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報告書&レポート

2006年9月28日 ロンドン事務所 高橋 健一 e-mail:takahashi@jogmec.org.uk
2006年69号

African Junior Mining Congress 2006(アフリカ・ジュニア鉱業大会)報告

【会場全景】

 アフリカでの探鉱活動をテーマとし、7月4日から5日までの2日間にわたり、南アフリカ共和国(以下「南ア」)のヨハネスブルグ 1で、African Junior Mining Congress 2006が開催され、世界各国から、メジャー鉱山企業、ジュニア探鉱企業、金融機関及び周辺関連企業といった業界関係者、並びに南アを始めとする政府関係者等の総勢約100名が参加した。
 当機構(以下、「JOGMEC」)は、今後のアフリカにおける探鉱を中心とした事業活動を促進する目的で、本大会の核となるスポンサーとして参加した。会場における展示ブースの出展に加え、「Facilitating Mining Investment from Japan to Africa」と題した、JOGMECのジョイント・ベンチャー探鉱事業(共同資源開発基礎調査)の紹介、アフリカにおける同事業展開等に関する講演を行った。以下、大会の概況を紹介する。

1.African Junior Mining Congress2006の概要

 アフリカで開催されるJunior Mining Congressとしては、2005年9月に、同じく、南アのケープタウンで開催された「World Junior Mining Congress」に続き、2006年で2回目の開催を迎える。特に今回開催された大会は、昨今のアフリカへの探鉱投資活動の活況化を反映して、世界の探鉱のホットスポットとしてのアフリカに焦点を絞ったものとなり、タイトルも「Africa~」に変更され、昨年開催された大会とは一線を画し、独立した大会となった。なお、World Junior Mining Congress自体は、9月に豪シドニーにおいて、別途開催される予定となっている。
 大会自体は、トレードショー的な大規模なものではなく、Face to Faceでのビジネス機会の創出をテーマとし、大会2日間を通じ、通常の講演に加え、全員参加型のプログラムが多数設けられ、各種パネルディスカッション、また、ユニークなスピード・ネットワーキングと称された参加者全員での、いわゆる名刺交換会などの機会が提供され、小規模なカンファレンスのメリットを活かしたものとなっていた。
 また、出展会場には、JOGMECを始め、Price Waterhouse Coopers、Murray & Roberts、EMS Solutions、4社のブースが展示され、ゴールドスポンサーとして参加したJOGMECのブースは、会場中央への出展となったこともあり、参加者多数の来訪となった。
 

2.講演概要

 講演の進行は、南アの業界紙である「African Mining」誌及び「Mining Mirror」誌の編集長であるDr Willem Smuts氏により進められ、2日間にわたり、アフリカで探鉱活動を実施し、あるいは実施予定のジュニア企業等に対し、指針・アドバイスを与えることを目的とした内容について、12の講演、6つのパネルディスカッションなどが行われた。
 以下、主な講演内容である。
 
2-1.基調講演
 基調講演は、BHP Billiton社、Randgold Resources社及びDe Beers社の3社による講演が行われた。そのうち2社の講演を以下に紹介する。
 
 「Reaping the rewards by being first: identifying future prospects in African mining」
                             -Dr Vincent Maphai, Chairman, BHP Billiton, South Africa-
 業界最大手のBHP Billiton South Africa社により、同社のアフリカにおける事業戦略を主な内容とした講演が行われた。講演内容は以下のとおり。
 
●世界鉱業を取り巻く環境変化に関するキーワードは、次のとおりである。

 
・ 業界再編:過去5年間に大きく起こっている業界再編の動向は、今後も継続する。特に中小企業のM&Aの動きは顕著になる。
・ 今後も中国、インド等を始めとする需要増による価格の高レベルにより、この業界の成長は継続するものと予測される。同社の2006年の中国向けの売上シェアは全体の16.2%。
・ Sustainable Developmentの重要度は増大していく。特に地域コミュニティ・レベルでの価値を創出することが求められ、この点に貢献することは、企業が国、又は地域社会からその地域での開発者として選択されることに繋がる。
●アフリカ(世界の約30%の未探鉱鉱物資源が存在する)における新たな鉱山開発は、今後、以下の国々からもたらされるものと予測する。
 
・ 鉄:ギニア、リベリア、モーリタニア等
・ ボーキサイト:ギニア、シエラ・レオネ、ガーナ
・ 銅/コバルト:DRC、ザンビア、モーリタニア、ボツワナ、タンザニア
・ 亜鉛/鉛/銀:南ア、ザンビア、チュニジア
・ ニッケル:タンザニア、アンゴラ、マダガスカル、象牙海岸
・ プラチナ:南ア、ジンバブエ
・ フェロクロム:南ア
・ マンガン:南ア、ガボン、DRC
・ 金:ガーナ、マリ、ブルキナファソ、DRC、タンザニア、アルジェリア、南ア
・ ダイヤモンド:アンゴラ、DRC、ボツワナ、ジンバブエ、ナミビア、モーリタニア
・ ウラン:ナミビア、マラウィ
 このうち、現在の同社の主な探鉱プロジェクトは、以下のとおりであり、2006年の同社のアフリカ/世界の探鉱費シェアは約30%であるが、2007年は約50%に増やす計画である。
 
・ ギニア:ボーキサイト
・ ザンビア:IOCG型銅・金鉱床、ニッケル
・ マダガスカル:ニッケル
・ タンザニア:ニッケル
・ ボツワナ:ダイヤモンド、ニッケル
・ 南アフリカ共和国:鉄鉱石、ダイヤモンド
●アフリカ投資の強化は、中国を中心とした成長する世界的需要に対応するため。未開発であるアフリカ資源は不可欠。一方、アフリカ投資には、政治的リスク、安全衛生管理、環境保護、インフラ不足、汚職、内乱・暴動、技能不足、法制度の不透明性、非効率・不公平な司法制度、貧困問題等のような課題、障害も存在するが、これらは、アフリカ全体では徐々に、一部の国では大幅に改善。投資を行う上で重要なことは、これらの改善の兆しを捉え、リスクの中身を理解し、管理することを通じた大胆さも求められる。また、社会的な投資も全体の計画に盛り込む必要性あり。
●南アにおいては、BEE政策、すなわち、5年間(2009年)で15%、10年間(2014年)で26%の資産権益を黒人資本化する課題あり。同社では主に、Ingwe社(石炭)、Samancor社(マンガン)、RBM(チタン)が対象。円滑な資本移行には鉱物エネルギー局と積極的な関係構築が必要。同社の2003~2006第3四半期までのBEE関係費用は43億ランド。
 
 「Assessing the role of juniors: gold miners or explorers?」-
                                 -Dr Mark Bristow, CEO, Randgold Resources社-
 アフリカにおいて金の積極的な探鉱行い、自ら生産も実施、企業成長してきたRandgold Resources社による、金資源開発におけるジュニア企業の役割をテーマとした講演であった。
 
●探鉱は実体価値を創出するものであり、ジュニア企業は、極めて積極的な探鉱を行うことにより、その実体価値を生み出すといった重要な役割を果たしてきた。しかし、市場投資家の即時的なリターンへの期待もあり、近年、この業界はM&Aによる企業再編が進み、また、ジュニア企業自身による開発の傾向が見られる。この傾向は、企業再編自体は実体価値を生み出すものではなく、一時的に投資家へのリターンを可能にするが、むしろ、再編後は探鉱費及び探鉱に求められる必要な知的資産の縮小を招くことに繋がる。また、ジュニア企業による鉱山開発は、一般的に小規模で、そのため高コストである事例が多く、成功率は低いことが問題となる。
●このような業界動向と併せ、供給量が世界的に減少となっている状況下において、新規鉱山開発、生産拡大は業界の重要課題であるが、今後、重要となる新鉱床の発見において、ジュニア企業へこの様な役割を今後も期待できるのか、あるいは、メジャーが探鉱事業を再開しなければいけないのかなど、誰がその役割を担っていくのかが問題となる。
●本来、探鉱ジュニアは、探鉱に必要とされる、企業における知的資産率がメジャーよりもはるかに高く、リスク資金の調達が容易であること、機動的であることなどがその特徴であり、それゆえ、未開拓地域での新鉱床の発見が可能である。この点における実例として、過去10年間において、新規発見及び鉱山開発のサクセス率が最も高いのは、アフリカ大陸の17か所にわたる鉱山で、67Moz(次いで、環太平洋地域の4鉱山、49Moz。)であったことが掲げられる。
●特にアフリカにおける現状はと言えば、進行中プロジェクトとして、モーリタニア、マリ、コートジボワール、ガーナ、中央アフリカ共和国、タンザニア、ブルキナファソで、2010年までに鉱山生産の開始が予定されており、加えて、主要国における現在の探鉱活動を示すライセンス数、進行中プロジェクト数は以下のとおりであり、ジュニア企業は本来の役割を今後も担うことが期待できる。
 
・ガーナ:212ライセンス、27プロジェクト
・マリ:165ライセンス、19プロジェクト
・タンザニア:1800ライセンス、7プロジェクト
・ブルキナファソ:30ライセンス、14プロジェクト
・セネガル:14ライセンス、7プロジェクト
●また、探鉱ジュニアが生産者へ転向をするためには、長期的な戦略を立てること、シニア(メジャー)の様に、鉱業資産のポートフォリオを前提に、持続可能な収益性に焦点を当てたビジネス戦略が必要となる。
 
2-2. 企業、政府関係者による講演
 「Facilitating Mining Investment from Japan to Africa」と題した、JOGMECのジョイント・ベンチャー探鉱事業(共同資源開発基礎調査)の紹介、アフリカにおける同事業展開等に関する講演の他、メジャー企業であるAnglo American社や、アフリカで探査活動を実施する豪州、カナダ、南ア等のジュニア企業の事例を内容としたもの、カナダ及びザンビアの政府関係者による講演が行われた。
【JOGMEC逆瀬川理事による講演】
 JOGMECの講演は、逆瀬川敏夫理事により行われ、JOGMECの紹介から始まり、海外における事業展開、ジョイント・ベンチャー探鉱事業の紹介及びこれまでの成果、アフリカにおける事業戦略等を内容とした。講演での質問等を始め、講演後、多数のブースへの来訪者があり、特に、ジョイント・ベンチャー探鉱事業に対する関心、興味が寄せられたことは、講演による参加者へのアピールといった点で、成果が得られたものであった。
 その他の主な講演内容は、以下のとおりである。
 
 「The beneficial partnership between seniors and juniors: a global player’s experience」
                          -Mike Holman, Exploration Manager, Anglo American社-

  メジャー企業から見たジュニア企業の位置付け、役割等を内容とした講演であった。概要は以下のとおり。
 
●本来、探鉱とは、メジャー企業にとってはビジネス成長と資源供給のためのものである。一方で、ジュニア企業にとっては、それが戦略的な目的を持ったコアビジネスとなり、プロジェクトの売却又は開発時に、株主へのリターンなどにより事業の評価がなされ得る。メジャーにとってリスク・株主へのリターンにおける公式は至って重要事項であり、リスク管理の一環として、今やジュニア探鉱企業とのパートナーシップは、探鉱事業を進める上で不可欠となる。
●2005年における同社の探鉱費は220百万US$であったが、そのうち世界30か国、111探鉱プロジェクトにおいてジュニア企業とパートナーを組んでおり、その中には、ジュニア企業のマジョリティー権益を同社が所有するものから、Farm-in、Farm-out、JV、同社が保有する鉱業データ(国別、鉱種別、地域別の探鉱データ等)公開契約などがある。
●同社は、長年に亘り、アフリカにおいて探鉱を進めてきたが、この結果、過去20年間における、アフリカ25か国の多数の鉱床評価の実施、各種データの蓄積がなされた。新規参入者は、この蓄積されたデータを同社とData Alliance契約を締結することにより、利用可能である。データ入手に必要とされるコストや時間を省き、既存のプロジェクトへの参入機会や、同社による技術的な援助(低温SQUID、調査施設、加工技術等)等のメリットを享受可能である。
●ジュニア企業のメリットは、その特徴である機動性、リスク・テイク、経済的な効率性により、プロジェクトを実施可能なことであり、メジャー企業とパートナーシップを形成することにより、探鉱における成功の可能性がより拡がる。メジャー企業はジュニア企業が持つこれらの特徴を持たないため、メジャー企業にとっても、ジュニア企業とのパートナーシップの形成は大きなメリットになると考える。
●一つの例として、同社は、2005年に南アのジュニア企業と4年間のCommodity Alliance契約を交わした。その対象国範囲は、アフリカ9か国の同社が保有するデータベースへの無制限アクセスにより、対象国の鉱床評価、特にブッシュフェルト複合岩体、東部アフリカ、南ア・ノーザンケープ州、ボツワナ等における探鉱対象鉱床の抽出等を行い、4か国を選定し、4年間で7百万US$の探鉱をジュニア企業が行うというものである。同社は、通常、プレFS後にプロジェクトのClaw-back(買戻し)権を有する。
●アフリカにおける探鉱費用は年々増加が見られるが(2005年17%増-Metals Economics Group-)、インフラ整備、統治に係るリスクが今後の課題であり、メジャー、ジュニア企業のパートナーシップを組み、リスク・シェアをして、アフリカ大陸への利益に繋がるようにすることが重要である。
 
 「Critical Steps in Becoming a Successful Junior」
                        -Mike Sperinck, Managing Director, Luiri Gold社(豪)-

  同社は、モーリタニアに本社を置くLG Holdings社の100%子会社(2006年買収完了)で、2003年からザンビアにおいて酸化鉄銅金型鉱床(IOCG型)のLuiri Hillsプロジェクトを実施中である。
 アフリカにおける同社の探鉱プロジェクト開発についての講演がなされた。以下、その概要である。
 
●これまで、ザンビア中南部地域は、北部のカッパーベルト地域に比べ、殆ど探査が行われてきていなかった。しかしながら、持続的なザンビアの政治安定、資源価格の上昇などにより、カッパーベルトに加え、中南部地域において、銅、金、亜鉛、ニッケル、ウラン等、これまでの対象であったものに加え、多種の資源ポテンシャルに注目され始めている。現在、Luiri Hillプロジェクトの隣接地域で、BHP Billiton社がJV鉱区を保有している。
●Luiri Hillプロジェクトは、ザンビア中央部に位置し、これまで注目されていなかったIOCG型鉱床を対象とし、2003年、買収することによって開始されたプロジェクトである。最初の過去の調査データの重点的な評価の後、早期に4,000mのボーリングを始めとする本格的な調査を開始した。その結果、推定資源量108,000oz、予想埋蔵量173,000ozの金が確認され、品位3.5%の銅が確認された鉱床も発見された。
●Luiri Hillプロジェクトが早期に成果を上げている主な理由は、未探鉱エリアであった中央部に早期に注目し、優良な鉱区が得られた点、短期間において、ターゲットを絞り込み、価格市況も追い風となり株式市場からの資金調達が可能であった点、及び、これはIOCG型鉱床のメリットであるが、早期に開発可能、キャッシュフローを生み出す金を含む点が掲げられる。
●これらの経験から、ジュニア企業のメリットを十分に活かし、プロジェクトを運営して良くことが重要である。進めたいプロジェクトが決まったら、早期に資金調達に移行することが重要であるが、必要以上に調達しないことも肝要である。調達の場は、プロジェクト国での株式上場によることも考えられるが、それと比較し、ロンドンAIMは、より優れた評価を得られる点、規則や政治的支配がない点などがメリットである。
 
「Learning from the Australian Junior Model : Winning Opportunities for the African Mining
Environment」

 -John Lewins, Managing Director, Platinum Australia社(豪)-
 アフリカにおいてPGM探鉱事業を実施しているPlatinum Australia社によるアフリカでの探鉱における重要な要素についての講演がなされた。同社は現在、Bushveld複合岩体において、PGM探鉱プロジェクトである、Smokey HillsとKalahari(Kalplats)を展開中。BEE政策への対応としては、BEE企業であるAfrican Rainbow Minerals社とJVを行うことが決定し、Kalahariプロジェクトの権益シェアを49%まで既に売却。また、Smokey Hillsプロジェクトに関しては、Limpopo地方自治体と地域コミュニティーとのJVによるプロジェクトを展開している。
 以下、豪州企業である同社の経験等によるアフリカ(南ア)における探鉱ビジネスモデルに関し、ジュニア企業活動のポイントとなる以下についての講演があった。
 
●Access to Equity
 ジュニア企業の探鉱活動がメジャー企業の生産活動を支えていると言っても過言ではなく、その探鉱活動を実施するに当たり、株式等による資金調達は最重要要素である。
 オーストラリア企業は、一般的に、その資金調達を、まず第一にASX(Australian Stock Exchange)市場から調達する。アフリカにおける株式市場はあまり発達してないのが現状である。

 
・ジュニア企業上場数:ASX(Australian Stock Exchange)470社、JSE(Johannesburg Stock Exchange)16社
・新規上場企業数(2005/2006年):ASX62社、JSE3社など
●Access to Land
 政府、又は以前の保有者からの基礎情報の入手、法規制の透明性、インフラ整備状況などに関し、明確化されていることが重要である。
 南アの場合においては、Use it or Lose itが基本的な方針。また、アフリカにおいては、一般的に探鉱権等の手続きに時間がかかり、プロジェクトが遅延する傾向がある。
●Application of Expertise
 専門知識の適用(技術能力、経営能力)を上手く使いこなし、ホスト国のシステムや手続きを理解し、現地のコンサルタントやコントラクターをできるだけ使い、環境・社会面でのニーズも把握することが重要である。
 既存の地質データベース情報が限られている。現地における、専門知識にも限りがあるが、現地について詳しいことは大変重要な要素で、適切なパートナーを選ぶこと、また、現地社会と可能な限り融合することが重要。
●Flexibility in Commercial Arrangements
 JV契約等を交わす段階で、交渉能力、最適化された契約内容は、探鉱活動の効果を最大限にするために欠かせないものである。特に以下の段階で契約内容をよく検討することが肝要。
 
・探鉱段階:鉱区買収(参入)、リスク・シェア、売却時等
・開発段階:資金調達、下請発注、メジャーとのJV締結時等
・生産段階:請負業者、地元社会、委託製錬、JV(Pool & Share、Royalty)等
●Evaluation & Development –
 ターゲットの結果を素早く得ること、また、素早く採算性を評価する能力を必要とする。メジャー、シニア企業に対し、この点が、ジュニア企業の最大の武器である。
 そのためには、現地における経営資源の集中、現地を中心としたプロジェクト運営が重要。また、現地企業、社会との良好な関係を築き、可能な限り現地企業を活用することも求められる。
 
 「Building Value in an Exploration Junior」
                     -Mike Solomon, CEO, Wesizwe Platinum社(南ア)-

  南アJSEに上場し、Bushveld複合岩体Western LimbにおいてPGM探鉱事業を行う、BEE資本52%のWesizwe Platinum社による講演で、南アにおけるジュニア企業活動状況などの講演がなされた。
 
●南アにおける探鉱事業は、長年、鉱山メジャー(Mining House)の支配が続いたこともあり、独立系の企業による探鉱活動は未だに定着していない。限定されたメインストリームの投資家、(ほとんどが外国資本家)の活動がほとんどである。Bushveld複合岩体で活動する南ア企業(JSE上場)は2社のみであり、多くは豪州及びカナダの探鉱企業である。まだ、ジュニア探鉱企業にとって、JSEは熟成した市場とは言い難い状況である。
●探鉱事業とはキャッシュを産出させる作業ではないため資金調達は重要であるが、まだ、ジュニア探鉱企業にとっては、JSEは熟成した市場とは言い難い状況である。海外の主な株式市場を見れば、TSX(Toronto Stock Exchange)は900鉱山企業が上場しており、探鉱資金とジュニアについてより理解している市場と言える。ロンドンAIM(Alternative Investment Market)は、上場の際の基準、提出書類は他よりシンプルであり、規制も少なく、また南アとの時差がほとんどないことから、南ア企業にとって利用しやすい市場である。
●BEE資本の参入形態は、主に、株式所有と将来的な権益獲得オプションの保有があるが、BEE株主(パートナー)はオプション保有を好む傾向がある。その理由は、株式所有の場合、株式公開後においては、一般的に増資などによりBEE株主は権益比率が下がるが、オプションの場合、将来的なプロジェクト価値を高めることへのインセンティブとなるためである。また、BEEパートナーは、投資リスクを嫌う傾向があるため探鉱段階よりも商業段階事業を好むのも事実である。探鉱事業においては、これらのBEE企業の傾向が足かせとなる場合がある。これはBEE資本の源泉となる南ア公的基金は探鉱事業への拠出はしないことが、原因の1つとなっている。しかしながら、探鉱段階へのBEE参入の援助がないことは、その後のBEEの権益獲得の点において、非常に疑問である。
●もう一つのBEE政策の課題である雇用問題については、現状、経験豊富な黒人地質専門者や鉱山専門家が不足しているが、ジュニア企業は、メジャーに比べると人材育成のためのキャパシティーが狭いため、黒人の若年層の志望者はメジャー企業志向となっている。この点が探鉱事業における課題である。
●地域社会は、長期的な視野を持ち、リスクに寛容なわけではなく、探鉱事業を進める上で、地域社会が必要としていることや、商業的な責務の管理、地域社会との意思の疎通は最も重要である。可能な限り、短期間での地域社会への利益供与(雇用、事業計画、地域経済開発等)に努めることが求められる。
 
 「Your Junior Mining Partner in Africa」
                 -Bruce Shapiro, Canada-South Africa Chamber of Business-

  世界のマイニング・パワーハウスと言われ、アフリカでは最も活動的なのがカナダのジュニア探鉱企業。アフリカ及び世界のジュニア企業は、カナダ政府及びカナダのジュニア企業とパートナーを組むことのメリットを内容とした講演がなされた。

●カナダに上場する探鉱・鉱山企業は現在、アフリカ37か国において活動していることからも理解できるように、カナダ企業は、専門的知識と経験を基に、アフリカにおける鉱業活動について深い理解がある。2005年における探鉱費用は205百万US$に登り、アフリカにおける探鉱の25%を占め、2000-2005年までに、50億US$が投じられ、更に15か国にて、150億US$の新規プロジェクトが4~5年の間に予定されている。近年では、カナダ企業による極めて重要な発見が、タンザニア、マリ、ガーナ、ブルキナファソ、ギニア、エリトリア、ケニア、ニジェールであった。
●カナダ政府は、アフリカのある一定のプライベート・パブリック分野への投資ファンドとして、『The Canada Investment Fund for Africa』を、ファンド額を185百万US$で設立した。同ファンドは、現在に至るまで総額25百万US$をアフリカへ投資しており、このうちの11百万US$は、セネガル、ブルキナファソ、DRC及び北アフリカの鉱業分野となっている。
●また、カナダ政府は、投資を行うだけではなく、アフリカの鉱業が与えるイメージ、鉱業政策、環境保護、ガバナンス及び透明性などの向上に関する援助も行ってきている。

3.おわりに

 アフリカにおける探鉱投資は、これまで、他の地域に比べ、未開発であった同地域において、金属価格の高騰状況等を背景とし、ここ2~3年においては、欧米企業を中心に、加えて、中国、インド等の高経済成長国資本による投資も加わり、活況を呈してきている。欧米企業による探鉱活動の中心は、金属価格上昇に伴い、その活動資金の調達がより簡単となったこと等に支えられたジュニア企業の活動が、その中心となっているが、一方、一般的な探鉱段階のリスクに加え、アフリカ特有の政治及び安全保障環境の未整備といった点を始めとするカントリー・リスクが、減少傾向であるものの、依然として存在するのも否めないのが現状である。
 今回開催された大会は、そのようなテーマにスポットを当て、アフリカで探鉱活動を実施、あるいは、これから実施しようとしているジュニア企業等に対し、指針、アドバイスを与えるものであった。 

【JOGMEC展示ブース】

 他方、このような欧米企業等の積極的な投資活動状況下にあるアフリカへの日本の投資活動は、他の地域への投資活動と比較し、その歴史的、地勢的要素の違いの存在等もあり、格段に見劣りするような状況である。
 本大会へのJOGMECの参加は、冒頭でも説明したとおり、今後、資源開発分野におけるアフリカの重要度が世界的に注目される中、この分野での日本の投資活動を促進させるための先駆け的な目的で実施したものである。講演のメインは、JOGMECのジョイント・ベンチャー探鉱事業(共同資源開発基礎調査)の紹介であり、そのターゲットは、鉱業権を所有する企業(民間、国営を問わず)に対し、彼らが保有するプロジェクトに係るJOGMECとの探鉱ジョイント・ベンチャーの実施、その後の日本企業へ移転であるが、これら関係者からは、講演時における質問や、展示ブースへの来訪、質問が多数あったことは、彼らの興味を少なからず引き付けたものであり、今回の参加は有意義であったと捉えることができる。
 また、この分野でのアフリカにおける日本の投資活動を積極的に促進するためには、今回に留まらず、今後も機会があれば、今回のような参加を継続的に実施していくことも必要と考えられる。

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