報告書&レポート
銅の鉱山生産動向 ―主要生産者の2003年生産実績と増産計画―
価格は上昇を続け3月にU$3,000の大台に乗せ、4月にはU$3,100を超えた。U$3,000を超えたのは1995年以来である。タイトな需給を反映した価格の上昇を受け、業界第2位のPhelps Dodge社(米)は2004年1月に増産計画を発表した。その後も主要生産者の増産計画の発表が続いた。本稿では、主要銅生産社の2003年の鉱山生産実績と増産計画、さらに増産計画と需給・価格との関係について報告する。 |
-
生産実績
-
2004年以降の計画生産量
-
増産計画の及ぼす影響
2003年の銅の鉱山生産量が100千t以上であった16社の生産実績を下表に示す。
主要銅生産社の生産実績 | (単位:t) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
100千t以上生産した15社のうち9社が減産、6社が増産で、合計では0.7%増の65千t増とほぼ前年並みであった。最も増えたのはAnglo American社の211千tで、2002年末に取得したDisputada社(チリ)の生産量が上乗せ。次いでBHP-Billiton社の90千tで、Escondida鉱山(チリ)の第4期拡張工事が2002年10月に完了したこと、及びTintaya鉱山(ペルー)の硫化鉱採掘を2003年8月に再開したことが寄与した。Phelps Dodge社は30千t増やしたが、これは2001年に縮小した生産規模を銅市況の回復を受けて拡大させたもの。
減産幅が最大であったのはFreeport McMoran社の90千tで、2003年10月のGrasberg鉱山(インドネシア)での露天掘り壁の崩壊事故による。次いでCODELCOの72千tである。2003年6月にMIM社を買収したXstrata社は新たに銅生産者となったが、鉱石品位の低下等で25千tの減産。Rio Tinto社はAlumbrera鉱山(アルゼンチン)の売却とGrasberg鉱山の事故のため減産となった。Noranda社はCollahuasi鉱山(チリ)とAntamina鉱山(ペルー)の減産が影響した。KCM社はAnglo American社にかわる新たな資本提供者を求めているが合意に至らず、資金不足で生産量を減らした。WMC Resource社はOlympic Dam鉱山(豪)のプラント故障等で減産となった。Inco社は3か月続いたストライキによる。
2003年後半の銅市況の回復を受けてPhelps Dodge社は2004年1月に増産を発表した。増産量は2004年が108千t、2005年はさらに58.5千t増である。2月にはNoranda社が増産を発表し、さらに4月にBHP-Billiton社とRio Tinto社がEscondida鉱山のSX-EWプラント建設を決定する等、増産計画の発表及び予測報道が相次いでいる。
生産者 | 増産量 | 概要 | ||||
Phelps Dodge |
|
2001年に減産した鉱山の生産規模回復。(2004.1.29発表) | ||||
Noranda |
|
Collahuashi、Antamina、Kidd各鉱山で拡張工事、2004年後半から生産へ。(2004.2.11発表) | ||||
BHP-Billiton、Rio Tinto |
|
Escondida鉱山(チリ)のSX-EWプラント建設にU$870百万投資決定。2006年後半に生産開始、2008年からフル操業。(2004.4.6発表) | ||||
Groupo Mexico |
|
(2004.4.8予測報道) | ||||
AAplc(Collahuasi) |
|
Rosarioプロジェクト生産開始。(2004.4.14予測報道) | ||||
WMC resources |
|
Olympic Dam鉱山(豪)の生産回復。(2004.4.21予測報道) |
一方、Freeprt McMoran社はGrasberg鉱山の事故の影響で2004年も減産となる見通しであり、Placer Dome社も2004年は減産の計画である。これまでに発表された2004年の増産計画はPhelps Dodge社108千t、Grupo Mexico社140千t、Noranda社132千t、WMC Resources社70千t、Collahuashi鉱山(Anglo American社・Falconbridge社)70千t、KGHM Polska社2千tの計522千tである。最大生産社であるCODELCOは2004年の生産計画を発表していないが、237千t増の1,800千tに達するとの報道もある。減産計画はFreeport McMoran社の135千t、Placer Dome社の11千tの計146千tである。増産と減産を合計すると、376千tの増産となる。
国際銅研究会による2003年の銅の需給バランスは311千tの供給不足であった。2004年も引き続き386千tの供給不足となると同研究会は2003年11月に予測している(下図参照)。実際、2004年1月の銅の需給は72千tの生産不足であり、2003年1月の生産不足量20千tよりも拡大した。しかし最近の銅生産者の増産計画によれば、2004年の生産量は376千t増に達し、予測された需給不足分にほぼ等しい。
注:国際銅研究会による。2004年は予想。 |
一方、銅価格は、堅調な需要を反映して2003年後半から上昇を続け、2004年3月にはU$3,000を超えた。一時U$3,100台に達したが、4月8日のEscondida鉱山拡張計画発表後、一時U$2,900台になり、その後U$2,900~3,100台を推移している。今後、最大生産者であるCODELCOがどのような生産計画を打ち出すか注目される。
出典:Metal Bulletin誌(Copper Grade A, cash) |