報告書&レポート
BRICs諸国を巡る最近の鉱業の動向
五鉱有色金属股●有限公司がカナダ・ノランダ社の権益獲得に乗り出した事が7月9日に報道された。ノランダ社買収については、6月の報道でブラジルのリオ・ドセ社が第一の候補として挙げられているが、2004年年明けにさかのぼれば、アングロアメリカン社、ビリトン社、リオティント社などとともに、ロシアのノリルスク・ニッケル社も買収候補として憶測が流れていた。ノランダ社という一企業を巡る動きではあるものの、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)といわれる有力新興国のうち、3か国を代表する企業がカナダ最大の鉱山企業を巡る動きに関わっており、BRICs現象を象徴するような状況が起きているといえる。 ●=人偏に分 |
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BRICsは自国外での活動を拡大
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中国
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ブラジル
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ロシア
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インド
リオ・ドセ社及びノリルスク・ニッケル社はそれぞれ世界最大の鉄鉱石、ニッケル生産者であり、両社の活動は金属産業において重要な地位を占めているが、これまでその生産活動は主に国内で行われてきた。しかしながら、元国営企業であるリオ・ドセ社は2000年6月にニューヨーク証券取引所へ株式の上場し、ノリルスク・ニッケル社も2003年6月に米国の白金生産社であるStillwater社を買収するなど、活動を海外に広げてきている。
ノランダ社買収候補の残りの一社である五鉱有色金属股●有限公司(China Minmetals Non-ferrous Metals Co:CMN社)は中国五鉱集団公司(China Minmetals Corporation:Minmetals社)傘下の中国最大の非鉄金属商社で、中国の非鉄原料調達のかなりの部分を取り扱っている。中国の経済発展に伴う原料不足に対処するため海外での原料調達源の確保を模索している。
BRICsの残りであるインドは、Birlaグループとともにインド鉱業を二分するシェアを持つSterlite社がその持ち株会社としてVedanta Resources社をロンドン証券取引所に上場し(2003年12月)、海外展開を図りつつある。
このようにBRICsの企業が鉱業界で存在を増してきており、その動向は世界の資源の流れを変え、日本の原料調達に影響を及ぼしている。本稿では、最近の動向をトピックス的に取り上げた。
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2004年5月、チリ鉱業大臣が中国を訪問し、両国間で鉱業における協力に関する覚書が締結され、同大臣の訪問中にMinmetals社からCODELCOが保有するチリ北部Gabyプロジェクトへの参画が申し入れられた。また、6月にはAPEC鉱業大臣会合のためチリを訪問した国土資源部副部長がインタビューの席上、鉱業分野におけるチリへの投資に強い関心を示している。さらに、CODELCO総裁もMinmetals社との関係締結に関する発言を行っており、年内には何らかの進展があるものと予想されている。いまや銅資源の80%以上を海外に依存する中国にとっては、海外における銅資源確保は重要課題であり、世界の銅鉱石の1/3を生産するチリとの関係強化をこれまでも強く求めてきており、今後の展開が注目される。
リオ・ドセ社にとって中国はすでに鉄鉱石・ペレットの20%を占める輸出先であるが、5月にはブラジル大統領の中国訪問時にリオ・ドセ社と上海宝鋼との間で鉄鉱石の供給や製鉄所の建設を含む新たな契約が締結された。また、7月に正式開山したブラジルのSossego銅鉱山の鉱石の14%がインド向けとの報道があり、BRICs間での資源分野における関係進展が見られる。
ロシアは鉱物資源が豊富であるといわれているが、投資リスクが高くこれまで鉱業分野に対する西側企業からの投資は多くなかった。しかし、2003年10月にBarrick Gold社、2004年2月にRio Tinto社、7月にAngloGold Ashanti社がロシアの金開発に投資を発表しており、ベースメタルに比べて資本回収が容易である金を対象にしているとはいえ、西側企業からの投資が相次いでいることは、ロシアの鉱業分野への投資が今後増加することの兆しであると思われる。一方、ノリルスク・ニッケル社は南アフリカ共和国・Gold Fields社の20%の権益をアングロ・アメリカン社から取得し、Stillwater社に続いて国際展開を図っている。
25%という高い輸入関税が課せられてきた銅などの地金に関して、インド政府は2004年1月に20%に税率が下げられ、さらに7月には15%に下げられるようであり、インドの自由貿易体制への移行の流れであろう。この関税の引き下げは、国内製錬所を有するSterlite社にとっては地金販売価格に関税分を上乗せできなくなるため、コスト削減を迫るものとなる。なお、Sterlite社は2002年5月にAnglo American社撤退後のザンビアKonkola鉱山の優先入札者として選出されており、未だ交渉は続いているが、Sterlite社にとってオーストラリアに続く海外での事業展開とである。
