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報告書&レポート

2012年6月7日 ロンドン事務所 北野由佳
2012年30号

国際非鉄研究会参加報告(2)2012年春季国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)参加報告

 ILZSG(国際鉛亜鉛研究会)は1959年に発足した多国間機関で、鉛・亜鉛市場における透明性を確立することを目的とし、需給調査や経済動向など鉛・亜鉛市場に影響を与える分野の情報収集、分析、統計を行っている。
 2012年4月25日、リスボンにて、ILZSGによる春季定期会合が開催された。本会合には、各国代表、産業団体、企業、コンサルタント等約50名が参加し、鉛・亜鉛に関するプレゼンテーション及び議論が行われた。以下、本稿ではその会合の概要について報告する。なお、本会合での講演資料は、ILZSGの公式HPから入手可能である。
(http://www.ilzsg.org/generic/pages/list.aspx?table=document&ff_aa_document_type=P&from=1)

1. 第47回 産業諮問委員会 (10:30~12:00)

1-1. 2012年の鉛需給予測 (ILZSG主任予測統計官 Paul White氏による発表)
1-1-1. 鉛:鉱山生産量 ~ 中国で引き続き増産 ~
 2012年の鉱山生産量は、中国での増産が主因となり、対前年比4.9%増の488万tと予想した。2012年の中国の生産量は、世界生産量の52%にあたる254万tに達する見込みである。中国を除く国々での鉱山生産量は、2011年と同程度となることが予測される。

1-1-2. 鉛:地金生産量 ~ 欧州、北米及びアジアで製錬能力増強 ~
 製錬での地金生産量は、欧州、北米、アジア各国での製錬能力増強により、2012年は対前年比4.4%増の1,090万tとなる見通しである。
 国別・地域別に見ると、欧州での地金生産量は、ベルギー、イタリア、スウェーデン、英国での増産により、対前年比4.4%増と予想される。インドでは、同国北西部のRajasthan製錬所(製錬能力10万t/年)が2011年後期から操業を開始しており、増産が見込まれる。ペルーのLa Oroya製錬所(製錬能力11.5万t/年)は3年以上閉鎖が続いており、製錬所の再開を目指すDoe Run社とペルー政府間で協議が行われているが、環境対策に関する問題が未解決であり、話し合いが難航している。Doe Run社によるLa Oroya製錬所の再開が実現しなかった場合でも、他社によって製錬所が再開される可能性がある。
 2012年の現時点までに閉鎖が確認された製錬所は、ニュージーランドのPetone二次製錬所のみである。ニュージーランド唯一の鉛地金製錬所であったPetone二次製錬所は、国内のスクラップ原料不足が理由で、2012年3月末に閉鎖された。

1-1-3. 鉛:地金消費量 ~ 中国、鉛電池生産工場の閉鎖にも関わらず消費増 ~
 2012年の鉛地金消費量は、対前年比4.8%増の1,078万tと予想した。国別・地域別に見ると、中国では、2011年後期に環境規制の強化に伴い、小規模な鉛蓄電池生産工場が多数閉鎖されたが、2012年には大規模な生産工場での増産や環境基準を遵守した新しい生産工場の建設によって鉛蓄電池の生産が回復する見込みであることから、中国の消費量を対前年比7.3%増と予測した。
 また、欧州では、ドイツ、スペイン、英国での消費減が、イタリア、ポーランド、ロシアでの消費増を上回り、全体では対前年比0.7%減と予想される。一方、インド、日本、韓国、タイ、ベトナムといった他のアジア諸国では消費量の増加が見込まれる。

表1. 鉛の鉱山・地金生産及び地金消費量(単位:千t)

区分 鉛: 鉱山生産量 鉛: 地金生産量 鉛: 地金消費量
2011年
実績
2012年
予想
2011年
実績
2012年
予想
2011年
実績
2012年
予想
欧州 348 358 1,739 1,822 1,616 1,604
アフリカ 116 117 117 112 94 98
南北米 994 994 2,106 2,151 2,060 2,100
アジア 2,637 2,852 6,232 6,588 6,497 6,955
※(内、中国) 2,358 2,540 4,648 4,930 4,632 4,970
オセアニア 561 562 239 223 24 25
世界計 4,656 4,883 10,433 10,896 10,291 10,782

1-1-4. 鉛:世界の需給バランス ~ 2011年、2012年ともに供給過剰 ~
 2012年の需給バランスは、2011年10月時点での予測を少し上回る11.4万tの供給過剰となると予測した(表2)。これにより、供給過剰は3年連続となる。

表2. 世界の鉛需給バランス(単位:千t)

区分 2009
実績
2010
実績
2011
実績
2012
予想
増減
11/10比
増減
12/11比
鉛供給合計 9,054 9,683 10,433 10,896 7.7% 4.4%
鉛消費合計 9,070 9,682 10,291 10,782 6.3% 4.8%
需給バランス -16 1 142 114  

1-1-5. 鉛のLME在庫と価格 ~ 在庫の増加が継続~
 LME在庫については、2010年及び2011年に大幅な増加が見られたが、2012年は、より緩やかな増加となる見込みである。現在のLME在庫量は過去最高レベルの37.7万tである。2011年3月に鉛の先物取引を開始した上海先物取引所(SHFE)では、取引開始直後は在庫が増加したものの、その後、在庫が減少し、現時点での在庫量は、取引開始時より1万t多い2.6万t程度にとどまっている。
 現在の鉛価格は、一年前と比べて約25%低い2,000 US$となっている。供給過剰の状態が継続したため、2011年4~10月の期間に大幅な価格修正が行われたことが要因である。それ以降は、鉛価格は比較的安定してきており、1,950~2,200 US$の範囲内で取引されている。

図1. 鉛の在庫及び価格(出典:ILZSG)
図1. 鉛の在庫及び価格(出典:ILZSG)

1-2. 2012年の亜鉛需給(ILZSG主任予測統計官 Paul White氏による発表)
1-2-1. 亜鉛:鉱山生産量 ~ 南米を中心に各国で増産~
 2012年の鉱山生産量は、対前年比3.9%増の1,345万tとなると予想した。国別・地域別に見ると、南米に関しては、ペルーではCerro Lindo鉱山、Pachapaqui鉱山、Colquijirca鉱山、Santander鉱山等で増産、またボリビア及びメキシコでも増産となることが見込まれる。アフリカでは、ブルキナファソのPerkoa鉱山(生産能力9万t/年)が2012年後半に生産を開始する予定である。また、豪州、中国、フィンランド、インド、カザフスタン、ポルトガル、ロシア、ウズベキスタンでも生産量が増えることが見込まれる。

1-2-2. 亜鉛:地金生産量 ~ アジア諸国で製錬能力増強、南アでは製錬所閉鎖~
 亜鉛地金生産量は、中国、ウズベキスタン、韓国、インド等アジア諸国での製錬能力増強が主因となり、2012年は対前年比4.4%増の1,366万tとなると予想した。なお、アフリカでは、南アのZincor亜鉛製錬所が2011年12月に閉鎖したことから大幅な減産が予想される。アフリカの亜鉛地金生産国はアルジェリアとナミビアの2か国のみとなった。

1-2-3. 亜鉛:地金消費量 ~ 中国は対前年比7%増~
 2012年の亜鉛地金消費量は、対前年比4.4%増の1,341万tと予想した。国別・地域別に見ると、中国では、過去数か月間に亜鉛めっき鋼板の生産量の増加率が低速していること、不動産、自動車及び家電市場の伸びが鈍化していることに加え、電力や鉄道及び道路建設といったインフラプロジェクトへの投資が減少しているという報告があるものの、対前年比7%増の585万tとなると予測した。その他の国に関しては、震災の復興需要がある日本が対前年比7.2%増、米国が同5.1%増で、欧州は2011年と同程度となると見込まれる。

表3. 亜鉛の鉱山・地金生産及び地金消費量(単位:千t)

区分 亜鉛: 鉱山生産量 亜鉛: 地金生産量 亜鉛: 地金消費量
2011年
実績
2012年
予想
2011年
実績
2012年
予想
2011年
実績
2012年
予想
欧州 1,038 1,092 2,439 2,472 2,568 2,575
アフリカ 287 324 250 179 168 172
南北米 4,001 4,156 1,862 1,901 1,724 1,776
アジア 6,133 6,476 8,015 8,587 8,165 8,672
※(内、中国) 4,308 4,540 5,222 5,570 5,470 5,850
オセアニア 1,476 1,397 517 518 216 213
世界計 12,935 13,445 13,083 13,657 12,841 13,408

1-2-4. 亜鉛:世界の需給バランス ~ 2011年、2012年ともに供給過剰 ~
 2012年の需給バランスは、2011年とほぼ同程度の24.9万tの供給過剰となる見通しである(表4)。これにより供給過剰は6年連続となる。

表4. 世界の亜鉛需給バランス (単位:千t)

区分 2009
実績
2010
実績
2011
実績
2012
予想
増減
11/10比
増減
12/11比
亜鉛供給合計 11,286 12,831 13,083 13,657 2.0% 4.4%
亜鉛消費合計 10,920 12,573 12,841 13,408 2.1% 4.4%
需給バランス 366 258 242 249  

1-2-5. 亜鉛のLME在庫と価格 ~ 供給過剰のため価格が下落 ~
 2011年後半にLME在庫が減少したものの、過去数か月間で再び在庫が増加し、現在の在庫は1995年以降で最高値となる89.6万tを記録しており、うち55万tがニューオリンズのLME倉庫に保管されている。上海先物取引所(SHFE)の在庫量は2011年8月に41.8万tを記録したが、その後減少し、現時点では37.7万tとなっている。
 亜鉛価格に関しては、鉛と同様、供給過剰の影響を受けて価格が下落基調にあり、現在の価格は6か月前の価格を少し上回る2,000 US$強で推移しているものの、2011年6月時点での価格(2,400 US$)と比較すると大幅な減少である。

図2. 亜鉛の在庫及び価格(出典:ILZSG)
図2. 亜鉛の在庫及び価格(出典:ILZSG)

1-3. 講演『ポルトガルにおける鉛及び亜鉛の鉱山生産量の見通し』
(ポルトガル経済・イノベーション省、エネルギー・地質総局、Luis Martins氏)
 ポルトガルにはイベリア黄鉄鉱帯(IPB:Iberian Pyrite Belt)が分布しており、鉛及び亜鉛のポテンシャルが高い。1950年から1998年にかけては、イベリア黄鉄鉱帯の30か所で火山性塊状硫化物鉱床(VMS:Volcanic Associated Massive Sulphides)が発見されており、うち11鉱床がポルトガル、19鉱床がスペインに位置している。
 ポルトガルを代表する鉱山は、Aljustrel亜鉛鉱山とNeves-Corvo 銅・亜鉛・銀鉱山である。Aljustrel亜鉛鉱山は、2009年2月にLundin Mining社 (本社: Toronto)がMTO SGPS,SA(本社:Portugal)に売却した。亜鉛価格の低迷により2008年11月から亜鉛生産は休止されているが、鉱山設備のメンテナンスは継続されており、Feitais鉱床から採掘される銅の副産物としての亜鉛生産が近いうちに再開される予定である。
 Neves-Corvo銅・亜鉛・銀鉱山は、1989年から銅生産を行っており、2006年からは亜鉛生産も開始している。2008年11月以降、同鉱山を操業するLundin Mining 社は、亜鉛価格の下落が原因で、亜鉛生産を停止していたが、2010 年には生産を一部再開した。Lombador鉱床開発の 第一段階FSは2011年9月に終了しており、2014年までに60,000 t/年の亜鉛生産を達成できるよう開発が進められている。また2011年9月に発見されたSemblana鉱床に関しては、高品位の銅硫化物を含む鉱化帯が確認されており、Lombador鉱床とともに開発のための調査が行われている。
 また、ポルトガル政府は2012年3月、イベリア黄鉄鉱帯に位置するAlbernoa、Mertola、Alcoutimの3つの鉱区における探鉱権の公開競争入札を開始した。これらの鉱区は、鉱物資源の賦存ポテンシャルが高く、財政難という課題を抱える同国政府にとっては重要な戦略の一つである。

1-4. 講演『マテリアルフローの分析に基づいた金属リサイクル率の計算』
(イエール大学、Barbara Reck氏)
 イエール大学の「金属の在庫とフローに関する研究プロジェクト(STAF: Stocks and Flows)」では、1990年代後半から金属のライフサイクルに関する研究を行っている。採掘された金属がどこでどのような形状で存在しているのかという問いを原点として世界規模での調査を始めた。精鉱、金属、加工品、最終製品、製品寿命を終えた製品(EOL:End of Life)、スクラップ、というように金属のライフサイクル全体において形状別に数量化を行うことにより、マテリアルフローの分析を試みた。STAFプロジェクトが現在までにマテリアルフローの分析を行った金属は、銅、亜鉛、鉛、銀、鉄、クロム、ニッケル、鉄鋼で、調査対象は50か国以上である。またアルミ、タングステン、コバルト、白金に関しては、小規模なケーススタディを行っている。各金属のマテリアルフロー分析を行うことで、リサイクルによって金属のライフサイクルがどの程度閉じたループ(closed loop)となっているかを確認することができる。
 リサイクルに関する指標は数種類あるが、2011年5月に国連環境計画(UNEP)が発表した報告書「金属のリサイクル率(Recycling Rates of Metals)1」にも記載されているように、EOLリサイクル率(EOL-RR:End-of-life Recycling Rate)とリサイクル含有率(RC:Recycled Content)の2種類が特に重要である。それぞれの計算方法は以下の通りである:

-EOLリサイクル率(EOL-RR)= リサイクルされたEOL金属/EOL金属
-リサイクル含有率(RC)=(リサイクルされたEOL金属+工程スクラップ)/一次金属生産量

 UNEPの報告書では、2つのリサイクル指標を用い、以下の図3及び図4のとおり62鉱種のリサイクル率を数値化した。

図3. EOLリサイクル率(EOL-RR)(出典:UNEP Recycling Rates of Metals)
図3. EOLリサイクル率(EOL-RR)(出典:UNEP Recycling Rates of Metals)
図4. リサイクル含有率(RC)(出典:UNEP Recycling Rates of Metals)
図4. リサイクル含有率(RC)(出典:UNEP Recycling Rates of Metals)

 EOLリサイクル率に関しては、銅、ニッケル、鉛及び亜鉛は50%以上の高いリサイクル率を有している。しかし、ハイテク産業で必要とされるレアアースといった特殊金属に関しては、リサイクル率が1%未満となっている。レアアースのリサイクルに関しては現在研究が進められているが、まだ顕著な成果は出ていない様子である。一方で、リサイクル含有率に関しては、鉛は鉛蓄電池のリサイクル産業が発達しているためリサイクル率が50%以上であるが、ニッケルは25~50%、銅及び亜鉛に関しては10~25%という現状である。
 マテリアルフロー分析はリサイクル率を計算し数量化するための有効な手段である。リサイクル率の低い金属に関しては、リサイクル率を向上するための対策が講じられなければならない。また、その中でも特にレアアースといった特殊金属はハイテク産業で用いられる重要な金属であるため、適切な法的手段も検討されるべきである。

2. 第22回 経済環境委員会 (12:00~13:00)

2-1. 講演『鉛及び亜鉛の副産物に関する調査結果』
(Oakdene Hollins社、Peter Willis氏)
 国際銅研究会(ICSG)、国際ニッケル研究会(INSG)及び国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)の3研究会は2011年9月(前回の会合時)、銅、ニッケル、鉛及び亜鉛の副産物の需給及び生産者に関する調査を共同で行うことを決定し、英コンサルタント会社のOakdene Hollins社がその調査を請け負った。Oakdene Hollins社は、鉛及び亜鉛に関するこれまでの調査結果の概要を以下のとおり説明した:
 鉛の主な副産物としてはビスマス及びテルルがあり、2011年の生産量はそれぞれ8,500 t及び450 tである。ビスマスは鉛及びタングステンの副産物として生産されており、主な生産国は中国(70%)、ペルー(13%)、メキシコ(12%)である。用途の内訳は、金属添加剤(metallurgical additives)が67%、ビスマス合金が7%、化学製品(薬品及び化粧品を含む)が26%である。ビスマス市場は緩やかな成長を見せる市場であるが、今後、無鉛はんだの需要が伸びれば、ビスマスの需要が高まる可能性がある。
 テルルは主に銅の副産物として生産されているが、約10%は鉛の副産物として生産されている。テルルの生産は、欧州(30%)、CIS諸国(11%)、中国(19%)、日本(16%)等、複数の地域で行われているものの、高純度のテルルを生産できる製錬施設は少ない。また公式データが公表されていないといった課題がある。テルルの用途に関しては、約40%がCdTe(カドミウムテルル)型太陽電池で、今後長期的な伸びが期待できる。
 亜鉛の主な副産物はゲルマニウムとインジウムで、2011年の生産量はそれぞれ118 t及び640 tである。ゲルマニウムの74%は亜鉛の副産物として、残りの26%は石炭の副産物として生産されている。主な生産国は中国(65%)、カナダ(15%)、米国(12%)、フィンランド(5%)である。またゲルマニウムの世界消費量の約30%は、工程スクラップ(製造過程で発生した廃品)から生産されているというデータが示すとおり、工程スクラップの効果的なリサイクルが行われている。用途の内訳は、赤外線光学材料が30%、光ファイバーが20%、PET樹脂用の触媒向けが20%となっている。また今後、電子機器及び太陽エネルギー分野での需要が高まる可能性がある。
 インジウム一次地金(virgin refinery)の主な生産国は、中国(53%)、韓国(15%)、日本(11%)、カナダ(10%)である。インジウムのリサイクル効率は近年急激に高まっており、スクラップから生産されたインジウムは、2006年と比較すると2011年には約70%増となった。インジウム一次地金の用途の内訳は、液晶ディスプレイが56%、はんだが10%、太陽光発電材料が8%となっている。また最近開催されたレアメタル会議(Minor Metal Conference)にてインジウムの代替可能性が議論されたが、当面の間はインジウムの代替が行われる可能性は低いと考えられる。

2-2. 講演:『国際鉛管理センター(ILMC)の最近の活動』
(国際鉛管理センター(ILMC)、Brian Wilson氏)
 ILMCは国際鉛亜鉛研究機関(ILZRO)の運営の下、国際鉛協会(ILA)の支援を受け、鉛によるリスク軽減を目的として活動している団体である。ILMCは国際機関、各国政府機関及び産業界と協力して、鉛暴露(lead exposure)のリスク管理に関する世界各地でのプロジェクトに関与している。
 2011年秋季ILZSGに引き続き、今回の講演でも、国連一次産品共通基金(CFC)から資金援助を受けてILZSGと共同で行っている「セネガルでの使用済み鉛酸蓄電池回収プロジェクト」の進捗状況に関する報告があった。セネガルのダカール州にあるTiaroye-sur-Mer地区では、回収した鉛蓄電池の解体が手作業で行われており、また有害な鉛廃棄物の処理が適切に行われていなかったため、鉛汚染による新生児の死亡といった事例が発生していた。そのため、セネガル政府は使用済み鉛蓄電池のリサイクルの停止、鉛の危険性に関する教育、汚染された土壌の除去等を行うとともに、国際機関に対して援助の要請を行った。世界保健機関(WTO)は健康管理を、米研究機関 Blacksmith Instituteは鉛に汚染された家庭の浄化作業を担当した。一方、ILMCはILZSGと共同で、使用済み鉛蓄電池の回収システムの向上に関するプロジェクトに参画した。これらの活動を経て、現在ではGravita社によって新しい鉛蓄電池のリサイクル工場が建設され、安全で環境に優しい方法で、使用済み鉛蓄電池の解体が行えるようになった。また使用済み鉛蓄電池の回収センターに関しては、セネガル国内での回収センター建設に関する覚書が締結されている。また今後、ガーナでも回収センターを建設し、西部アフリカで回収センターを2か所設けることを目標としている。

3. 各委員会のプロジェクト進捗報告

3-1. ILZSG統計予測委員会

  完了したプロジェクト 進行中のプロジェクト 新規プロジェクト
報告書

・インド鉛市場調査
(2012年2月発行)

・鉛亜鉛市場の年間レビュー
(2012年2月発行)

・月間統計報告書

・鉛・亜鉛の一次利用法に関する年次報告書(2012年5月発行予定)

・ILZSGの統計の正確性に関する報告書

・鉛亜鉛市場のレビューと予測(年2回)

・世界の鉛及び亜鉛鉱山の住所録(第8版2012年末発行予定)

・世界の一次・二次亜鉛製錬所の住所録(第4版2012年末発行予定)

・ILZSGインサイト報告書

・中国における亜鉛の最終用途の調査(2012年4月末発行予定)

なし
その他

・プレゼンテーションの実施
『亜鉛の鉱山生産量の見通し』IZA主催国際亜鉛会議にて、『新規亜鉛鉱山生産の見通し』MetalBulletin主催第16回亜鉛セミナーにて

・鉛・亜鉛需給調査(年2回発表)

・リサイクル率計算法の開発(継続)

・地方セミナーの計画(継続)

・ILZSGのウェブサイトの向上

・統計データベース及び情報源の管理と向上

・統計データベースの対話型インターフェースの開発(継続)

・鉛・亜鉛鉱山及び製錬所データベースの対話型インターフェースの開発

3-2. ILZSG鉱山及び製錬所プロジェクト委員会

進行中のプロジェクト 新規のプロジェクト

・新規の鉛

・亜鉛鉱山及び製錬所プロジェクト報告(2012年1月発行)

なし

3-3. ILZSG経済環境委員会

  完了したプロジェクト 進行中のプロジェクト 新規のプロジェクト
報告書

・3研究会合同プロジェクト
中国の非鉄金属統計データの調査

・ILZSGインサイト報告書『ハイブリッド車及び電気自動車が鉛需要にもたらす影響』(2011年7月発行)
『中国における亜鉛めっきプロジェクト』(2011年5月発行)

・ILZSGインサイト報告書(継続)

・合同研究会”Metals Despatch”ニュースレター(継続)

・鉛の市況報告書
(継続)

・3研究会合同プロジェクト
鉛・亜鉛の副産物に関する調査(2012年6月発行予定)

なし
その他  

・ILZSGのウェブサイトの向上
製品スチュワードシップGreen Lead Initiativesへの協力

・CFCプロジェクト:
『アフリカにおける亜鉛空気蓄電池の利用』(継続)
『マラウィでのIZAによる亜鉛含有肥料促進プロジェクト』(継続)

・『インドにおける溶融亜鉛めっきのプロジェクト』
(継続)
『セネガルでの使用済み鉛蓄電池の回収プロジェクト』(継続)

・UNCSDへの協力(政府間フォーラムへの参加など)

・CFCプロジェクト
『インドでの亜鉛ダイカストに関するプロジェクト』

・ILZSG、ILA、ILMC及び産業界主導プロジェクト『中国における鉛酸蓄電池の回収及びリサイクル、環境衛生基準に沿ったシステムの構築』

4. 2012年秋季会合について

 国際鉛亜鉛研究会の2012年秋季会合は、2012年10月11~12日にポルトガルのリスボンにて開催される予定である。
< 2012年秋季の国際非鉄金属3研究会の日程 >
10月8日:国際銅研究会(ICSG)、国際ニッケル研究会(INSG)
10月9日:国際銅研究会(ICSG)、国際ニッケル研究会(INSG)
10月10日午前:国際ニッケル研究会(INSG)、午後:3研究会合同セミナー
  テーマ『インドにおける鉱業と金属の重要性の高まり』
10月11~12日:国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)


1http://www.unep.org/resourcepanel/Portals/24102/PDFs/Metals_Recycling_Rates_110412-1.pdf

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