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報告書&レポート

2004年7月9日 ロンドン事務所 嘉村 潤
2004年25号

ザンビア銅鉱業の現状と展望 -カッパーベルト復活の兆し-

  1. はじめに

  2.  最近、低迷を続けていたザンビアの銅鉱業をめぐる動きが激しい。長期減退傾向にあった銅生産を回復させるため、長年の懸案であったザンビア銅公社(ZCCM)の民営化については、2000年3月、ザンビア政府とAnglo American社等外国資本との間で、各々の対象鉱山に関する売買が完了した。その後、2002年1月、Anglo American社は国際銅価格の低迷等からKonkola鉱山経営から撤退するなど、外国資本導入の政策は、これまでのところ生産低下に歯止めをかける程度で、大きな成果は得られていなかった。
     しかしながら、2003年後半からの国際銅価格の急回復を受け、ようやく順調にプロジェクトが動き始め、数年後には、最盛期の生産量まで回復するとの見通しまで報道されるようになってきている。
     本稿では、カッパーベルトとして注目を集めてきたザンビア産銅地帯のプロジェクトの最近の状況をレビューし、ザンビア銅鉱業の見通しを展望する。

    ザンビア銅鉱石生産量(銅金属量)の推移 (単位:千t)
    1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2001 2002 2003
    695.6 684.1 676.9 595.8 510.8 496.0 341.9 249.3 306.9 307.8 346.9
    出典: 1965年から1985年は、社団法人資源・素材学会、鉱物資源データブックII.国別統計(1994年)、1990年から2003年は、World Bureau of Metal Statistics

  3. 銅生産プロジェクトの現状

  4.  ザンビア最大の銅鉱山であるKonkola銅鉱山を経営するKonkola Copper Mines社(KCM)は、Zambia Copper Investments社(ZCI、本社ルクセンブルク)が58%、ザンビア銅公社(ZCCM、87.6%はザンビア政府が所有)が42%のシェアを有する。ZCIの50.9%シェアを有していたAnglo AmericanがKCM経営からの撤退を2002年に表明したため、ZCCMが新たなパートナーを探すため、2003年5月に入札を実施。この結果選出された優先入札者のSterlite社(本社インド)とザンビア共和国政府、ZCCM、ZCIとの交渉は難航し、現在も続いていると言われている。
     5月28日の報道では、ザンビアのムワナワサ大統領は、Sterlite社と原則として合意に達し、ザンビアの交渉チームは、内閣に対する承認のための報告を行う予定と発言。しかしその後の6月11日の報道で、ZCIは、同社、ザンビア政府、ZCCM、KCMと、Sterlite社の親会社Vedanta resources社(Sterlite社の61%シェアを所有)との交渉は、未だ継続中であると発言している。
     今回の入札について、赤字が続くKonkola銅鉱山の譲渡を急ぎたいザンビア政府は、売却関連費用のための融資を世界銀行から受けるなど、相当力を入れてきており、ザンビア銅鉱業の重大な節目となるものである。Konkola銅鉱山は、その規模からも今後もザンビアの銅生産体制の中核を担う鉱山であり、資本注入による生産回復は、その意味で重要な案件として今後もその動向が注目される。
     最新の報道によれば、ザンビアの銅地金生産は、4月に3.4万tと前年同月比22%増となり、1~4月で13.1万tと前年同期比28%増、ザンビア鉱山大臣は、2004年5月、今年の銅地金生産が45万tに達することが期待されると述べている。

    ザンビアの銅生産鉱山の概要
    鉱山名 会社名 銅生産規模 備考
    Konkola Konkola Copper Mines社:Zambia Copper Investment(ZCI:ルクセンブルグ) 58%、ザンビア銅公社(ZCCM)42% 18.1万t(2003年)、2004年は22.6万tを計画。 ZCIの50.9%を有するAnglo American社がKCM経営からの撤退を2002年に表明したため、2003年5月、KCMへの競争入札の結果、Sterlite社(インド)を優先入札者として選出、ザンビア政府とZCCMはSterlite社が提案した投資の条件について交渉中。
    Konkola銅鉱山(KCM)は、主力のNchanga露天掘り鉱区において、2つのサテライト採掘場(「CopD」、「CopF」)の採掘を開始。これにより現状では本年採掘終了予定の同鉱区の採掘期間を4~5年延長し、KCM全体の04年銅生産計画22.6万tの38.7%にあたる8.7万tを生産する予定。
    MufuliraNkana Mopani Copper Mines社:Glencore社(スイス)73.1%、First Quantum Minerals社(加)16.9%、ZCCM 10% 13.4万t(2003年) Mopani Copper Mines社は、Mufulira製錬所に対し、Xstrata社から2006年初に新技術ISASMELTを導入し、現在年間40~50万tの銅精鉱処理能力を65万tに引き上げる事業のLOIにサイン。将来、年間85万tまで増強する計画あり。
    Chambishi 中色建設集団公司 CNFC(中国)85%、ZCCM15% 2.1万t(2003年)、2004年は6.0万tを計画。 中国のCNFCが1998年に2千万ドルで権益85%を取得。銅精鉱ベースで2005年までにはピークの13万tに達する予定。1998年以来、Chambishi鉱山の能力増強に1.2億ドルを投資、修復工事を完了し、2003年7月下旬に操業を開始。
    Chibuluma Chibuluma Mines社:Metorex社(南ア)85%、ZCCM15% 年産1.5万t規模 Chibuluma鉱山では現在、月粗鉱生産量2.5万tのChibuluma West操業が年末に終了するが、Chibuluma Southの坑内掘りが年末までに生産開始、逆に月粗鉱生産量4万tに上昇する見込み。Chibuluma Southプロジェクトは、1969年に鉱床発見、資源量は銅3.6%で8百万t、銅金属量で年産1.5万t、約8年間の操業予定。

  5. 今後のザンビア鉱山生産規模の見通し

  6.  今後のザンビアにおける銅鉱石生産は、銅国際価格のレベルにも影響されるものの、上記生産鉱山の規模拡張予定だけで少なくとも今年中に約8万t弱が追加され、下記の生産再開及び開発予定プロジェクトにおいて、さらに約25万t弱追加される予定であり、2006年までに現在の生産を倍増させ、かつてのピーク時の約70万tに近づく生産規模となることが予想される。
     さらに、銅探鉱プロジェクトとして、BHP Billiton社がFirst Quantum Mineralsと共同で進めているMwinilungaプロジェクト、African Eagle社(英)の酸化鉄銅金型鉱床を対象としたEagle Eyeプロジェクト、Albidon社(豪)のMunaliプロジェクト(ニッケルが主対象であるが、銅も含まれる)などがあり、銅価格次第ではあるものの、一層の生産規模拡大も期待できる。

    ザンビアの銅開発プロジェクト
    プロジェクト名 会社名 銅生産規模 備考
    Baluba Luanshya Copper Mines:J&W Holdings(スイス)85%、ZCCM 15% N.A.年産1.0万t前後? 3年以上の中断後、2004年6月初めより銅生産を再開。銅鉱石を5,000t/日生産することを期待。同鉱山は、Roan Antelope Mining Corporation of Zambia(Ramcoz)の一部であったが、2003年11月にJ&W Holdingsが750万ドルで購入、3年以内の2,300万ドル投資をプレッジ、Luanshya鉱山閉鎖、Baluba鉱山集中を決定していた。Ramcozは1999年当時、銅23,750t、コバルト432t生産し、ザンビアで3番目に大きい鉱山であった。
    Kansanshi First Quantum Minerals社80%、ZCCM20% 年産13.0万t Kansanshiプロジェクトは、2004年2月に融資計画が成立。ザンビア北西の都市Solweziから北東約15kmに位置、開発は2003年9月に開始、建設は約25%が完了。資源量は銅0.5%をカットオフ品位として、302百万t(Cu 1.17%、Au 0.17g/t)。2004年8月から露天掘りの試験操業開始、2005年に商業生産を開始予定。フェーズ1ではCu 1.43%、Au 0.22g/tで142百万tの粗鉱を16年間で採掘、160万tの銅を生産予定。このうち56%が精鉱、44%がカソードとして生産され、ピーク時には年間13万tの銅と3.5万ozの金が生産される見込み。
    Lumwana Equinox社(豪)51%、Phelps Dodge社 49% 年産11.6万t Lumwanaプロジェクトは、FSが完成。資源量は901百万t(銅品位0.7%、カットオフ0.6%、コバルト0.01%)、埋蔵量は348百万t(銅0.72%、Co 0.015%)で、20年の採掘期間で平均して年産116千tの銅を生産、コバルト、ウラン、金のクレジットが期待可能。開発金属量は、銅2.2百万t、金90千oz、コバルト54千t、ウラン(U2O8)1,200t。採掘は露天で行い、粗鉱生産量は年産18百万t。今後資金調達を行い04年より建設開始、建設期間24か月を経て、商業生産は2006年から開始予定。
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