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鉱種:
レアアース/希土類
2021年10月12日 ロンドン 倉田清香

EU:欧州原材料アライアンス、欧州産業のレアアースへのアクセス確保のためのアクションプランを公表

 2021年9月30日付けのプレスリリースによると、欧州原材料アライアンス(European Raw Materials Alliance、ERMA)は、欧州産業のレアアースへのアクセス確保のためのアクションプラン「レアアースマグネット及びモーター:欧州行動要求(Rare Earth Magnets and Motors: A European Call for Action)」を公表した。同レポートは、欧州のレアアース需要の現状と予測、供給確保のために取るべき措置について説明している。
 アクションプランには、4つの主要な提言にまとめられた12のアクションが含まれている。

【4つの主要な提言】
(1)EUの生産コストは、一連の直接的・間接的な国の補助金によって大幅に抑えられている中国の生産コストよりも本質的に高いため、欧州の政策立案者は平等な競争条件を整える必要がある。
(2)欧州のOEMは、欧州の生産者からレアアース原材料を高い割合で購入するという潜在的なコミットメントを検討する必要がある。
(3)EUは、レアアースを含む使用済み製品や廃棄物を欧州に留めることを保証し、再処理やリサイクルを促進する必要がある。
(4)マッチファンディングによって、欧州レアアースバリューチェーンへの大規模な民間投資を誘発する類を見ない機会がある。このためEUとその加盟国は、欧州共通利益に関する重要プロジェクト(Important Projects of Common European Interest、IPCEI)など、国家補助を含むあらゆる財政的レバーを引くべきである。

【12のアクション及びそのタイムライン】
(1)EUは、EUバリューチェーンへの供給に適したレアアース原材料の一次供給源(採掘)と二次供給源(リサイクル)を世界レベルで特定すべきである(2022年第1四半期)。
(2)EUは資源国との戦略的な貿易パートナーシップを通じて、欧州産業への原材料供給の多様化を促進すべきである(2021~2030年)。
(3)EUはバリューチェーン全体において、探査、採掘、レアアースのフル循環型経済を促進する規制措置を検討すべきである(2023年第1四半期)。
(4)欧州委員会は加盟国と緊密に協力し、財政(支援)へのアクセスを促進するための3つのツールを作成すべきである(2022年第4四半期)。
※3つのツール

  • 「原材料ブリッジファンド」:年間150~200m€規模のバンカビリティの確保とプロジェクトのリスク排除のための新たな金融商品(欧州復興銀行・欧州投資金と共にローン、エクイティ、混合形態)
  • 「原材料投資手段」:欧州諸国全体の原材料需要の主なバイヤー・プーラーとして行動する欧州の新たな国家支援による投資・調達機関。JOGMECと同様に、直接投資又は民間投資の保証人となる。
  • 「レアアースマグネット・モーター向けIPCEI」
  •  

(5)EUは、EUの持続可能性基準と認証スキームを確立すべきである(2022年第3四半期)。
(6)EUは、最新のバッテリー規制の例にならって持続可能なレアアースマグネットの生産のための主要な決定要因に関する研究を開始すべきである(2023年第1四半期)。
(7)EUは、持続可能なコーポレートガバナンス指令に沿って、それぞれの規制を実施することにより、バリューチェーンにおける倫理的な調達と透明性を促進すべきである(2025年第3四半期)。
(8)欧州委員会は加盟国と緊密に協力し、国の補助金とレアアースの採掘、生産、マグネット製造、リサイクルにおける社会的・環境的コストの外部化に関して、公平なレベルの相互主義をバランスさせる方策を検討すべきである(2023年第1四半期)。
(例)

  • EUのレアアースマグネットメーカーが、中国の競合他社と同じコスト条件で原材料(酸化物、金属、合金)を調達するのを支援するソリューションを見出す。これは現在のレアアース原材料市場価格の13%に相当する。キャピタルゲイン税または法人税に関する税制上の優遇措置を通じて、産業用マグネット消費者(自動車、エネルギー等)に対してEUで製造されたレアアースマグネットの購入を奨励する。
  • これらの部門への投資のためのタックスシールド(節税効果)を作り、企業が投資を回収する前に収益税を支払わなくても良いようにする。
  • 世界的なレアアース事業における透明性と基準の欠如を考慮して、炭素国境調整メカニズムをレアアースのサプライチェーンに最も適した形で適用する方法を検討する。また、社会・ガバナンスの基準も検討する。
  • 再生可能エネルギーをベースに、レアアースやマスター合金の電解生産など、エネルギー集約型の産業プロセスを支える低コストの電力ゾーンを構築する。電力に関する税金の大幅削減を検討する。
  • EUの防衛産業のために、レアアースの現地調達に係る義務的最小比率を定義する。

(9)欧州委員会は、全ての利害関係者と社会全般に対応するコミュニケーション戦略を策定すべきである(2024年第1四半期)。
(10)EUは、欧州レアアース研究工場を設立すべきである(2024年第4四半期)。
(11)EUは、欧州全域の科学者と技術者がレアアースに関する経験を共有できるよう、研究者のモビリティプログラムを確立すべきである(2023年第2四半期)。
(12)欧州委員会は、Horizon Europeフレームワークプログラム向けの研究開発テーマを検討すべきである(2021~2027年)。

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