ばれていても、銅の品位はたったの0.1~2パーセント程度。ここから必要な金属だけを分離し、濃縮することで、純度の高い金属が作られるというわけだ。
この鉱石を掘り起こす鉱床は、地質調査などを経て、経済性や安全性の面で問題がないとみなされると、採掘が開始される。大規模な採掘場では、露天掘りにより、1日に10万トン以上もの鉱石がパワーショベルなどで掘られていく。
採掘された鉱石が運ばれるのは、選鉱場と呼ばれる施設。ここでは直径10~50センチ程度の鉱石を直径数十ミクロンまで細かくすりつぶし、比重や磁力などの物理的性質を利用し、有用鉱物を取り出していく。この工程は“選鉱”と呼ばれ、分離・濃縮された“精鉱”は、銅なら20~35パーセントの品位まで高められる。一方、不純物(尾鉱)は“ シックナー”と呼ばれる水槽で水分を抜いた後、“たい積場”で貯蔵される。
その後、精鉱はさらに製錬所に輸送される。製錬所では、精鉱を炉で溶かし、金属を抽出。銅の場合、20~35パーセントの品位だった精鉱から、99.99パーセント程度にまで品位を高めた銅地金が作られる。出発点となる鉱石の品位と比べると、最大約1,000倍にまで濃縮される計算だ。こうしてできた地金は各企業により各種製品に加工され、我々の生活を豊かにしてくれている。
【POINT】上流から関わるほど安定供給につながる
金属の生産には鉱山開発から加工まで多くの工程がありますが、上流から関わるほど資源の安定確保につながるとともに、企業の経営基盤を支えることにもなります。たとえば日本の製錬業は、輸出国が原料の輸出をストップしたら生産できません。そのため、日本政府が進める「海外での鉱山権益の獲得」が重要なのです。本邦企業の権益取得という報道は、日本経済の基盤強化がさらに進んだと理解できるでしょう。
JOGMEC NEWS Vol.43より
最終更新日:2016年2月19日
