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報告書&レポート

2004年4月27日 ロンドン事務所 霜鳥 洋
2004年15号

銅の鉱山生産動向 ―主要生産者の2003年生産実績と増産計画―

 価格は上昇を続け3月にU$3,000の大台に乗せ、4月にはU$3,100を超えた。U$3,000を超えたのは1995年以来である。タイトな需給を反映した価格の上昇を受け、業界第2位のPhelps Dodge社(米)は2004年1月に増産計画を発表した。その後も主要生産者の増産計画の発表が続いた。本稿では、主要銅生産社の2003年の鉱山生産実績と増産計画、さらに増産計画と需給・価格との関係について報告する。

  1. 生産実績

  2.  2003年の銅の鉱山生産量が100千t以上であった16社の生産実績を下表に示す。

      主要銅生産社の生産実績 (単位:t)
    会社名(本社所在国) 2003年 2002年 増減
    Codelco(チリ) 1,563,000 1,635,000 -72,000
    Phelps Dodge(米) 1,059,300 1,028,800 30,500
    BHP-Billiton(英豪) 901,800 811,100 90,700
    Rio Tinto(英) 867,000 887,100 -20,100
    Groupo Mexico(墨) 834,779 844,347 -9,568
    Anglo American(英) 708,800 497,700 211,100
    Freeport McMoran(米) 585,000 675,000 -90,000
    KGHM Polska(ポーランド) 529,616 508,674 20,942
    Xstrata(スイス) 497,296 523,119 -25,823
    Norilsk(ロシア) 467,000 442,000 25,000
    Antofagasta(英) 311,740 304,500 7,240
    Falconbridge(加) 311,203 327,302 -16,099
    Noranda(加) 297,429 328,071 -30,642
    Placer Dome(加) 191,430 192,375 -945
    KCM(ザンビア) 184,965 222,010 -37,045
    WMC Resources(豪) 160,080 178,120 -18,040
    16社計 9,470,438 9,405,218 65,220
    世界生産 13,560,300 13,605,000 44,700
    16社の世界生産への比率 69.8% 69.1% 0.7%
    注: 各社発表による。いずれも各社シェア分。KGHMは電気銅生産量、KCMは電気銅+精鉱中金属量。世界生産はWorld Metal Statistics March 2004。Norilsk社はInterfax社による販売量。

     100千t以上生産した15社のうち9社が減産、6社が増産で、合計では0.7%増の65千t増とほぼ前年並みであった。最も増えたのはAnglo American社の211千tで、2002年末に取得したDisputada社(チリ)の生産量が上乗せ。次いでBHP-Billiton社の90千tで、Escondida鉱山(チリ)の第4期拡張工事が2002年10月に完了したこと、及びTintaya鉱山(ペルー)の硫化鉱採掘を2003年8月に再開したことが寄与した。Phelps Dodge社は30千t増やしたが、これは2001年に縮小した生産規模を銅市況の回復を受けて拡大させたもの。
     減産幅が最大であったのはFreeport McMoran社の90千tで、2003年10月のGrasberg鉱山(インドネシア)での露天掘り壁の崩壊事故による。次いでCODELCOの72千tである。2003年6月にMIM社を買収したXstrata社は新たに銅生産者となったが、鉱石品位の低下等で25千tの減産。Rio Tinto社はAlumbrera鉱山(アルゼンチン)の売却とGrasberg鉱山の事故のため減産となった。Noranda社はCollahuasi鉱山(チリ)とAntamina鉱山(ペルー)の減産が影響した。KCM社はAnglo American社にかわる新たな資本提供者を求めているが合意に至らず、資金不足で生産量を減らした。WMC Resource社はOlympic Dam鉱山(豪)のプラント故障等で減産となった。Inco社は3か月続いたストライキによる。

  3. 2004年以降の計画生産量

  4.  2003年後半の銅市況の回復を受けてPhelps Dodge社は2004年1月に増産を発表した。増産量は2004年が108千t、2005年はさらに58.5千t増である。2月にはNoranda社が増産を発表し、さらに4月にBHP-Billiton社とRio Tinto社がEscondida鉱山のSX-EWプラント建設を決定する等、増産計画の発表及び予測報道が相次いでいる。

    最近の銅増産計画
    生産者 増産量 概要
    Phelps Dodge
    108千t (2004)
    166.5千t (2005)
    2001年に減産した鉱山の生産規模回復。(2004.1.29発表)
    Noranda
    70千t (2004)
    Collahuashi、Antamina、Kidd各鉱山で拡張工事、2004年後半から生産へ。(2004.2.11発表)
    BHP-Billiton、Rio Tinto
    180千t (2006~)
    Escondida鉱山(チリ)のSX-EWプラント建設にU$870百万投資決定。2006年後半に生産開始、2008年からフル操業。(2004.4.6発表)
    Groupo Mexico
    140千t (2004)
    (2004.4.8予測報道)
    AAplc(Collahuasi)
    70千t (2004)
    Rosarioプロジェクト生産開始。(2004.4.14予測報道)
    WMC resources
    70千t (2004)
    Olympic Dam鉱山(豪)の生産回復。(2004.4.21予測報道)

     一方、Freeprt McMoran社はGrasberg鉱山の事故の影響で2004年も減産となる見通しであり、Placer Dome社も2004年は減産の計画である。これまでに発表された2004年の増産計画はPhelps Dodge社108千t、Grupo Mexico社140千t、Noranda社132千t、WMC Resources社70千t、Collahuashi鉱山(Anglo American社・Falconbridge社)70千t、KGHM Polska社2千tの計522千tである。最大生産社であるCODELCOは2004年の生産計画を発表していないが、237千t増の1,800千tに達するとの報道もある。減産計画はFreeport McMoran社の135千t、Placer Dome社の11千tの計146千tである。増産と減産を合計すると、376千tの増産となる。

  5. 増産計画の及ぼす影響

  6.  国際銅研究会による2003年の銅の需給バランスは311千tの供給不足であった。2004年も引き続き386千tの供給不足となると同研究会は2003年11月に予測している(下図参照)。実際、2004年1月の銅の需給は72千tの生産不足であり、2003年1月の生産不足量20千tよりも拡大した。しかし最近の銅生産者の増産計画によれば、2004年の生産量は376千t増に達し、予測された需給不足分にほぼ等しい。

    注:国際銅研究会による。2004年は予想。

     一方、銅価格は、堅調な需要を反映して2003年後半から上昇を続け、2004年3月にはU$3,000を超えた。一時U$3,100台に達したが、4月8日のEscondida鉱山拡張計画発表後、一時U$2,900台になり、その後U$2,900~3,100台を推移している。今後、最大生産者であるCODELCOがどのような生産計画を打ち出すか注目される。

    出典:Metal Bulletin誌(Copper Grade A, cash)

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