報告書&レポート
ウズベキスタン実務者調査団に参加して

2006年11月1-2日、ウズベキスタンの首都タシケントにおいてウズベキスタン・ビジネスフォーラムとウズベキスタン関係者との意見交換が行われた。このフォーラムは、2006年5月の二階経済大臣とアジモフ・ウズベキスタン副首相との会談、2006年8月に小泉総理がウズベキスタンを訪問した際のカリモフ大統領との首脳会談をフォローするものと思慮される。ビジネスフォーラムの実施に当たっては、日本側は経済産業省欧州中東アフリカ課、ウズベキスタン側は大統領の娘が理事長を勤めるウズベキスタン文化芸術フォーラム基金と対外経済関係・投資・貿易省が事務局となり成功裡のうち終了した。
今回のフォーラムは、二国間協力・エネルギー分野・貿易経済関係・輸送と観光分野と多岐にわたっているため、今後、当資源機構にとって重要な分野となるウラン資源やウズベキスタンにおける資源ビジネスを展開する際の情報をまとめてみた。
2. 日程
2006年11月1日(水):ガニエフ対外経済関係・投資・貿易大臣、アジモフ副首相兼財務大臣、カリモヴァ文化芸術フォーラム基金理事長(カリモフ大統領娘)、楠本大使、増山団長(経済産業省欧州中東アフリカ課長)の挨拶に続いて、4セッションから構成されるフォーラムが実施。
第 1セッション:投資及び鉱物資源の探鉱・開発分野における二国間協力
第 2セッション:エネルギー分野における相互協力発展の展望
第 3セッション:貿易経済関係のさらなる拡大
第 4セッション:輸送と観光分野での協力活性化
2006年11月2日(木): | 3チームに分かれた、ウズベキスタン政府や企業訪問。チームAは日本側政府及び政府関係機関から構成され以下と約1時間面談。 |
アジモフ副首相兼財務大臣、ガニエフ対外経済関係・投資・貿易大臣、サガエトフ外務省次官、コジャエフ経済省大臣、ゴルロフ国家地質鉱物委員会第一副議長、アフメドス・ウズベクネフチェガス総裁。
2006年11月3日(金):4グループに分かれ、タシケント周辺の工場等の見学
3. 調査団結果
日本側から経済産業省(欧州中東アフリカ課ロシア室、核燃料サイクル産業課、技術協力課)の担当者他、政府関係機関(JBIC、NEXI、NEDO、JETRO、JOGMEC)や商社等総勢30余名が参加。ウズベキスタン側からは、副首相以下、各省の大臣クラスや国営企業の幹部等合計36名の出席によるフォーラムであった。国営テレビ局による撮影やインタビュー、パトカー先導による送迎、盛大な歓迎会等、カリモフ大統領の指示によるウズベキスタン側の受け入れ体制が伺われた。
増山団長の提案による、「真の友人は時には苦い話をするもの」に沿って、ウズベキスタン側との率直な意見交換がなされた。
4. 調査団成果
(1) 国際協力銀行(JBIC)の円借款事業等に比べて知名度が低い当資源機構(JOGMEC)の概要・
実績・事業内容を広くPRする機会を得た。
(2) 小泉首相が2006年8月にウズベキスタン訪問の首脳会議において、ウランの開発及び取引に関する両国官民の関係者の情報交換・意見交換を促進する旨の共同声明が発出されていたが、今回そのフォローがなされた。
(3) 経済産業省、核燃料サイクル課の香山課長補佐から「わが国の原子力政策とウラン資源確保戦略について」の報告や、JOGMECから「ウズベキスタンにおけるエネルギー資源の開発に向けて」において、ウラン資源の重要性と探鉱に向けたプロジェクト形成を明らかにするなど、日本側の取り組みを十分理解させることが出来た。
(4) 従来、ODA事業による資源開発協力基礎調査のカウンターパートであった国家地質鉱物委員会がウラン探鉱開発でも窓口になることが明らかとなった。同委員会の下部企業の1つに「Kyzyltepageologiya」があり、ウズベキスタン内のウラン探鉱活動やウランのリーチングプラントによる実験も行っている。
5. ウズベキスタンにおけるビジネスについて
今回のビジネスフォーラムに向けて、ウズベキスタン側は日本からの直接投資のプロジェクト33件を用意した。アジモフ副首
相兼財務大臣と面談した際、ウズベキスタン側が最重要視している3大プロジェクトが明らかにされた。
(1) サマルカンドの自動車プロジェクト
(2) ウラン資源探鉱・生産・販売の合弁会社の設立(Uz-Kores Minig J/Vとして韓国が先行)
(3) 省エネルギーの推進に関する環境部門のプロジェクト
ウズベキスタンは1991年12月にソ連の解体とともに独立。初代大統領に選出されたカリモフ大統領は国民投票による任期の延
期や憲法改正で2007年1月までの任期となっている。実質15年にも及ぶ大統領の権限は想像を超えるものがある。時には、絶対
的元首による増幅されたビジネス展開への影響が以下、認められる。
(1) 金生産の米国系非鉄メジャーのニューモントは、本年、ウズベキスタンから撤退した。金市況の高騰により、J/V企業に付与
されたロイヤルティ課税が2005年1月から、金が5%から31.7%に、銀が8%から53.7%に上昇したことも一因となっていると予想。
2002年12月の鉱業法(最新)では、国としてのロイヤルティは、金(5%)・銀(8%)・ウラン(0%)となっている。
(2) 大統領や首脳が、ウズベキスタンに損失をもたらしたと判断した外国企業に対する排除。
(3) 逆に、大統領や首脳が、ウズベキスタンにとって好ましいと判断した外国企業に対しては、副首相のような高級レベルの人
でも担当者レベルの人物まで丁重に扱う。
(4) ガニエフ大臣よりもアジモフ副首相、アジモフ副首相よりもカリモフ大統領の娘カリモヴァ理事長の存在感が強いという力
学的ヒエラルキー。
従って、ウズベキスタン側を配慮した誠意あるビジネスが不可欠と思われる。
6. 国家地質鉱物委員会について
鉱物資源の探鉱、管理、採掘、同国の地質研究に関連したすべての活動の調整役として公式に認可された国家機関である。鉱物資源における、探鉱、採掘、選鉱処理等の合弁事業や、外国を相手とする全て(石油天然ガスは除く)の地下資源関連事業に関するウズベキスタン側の権利を代表する権限が与えられており、地下資源の利用に関する戦略的な案件を、独自または外国のパートナーと共同で開発出来る。同委員会は旧ソ連邦時代の組織を引き継ぎ、資源探査や開発に経験豊かな技術者を有し、初期調査から鉱量計算やその評価などを行い、傘下には以下の5企業の実働部隊も抱える。
(1) Samarkandgeologia:ウズベキスタン中央部・西部・南部の地質調査。
(2) Sharkiy Uzubekisutann:ウズベキスタン東部の地質調査。
(3) Kyzyltepageologia:ウズベキスタン全土におけるウラン調査。
(4) Uzbekgidrogeologia:ウズベキスタン全土の地下水・地質工学・環境学。
(5) Karakalpak Field Exploration Expedition:Priaralsky地域における非鉄金属・レアメタル・貴金属・建材用鉱物等の調査の他、鉱石や岩盤の室内分析。
以上の企業に加えて、2つの付属研究所と国内の地質データベースを管理する地質情報センターが存在する。
Kyzyltepageologiaは、ウラン資源の探査、坑内掘りウラン鉱床に対するリーチングのパイロットプラントによる実験、ウラ
ン需給の予測等の幅広い活動を行っている。ウラン専門家はCIS内だけでなく、ドイツ・チェコ・ブルガリア・モンゴル・中国
においても活躍している。
7. ウズベキスタン鉱業関係法規
ウズベキスタンには、鉱業関連の以下の法律が制定されており、最新の鉱業法については今回、国家地質鉱物委員会により入手した。
― On the introduction of amendments and supplements to law of the Republic of Uzbekistan “On subsoils” December 13, 2002(今回入手)
― On agreements on the division of produce December 7, 2001
― On investment activity December 24, 1998
― On foreign investments April 30, 1998
― On gurantees and measures of protection of Foreign investor’s rights April 30, 1998
― On concessions August 30, 1995
